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第72話 真鯛
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「底についたら糸を少し巻かんといかんぞ」と、祖父が歳の所為で細くなった目を僕に向けアドバイスしてくれる。
それを僕は素直に受け入れ釣り糸を軽く巻き、続けて垂らした釣り糸をクイクイッとするように言われ、「手釣り」と呼ばれる手法の釣りが始まった。
流石に「入れ食い」で釣果がるわけもなく、最初は糸の様子に集中していた僕だったが、少しばかり心に余裕が出来て辺りを見回し大きな呼吸を一つする。
小舟は細波の影響で小刻みに揺れていたけれど、幸にして乗り物酔いに縁遠っかった僕は船酔いすることは無かった。
乗り物と云えば、今朝乗った飛行機は僕の人生において初体験であり、離陸した瞬間から暫くのあいだは恐怖心からくる緊張で身体が強張ったものだった。
飛行機に比べ海に浮かぶ船には余り恐怖心が芽生えることもなく、どちらかと云えば安心して釣りをしていられた。
僕がそんなことを考えていると、祖父の釣り針に早くも魚が喰いついたようで、老齢を感じさせない素早さで糸を巻き手繰り寄せる。
祖父が「一!見らんか!でっかか魚が釣れたぞ!」と、一部始終を眺めていた僕に対して喜びの表情をして言う。
釣れたのは天然の綺麗な真鯛であり、船の床の上で勢いよくピチピチと跳ね回っていた。
水の中を泳ぐ魚は水族館などで多少は見慣れていたが、地上というか陸地というか、ともかく船上で跳ね回る魚の生命力に少しばかり興奮したものだった。
祖父は真鯛を左手で押さえつけ手際よく口に突き刺さった釣り針を抜き、船にロープで括り付け海に入れてある籠に投げ入れた。
そんな様を見て、僕も早く魚を釣り上げたいと思っていたところ、手にしていた釣り糸が突然「ピン!」と張り、海に引き寄せられる予想以上に強烈な力が手に伝わった!
それを僕は素直に受け入れ釣り糸を軽く巻き、続けて垂らした釣り糸をクイクイッとするように言われ、「手釣り」と呼ばれる手法の釣りが始まった。
流石に「入れ食い」で釣果がるわけもなく、最初は糸の様子に集中していた僕だったが、少しばかり心に余裕が出来て辺りを見回し大きな呼吸を一つする。
小舟は細波の影響で小刻みに揺れていたけれど、幸にして乗り物酔いに縁遠っかった僕は船酔いすることは無かった。
乗り物と云えば、今朝乗った飛行機は僕の人生において初体験であり、離陸した瞬間から暫くのあいだは恐怖心からくる緊張で身体が強張ったものだった。
飛行機に比べ海に浮かぶ船には余り恐怖心が芽生えることもなく、どちらかと云えば安心して釣りをしていられた。
僕がそんなことを考えていると、祖父の釣り針に早くも魚が喰いついたようで、老齢を感じさせない素早さで糸を巻き手繰り寄せる。
祖父が「一!見らんか!でっかか魚が釣れたぞ!」と、一部始終を眺めていた僕に対して喜びの表情をして言う。
釣れたのは天然の綺麗な真鯛であり、船の床の上で勢いよくピチピチと跳ね回っていた。
水の中を泳ぐ魚は水族館などで多少は見慣れていたが、地上というか陸地というか、ともかく船上で跳ね回る魚の生命力に少しばかり興奮したものだった。
祖父は真鯛を左手で押さえつけ手際よく口に突き刺さった釣り針を抜き、船にロープで括り付け海に入れてある籠に投げ入れた。
そんな様を見て、僕も早く魚を釣り上げたいと思っていたところ、手にしていた釣り糸が突然「ピン!」と張り、海に引き寄せられる予想以上に強烈な力が手に伝わった!
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