44 / 168
第44話 三つ目の願い
しおりを挟む
淀鴛さんは煙草を吸って落ち着いたのか、お得意のニヒルな笑みを浮かべてそう言った。
しかし淀鴛さんの話しだけを訊けば、確かに犯人についてのフラグ云々は無かったようだったけれど、最後のシーンを分析する限り、どう考えても他殺だったとしか考えられない...
「まさかとは思いますけど、警察はその事件を自殺として片付けたとか?」
「...ああ、そのまさかだ。まぁ、俺は幼かった所為でことの顛末を知ったのはずっと後になってしまったがな」
僕の隣りで黙ったまま話しを聞いていた未桜が口を挟む。
「えっ!?でもでも、淀鴛さんの話しの内容だと絶対自殺じゃないですよねぇ?だって二人の頭が釜土に突っ込まれていたわけだから...」
「そうだな。俺も10年以上警察に勤めているが、あんな死に方をした仏さんに出会ったことは一度も無い。それに俺の両親には自殺をするような動機が無かった筈だ。俺の知る限りではな...」
僕と未桜は今のところ淀鴛さんの幼い頃の記憶のみで推察している...
よくよく考えてみれば、事件当時5歳だった子供の頼りない記憶など、余り当てにしてはならないという懸念もあるにはある...
興味深い話しで他にも確かめたいことが多くあったが、僕達が燈明神社を訪れた本来の目的が未達成であり、時間的な余裕もほとんど無くなってしまった。
ここは事件の内容には深入りせず、話しを切り替えて廃墟探索に動かなければばなるまい。
「もしかして淀鴛さんが今日此処に来たのって犯人探しのためとか?」
「...ある意味そうかも知れない。いやなに、初めて会う君達に言うのもなんだが、俺が今日此処を訪れたのは過去の事件と故郷にケジメをつけるためだ。事件からもう30年近くも経つしな...」
「そう、ですか...あっ!僕達も余り時間が無いのでなんですけど、淀鴛さん話しを始める前に三つ目の願いがあるって言ってましたよね?」
低い確率だが、黙っていれば淀鴛さんの方が忘れていたかも知れないことを、律儀な僕はわざわざ訊いたのだった。
「ククク、流石だな一輪君。やはり俺の目に狂いは無かったようだ。三つ目の願いってのはあれだ...君達の様子からして今日は井伊影村に一泊するんだろ?」
どこをどう見て井伊影村に一泊すると踏んだのかは知らないが、今は時間も大事だしこの件について考えるのは後回しだ。
「ええ、そうですけれどそれが何か?」
吸っていた煙草の火を地面に押しつけて消しながら淀鴛さんが言う。
「まぁこれは君達の気が向いたらってことで構わないんだが、もし、井伊影村滞在中に事件に関して気づいたことがあれば教えて欲しい。ただそれだけだ」
しかし淀鴛さんの話しだけを訊けば、確かに犯人についてのフラグ云々は無かったようだったけれど、最後のシーンを分析する限り、どう考えても他殺だったとしか考えられない...
「まさかとは思いますけど、警察はその事件を自殺として片付けたとか?」
「...ああ、そのまさかだ。まぁ、俺は幼かった所為でことの顛末を知ったのはずっと後になってしまったがな」
僕の隣りで黙ったまま話しを聞いていた未桜が口を挟む。
「えっ!?でもでも、淀鴛さんの話しの内容だと絶対自殺じゃないですよねぇ?だって二人の頭が釜土に突っ込まれていたわけだから...」
「そうだな。俺も10年以上警察に勤めているが、あんな死に方をした仏さんに出会ったことは一度も無い。それに俺の両親には自殺をするような動機が無かった筈だ。俺の知る限りではな...」
僕と未桜は今のところ淀鴛さんの幼い頃の記憶のみで推察している...
よくよく考えてみれば、事件当時5歳だった子供の頼りない記憶など、余り当てにしてはならないという懸念もあるにはある...
興味深い話しで他にも確かめたいことが多くあったが、僕達が燈明神社を訪れた本来の目的が未達成であり、時間的な余裕もほとんど無くなってしまった。
ここは事件の内容には深入りせず、話しを切り替えて廃墟探索に動かなければばなるまい。
「もしかして淀鴛さんが今日此処に来たのって犯人探しのためとか?」
「...ある意味そうかも知れない。いやなに、初めて会う君達に言うのもなんだが、俺が今日此処を訪れたのは過去の事件と故郷にケジメをつけるためだ。事件からもう30年近くも経つしな...」
「そう、ですか...あっ!僕達も余り時間が無いのでなんですけど、淀鴛さん話しを始める前に三つ目の願いがあるって言ってましたよね?」
低い確率だが、黙っていれば淀鴛さんの方が忘れていたかも知れないことを、律儀な僕はわざわざ訊いたのだった。
「ククク、流石だな一輪君。やはり俺の目に狂いは無かったようだ。三つ目の願いってのはあれだ...君達の様子からして今日は井伊影村に一泊するんだろ?」
どこをどう見て井伊影村に一泊すると踏んだのかは知らないが、今は時間も大事だしこの件について考えるのは後回しだ。
「ええ、そうですけれどそれが何か?」
吸っていた煙草の火を地面に押しつけて消しながら淀鴛さんが言う。
「まぁこれは君達の気が向いたらってことで構わないんだが、もし、井伊影村滞在中に事件に関して気づいたことがあれば教えて欲しい。ただそれだけだ」
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
狂気醜行
春血暫
ミステリー
――こんなことすら、醜行と言われるとはな。
犯罪学のスペシャリスト・川中文弘は、大学で犯罪学について教えている。
その教え子である瀧代一は、警察官になるために文弘から犯罪学について学んでいる。
ある日、大学近辺で起きた事件を調べていると、その事件には『S教』という謎の新興宗教が深く関わっていると知り、二人はその宗教について調べることにした。
※この物語はフィクションです。実在する人物、団体、地名などとは一切関係ありません。
※犯罪などを助長する意図は一切ありません。
ミガワレル
崎田毅駿
ミステリー
松坂進は父の要請を受け入れ、大学受験に失敗した双子の弟・正のために、代わりに受験することを約束する。このことは母・美沙子も知らない、三人だけの秘密であった。
受験当日の午後、美沙子は思い掛けない知らせに愕然となった。試験を終えた帰り道、正が車にはねられて亡くなったという。
後日、松坂は会社に警察の訪問を受ける。一体、何の用件で……不安に駆られる松坂が聞かされたのは、予想外の出来事だった。
【全年齢版】この世の果て
409号室
ミステリー
【11/24 作中に登場人物イラストを追加しました。】
その復讐は行われるーー美しくも凄惨に。
昼メロチックな読み出したら止まらないジェットコースターミステリ。
ミステリとして発表しては?とアドバイスを受け、BL18禁要素を排除し、全年齢対象とした作品。
日本有数の大企業・雪花コーポレーションの若き青年社長・雪花海杜は、元々はピアニストを目指しながらも、父の意向で後継者になった過去を持ち、自らの生き方に微かな疑問を抱き始めていた。
まだ学生時代、父の秘書としてある小さな町工場を訪れた海杜は、そこで信じられない光景を目にする。
融資を願い出る夫婦を冷酷にあしらう父の姿にショックを受けながら、そこを後にする瞬間、感じた視線。
それは、その夫婦の幼い息子の瞳だった。
彼はそれ以来、毎晩、その時、自分を刺すような目で見つめてた少年の夢でうなされていた。
そんな彼の右腕としてサポートする美貌の秘書・咲沼英葵。
実は彼こそ、海杜をはじめとした、雪花一族に復讐を誓うあの少年の成長した姿であった。
英葵は亡き両親の無念を晴らす為、雪花コーポレーションに入り込んでいた。
何も知らずに友情を深め合う、同級生の英葵の妹・美麻と海杜の妹・菊珂。
海杜に許されぬ愛を抱く、若く美しい義母・里香。
年の離れた海杜の弟で、里香の息子・夕貴。
海杜の従兄弟で、副社長を務め、形勢逆転を狙う野心的な更科恭兵。
飽和状態にまで張り詰めた彼らに突然降りかかる災厄。
それを期に、運命の歯車は静かに回り出す。
美しく、そして凄惨に。
イラスト:聖る様
エレベーターで一緒になった男の子がやけにモジモジしているので
こじらせた処女
BL
大学生になり、一人暮らしを始めた荒井は、今日も今日とて買い物を済ませて、下宿先のエレベーターを待っていた。そこに偶然居合わせた中学生になりたての男の子。やけにソワソワしていて、我慢しているというのは明白だった。
とてつもなく短いエレベーターの移動時間に繰り広げられる、激しいおしっこダンス。果たして彼は間に合うのだろうか…
【アルファポリスで稼ぐ】新社会人が1年間で会社を辞めるために収益UPを目指してみた。
紫蘭
エッセイ・ノンフィクション
アルファポリスでの収益報告、どうやったら収益を上げられるのかの試行錯誤を日々アップします。
アルファポリスのインセンティブの仕組み。
ど素人がどの程度のポイントを貰えるのか。
どの新人賞に応募すればいいのか、各新人賞の詳細と傾向。
実際に新人賞に応募していくまでの過程。
春から新社会人。それなりに希望を持って入社式に向かったはずなのに、そうそうに向いてないことを自覚しました。学生時代から書くことが好きだったこともあり、いつでも仕事を辞められるように、まずはインセンティブのあるアルファポリスで小説とエッセイの投稿を始めて見ました。(そんなに甘いわけが無い)
10秒で読めるちょっと怖い話。
絢郷水沙
ホラー
ほんのりと不条理なギャグが香るホラーテイスト・ショートショートです。意味怖的要素も含んでおりますので、意味怖好きならぜひ読んでみてください。(毎日昼頃1話更新中!)
祝福ゲーム ──最初で最後のただひとつの願い──
相田 彩太
ミステリー
世界各地から選ばれた24名の前に現れたのは自称”神”。
神は告げる「汝らに”祝福”を授けた」と。
そして「”祝福”とは”どんな願いでもひとつ叶える権利”だ」と。
ただし、そこには3つのルールがあった。
1.”祝福”の数は決して増えない
2.死んだ人間を生き返らせることは出来ない
3.”祝福”を持つ者が死んだ時、その”祝福”は別の人類にランダムに移る
”祝福”を持つ者はその境遇や思惑に沿って、願いを叶え始める。
その果てにどんな結末がもたらされるかを知らずに。
誰かが言った。
「これは”祝福ゲーム”だ」と。
神は言わなかった。
「さあ、ゲームの始まりだ」と。
※本作は小説家になろうにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる