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黒い天使
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街の駅に着き電車から降りて、暗い夜道の中を自転車に乗って帰る。
いつも通る河原の道に差し掛かると、昨日ラズに出逢った時のことを想いだした。
「ニャーニャー」鳴きながら歩いて来たあの姿は黒いけど天使のようだったなぁ…わたしの天使に早く会いたい!
ラズに会いたい気持ちが急激に溢れ出し、ペダルを漕ぐ足に力を加えスピードを上げた。
家に着いて玄関に自転車を入れる。
「ただいま~!」
「「「お帰り~!」」」
うちの家族はダイニングキッチンに全員揃っているようだ。
靴を抜ぎ廊下に上がろうとすると…
「ニャァ、ニャァ、ニャァ」
なんということでしょう!可愛い鳴き声を発しながら、心許ない歩き方の天使ちゃんが歩み寄って来るではありませんか!
うわぁ~、見ているだけでとろけてしまいそう。
手の届く距離まで来たラズ抱き上げて、その頬にわたしの頬をくっつけウリウリする。
「ただいま~ラズ♪元気にしてたぁ?」
「ニャァ」
もう今夜はこのまま離したくない!
という訳にもいかないので、のんびりしていた弟の真に一度預け、リュックを部屋に置いたあと夕飯を食べることにした。
家族の三人は先に食べ終わっていて、母がテーブルを片付けながら話し掛けてくる。
「今日は帰りが遅かったわねぇ。仕事が終わらなかったの?」
母の準備してくれた料理を食べながら質問に答えようとするけれど、河童のワッパさんに会って妙薬を貰ったという話しは絶対に出来ない。どうしようか…
「ん~…行ったことの無かったやしあか農園を先輩に見せて貰って、保管倉庫の人達の手伝いをしていたら遅くなっちゃった。ごねんねぇ」
嘘をつくのは苦手だし、後ろめたい気持ちになるのも嫌だったので、本当のことをだいぶ端折って答えた。
「…ふ~ん、そうだったのね」
感の鋭い母は、わたしの顔を見て何かに気付いたようだったけど、それ以上突っ込んで訊いて来なかった。
ここは話題を変えちゃおう!
「お母さん、今日ラズに変わったこととか無かった?」
「そうねぇ…動物病院の人がこの子は頭が良いって褒めてくれたわよ」
ほうほう、ラズ君は頭が良いのか。動物病院の人が言うなら間違いないでしょ。
「それと猫じゃらしを買って来てあるから、あとで遊んであげるといいわ」
「さすがお母さん!ありがとう!」
よ~し、お風呂を早く済ませてたっぷり遊ぶぞ~!っん!?
さっきまで椅子に座りラズを抱いていた弟の真が、カラフルな猫じゃらしを使ってラズと楽しそうに戯れている。
「何してるの真!わたしの楽しみを奪わないでよ~」
「いいじゃないかこれくらい。な!ラズ」
まあ、家族がラズと遊んでくれるのは喜ばしいことでもあるし、良しとしておくかぁ。
いつも通る河原の道に差し掛かると、昨日ラズに出逢った時のことを想いだした。
「ニャーニャー」鳴きながら歩いて来たあの姿は黒いけど天使のようだったなぁ…わたしの天使に早く会いたい!
ラズに会いたい気持ちが急激に溢れ出し、ペダルを漕ぐ足に力を加えスピードを上げた。
家に着いて玄関に自転車を入れる。
「ただいま~!」
「「「お帰り~!」」」
うちの家族はダイニングキッチンに全員揃っているようだ。
靴を抜ぎ廊下に上がろうとすると…
「ニャァ、ニャァ、ニャァ」
なんということでしょう!可愛い鳴き声を発しながら、心許ない歩き方の天使ちゃんが歩み寄って来るではありませんか!
うわぁ~、見ているだけでとろけてしまいそう。
手の届く距離まで来たラズ抱き上げて、その頬にわたしの頬をくっつけウリウリする。
「ただいま~ラズ♪元気にしてたぁ?」
「ニャァ」
もう今夜はこのまま離したくない!
という訳にもいかないので、のんびりしていた弟の真に一度預け、リュックを部屋に置いたあと夕飯を食べることにした。
家族の三人は先に食べ終わっていて、母がテーブルを片付けながら話し掛けてくる。
「今日は帰りが遅かったわねぇ。仕事が終わらなかったの?」
母の準備してくれた料理を食べながら質問に答えようとするけれど、河童のワッパさんに会って妙薬を貰ったという話しは絶対に出来ない。どうしようか…
「ん~…行ったことの無かったやしあか農園を先輩に見せて貰って、保管倉庫の人達の手伝いをしていたら遅くなっちゃった。ごねんねぇ」
嘘をつくのは苦手だし、後ろめたい気持ちになるのも嫌だったので、本当のことをだいぶ端折って答えた。
「…ふ~ん、そうだったのね」
感の鋭い母は、わたしの顔を見て何かに気付いたようだったけど、それ以上突っ込んで訊いて来なかった。
ここは話題を変えちゃおう!
「お母さん、今日ラズに変わったこととか無かった?」
「そうねぇ…動物病院の人がこの子は頭が良いって褒めてくれたわよ」
ほうほう、ラズ君は頭が良いのか。動物病院の人が言うなら間違いないでしょ。
「それと猫じゃらしを買って来てあるから、あとで遊んであげるといいわ」
「さすがお母さん!ありがとう!」
よ~し、お風呂を早く済ませてたっぷり遊ぶぞ~!っん!?
さっきまで椅子に座りラズを抱いていた弟の真が、カラフルな猫じゃらしを使ってラズと楽しそうに戯れている。
「何してるの真!わたしの楽しみを奪わないでよ~」
「いいじゃないかこれくらい。な!ラズ」
まあ、家族がラズと遊んでくれるのは喜ばしいことでもあるし、良しとしておくかぁ。
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