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第85話 森を駆ける
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テレビのニュースで流れていたお天気お姉さんの言葉を信じ、愚かにも雨具に関しては一切の準備をいていなかった僕達は、雨に濡れて重くなった服を着たまま、事件の所為で廃墟と化してしまった燈明神社をあとにした。
「未桜!地面がぬかるんでるから足下に注意を払って走るんだぞ!」
「んもう、子供じゃないんだからそれくらい分かってるわよ。でも気をつけます~す♪」
いや、年齢的には確かに君は大人かも知れないが、こういう時にまるで子供のように決まってアクシデントを起こすのが鈴村未桜という人間だろ。
僕が懐中電灯で道を照らしつつ先頭を務め、燈明神社へ辿り着くために通った森の道を逆走して駆け抜けて行く。
上空の雨雲がほとんど消えているとはいえ、夕方の森の暗さは夜の闇と等しく変わらず、走って森を突き抜けるような行為は危険極まりなかった。
未桜を気遣って注意喚起はしたものの、当の僕自身が雨によってぬかるんでしまった森の道に足を取られ滑らないよう十分注意して走らなければなるまい。
滑ったが最後、助手の未桜に指を差されてどれだけ笑われるか計り知れないというものである。
僕は走りながら民宿の夕食時間に間に合うか否かということは特に考えず、事件のあった現場で手に入れた灰をどう活かしてやろうかなどと考えていたのだった...
「未桜!地面がぬかるんでるから足下に注意を払って走るんだぞ!」
「んもう、子供じゃないんだからそれくらい分かってるわよ。でも気をつけます~す♪」
いや、年齢的には確かに君は大人かも知れないが、こういう時にまるで子供のように決まってアクシデントを起こすのが鈴村未桜という人間だろ。
僕が懐中電灯で道を照らしつつ先頭を務め、燈明神社へ辿り着くために通った森の道を逆走して駆け抜けて行く。
上空の雨雲がほとんど消えているとはいえ、夕方の森の暗さは夜の闇と等しく変わらず、走って森を突き抜けるような行為は危険極まりなかった。
未桜を気遣って注意喚起はしたものの、当の僕自身が雨によってぬかるんでしまった森の道に足を取られ滑らないよう十分注意して走らなければなるまい。
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