7 / 168
第7話 車内の罠
しおりを挟む
話しが交錯、いや、まちまちで些か申し訳ない気持ちもあるれど、貴方は彼女、若しくは彼氏との交際期間が短いうちに車でドライブへ出かけ、狭い密室となる車内で会話に困った経験は無いだろうか?
問いを出しておいて出題者が即答するのもなんだが少なくとも僕にはある。
恥ずかしながら大学時代に付き合った人生初めての彼女との初デートにて、あろうことか密室故に会話レベルの試される車でのドライブを選択してしまったのだ。
そもそも当時の僕は、大学で得られる知識を全て吸収してやろうと躍起になって勉強していて、車内の狭い密室で女性と過ごすといった経験など皆無でしかなかった。
ん?ガリ勉剥き出しに勉強ばかりしていた当時の僕になぜ彼女が出来たのか?
などという疑問が浮かび上がるであろうけれど、今話したいことは恋話を主としているわけではないのでここは丁寧に置いておくことにしよう。
では主たる話しのドライブデート当日、バイトで稼いだお金で選択できる限界ギリギリのHV車をレンタルした僕は、彼女との待ち合わせ場所まで意気揚々と車を走らせた。
人生初の初デートで有頂天極まりなかった僕は、待ち合わせ場所へ向かうあいだ幸せいっぱい胸いっぱいであったものである。
だが、待ち合わせ場所へ安全運転で無事到着し、彼女が助手席に座った瞬間から僕の脳に思わぬ変化が起こったのだ。
変化にも良い変化や悪い変化、感じ取れない変化など様々変化があるのだけれど、その時の僕に起こった変化は否応無く最悪の変化だったと云えよう。
ご存じの通り、車の車内の運転席と助手席は人と人とを物理的にかなりの至近距離まで近づける。
これが勉強ばかりしてきて人とほとんど接してこなかった僕への代償なのか、自分の予想以上に心拍数が上がってしまい、緊張感が身体中を駆け巡って頭が不覚にも真っ白になってしまったのだ。
緊張から回らなくなってしまった僕の天才的頭脳は、ドライブ中に彼女を喜ばせる会話を生み出す筈だった奇才的頭脳は、その機能を全く活かすことく、無言地獄という悲惨な空間を作り出したのである。
助手席に座っていた彼女には悪いけれど、目的地に着き、車を降りて外の空気を吸った時にはどれだけ生き返った気分になったことか。
そしてこのあと、彼女の言った言葉ににどれくらい救われたことだろうか。
目的の店に入ろうと横並びになって歩き出したところで、店の入り口から視線を外さず微笑を浮かべて彼女は言った。
「初デートってこんなに緊張しちゃうんだね。私、頭が真っ白でなんにも喋れなくてごめんなさい。でも一輪君のこともっともっと知りたいからぁ、帰りはたくさんお喋りしようね♪」
と...
問いを出しておいて出題者が即答するのもなんだが少なくとも僕にはある。
恥ずかしながら大学時代に付き合った人生初めての彼女との初デートにて、あろうことか密室故に会話レベルの試される車でのドライブを選択してしまったのだ。
そもそも当時の僕は、大学で得られる知識を全て吸収してやろうと躍起になって勉強していて、車内の狭い密室で女性と過ごすといった経験など皆無でしかなかった。
ん?ガリ勉剥き出しに勉強ばかりしていた当時の僕になぜ彼女が出来たのか?
