8 / 143
意味深な手紙
しおりを挟む
人体万能治療ポッドから滑り落ちるように這い出し床に倒れる。
首に力を入れ顔を上げると一つのダンボール箱が目に入った。
ダンボール箱の側面にはマジックペンで「匡用着替え」と書かれている。
蓋を開けて中を覗くと一番上に白いバスタオルが入っていたので、取り出して身体中に纏わりついた液体を拭き取った。
ダンボール箱の中身は母が揃えてくれたのだろう。替えの下着と服が綺麗に畳まれ詰め込まれている。
着替えを全部取り出して着たあと、他に何か入っていないかまさぐるようにして確かめる。
すると、ダンボール箱の底に一枚の茶封筒があるのを見つけた。
直ぐに封を開けて中の便箋を取り出し、書かれている内容を読んでみる...
『おはよう匡。あなたがこの手紙を読んでいるということは、きっと無事に治療が終わって元気にしているのよね。
匡、残念だけどわたしは、治療に入る前に約束した料理を作ってあげられないかも知れない。
あなたが治療に入ったあと突然にして世界は変わってしまったの。
もし、家からわたしと父さんが居なくなっていても、絶望などせずに強く生きて下さい。
8月3日 母より』
「...何だよこれ...」
情けない話だが、手紙を読み終わった僕の思考は錯乱していた。
一ヶ月間の眠りから目覚め、こんな内容の手紙を読んで混乱しない人が果たしているだろうか?
部屋に置いてあったリクライニングチェアに腰掛けて目を瞑り、暫く心を落ち着かせることに専念した。
「取り敢えずこの部屋を出てみるか...」
心の落ち着きを取り戻した僕は、そう呟いて親父の書斎に繋がる階段を上って行く。
もしかしたら階段を上り切った先が書斎の本棚で塞がれてはいないだろうか?などと危惧していたのだが、その心配は無用だったようで、地下室への入り口手前の本棚は左右に移動したままだった。
カーテンは閉められていたのだが冷房が稼働しておらず、空気も淀み真夏の暑さで書斎の気温が凄まじい。
「この暑さはきついな...」
地下室との温度差が激しいためか僕の深い指数が一気に上昇する。
外の新鮮な空気が吸いたいな。
僕はカーテンとガラス張りの出窓を開け、窓から顔を出して新鮮な空気を思いっきり吸い込み深呼吸をする。
「ふぅは~......ん?あれは、火事か?」
遠くの方で黒い煙がモクモクと上がっているのが見えた。
この家は多くの人が住む住宅地にあるのだけれど、その煙が上がっている位置にも家が立ち並ぶ。
遠くの方である火事なら実害も無いし、年に数回見かける光景でもあると言えばある。
煙のことは余り気に掛けないようにして、取り敢えず家の中に両親が居ないか確かめることにした。
首に力を入れ顔を上げると一つのダンボール箱が目に入った。
ダンボール箱の側面にはマジックペンで「匡用着替え」と書かれている。
蓋を開けて中を覗くと一番上に白いバスタオルが入っていたので、取り出して身体中に纏わりついた液体を拭き取った。
ダンボール箱の中身は母が揃えてくれたのだろう。替えの下着と服が綺麗に畳まれ詰め込まれている。
着替えを全部取り出して着たあと、他に何か入っていないかまさぐるようにして確かめる。
すると、ダンボール箱の底に一枚の茶封筒があるのを見つけた。
直ぐに封を開けて中の便箋を取り出し、書かれている内容を読んでみる...
『おはよう匡。あなたがこの手紙を読んでいるということは、きっと無事に治療が終わって元気にしているのよね。
匡、残念だけどわたしは、治療に入る前に約束した料理を作ってあげられないかも知れない。
あなたが治療に入ったあと突然にして世界は変わってしまったの。
もし、家からわたしと父さんが居なくなっていても、絶望などせずに強く生きて下さい。
8月3日 母より』
「...何だよこれ...」
情けない話だが、手紙を読み終わった僕の思考は錯乱していた。
一ヶ月間の眠りから目覚め、こんな内容の手紙を読んで混乱しない人が果たしているだろうか?
部屋に置いてあったリクライニングチェアに腰掛けて目を瞑り、暫く心を落ち着かせることに専念した。
「取り敢えずこの部屋を出てみるか...」
心の落ち着きを取り戻した僕は、そう呟いて親父の書斎に繋がる階段を上って行く。
もしかしたら階段を上り切った先が書斎の本棚で塞がれてはいないだろうか?などと危惧していたのだが、その心配は無用だったようで、地下室への入り口手前の本棚は左右に移動したままだった。
カーテンは閉められていたのだが冷房が稼働しておらず、空気も淀み真夏の暑さで書斎の気温が凄まじい。
「この暑さはきついな...」
地下室との温度差が激しいためか僕の深い指数が一気に上昇する。
外の新鮮な空気が吸いたいな。
僕はカーテンとガラス張りの出窓を開け、窓から顔を出して新鮮な空気を思いっきり吸い込み深呼吸をする。
「ふぅは~......ん?あれは、火事か?」
遠くの方で黒い煙がモクモクと上がっているのが見えた。
この家は多くの人が住む住宅地にあるのだけれど、その煙が上がっている位置にも家が立ち並ぶ。
遠くの方である火事なら実害も無いし、年に数回見かける光景でもあると言えばある。
煙のことは余り気に掛けないようにして、取り敢えず家の中に両親が居ないか確かめることにした。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
転生幼児は夢いっぱい
meimei
ファンタジー
日本に生まれてかれこれ27年大学も出て希望の職業にもつき順風満帆なはずだった男は、
ある日親友だと思っていた男に手柄を横取りされ左遷されてしまう。左遷された所はとても忙しい部署で。ほぼ不眠不休…の生活の末、気がつくとどうやら亡くなったらしい??
らしいというのも……前世を思い出したのは
転生して5年経ってから。そう…5歳の誕生日の日にだった。
これは秘匿された出自を知らないまま、
チートしつつ異世界を楽しむ男の話である!
☆これは作者の妄想によるフィクションであり、登場するもの全てが架空の産物です。
誤字脱字には優しく軽く流していただけると嬉しいです。
☆ファンタジーカップありがとうございました!!(*^^*)
今後ともよろしくお願い致します🍀
離縁された妻ですが、旦那様は本当の力を知らなかったようですね?~魔道具師として自立を目指します!~
椿蛍
ファンタジー
【1章】
転生し、目覚めたら、旦那様から離縁されていた。
――そんなことってある?
私が転生したのは、落ちこぼれ魔道具師のサーラ。
彼女は結婚式当日、何者かの罠によって、氷の中に閉じ込められてしまった。
時を止めて眠ること十年。
彼女の魂は消滅し、肉体だけが残っていた。
「どうやって生活していくつもりかな?」
「ご心配なく。手に職を持ち、自立します」
「落ちこぼれの君が手に職? 無理だよ、無理! 現実を見つめたほうがいいよ?」
――後悔するのは、旦那様たちですよ?
【2章】
「もう一度、君を妃に迎えたい」
今まで私が魔道具師として働くのに反対で、散々嫌がらせをしてからの再プロポーズ。
再プロポーズ前にやるのは、信頼関係の再構築、まずは浮気の謝罪からでは……?
――まさか、うまくいくなんて、思ってませんよね?
【3章】
『サーラちゃん、婚約おめでとう!』
私がリアムの婚約者!?
リアムの妃の座を狙う四大公爵家の令嬢が現れ、突然の略奪宣言!
ライバル認定された私。
妃候補ふたたび――十年前と同じような状況になったけれど、犯人はもう一度現れるの?
リアムを貶めるための公爵の罠が、ヴィフレア王国の危機を招いて――
【その他】
※12月25日から3章スタート。初日2話、1日1話更新です。
※イラストは作成者様より、お借りして使用しております。
ダンジョン配信 【人と関わるより1人でダンジョン探索してる方が好きなんです】ダンジョン生活10年目にして配信者になることになった男の話
天野 星屑
ファンタジー
突如地上に出現したダンジョン。中では現代兵器が使用できず、ダンジョンに踏み込んだ人々は、ダンジョンに初めて入ることで発現する魔法などのスキルと、剣や弓といった原始的な武器で、ダンジョンの環境とモンスターに立ち向かい、その奥底を目指すことになった。
その出現からはや10年。ダンジョン探索者という職業が出現し、ダンジョンは身近な異世界となり。ダンジョン内の様子を外に配信する配信者達によってダンジョンへの過度なおそれも減った現在。
ダンジョン内で生活し、10年間一度も地上に帰っていなかった男が、とある事件から配信者達と関わり、己もダンジョン内の様子を配信することを決意する。
10年間のダンジョン生活。世界の誰よりも豊富な知識と。世界の誰よりも長けた戦闘技術によってダンジョンの様子を明らかにする男は、配信を通して、やがて、世界に大きな動きを生み出していくのだった。
*本作は、ダンジョン籠もりによって強くなった男が、配信を通して地上の人たちや他の配信者達と関わっていくことと、ダンジョン内での世界の描写を主としています
*配信とは言いますが、序盤はいわゆるキャンプ配信とかブッシュクラフト、旅動画みたいな感じが多いです。のちのち他の配信者と本格的に関わっていくときに、一般的なコラボ配信などをします
*主人公と他の探索者(配信者含む)の差は、後者が1~4まで到達しているのに対して、前者は100を越えていることから推察ください。
*主人公はダンジョン引きこもりガチ勢なので、あまり地上に出たがっていません
婚約破棄されて異世界トリップしたけど猫に囲まれてスローライフ満喫しています
葉柚
ファンタジー
婚約者の二股により婚約破棄をされた33才の真由は、突如異世界に飛ばされた。
そこはど田舎だった。
住む家と土地と可愛い3匹の猫をもらった真由は、猫たちに囲まれてストレスフリーなスローライフ生活を送る日常を送ることになった。
レコンティーニ王国は猫に優しい国です。
小説家になろう様にも掲載してます。
勇者じゃないと追放された最強職【なんでも屋】は、スキル【DIY】で異世界を無双します
華音 楓
ファンタジー
旧題:re:birth 〜勇者じゃないと追放された最強職【何でも屋】は、異世界でチートスキル【DIY】で無双します~
「役立たずの貴様は、この城から出ていけ!」
国王から殺気を含んだ声で告げられた海人は頷く他なかった。
ある日、異世界に魔王討伐の為に主人公「石立海人」(いしだてかいと)は、勇者として召喚された。
その際に、判明したスキルは、誰にも理解されない【DIY】と【なんでも屋】という隠れ最強職であった。
だが、勇者職を有していなかった主人公は、誰にも理解されることなく勇者ではないという理由で王族を含む全ての城関係者から露骨な侮蔑を受ける事になる。
城に滞在したままでは、命の危険性があった海人は、城から半ば追放される形で王城から追放されることになる。 僅かな金銭で追放された海人は、生活費用を稼ぐ為に冒険者として登録し、生きていくことを余儀なくされた。
この物語は、多くの仲間と出会い、ダンジョンを攻略し、成りあがっていくストーリーである。
神様お願い!~神様のトバッチリで異世界に転生したので心穏やかにスローライフを送りたい~
きのこのこ
ファンタジー
旧題:神様お願い!〜神様のトバッチリを受けた定年おっさんは異世界に転生して心穏やかにスローライフを送りたい〜
突然白い発光体の強い光を浴びせられ異世界転移?した俺事、石原那由多(55)は安住の地を求めて異世界を冒険する…?
え?謎の子供の体?謎の都市?魔法?剣?魔獣??何それ美味しいの??
俺は心穏やかに過ごしたいだけなんだ!
____________________________________________
突然謎の白い発光体の強い光を浴びせられ強制的に魂だけで異世界転移した石原那由多(55)は、よちよち捨て子幼児の身体に入っちゃった!
那由多は左眼に居座っている神様のカケラのツクヨミを頼りに異世界で生きていく。
しかし左眼の相棒、ツクヨミの暴走を阻止できず、チート?な棲家を得て、チート?能力を次々開花させ異世界をイージーモードで過ごす那由多。「こいつ《ツクヨミ》は勝手に俺の記憶を見るプライバシークラッシャーな奴なんだ!」
そんな異世界は優しさで満ち溢れていた(え?本当に?)
呪われてもっふもふになっちゃったママン(産みの親)と御親戚一行様(やっとこ呪いがどうにか出来そう?!)に、異世界のめくるめくグルメ(やっと片鱗が見えて作者も安心)でも突然真夜中に食べたくなっちゃう日本食も完全完備(どこに?!)!異世界日本発福利厚生は完璧(ばっちり)です!(うまい話ほど裏がある!)
謎のアイテム御朱印帳を胸に(え?)今日も平穏?無事に那由多は異世界で日々を暮らします。
※一つの目的にどんどん事を突っ込むのでスローな展開が大丈夫な方向けです。
⭐︎第16回ファンタジー小説大賞にて奨励賞受賞を頂きました!読んで投票して下さった読者様、並びに選考してくださったスタッフ様に御礼申し上げますm(_ _)m今後とも宜しくお願い致します。
美しくも残酷な世界に花嫁(仮)として召喚されたようです~酒好きアラサーは食糧難の世界で庭を育てて煩悩のままに生活する
くみたろう
ファンタジー
いつもと変わらない日常が一変するのをただの会社員である芽依はその身をもって知った。
世界が違った、価値観が違った、常識が違った、何もかもが違った。
意味がわからなかったが悲観はしなかった。
花嫁だと言われ、その甘い香りが人外者を狂わすと言われても、芽依の周りは優しさに包まれている。
そばに居るのは巨大な蟻で、いつも優しく格好良く守ってくれる。
奴隷となった大好きな二人は本心から芽依を愛して側にいてくれる。
麗しい領主やその周りの人外者達も、話を聞いてくれる。
周りは酷く残酷な世界だけれども、芽依はたまにセクハラをして齧りつきながら穏やかに心を育み生きていく。
それはこの美しく清廉で、残酷でいておぞましい御伽噺の世界の中でも慈しみ育む人外者達や異世界の人間が芽依を育て守ってくれる。
お互いの常識や考えを擦り合わせ歩み寄り、等価交換を基盤とした世界の中で、優しさを育てて自分の居場所作りに励む。
全ては幸せな気持ちで大好きなお酒を飲む為であり、素敵な酒のつまみを開発する日々を送るためだ。
神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく
霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。
だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。
どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。
でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる