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ノ4 別格仙女
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一応彼の名誉のために断っておくが、彼の反応は決して大袈裟では無い。
海岸沿いの道幅は広くは無いし狭くも無く至って普通の道幅なのだけれど、一本の見通しの良いその道は、蓮左衛門が言った通り大地震でもあったかのように完全に分断されていた。
つまり仙女である雲峡のナンチャラという仙術の所為で、下を除くと海の水が見えるまでごっそりと土地を破壊し削っていたのである。
出来た亀裂の幅たるや、運動能力の極めて高い仙花やくノ一のお銀ならまだしも、極々一般的な体力しか持ち合わせていない九兵衛などは到底飛んで渡ることなど出来そうにないほどであった。
仙人の力、恐るべし!と云ったところであろうか...
流石の仙花も青ざめ冷や汗を掻く。
「 即蘭眉雲峡とやら、お主、仙女と云えどもちと派手にやり過ぎではないのか?」
雲峡が悪びれる様子も無く、何事も無かったかのようにすました涼しい顔で応える。
「我を怒らせた其方らが悪いのだ。我が「仙葉(せんよう)」に乗って空中浮遊を楽しんでいた折、たまたま仙女の資質を持った其方が目に入り、親切心で教授してやろうとわざわざ舞い降りたというのに...それを揃いも揃って悪者扱いしてくれちゃったからねぇ。そりゃ仙女と云えども脅しの一つでもやってみたくなるのが当然ってもんでしょ♪」
話した内容とは裏腹に言葉尻で満面の笑みを作る雲峡。
なるほど、そう云った経緯で現状の結果になってしまったか、などとすんなりいかないのが真っ直ぐな分だけ面倒な仙花である。
「百歩譲って儂らも悪かったとは思うがが、いくらなんでもこれはやり過ぎであろう。このままでは人々が立ち往生してしまうじゃろ。仙女ならば仙術でチョチョイと道を元に戻すべきじゃないか?」
全く持って正論である。
このままの状態を放置しておけば旅人はもちろんのこと、生活する上で道を使っている者達が困り果てるは必然。
「はん!分かってないな~。命を奪われ無かっただけ有り難く思って欲しいんですけど!其方らに情けをかけてやったっていうのにもう!」
雲峡の返した言葉に仙花が溜息を一つつき呆れ顔をしてボソッと呟く。
「話が通じんのう、下衆阿保仙女めには...」
「カッチーーーン!其方、天上の仙人界に存する数多の仙人の中でも三本の指に数えられる別格仙女の我を下衆呼ばわりしおったな!しかもしかもご丁寧に「阿呆」まで付けてくれちゃって~!許さん許さんぞ~っ!!」
「あっ、もうその感じは結構じゃ。ちと黙って置いてくれるかのう」
背後に炎が見えるほど激情した雲峡を冷ややかにあしらう仙花であった。
海岸沿いの道幅は広くは無いし狭くも無く至って普通の道幅なのだけれど、一本の見通しの良いその道は、蓮左衛門が言った通り大地震でもあったかのように完全に分断されていた。
つまり仙女である雲峡のナンチャラという仙術の所為で、下を除くと海の水が見えるまでごっそりと土地を破壊し削っていたのである。
出来た亀裂の幅たるや、運動能力の極めて高い仙花やくノ一のお銀ならまだしも、極々一般的な体力しか持ち合わせていない九兵衛などは到底飛んで渡ることなど出来そうにないほどであった。
仙人の力、恐るべし!と云ったところであろうか...
流石の仙花も青ざめ冷や汗を掻く。
「 即蘭眉雲峡とやら、お主、仙女と云えどもちと派手にやり過ぎではないのか?」
雲峡が悪びれる様子も無く、何事も無かったかのようにすました涼しい顔で応える。
「我を怒らせた其方らが悪いのだ。我が「仙葉(せんよう)」に乗って空中浮遊を楽しんでいた折、たまたま仙女の資質を持った其方が目に入り、親切心で教授してやろうとわざわざ舞い降りたというのに...それを揃いも揃って悪者扱いしてくれちゃったからねぇ。そりゃ仙女と云えども脅しの一つでもやってみたくなるのが当然ってもんでしょ♪」
話した内容とは裏腹に言葉尻で満面の笑みを作る雲峡。
なるほど、そう云った経緯で現状の結果になってしまったか、などとすんなりいかないのが真っ直ぐな分だけ面倒な仙花である。
「百歩譲って儂らも悪かったとは思うがが、いくらなんでもこれはやり過ぎであろう。このままでは人々が立ち往生してしまうじゃろ。仙女ならば仙術でチョチョイと道を元に戻すべきじゃないか?」
全く持って正論である。
このままの状態を放置しておけば旅人はもちろんのこと、生活する上で道を使っている者達が困り果てるは必然。
「はん!分かってないな~。命を奪われ無かっただけ有り難く思って欲しいんですけど!其方らに情けをかけてやったっていうのにもう!」
雲峡の返した言葉に仙花が溜息を一つつき呆れ顔をしてボソッと呟く。
「話が通じんのう、下衆阿保仙女めには...」
「カッチーーーン!其方、天上の仙人界に存する数多の仙人の中でも三本の指に数えられる別格仙女の我を下衆呼ばわりしおったな!しかもしかもご丁寧に「阿呆」まで付けてくれちゃって~!許さん許さんぞ~っ!!」
「あっ、もうその感じは結構じゃ。ちと黙って置いてくれるかのう」
背後に炎が見えるほど激情した雲峡を冷ややかにあしらう仙花であった。
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