などという疑問が浮かび上がるであろうけれど、今話したいことは恋話を主としているわけではないのでここは丁寧に置いておくことにしよう。
では主たる話しのドライブデート当日、バイトで稼いだお金で選択できる限界ギリギリのHV車をレンタルした僕は、彼女との待ち合わせ場所まで意気揚々と車を走らせた。
人生初の初デートで有頂天極まりなかった僕は、待ち合わせ場所へ向かうあいだ幸せいっぱい胸いっぱいであったものである。
だが、待ち合わせ場所へ安全運転で無事到着し、彼女が助手席に座った瞬間から僕の脳に思わぬ変化が起こったのだ。
変化にも良い変化や悪い変化、感じ取れない変化など様々変化があるのだけれど、その時の僕に起こった変化は否応無く最悪の変化だったと云えよう。
ご存じの通り、車の車内の運転席と助手席は人と人とを物理的にかなりの至近距離まで近づける。
これが勉強ばかりしてきて人とほとんど接してこなかった僕への代償なのか、自分の予想以上に心拍数が上がってしまい、緊張感が身体中を駆け巡って頭が不覚にも真っ白になってしまったのだ。
緊張から回らなくなってしまった僕の天才的頭脳は、ドライブ中に彼女を喜ばせる会話を生み出す筈だった奇才的頭脳は、その機能を全く活かすことく、無言地獄という悲惨な空間を作り出したのである。
助手席に座っていた彼女には悪いけれど、目的地に着き、車を降りて外の空気を吸った時にはどれだけ生き返った気分になったことか。
そしてこのあと、彼女の言った言葉ににどれくらい救われたことだろうか。
目的の店に入ろうと横並びになって歩き出したところで、店の入り口から視線を外さず微笑を浮かべて彼女は言った。
「初デートってこんなに緊張しちゃうんだね。私、頭が真っ白でなんにも喋れなくてごめんなさい。でも一輪君のこともっともっと知りたいからぁ、帰りはたくさんお喋りしようね♪」
と...
0
お気に入りに追加
6
あなたにおすすめの小説
俺のタマゴ
さつきのいろどり
ミステリー
朝起きると正体不明の大きなタマゴがあった!主人公、二岾改(ふたやま かい)は、そのタマゴを温めてみる事にしたが、そのタマゴの正体は?!平凡だった改の日常に、タマゴの中身が波乱を呼ぶ!!
※確認してから公開していますが、誤字脱字等、あるかも知れません。発見してもフルスルーでお願いします(汗)
ゾンビ発生が台風並みの扱いで報道される中、ニートの俺は普通にゾンビ倒して普通に生活する
黄札
ホラー
朝、何気なくテレビを付けると流れる天気予報。お馴染みの花粉や紫外線情報も流してくれるのはありがたいことだが……ゾンビ発生注意報?……いやいや、それも普通よ。いつものこと。
だが、お気に入りのアニメを見ようとしたところ、母親から買い物に行ってくれという電話がかかってきた。
どうする俺? 今、ゾンビ発生してるんですけど? 注意報、発令されてるんですけど??
ニートである立場上、断れずしぶしぶ重い腰を上げ外へ出る事に──
家でアニメを見ていても、同人誌を売りに行っても、バイトへ出ても、ゾンビに襲われる主人公。
何で俺ばかりこんな目に……嘆きつつもだんだん耐性ができてくる。
しまいには、サバゲーフィールドにゾンビを放って遊んだり、ゾンビ災害ボランティアにまで参加する始末。
友人はゾンビをペットにし、効率よくゾンビを倒すためエアガンを改造する。
ゾンビのいることが日常となった世界で、当たり前のようにゾンビと戦う日常的ゾンビアクション。ノベルアッププラス、ツギクル、小説家になろうでも公開中。
表紙絵は姫嶋ヤシコさんからいただきました、
©2020黄札
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
この満ち足りた匣庭の中で 二章―Moon of miniature garden―
至堂文斗
ミステリー
それこそが、赤い満月へと至るのだろうか――
『満ち足りた暮らし』をコンセプトとして発展を遂げてきたニュータウン、満生台。
更なる発展を掲げ、電波塔計画が進められ……そして二〇一二年の八月、地図から消えた街。
鬼の伝承に浸食されていく混沌の街で、再び二週間の物語は幕を開ける。
古くより伝えられてきた、赤い満月が昇るその夜まで。
オートマティスム、鬼封じの池、『八〇二』の数字。
ムーンスパロー、周波数帯、デリンジャー現象。
ブラッドムーン、潮汐力、盈虧院……。
ほら、また頭の中に響いてくる鬼の声。
逃れられない惨劇へ向けて、私たちはただ日々を重ねていく――。
出題篇PV:https://www.youtube.com/watch?v=1mjjf9TY6Io
magus hunter 紐育魔術探偵事件簿
ニコ・トスカーニ
ミステリー
現代のニューヨークを舞台に、魔術師の私立探偵と刑事が魔術に関連する事件を解決するバディものです。
1エピソードが数話で完結する一話完結物の形式をとっています。
各章は緩やかにつながっていますが、基本、どこから読んでもわかるように構成しています。
正確にはサスペンスと分類するべきなのですが、登録されているジャンルにサスペンスがなかったので便宜上、ミステリーとしました。
(多少は推理物の要素もありますが)
小説家になろう様に未改稿版を掲載中です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる