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ノ18 怪異の闇雲(やみくも)
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「わたくしの家族に起こった話しは此処までにございます......手前勝手ではありますけれど、あなた方を只者では無いと見込んでお願いしたいことがございます」
お雛が申し訳なさそうに言うと、蓮左衛門は袖で涙を拭い、九兵衛が手拭いで顔を拭いて彼女に目を向けた。
「なっ、何でも言ってくだせぇ。あっしはお雛さんのお役に立ちたいでやんす」
「もちろん拙者も、我らで叶えなれる願いなら遠慮無く頼んでくれ」
仙花一味の中でもこの二人はとりわけ情に厚い。一考もせず即座に彼女の力になると宣言した。
そんな二人の言葉を受けたお雛が丁寧にお辞儀する。
「...こんな、素性もよく分からぬ女のために...誠に嬉しゅうございます...」
「気にするな、でござるよ。それよりも願いとは一体何でござるか?」
蓮左衛門が訊き、隣の九兵衛が「うんうん」と相槌を打つ。
「夫と娘の仇...怪異の『闇雲(やみくも)』を討って頂きたいのでございます...今夜の突如として起こり、短いあいだで過ぎ去った嵐は『闇雲』の現れる前兆...怪異の一種である幽霊となったわたくしには分かるのです。奴がこの付近に現れたということが...」
お雛は大切な家族の命を奪った物体への遺恨を残しこの世を去った。
結果、怨念とも云えるその遺恨が彼女を怪異たる幽霊にならしめ、家族を襲った謎の物体の正体を知ることとなったのである。
蓮左衛門達が己の契約した怪異以外でこれまでに遭遇したことがあるのは、鬼武者の韋駄地源蔵が契約した「鬼」を始めとして、いつか語らねばならないが、雪舟丸の所持する退魔の剣「天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)」を手に入れた際の「鞍馬天狗(くらまてんぐ)」、そして今日初めて具現化するのを目の当たりにした「妖狐」の弧浪まで、全て合わせると計三種となる。
おっと、幽霊なる怪異となったお雛の存在を忘れてはならない。これで計四種。
仙花と共に旅をする蓮左衛門と九兵衛にとって、幸か不幸か怪異という存在はもはや珍しいものではなくなりつつあった。
「怪異の一体や二体、拙者らでちょちょいと片付けてやるでござるよ。なぁ九兵衛!」
「ドン!」
「げふっ!?」
強気な発言をする馬鹿力の蓮左衛門に背中を叩かれた九兵衛の息が一瞬止まる。
「けほっ、けほっ...ま、任せてくれでやんす」
いつもなら「怪異」と聞けば怖気付く弱気な九兵衛であったが、今回はどうやらやる気に満ち溢れているらしい...
「お雛さん、その『闇雲』とやらは今どこら辺にいるでござるか?...ん!?」
と此処で質問した蓮左衛門が、お雛の目線が自分達の方へ向いていないことに気づく。
お雛が申し訳なさそうに言うと、蓮左衛門は袖で涙を拭い、九兵衛が手拭いで顔を拭いて彼女に目を向けた。
「なっ、何でも言ってくだせぇ。あっしはお雛さんのお役に立ちたいでやんす」
「もちろん拙者も、我らで叶えなれる願いなら遠慮無く頼んでくれ」
仙花一味の中でもこの二人はとりわけ情に厚い。一考もせず即座に彼女の力になると宣言した。
そんな二人の言葉を受けたお雛が丁寧にお辞儀する。
「...こんな、素性もよく分からぬ女のために...誠に嬉しゅうございます...」
「気にするな、でござるよ。それよりも願いとは一体何でござるか?」
蓮左衛門が訊き、隣の九兵衛が「うんうん」と相槌を打つ。
「夫と娘の仇...怪異の『闇雲(やみくも)』を討って頂きたいのでございます...今夜の突如として起こり、短いあいだで過ぎ去った嵐は『闇雲』の現れる前兆...怪異の一種である幽霊となったわたくしには分かるのです。奴がこの付近に現れたということが...」
お雛は大切な家族の命を奪った物体への遺恨を残しこの世を去った。
結果、怨念とも云えるその遺恨が彼女を怪異たる幽霊にならしめ、家族を襲った謎の物体の正体を知ることとなったのである。
蓮左衛門達が己の契約した怪異以外でこれまでに遭遇したことがあるのは、鬼武者の韋駄地源蔵が契約した「鬼」を始めとして、いつか語らねばならないが、雪舟丸の所持する退魔の剣「天叢雲剣(あめのむらくものつるぎ)」を手に入れた際の「鞍馬天狗(くらまてんぐ)」、そして今日初めて具現化するのを目の当たりにした「妖狐」の弧浪まで、全て合わせると計三種となる。
おっと、幽霊なる怪異となったお雛の存在を忘れてはならない。これで計四種。
仙花と共に旅をする蓮左衛門と九兵衛にとって、幸か不幸か怪異という存在はもはや珍しいものではなくなりつつあった。
「怪異の一体や二体、拙者らでちょちょいと片付けてやるでござるよ。なぁ九兵衛!」
「ドン!」
「げふっ!?」
強気な発言をする馬鹿力の蓮左衛門に背中を叩かれた九兵衛の息が一瞬止まる。
「けほっ、けほっ...ま、任せてくれでやんす」
いつもなら「怪異」と聞けば怖気付く弱気な九兵衛であったが、今回はどうやらやる気に満ち溢れているらしい...
「お雛さん、その『闇雲』とやらは今どこら辺にいるでござるか?...ん!?」
と此処で質問した蓮左衛門が、お雛の目線が自分達の方へ向いていないことに気づく。
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