116 / 168
第106話 キノコ
しおりを挟む
「助手よ、たったの一日で乙女の恥じらいという希少なものを惜しげもなく捨て去ってしまったようだな」
僕は決して、土鍋の牛肉がごっそり無くなっていることに怒っているのではない。いや、少しくらいは怒っているのかも知れないけれど、嫌みを言わなくては気持ちが収まりそうになかったのである。あ、やっぱり僕は彼女に対してかなりの怒りを覚えているようだ...
「ほべ~ん、ほばはばぶびふびへひゃばばっははばぁ」
お前はどこの世界の言葉で喋っているのだ。
というか。
「ったく、口に食べ物を詰め込んで喋らんでいい。何を言っているのかさっぱりわからん。いいか、僕が今から鍋に投入する肉に手を出すんじゃないぞ」
未桜はブンブン頭を立てに降り無言で了承し、僕は皿に乗った追加の牛肉を思い切って半分ほど一気に箸でつまみ、スープが飛ばないよう気を付け厳かに鍋へと入れ込んだ。
すき焼きの主役は牛肉をおいて他には存在しないのだけれど、野菜や豆腐、糸こんにゃくなどの脇役たちもそれぞれ個性を光らせているわけで...
「最初の一口は...うむ、これに決まりだな」
独り言を呟きながら選んだ最初の一品は、すき焼きには欠かせないキノコの椎茸であった。
たまに「そこが嫌いだ」という人も居るのだが、僕は椎茸の食感と、噛めば旨味が滲みの出る瞬間がたまらなく好きなのである。
僕は決して、土鍋の牛肉がごっそり無くなっていることに怒っているのではない。いや、少しくらいは怒っているのかも知れないけれど、嫌みを言わなくては気持ちが収まりそうになかったのである。あ、やっぱり僕は彼女に対してかなりの怒りを覚えているようだ...
「ほべ~ん、ほばはばぶびふびへひゃばばっははばぁ」
お前はどこの世界の言葉で喋っているのだ。
というか。
「ったく、口に食べ物を詰め込んで喋らんでいい。何を言っているのかさっぱりわからん。いいか、僕が今から鍋に投入する肉に手を出すんじゃないぞ」
未桜はブンブン頭を立てに降り無言で了承し、僕は皿に乗った追加の牛肉を思い切って半分ほど一気に箸でつまみ、スープが飛ばないよう気を付け厳かに鍋へと入れ込んだ。
すき焼きの主役は牛肉をおいて他には存在しないのだけれど、野菜や豆腐、糸こんにゃくなどの脇役たちもそれぞれ個性を光らせているわけで...
「最初の一口は...うむ、これに決まりだな」
独り言を呟きながら選んだ最初の一品は、すき焼きには欠かせないキノコの椎茸であった。
たまに「そこが嫌いだ」という人も居るのだが、僕は椎茸の食感と、噛めば旨味が滲みの出る瞬間がたまらなく好きなのである。
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~
蒼田
青春
人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。
目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。
しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。
事故から助けることで始まる活発少女との関係。
愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。
愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。
故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。
*本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。
エレベーターで一緒になった男の子がやけにモジモジしているので
こじらせた処女
BL
大学生になり、一人暮らしを始めた荒井は、今日も今日とて買い物を済ませて、下宿先のエレベーターを待っていた。そこに偶然居合わせた中学生になりたての男の子。やけにソワソワしていて、我慢しているというのは明白だった。
とてつもなく短いエレベーターの移動時間に繰り広げられる、激しいおしっこダンス。果たして彼は間に合うのだろうか…
【アルファポリスで稼ぐ】新社会人が1年間で会社を辞めるために収益UPを目指してみた。
紫蘭
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリスでの収益報告、どうやったら収益を上げられるのかの試行錯誤を日々アップします。
アルファポリスのインセンティブの仕組み。
ど素人がどの程度のポイントを貰えるのか。
どの新人賞に応募すればいいのか、各新人賞の詳細と傾向。
実際に新人賞に応募していくまでの過程。
春から新社会人。それなりに希望を持って入社式に向かったはずなのに、そうそうに向いてないことを自覚しました。学生時代から書くことが好きだったこともあり、いつでも仕事を辞められるように、まずはインセンティブのあるアルファポリスで小説とエッセイの投稿を始めて見ました。(そんなに甘いわけが無い)
【全年齢版】この世の果て
409号室
ミステリー
【11/24 作中に登場人物イラストを追加しました。】
その復讐は行われるーー美しくも凄惨に。
昼メロチックな読み出したら止まらないジェットコースターミステリ。
ミステリとして発表しては?とアドバイスを受け、BL18禁要素を排除し、全年齢対象とした作品。
日本有数の大企業・雪花コーポレーションの若き青年社長・雪花海杜は、元々はピアニストを目指しながらも、父の意向で後継者になった過去を持ち、自らの生き方に微かな疑問を抱き始めていた。
まだ学生時代、父の秘書としてある小さな町工場を訪れた海杜は、そこで信じられない光景を目にする。
融資を願い出る夫婦を冷酷にあしらう父の姿にショックを受けながら、そこを後にする瞬間、感じた視線。
それは、その夫婦の幼い息子の瞳だった。
彼はそれ以来、毎晩、その時、自分を刺すような目で見つめてた少年の夢でうなされていた。
そんな彼の右腕としてサポートする美貌の秘書・咲沼英葵。
実は彼こそ、海杜をはじめとした、雪花一族に復讐を誓うあの少年の成長した姿であった。
英葵は亡き両親の無念を晴らす為、雪花コーポレーションに入り込んでいた。
何も知らずに友情を深め合う、同級生の英葵の妹・美麻と海杜の妹・菊珂。
海杜に許されぬ愛を抱く、若く美しい義母・里香。
年の離れた海杜の弟で、里香の息子・夕貴。
海杜の従兄弟で、副社長を務め、形勢逆転を狙う野心的な更科恭兵。
飽和状態にまで張り詰めた彼らに突然降りかかる災厄。
それを期に、運命の歯車は静かに回り出す。
美しく、そして凄惨に。
イラスト:聖る様
10秒で読めるちょっと怖い話。
絢郷水沙
ホラー
ほんのりと不条理なギャグが香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)
殺人計画者
ふじしろふみ
ミステリー
(長編・第1作目)
馴染みの消費者金融会社の社員である小林を殺害してしまったフリーター、鷺沼。ある日、そんな彼の元に届いたのは、一丁の拳銃と包丁、そして脅迫状だった。
「一月十日、スカイタワーシティホテルに行き、警備員の柳瀬川を殺害しろ。できなければ、お前の犯した罪を公表する。もしできればお前の罪は公表せず、一億円の報酬を渡す」。罪を明るみにされる恐怖と巨額の報酬に目が眩み、彼は一月十日にホテルへと赴いた——。
フリーター、消費者金融会社の社員、ホテル警備員、キャバクラ嬢、警察官…東京都S区西街に生きる様々な人間が、一月十日を舞台に騒動を繰り広げる。果たして彼らはどのように行動し、どのように絡み合い、どのような結末を迎えるのか。
初めて書き終えた長編です。至らない点もあるかと思いますが、お読みいただければ幸いです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる