25 / 113
ノ25 串団子
しおりを挟む
「うぉぉぉぉーーーっ!!!」
「なっ!?」
仙花は抜き去ったお銀をあっという間に抜き去り突き放してしまった。
一ヵ月ほど前、橋の上で芥藻屑の悪党に襲われる夫婦を助けようと、疾風の如く駆ける仙花を追いかける場面があり、脚力に自信のあるくノ一のお銀が追いかけるも彼女には届かなかった。
今回もまたその時と同じく仙花の脚力に屈服することとなったお銀であったが、特段悔しがる様子も無く、己の主の脚力に改めて感嘆し、嬉しくすら思って頬笑みを浮かべた次第である。
結局のところ、峠の団子屋に一番乗りしたのはお銀を凌ぐほどの脚力を見せつけた仙花であった。
次点はお銀、蓮左衛門と続き、次は当然九兵衛かと思いきや、眠りながらもひょうひょうと坂を上った雪舟が先に辿り着く...
「ヒーヒー」苦しそうにしてようやく坂を上りきった体力不足の九兵衛。いやいや、彼を貶めるような言葉は相応しく無いのかも知れない。そもそも化け物じみた体力を持つ他の四人と比べること自体が間違いなのだから...
汗だくとなった彼が小さな木造の団子屋に目をむけると、紅く華やかな布の掛けられた長椅子に座り、串団子を美味しそうに頬張る仙花、お銀、蓮左衛門の姿があった。
眠っていた雪舟丸はというと、三人から少しは離れた場所で、団子の匂いを嗅ぎつけちゃっかりと目を覚まし、お茶の入った湯飲みを片手にやはり美味そうに食べていた。
じ~っと眺めていた九兵衛が「ゴクリ」と唾を呑み込み嘆願する。
「あ、あっしもお団子!お団子を食べたいでやんすよ~」
「ハッハッハッ、心配するでない九兵衛。ちゃ~んと其方の分まで頼んでおるわ」
仙花が笑って知らせると、紺色の生地に白い文字で「お団子」と書かれたのれんを捲って、店の中から笑顔の可愛い若娘が団子と湯呑みの乗ったお盆を抱えて運んで来た。
「お待たせ致しました~。こちらがご注意の串団子にございます~」
昔から庶民の甘味として愛されて来た「お団子」は、鎌倉や室町時代から存在し、特に「串団子」ときたら江戸時代に一大旋風を巻き起こすほど流行したらしい。
腹を空かせた九兵衛の目の前は、皿に乗った「みたらし」、「こし餡」、「きな粉」、「醤油」、「よもぎ」といったいった五種類の串団子が各一本ずつ並べられていた。
それを見た九兵衛がまたもや「ゴクリ」と唾を呑み込む。
「うひゃ~!これは堪らないでやんすよ~!しかも久しく見ていない可愛い娘さんが運んで来てくれるなんて最高でやんす!」
「なっ!?」
仙花は抜き去ったお銀をあっという間に抜き去り突き放してしまった。
一ヵ月ほど前、橋の上で芥藻屑の悪党に襲われる夫婦を助けようと、疾風の如く駆ける仙花を追いかける場面があり、脚力に自信のあるくノ一のお銀が追いかけるも彼女には届かなかった。
今回もまたその時と同じく仙花の脚力に屈服することとなったお銀であったが、特段悔しがる様子も無く、己の主の脚力に改めて感嘆し、嬉しくすら思って頬笑みを浮かべた次第である。
結局のところ、峠の団子屋に一番乗りしたのはお銀を凌ぐほどの脚力を見せつけた仙花であった。
次点はお銀、蓮左衛門と続き、次は当然九兵衛かと思いきや、眠りながらもひょうひょうと坂を上った雪舟が先に辿り着く...
「ヒーヒー」苦しそうにしてようやく坂を上りきった体力不足の九兵衛。いやいや、彼を貶めるような言葉は相応しく無いのかも知れない。そもそも化け物じみた体力を持つ他の四人と比べること自体が間違いなのだから...
汗だくとなった彼が小さな木造の団子屋に目をむけると、紅く華やかな布の掛けられた長椅子に座り、串団子を美味しそうに頬張る仙花、お銀、蓮左衛門の姿があった。
眠っていた雪舟丸はというと、三人から少しは離れた場所で、団子の匂いを嗅ぎつけちゃっかりと目を覚まし、お茶の入った湯飲みを片手にやはり美味そうに食べていた。
じ~っと眺めていた九兵衛が「ゴクリ」と唾を呑み込み嘆願する。
「あ、あっしもお団子!お団子を食べたいでやんすよ~」
「ハッハッハッ、心配するでない九兵衛。ちゃ~んと其方の分まで頼んでおるわ」
仙花が笑って知らせると、紺色の生地に白い文字で「お団子」と書かれたのれんを捲って、店の中から笑顔の可愛い若娘が団子と湯呑みの乗ったお盆を抱えて運んで来た。
「お待たせ致しました~。こちらがご注意の串団子にございます~」
昔から庶民の甘味として愛されて来た「お団子」は、鎌倉や室町時代から存在し、特に「串団子」ときたら江戸時代に一大旋風を巻き起こすほど流行したらしい。
腹を空かせた九兵衛の目の前は、皿に乗った「みたらし」、「こし餡」、「きな粉」、「醤油」、「よもぎ」といったいった五種類の串団子が各一本ずつ並べられていた。
それを見た九兵衛がまたもや「ゴクリ」と唾を呑み込む。
「うひゃ~!これは堪らないでやんすよ~!しかも久しく見ていない可愛い娘さんが運んで来てくれるなんて最高でやんす!」
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
【書籍化進行中、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化進行中です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる