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ノ2 謎の女

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「なぬっ!?」

 女の物言いと内容に仙花は驚かずには居られなかった。
 何故なら人の名に「ちゃん」付けするのを聞くのは初めてであったし、「仙人予備軍」という言葉を使うからには、少なくとも仙花の情報を得ていなければならないからである。

 そしてさらに驚くべきは、雪舟丸がのほほんと居眠りしていたとはいえ、彼の「神速の剣」、しかも居合による初撃を見事に防御した反射神経。加えて、間合いを取るために退いた時の身のこなし方は、女が只者ではないという証となるには十分であった。

「きゃははは♪驚いてる驚いてる♪楽しいなぁ~♪」

 女の笑い声が馬鹿にするように聴こえた仙花がムッとする。

「良く笑う女だな。何がそんなに楽しいのじゃ?ことと場合によっては斬って捨てしまうぞ」

 訊かれた女は白銀の長髪をしてはいるが顔は若い。顔だけに着目すればお銀より若く見えるほどであった。
 身体に関して云えば、背丈は仙花よりもちょっぴり高い程度で小柄だったけれど、華奢な割に出るところは出ており、女としての色気も持ち合わせていた。

「きゃははは♪可愛いなぁ君は。まぁまぁそんな怒らずに我の話しを聴いて頂戴なぁ♪悪いようにはしないからさ~♪」

「言葉尻の『♪』が気に食わぬが...良いだろう話しを聞いてやる。ほれ、待ってやる話すが良かろう」

 女が仙花の上から目線の話し方に頬を膨らませ「プンプン!」と怒るような素振りを露わにする。

「ったくもう。いくら知らないとはいえ、いずれは貴方の大先輩になるんだからねぇ。少しは敬意を払って欲しいものだわぁ」

「ハハハ、「大先輩」とは笑わせてくれる。どこからともなく現れた名も知らぬ其方に敬意を払うなど笑止千万じゃ。儂の態度が気に触るならサクッと正体を明かせば良いではないか」

 無礼な言い方は変えず、概ねまっとうな意見を言う仙花を薄目でジッと避難する様に見つめる女。

「むむむむむむ、残念だなぁ、う~~ん、初めて仙人候補を見つけたのだから格好良く登場してビシっと決めたかのにな~.................って!!全部お前の所為だかんなっ!!この寝坊助チョンマゲ侍!!!!」

 女が突然恫喝するかの如く激しい口調に変わり、時代にそぐわぬが光線でも出るのか!?と思わせるほどの勢いで雪舟丸を指さした!!

 突然のとばっちりに表情一つ動かさずに雪舟丸がボソッと応える。

「...チョンマゲではない」

「ふん!なら寝坊助ハゲ侍だ!」

「ハゲてもおらぬ」

「なら...」

「待てっ!!」

 不毛なやり取りに我慢ならなくなったお銀が口を挟む!
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