93 / 168
第84話 たられば
しおりを挟む
たらればの話しをしても仕方がないのはわかっちゃいるが、生きて普通に生活していれば選択肢がとめどなく現れるわけで、僕達は奇しくもそんな世界の住人なのだから、「たられば」の話を持ち出してしまうことは人として当然の行為であろう。
故にもしも、老婆の霊が声を出すことができたなら、淀鴛さんのご両親を殺害した犯人の名前も教えてもらうことができたかも知れない。
或いは声を発っせずとも、僕達が村人達の名前を少しでも把握してさえいれば、かなり確率の低い絵空ごとだったとしても、全くもって犯人像が掴めていない現状からして、瞬時に犯人を確定できればどれほど効率が良く有益なことだろうか...まぁ、こんな展開の物語なぞおもしろみも味気も無いに決まっているのだが...
などとどうでも良いアホなことばかり考えているあいだに、事を終えて?満足したのか否かは知れないけれど、老婆の姿は僕達の前から忽然と消えてしまったのだった...
ふと気付けばさっきまで降っていた雨もいつの間にやら収まっており、空を見上げれば雨雲の間に薄らとした月が見える。
僕と未桜は意思疎通したかの如く互いに視線を合わせると、何故だか自然と笑みが溢れた。
「助手よ、事件の情報を手に入れた事だし腹も減ったしおまけに服が濡れて気持ちが悪い。そこで提案なのだが、民宿までジョギングして帰るっていうのはどうだろうか?」
「良いねぇそれ、手放しで大賛成ってものだわ!♪」
手放しと言っておきながら、さほど長くはない濡れた髪を両手絞りながら未桜は応えたのだった...
故にもしも、老婆の霊が声を出すことができたなら、淀鴛さんのご両親を殺害した犯人の名前も教えてもらうことができたかも知れない。
或いは声を発っせずとも、僕達が村人達の名前を少しでも把握してさえいれば、かなり確率の低い絵空ごとだったとしても、全くもって犯人像が掴めていない現状からして、瞬時に犯人を確定できればどれほど効率が良く有益なことだろうか...まぁ、こんな展開の物語なぞおもしろみも味気も無いに決まっているのだが...
などとどうでも良いアホなことばかり考えているあいだに、事を終えて?満足したのか否かは知れないけれど、老婆の姿は僕達の前から忽然と消えてしまったのだった...
ふと気付けばさっきまで降っていた雨もいつの間にやら収まっており、空を見上げれば雨雲の間に薄らとした月が見える。
僕と未桜は意思疎通したかの如く互いに視線を合わせると、何故だか自然と笑みが溢れた。
「助手よ、事件の情報を手に入れた事だし腹も減ったしおまけに服が濡れて気持ちが悪い。そこで提案なのだが、民宿までジョギングして帰るっていうのはどうだろうか?」
「良いねぇそれ、手放しで大賛成ってものだわ!♪」
手放しと言っておきながら、さほど長くはない濡れた髪を両手絞りながら未桜は応えたのだった...
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
10秒で読めるちょっと怖い話。
絢郷水沙
ホラー
ほんのりと不条理なギャグが香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)
NAMED QUCA ~死神が愛した娘
百舌巌
ミステリー
【第7回ホラー・ミステリー小説大賞奨励賞受賞!感謝!】
暗殺者となった少女と家族を亡くした刑事。向かい合うのは二つの孤独。
両親と行った外国で孤児になり、某国の研究機関に拾われて暗殺者として育てられたQUCA。
任務先で研究機関を裏切り、監視チームを殲滅したのちに脱走する。
国際テロリストとして指名手配された彼女が何故か日本に現れた。
一方は家族を事故で失い天涯孤独となった中年の刑事。
そんな少女と冴えないおっさんのお話です。
*カクヨムさんでも掲載してます。
ずっと女の子になりたかった 男の娘の私
ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。
ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。
そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。
【アルファポリスで稼ぐ】新社会人が1年間で会社を辞めるために収益UPを目指してみた。
紫蘭
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリスでの収益報告、どうやったら収益を上げられるのかの試行錯誤を日々アップします。
アルファポリスのインセンティブの仕組み。
ど素人がどの程度のポイントを貰えるのか。
どの新人賞に応募すればいいのか、各新人賞の詳細と傾向。
実際に新人賞に応募していくまでの過程。
春から新社会人。それなりに希望を持って入社式に向かったはずなのに、そうそうに向いてないことを自覚しました。学生時代から書くことが好きだったこともあり、いつでも仕事を辞められるように、まずはインセンティブのあるアルファポリスで小説とエッセイの投稿を始めて見ました。(そんなに甘いわけが無い)
チェイス★ザ★フェイス!
松穂
ライト文芸
他人の顔を瞬間的に記憶できる能力を持つ陽乃子。ある日、彼女が偶然ぶつかったのは派手な夜のお仕事系男女。そのまま記憶の奥にしまわれるはずだった思いがけないこの出会いは、陽乃子の人生を大きく軌道転換させることとなり――……騒がしくて自由奔放、風変わりで自分勝手な仲間たちが営む探偵事務所で、陽乃子が得るものは何か。陽乃子が捜し求める “顔” は、どこにあるのか。
※この作品は完全なフィクションです。
※他サイトにも掲載しております。
※第1部、完結いたしました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる