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第44話 三つ目の願い

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 淀鴛さんは煙草を吸って落ち着いたのか、お得意のニヒルな笑みを浮かべてそう言った。

 しかし淀鴛さんの話しだけを訊けば、確かに犯人についてのフラグ云々は無かったようだったけれど、最後のシーンを分析する限り、どう考えても他殺だったとしか考えられない...

「まさかとは思いますけど、警察はその事件を自殺として片付けたとか?」

「...ああ、そのまさかだ。まぁ、俺は幼かった所為でことの顛末を知ったのはずっと後になってしまったがな」

 僕の隣りで黙ったまま話しを聞いていた未桜が口を挟む。

「えっ!?でもでも、淀鴛さんの話しの内容だと絶対自殺じゃないですよねぇ?だって二人の頭が釜土に突っ込まれていたわけだから...」

「そうだな。俺も10年以上警察に勤めているが、あんな死に方をした仏さんに出会ったことは一度も無い。それに俺の両親には自殺をするような動機が無かった筈だ。俺の知る限りではな...」

 僕と未桜は今のところ淀鴛さんの幼い頃の記憶のみで推察している...

 よくよく考えてみれば、事件当時5歳だった子供の頼りない記憶など、余り当てにしてはならないという懸念もあるにはある...

 興味深い話しで他にも確かめたいことが多くあったが、僕達が燈明神社を訪れた本来の目的が未達成であり、時間的な余裕もほとんど無くなってしまった。

 ここは事件の内容には深入りせず、話しを切り替えて廃墟探索に動かなければばなるまい。

「もしかして淀鴛さんが今日此処に来たのって犯人探しのためとか?」

「...ある意味そうかも知れない。いやなに、初めて会う君達に言うのもなんだが、俺が今日此処を訪れたのは過去の事件と故郷にケジメをつけるためだ。事件からもう30年近くも経つしな...」

「そう、ですか...あっ!僕達も余り時間が無いのでなんですけど、淀鴛さん話しを始める前に三つ目の願いがあるって言ってましたよね?」

 低い確率だが、黙っていれば淀鴛さんの方が忘れていたかも知れないことを、律儀な僕はわざわざ訊いたのだった。

「ククク、流石だな一輪君。やはり俺の目に狂いは無かったようだ。三つ目の願いってのはあれだ...君達の様子からして今日は井伊影村に一泊するんだろ?」

 どこをどう見て井伊影村に一泊すると踏んだのかは知らないが、今は時間も大事だしこの件について考えるのは後回しだ。

「ええ、そうですけれどそれが何か?」

 吸っていた煙草の火を地面に押しつけて消しながら淀鴛さんが言う。

「まぁこれは君達の気が向いたらってことで構わないんだが、もし、井伊影村滞在中に事件に関して気づいたことがあれば教えて欲しい。ただそれだけだ」
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