覚醒屋の源九郎 第一部

流川おるたな

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傍若無人

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「おっと、その前に王へのお願いがございます。ワタシは畏った喋りが得意ではございません。普段通りの話し方で接してもよろしいでしょうか?」
 太公望が和かに許可を求める。
「クックッ、お前は仙人界の仙人道士。畏る必要などない。普段通り話すが良かろう」
「コホン。では、すまんのうダリクよ。質問しても構わぬよ」
 ダリクの顔が一瞬微妙に引きつる。ジオンとミリシャも、否、謁見の間にいたダークエルフ全員の顔が引きつっていた。
「では最初の質問だ。その腰にぶら下げている巾着袋の中には、この世で我らが最も憎んでいる猿が入っているのだろう?」
 太公望はジオンの方を振り向き睨む。
 ジオンは何か伝えようとジェスチャーをしているがヘタクソ過ぎてさっぱり伝わらない。
 ダリクの方へ向き直り答える。
「経緯は分からんが孫悟空の事は既に知っておるようじゃのう。悟空よ外に出て来い」
 「ヒュッ」と音がして悟空が普通サイズに戻り姿を現す。
「やっと楽に慣れたぜ。袋の中は窮屈で堪らん」
 ダリクがジッと悟空を見ている。
「猿、久しいな。ワシの顔を覚えておらぬか?」
 悟空はダリクの顔をジッと見返す。
「う~んすまん、全くもって見覚えが無い」
 「プチン」と音が聞こえそうなほどダリクの顔が明らかな怒りで豹変した。
「貴様に殺された先代の王アザッドの息子だ!このクソ猿めが!」
 悟空は王の凄まじい怒りのプレッシャーに対し微塵も動じていなかった。
「ジオン達に過去の件はもう話したから同じ話はしないぞ。それでもオレとやり合おうってんなら一つ教えておいてやる」
 悟空は太公望の表情を確認したが諦めているのか止めるつもりは無いらしい。
「猿めが言ってみろ!やり合えば何だというのだ!」
 悟空が耳を掻く仕草をして耳にしまっていた小さい如意棒を取り出す。
「この国の全員が纏めてかかって来ても全て蹴散らしてやる。100年前と同じ歴史を繰り返す事になるぞ!」
 言い終わると同時に通常の大きさに戻った如意棒の先を垂直に床へ叩きつける。
 「ボゴッ!」と音を立てて石の床はヘコみ、如意棒を中心に人を吹き飛ばす程の威力のある衝撃波を起こす。
 近距離に居たダークエルフが吹き飛ばされる。言うまでもなく一番近くにいた太公望も衝撃波をもろに受け、真っ先に部屋の壁まで吹き飛ばされていた。
 衝撃波の威力も去ることながら、傍若無人な悟空の行動に謁見の間に居た全員が驚愕していた。
 ただ一人を除いては...
「ゴルゥアーーーッ!黙って見て居れば何してくれとんじゃーーーっ!アレ使って地獄見せてやんぞ!このボケ猿がーーーッ!」
 吹き飛ばされた際に顔を壁に激しくぶつけ、誰よりも怒り狂う太公望であった。
 忘れられているかも知れないが、この太公望は女性です。
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