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第12話 言葉遣い
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「おい未桜、事務所で見せたご自慢の紅白ジャージになぜ着替えない?」
「別にご自慢じゃなきけれど、流石は一輪!良いところに気づいたね~♪褒めてつかわす。実はぁ、さっきジャージを取り出そうとリュックを開いたらぁ、寝巻きがないことに気づいちゃったのよね~。だからジャージは夜用にとっておこうと思ってさ」
「忘れたのか...この民泊に浴衣は無いみたいだからそれは構わないが、豆苗神社までの道のりで怪我しないようにしてくれよ」
「は~い、くれぐれも怪我しないよう注意しまーす♪」
本当に呑気な奴だ。
繰り返しになるが豆苗神社は今や無人の廃墟と化している。
だからこそ、廃墟好きの僕としては非常に興味をそそられ、遠路はるばる訪れることとあいなったわけだけれど、廃墟ゆえに森の中に在る豆苗神社までの道は、草木が生い茂り荒れ果てていることが予想され、ワンピースという軽装では危険極まりないと思われるのだ。
因みに僕は普段着から登山用のスタンダードな服装へ様変わりしている。
部屋を出て急勾配の階段をゆっくりと降り、玄関で未桜共々靴を履き終えると、僕は廊下の奥の部屋に居るであろう老婆へ向け声を張って伝える。
「参ノ間の荒木咲です!夕方まで外へ出かけてますのでよろしくお願いしま~す!」
「...........ふぁ~い。お気をつけてぇ」
だいぶ反応が鈍かったけれど、どうにか伝わったようなので良しとしておく。
しかしこの民宿に予約の電話を入れた時は、声からして40から50代の女性が対応してくれたのだけれど...
僕は玄関を出ると少し考え、井伊影村に来るまでに休憩無しのノンストップで来たため、予定より三十分くらい早く到着したことを思い出し、予約の対応をしてくれたあの女性はたまたま留守にしていたのだろう、と取り敢えず結論づけることにした。
「ねぇねぇ一輪、腹ごしらえするって言ってたけれど、こんなところに飲食店なんかあるの?」
公衆の面前でなんということを!
「こらこら、田舎を愚弄するような発言は慎めよ」
僕は未桜と目線を一旦合わせ、彼女の死角の方向へ視線を流して見るよう促した。
未桜が目線を移した場所には幼児だろうか、五、六歳くらいの男の子が彼女をキッと睨み立っていた。
「ブス、ブ~ス!田舎を馬鹿にするくらいならわざわざ来るなよな」
ブスは酷いがあとはごもっとも。
「ごっ、ごっめんなさーい。悪気はなかったのぉ。だから許してください」
未桜が恥ずかしがらずに頭を下げた。
「ふん!次から言葉遣いに気をつけろよ~」
「うん!気をつける~」
未桜の実直な謝罪を汲み取ってくれたのか、歳の割にしっかりした口調の男の子は、その場からあっという間に走り去ってしまった。
「ふぅ、冷や冷やしちゃったぁ。言葉遣いには気をつけないと駄目ねぇ」
「ああ、君は声が大きいのだから特に気をつけてくれ。それと、飲食店の件だが下調べは既に済んでいる」
僕は勝ち誇ったように一軒のラーメン屋をビシッと指差した。
「別にご自慢じゃなきけれど、流石は一輪!良いところに気づいたね~♪褒めてつかわす。実はぁ、さっきジャージを取り出そうとリュックを開いたらぁ、寝巻きがないことに気づいちゃったのよね~。だからジャージは夜用にとっておこうと思ってさ」
「忘れたのか...この民泊に浴衣は無いみたいだからそれは構わないが、豆苗神社までの道のりで怪我しないようにしてくれよ」
「は~い、くれぐれも怪我しないよう注意しまーす♪」
本当に呑気な奴だ。
繰り返しになるが豆苗神社は今や無人の廃墟と化している。
だからこそ、廃墟好きの僕としては非常に興味をそそられ、遠路はるばる訪れることとあいなったわけだけれど、廃墟ゆえに森の中に在る豆苗神社までの道は、草木が生い茂り荒れ果てていることが予想され、ワンピースという軽装では危険極まりないと思われるのだ。
因みに僕は普段着から登山用のスタンダードな服装へ様変わりしている。
部屋を出て急勾配の階段をゆっくりと降り、玄関で未桜共々靴を履き終えると、僕は廊下の奥の部屋に居るであろう老婆へ向け声を張って伝える。
「参ノ間の荒木咲です!夕方まで外へ出かけてますのでよろしくお願いしま~す!」
「...........ふぁ~い。お気をつけてぇ」
だいぶ反応が鈍かったけれど、どうにか伝わったようなので良しとしておく。
しかしこの民宿に予約の電話を入れた時は、声からして40から50代の女性が対応してくれたのだけれど...
僕は玄関を出ると少し考え、井伊影村に来るまでに休憩無しのノンストップで来たため、予定より三十分くらい早く到着したことを思い出し、予約の対応をしてくれたあの女性はたまたま留守にしていたのだろう、と取り敢えず結論づけることにした。
「ねぇねぇ一輪、腹ごしらえするって言ってたけれど、こんなところに飲食店なんかあるの?」
公衆の面前でなんということを!
「こらこら、田舎を愚弄するような発言は慎めよ」
僕は未桜と目線を一旦合わせ、彼女の死角の方向へ視線を流して見るよう促した。
未桜が目線を移した場所には幼児だろうか、五、六歳くらいの男の子が彼女をキッと睨み立っていた。
「ブス、ブ~ス!田舎を馬鹿にするくらいならわざわざ来るなよな」
ブスは酷いがあとはごもっとも。
「ごっ、ごっめんなさーい。悪気はなかったのぉ。だから許してください」
未桜が恥ずかしがらずに頭を下げた。
「ふん!次から言葉遣いに気をつけろよ~」
「うん!気をつける~」
未桜の実直な謝罪を汲み取ってくれたのか、歳の割にしっかりした口調の男の子は、その場からあっという間に走り去ってしまった。
「ふぅ、冷や冷やしちゃったぁ。言葉遣いには気をつけないと駄目ねぇ」
「ああ、君は声が大きいのだから特に気をつけてくれ。それと、飲食店の件だが下調べは既に済んでいる」
僕は勝ち誇ったように一軒のラーメン屋をビシッと指差した。
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