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ノ102 隊長、夜倶盧(やくる)
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その答えは、仙人界でも唯一無二の特殊仙術、彼女の所有する仙器「透過元杖(とうかげんじょう)をもって発動させる「透明深化」にあった。
一度「透明深化」を発動すれば当人の身体は完全に透明化し、彼女の姿は着用する衣服を除き他者の目に映らなくなるのである。
だからこそ、彼女は大社で警備にあたる優秀な精鋭達の目を難なく潜り抜け、退魔の鎧が置かれている大部屋まで辿り着けたのだった。因みに彼女は今、一糸纏わぬ素っ裸であることも敢えて付け加えておこう。
透明人間の真如はまず兜を手に取り頭に被ると、鎧、籠手、脛当といった順に飾ってあった全てを身に纏った。
身体が透明化しているため、側から見れば鎧が宙に浮いている状態である。
真如は大部屋を出ると脱出するため一気に駆け出した。
「とおりゃんせ」という童謡の歌詞に「行きはよいよい帰りは怖い」というものがある。行く時は何事もなくうまく行くが、帰る時には恐ろしいことがおきそうで行くのがためらわれるなどという意味らしいが、それが彼女にとって現実となり窮地に追い込まれることとなる。
「あれは、退魔の鎧か?」
大社の外へ出るや否や、矢倉の屋根に座り周辺を監視していた精鋭の一人に見つかってしまった。
退魔の鎧が一人でに動いていれば、仙王専属の仙人でなくとも直ぐに気づかれてしまうのは必然であろう。
一人でに動くおかしな鎧を最初に発見した男の名は露星夜倶盧(ろせいやくる)。彼もまた、仙人界で生を受けた純粋純血の仙人であり、若くして(若いといっても百歳を超えている)仙王警備隊隊長を任される仙人界きっての実力を誇るホープであった。
「得体が知れねぇ...まずは隊員達に知らせておくか」
夜倶盧は冷静に現状を判断し、鎧を直ぐには追わず自己専用の仙器「蒼然弓(そうぜんきゅう)」を上空に向けて構え矢を解き放つ。
「バシュン!」
「パーン!!」
空を斬って飛んだ矢は間を置かずして軽い破裂音を立て、打ち上げ花火のように綺麗な火の粉を撒き散らした。
「これで良し。退魔の鎧を追うとしますかっ!」
夜倶盧は言葉尻を言い終えると同時に矢倉の屋根上から素早く跳躍する!
「ビュッ!!」
目にも止まらぬ速さで空を移動し!
「ズッザァン!」
あっという間に退魔の鎧の進行方向を塞ぐ地点に着地した!
なんと彼は、五十メートルはあったであろう退魔の鎧との距離を、たった一度の跳躍で零にしてしまったのである。
「ちょいと訊くがぁ、誰だお前?」
夜倶盧は怪しい退魔の鎧に躊躇せず尋ねたのだった。
一度「透明深化」を発動すれば当人の身体は完全に透明化し、彼女の姿は着用する衣服を除き他者の目に映らなくなるのである。
だからこそ、彼女は大社で警備にあたる優秀な精鋭達の目を難なく潜り抜け、退魔の鎧が置かれている大部屋まで辿り着けたのだった。因みに彼女は今、一糸纏わぬ素っ裸であることも敢えて付け加えておこう。
透明人間の真如はまず兜を手に取り頭に被ると、鎧、籠手、脛当といった順に飾ってあった全てを身に纏った。
身体が透明化しているため、側から見れば鎧が宙に浮いている状態である。
真如は大部屋を出ると脱出するため一気に駆け出した。
「とおりゃんせ」という童謡の歌詞に「行きはよいよい帰りは怖い」というものがある。行く時は何事もなくうまく行くが、帰る時には恐ろしいことがおきそうで行くのがためらわれるなどという意味らしいが、それが彼女にとって現実となり窮地に追い込まれることとなる。
「あれは、退魔の鎧か?」
大社の外へ出るや否や、矢倉の屋根に座り周辺を監視していた精鋭の一人に見つかってしまった。
退魔の鎧が一人でに動いていれば、仙王専属の仙人でなくとも直ぐに気づかれてしまうのは必然であろう。
一人でに動くおかしな鎧を最初に発見した男の名は露星夜倶盧(ろせいやくる)。彼もまた、仙人界で生を受けた純粋純血の仙人であり、若くして(若いといっても百歳を超えている)仙王警備隊隊長を任される仙人界きっての実力を誇るホープであった。
「得体が知れねぇ...まずは隊員達に知らせておくか」
夜倶盧は冷静に現状を判断し、鎧を直ぐには追わず自己専用の仙器「蒼然弓(そうぜんきゅう)」を上空に向けて構え矢を解き放つ。
「バシュン!」
「パーン!!」
空を斬って飛んだ矢は間を置かずして軽い破裂音を立て、打ち上げ花火のように綺麗な火の粉を撒き散らした。
「これで良し。退魔の鎧を追うとしますかっ!」
夜倶盧は言葉尻を言い終えると同時に矢倉の屋根上から素早く跳躍する!
「ビュッ!!」
目にも止まらぬ速さで空を移動し!
「ズッザァン!」
あっという間に退魔の鎧の進行方向を塞ぐ地点に着地した!
なんと彼は、五十メートルはあったであろう退魔の鎧との距離を、たった一度の跳躍で零にしてしまったのである。
「ちょいと訊くがぁ、誰だお前?」
夜倶盧は怪しい退魔の鎧に躊躇せず尋ねたのだった。
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