4 / 113
ノ4 別格仙女
しおりを挟む
一応彼の名誉のために断っておくが、彼の反応は決して大袈裟では無い。
海岸沿いの道幅は広くは無いし狭くも無く至って普通の道幅なのだけれど、一本の見通しの良いその道は、蓮左衛門が言った通り大地震でもあったかのように完全に分断されていた。
つまり仙女である雲峡のナンチャラという仙術の所為で、下を除くと海の水が見えるまでごっそりと土地を破壊し削っていたのである。
出来た亀裂の幅たるや、運動能力の極めて高い仙花やくノ一のお銀ならまだしも、極々一般的な体力しか持ち合わせていない九兵衛などは到底飛んで渡ることなど出来そうにないほどであった。
仙人の力、恐るべし!と云ったところであろうか...
流石の仙花も青ざめ冷や汗を掻く。
「 即蘭眉雲峡とやら、お主、仙女と云えどもちと派手にやり過ぎではないのか?」
雲峡が悪びれる様子も無く、何事も無かったかのようにすました涼しい顔で応える。
「我を怒らせた其方らが悪いのだ。我が「仙葉(せんよう)」に乗って空中浮遊を楽しんでいた折、たまたま仙女の資質を持った其方が目に入り、親切心で教授してやろうとわざわざ舞い降りたというのに...それを揃いも揃って悪者扱いしてくれちゃったからねぇ。そりゃ仙女と云えども脅しの一つでもやってみたくなるのが当然ってもんでしょ♪」
話した内容とは裏腹に言葉尻で満面の笑みを作る雲峡。
なるほど、そう云った経緯で現状の結果になってしまったか、などとすんなりいかないのが真っ直ぐな分だけ面倒な仙花である。
「百歩譲って儂らも悪かったとは思うがが、いくらなんでもこれはやり過ぎであろう。このままでは人々が立ち往生してしまうじゃろ。仙女ならば仙術でチョチョイと道を元に戻すべきじゃないか?」
全く持って正論である。
このままの状態を放置しておけば旅人はもちろんのこと、生活する上で道を使っている者達が困り果てるは必然。
「はん!分かってないな~。命を奪われ無かっただけ有り難く思って欲しいんですけど!其方らに情けをかけてやったっていうのにもう!」
雲峡の返した言葉に仙花が溜息を一つつき呆れ顔をしてボソッと呟く。
「話が通じんのう、下衆阿保仙女めには...」
「カッチーーーン!其方、天上の仙人界に存する数多の仙人の中でも三本の指に数えられる別格仙女の我を下衆呼ばわりしおったな!しかもしかもご丁寧に「阿呆」まで付けてくれちゃって~!許さん許さんぞ~っ!!」
「あっ、もうその感じは結構じゃ。ちと黙って置いてくれるかのう」
背後に炎が見えるほど激情した雲峡を冷ややかにあしらう仙花であった。
海岸沿いの道幅は広くは無いし狭くも無く至って普通の道幅なのだけれど、一本の見通しの良いその道は、蓮左衛門が言った通り大地震でもあったかのように完全に分断されていた。
つまり仙女である雲峡のナンチャラという仙術の所為で、下を除くと海の水が見えるまでごっそりと土地を破壊し削っていたのである。
出来た亀裂の幅たるや、運動能力の極めて高い仙花やくノ一のお銀ならまだしも、極々一般的な体力しか持ち合わせていない九兵衛などは到底飛んで渡ることなど出来そうにないほどであった。
仙人の力、恐るべし!と云ったところであろうか...
流石の仙花も青ざめ冷や汗を掻く。
「 即蘭眉雲峡とやら、お主、仙女と云えどもちと派手にやり過ぎではないのか?」
雲峡が悪びれる様子も無く、何事も無かったかのようにすました涼しい顔で応える。
「我を怒らせた其方らが悪いのだ。我が「仙葉(せんよう)」に乗って空中浮遊を楽しんでいた折、たまたま仙女の資質を持った其方が目に入り、親切心で教授してやろうとわざわざ舞い降りたというのに...それを揃いも揃って悪者扱いしてくれちゃったからねぇ。そりゃ仙女と云えども脅しの一つでもやってみたくなるのが当然ってもんでしょ♪」
話した内容とは裏腹に言葉尻で満面の笑みを作る雲峡。
なるほど、そう云った経緯で現状の結果になってしまったか、などとすんなりいかないのが真っ直ぐな分だけ面倒な仙花である。
「百歩譲って儂らも悪かったとは思うがが、いくらなんでもこれはやり過ぎであろう。このままでは人々が立ち往生してしまうじゃろ。仙女ならば仙術でチョチョイと道を元に戻すべきじゃないか?」
全く持って正論である。
このままの状態を放置しておけば旅人はもちろんのこと、生活する上で道を使っている者達が困り果てるは必然。
「はん!分かってないな~。命を奪われ無かっただけ有り難く思って欲しいんですけど!其方らに情けをかけてやったっていうのにもう!」
雲峡の返した言葉に仙花が溜息を一つつき呆れ顔をしてボソッと呟く。
「話が通じんのう、下衆阿保仙女めには...」
「カッチーーーン!其方、天上の仙人界に存する数多の仙人の中でも三本の指に数えられる別格仙女の我を下衆呼ばわりしおったな!しかもしかもご丁寧に「阿呆」まで付けてくれちゃって~!許さん許さんぞ~っ!!」
「あっ、もうその感じは結構じゃ。ちと黙って置いてくれるかのう」
背後に炎が見えるほど激情した雲峡を冷ややかにあしらう仙花であった。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
愚者による愚行と愚策の結果……《完結》
アーエル
ファンタジー
その愚者は無知だった。
それが転落の始まり……ではなかった。
本当の愚者は誰だったのか。
誰を相手にしていたのか。
後悔は……してもし足りない。
全13話
☆他社でも公開します
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
地獄の業火に焚べるのは……
緑谷めい
恋愛
伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。
やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。
※ 全5話完結予定
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
だいたい全部、聖女のせい。
荒瀬ヤヒロ
恋愛
「どうして、こんなことに……」
異世界よりやってきた聖女と出会い、王太子は変わってしまった。
いや、王太子の側近の令息達まで、変わってしまったのだ。
すでに彼らには、婚約者である令嬢達の声も届かない。
これはとある王国に降り立った聖女との出会いで見る影もなく変わってしまった男達に苦しめられる少女達の、嘆きの物語。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
日本列島、時震により転移す!
黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる