7 / 113
ノ7 妖狐の弧浪(ようこのころう)
しおりを挟む
「いえ、力はみなぎっているくらいでございます。ただ、一つ問題がございまして...先の雲峡も厄介者でしたけれど、手前が契約を交わした妖狐もまた厄介な者ゆえ、時としてすんなりと事が運ばぬこともございます。少しばかりお待ちくださいませ...」
微笑を浮かべているお銀の胸の奥底にはえもいわれぬ怒りの感情があった。
お銀が己の内に潜む妖狐の弧浪に向けて呟く。
「弧浪...言うことが聞けぬのであれば、当分のあいだ封印術で強制的に妖力を抜き取るが、それで良いのだな」
するとお銀の身体が光に包まれ、突如として目の前に狐の耳をした若い美青年が姿を現した。
妖狐は怪異の一種ではあったけれど、姿かたちは他の怪異と比べオドロオドロしさは見受けられず、狐の耳と腰の下あたりから生えた尻尾以外は人とさほど変わりない。
美しい顔をした妖狐の弧浪が口に手を当て欠伸する。
「はわわぁ...やだなぁお銀さん。そんなに怒ると美容に悪いよぉ。若さを保ちたければ顔なんかに皺を寄せちゃあダメダメ」
「っさいねぇ!あたしは美容に気を使うほど歳をとっておらぬ!戯言はやめて早く妖力を寄越せ!」
今度は怒りの感情剥き出しの表情で怒り狂うお銀。無論、眉間の皺は深々と入りおでこには血管の筋が浮かび上がった。
「はいはいお待ちを~」
すんなりと事が運ばないのは一目瞭然ではあったが、弧浪はぐだぐだ言いながらも言うことを聞く素振りを見せた。どうやらこの二人の力関係はお銀に軍配が上がっているようである。
弧浪が地面に座禅を組んで座り、右の掌を面倒くさそうにお銀へ向ける。
「はい。愛を注ぎ込んじゃいますよ~」
「余計なことは言わんで良い!」
九字法を使い集中力を高めたというのにイライラの収まらぬまま忍術の印を組むお銀。
そこへ弧浪の禍々しい妖力が注入される。
「土遁の術!土砂浚渫(どしゃしゅんせつ)!」
「ドッゴォォォォォォォン!!!」
忍術を発動させるや否や凄まじい爆音が上がり、地割れの奥底から火山が噴火したかのように土砂が噴き出す!!
「おおおっ!?」
仙花を始め蓮左衛門、九兵衛の三人が呆気に取られた表情で見護る。
三人が驚くのも無理わない。今まで何度となく目にして来たお銀の忍術。だが此度の忍術はかつてのものとは一味も二味も違い、これほどまでの威力は想像の域を遥かに超えていた。
「ドドドドドドドドドドドド!!!」
豪快に噴き出した土砂が雲峡の破壊した道の大きな地割れをあっという間に埋めていく。
微笑を浮かべているお銀の胸の奥底にはえもいわれぬ怒りの感情があった。
お銀が己の内に潜む妖狐の弧浪に向けて呟く。
「弧浪...言うことが聞けぬのであれば、当分のあいだ封印術で強制的に妖力を抜き取るが、それで良いのだな」
するとお銀の身体が光に包まれ、突如として目の前に狐の耳をした若い美青年が姿を現した。
妖狐は怪異の一種ではあったけれど、姿かたちは他の怪異と比べオドロオドロしさは見受けられず、狐の耳と腰の下あたりから生えた尻尾以外は人とさほど変わりない。
美しい顔をした妖狐の弧浪が口に手を当て欠伸する。
「はわわぁ...やだなぁお銀さん。そんなに怒ると美容に悪いよぉ。若さを保ちたければ顔なんかに皺を寄せちゃあダメダメ」
「っさいねぇ!あたしは美容に気を使うほど歳をとっておらぬ!戯言はやめて早く妖力を寄越せ!」
今度は怒りの感情剥き出しの表情で怒り狂うお銀。無論、眉間の皺は深々と入りおでこには血管の筋が浮かび上がった。
「はいはいお待ちを~」
すんなりと事が運ばないのは一目瞭然ではあったが、弧浪はぐだぐだ言いながらも言うことを聞く素振りを見せた。どうやらこの二人の力関係はお銀に軍配が上がっているようである。
弧浪が地面に座禅を組んで座り、右の掌を面倒くさそうにお銀へ向ける。
「はい。愛を注ぎ込んじゃいますよ~」
「余計なことは言わんで良い!」
九字法を使い集中力を高めたというのにイライラの収まらぬまま忍術の印を組むお銀。
そこへ弧浪の禍々しい妖力が注入される。
「土遁の術!土砂浚渫(どしゃしゅんせつ)!」
「ドッゴォォォォォォォン!!!」
忍術を発動させるや否や凄まじい爆音が上がり、地割れの奥底から火山が噴火したかのように土砂が噴き出す!!
「おおおっ!?」
仙花を始め蓮左衛門、九兵衛の三人が呆気に取られた表情で見護る。
三人が驚くのも無理わない。今まで何度となく目にして来たお銀の忍術。だが此度の忍術はかつてのものとは一味も二味も違い、これほどまでの威力は想像の域を遥かに超えていた。
「ドドドドドドドドドドドド!!!」
豪快に噴き出した土砂が雲峡の破壊した道の大きな地割れをあっという間に埋めていく。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説


サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる