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旅路

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 源九郎が聞仲と死闘を繰り広げていた頃、太公望と孫悟空は二人仲良くサラマンダー達の棲むサラマンド王国城の牢獄に閉じ込められていた。
「如何のう、こんな処で時間を潰している暇はないのじゃがのう」
 太公望は牢獄の地べたに寝転び肩肘をつきながらボヤく。
「お前が飯屋で無銭飲食を試みようとするからこんな事になったんだろ。つまらんボヤキをするな」
 天真爛漫で有名な悟空に常識的な説教をされるとは...ある意味やはり太公望は大物なのかも。
「ハハハ、まあポジティブに捉えれば城内に労せず入れたでは無いか。結果オーライという事にしておいてくれ」
「フン、どうせ元々これを狙っての行動だったんだろ。次からは前持って教えて欲しいもんだぜ」
 仲間内をも騙す手法は太公望の知略の得意分野である。
 実はこの二人、四大精霊の全ての王達を協力させ、ゲートの結界を復活させるという源九郎との約束を一週間ほど前にしたのだが、まだ一人の王とも会ってさえいなかっのだ。
 もちろん遊んでいた訳ではなく、それなりの理由があっての事だった。
 話を一週間ほど前に戻して語ってみようか...
 おっと、自己紹介がまだでした。
 初めまして語り部と申します。たまに主人公に代わり、物語を語らせて頂きますので今後とも宜しくお願い致します。

 場面は源九郎達と別れた太公望と孫悟空が、觔斗雲に乗ってゲートへ向かうところから始まる。
 精霊妖精界に通じているゲートは富士樹海のほぼ中心部に存在する。富士の樹海といえば様々な伝説や噂が昔から蔓延っているが、その中には嘘のような真実も有るのだ。恐らく日本では不思議なパワーが最も集まり易い場所と言えよう。
 そんな富士の樹海には他の木々を軽く圧倒するくらい巨大な大樹が有り、その大樹の丸い木目の中こそがゲートの入口になっている。本来は周りに結界が張られて大樹そのものが発見できないのだが、妲己らによって結界は消滅してしまっている。
 太公望と孫悟空は容易くゲートを通り精霊妖精界に辿り着く事ができた。
 こちら側の入り口は洞窟になっていて周りは暗いが、少しだけ真っ直ぐ歩けば外の光が見えて来る。
 洞窟を抜けると目の前には美しく大きな湖が待っていた。
「おほ~、何十年かぶりに来てみたが相変わらず空気が美味くて気持ちの良いところじゃの~精霊妖精界は」
 太公望は背伸びをしながら、まるでピクニックにでも来ているかのように陽気な顔をしている。
「仙人界には小さな湖しか無いし、根本的に土地の面積が狭いからな。ここなら気兼ね無く暴れられそうだ」
 逆に悟空は不機嫌な顔をしている。先ほどの源九郎とのやりとりでの太公望の余計な一言の所為でスイッチが入ってしまい、暴れたくてウズウズしているらしい。
 悪い事に、悟空の希望を叶えてしまう不逞な輩達が直ぐそこまで近づいていた。
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