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第99話 けんもほろろ

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 きっと彼女も露天風呂に目をつけ、同じように歓喜しながら入浴していたのだろう。

「おっ、おう助手。この温泉は想定外に大当たりだったな...って、君はなんちゅうことをしているんだ!?」

 彼女は竹製隔て板(仮)の最上部からこちら側に腕を出し、当然何も身に着けていない柔肌の肩がけんもほろろに露呈している。

 いや待て、さり気なく使ってしまったけれど、「けんもほろろ」ってどんな意味だったっけ!?
 僕は自身の優秀な頭脳を高速で回転させ記憶を呼び戻す。
 
 けんもほろろ...たしか、頼みや相談などを冷淡に断るさま。とりつくしまもないさまとかいう意味だったような気がする。
 うむ、今回のケースに当てはめれば、「近からず遠すぎる」といった具合だな、うん。

 嗚呼、一瞬とはいえまた無駄なことに我が優秀な頭脳を使ってしまった。

「あっはっはっはぁ~♪一輪、そんな顔をしていやらしい想像を膨らませてるんじゃないでしょうねぇ?」

 的外れも甚だしい。
 だがそんな風に思われているというのは僕の薄っぺらなプライドが許さない。と言いたいのは山々だったけれど、彼女が言ってしまったことによって頭の中が勝手に暴走し、竹製隔て板(仮)の向こう側、いわゆる裸体の助手の姿を想像してしまったではないか!?

「若い娘が屋外で素っ裸とは呆れてしまうぞ!それにどこからか隠し撮りされてる可能性もゼロではない。さっさと中へ戻るんだ」

「ほぉ~、一応気を遣ってくれるんだぁ。じゃあもう一回身体を温めてから温泉を出るね♪」

 やや焦燥気味の僕が、訳の分からない言葉を並び立て彼女へ引っ込むよう促すと、彼女は上機嫌で竹製隔て板(仮)から降りたのだった。
 無論、若い娘以外なら素っ裸で屋外はありなのか?とういう疑問や、隠し撮りするような輩が果たして井伊影村に存在するのか?などの疑問というか失言は、僕の心の中だけで密かに反省と懺悔を捧げるので悪しからず。
 
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