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ガラント

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「まあいいでしょう。このままではエルフの魔法で消されてしまいますからね」
 こいつ、下半身を完全に消されて内心ビビってたな。
「まずは自己紹介から、私はヴァンパイアのガラントと申します」
 律儀だな。同じく律儀な俺は返す。
「俺は源九郎だ」
「私がここで観察していたのは単なる興味本位ですよ。機会があれば生娘の血を頂こうと考えてはいましたがね」
 予想はしていたが馬鹿正直だ。この状態では隠しても仕方がないが。
「ゲートキーパーがいる上に結界のあるゲートを、どうやって通過して人間界に来れたのですか?」
 ルカリも追求したい事があるようだ。
「エルフ様はご存知無いらしい。今は精霊妖精界と人間界のゲートは自由に通れてしまうのですよ」
「何が起きているのですか?」
 余程の事態なのか、ルカリの声が少し震えている。かなり動揺していいるようだ。
「仙人界の妲己により結界は消滅し全ての制限が無くなりゲートキーパーも倒されてしまったのです」
妲己!?あいつやっぱり只者じゃないな...
「妲己は一人でそんな事が出来たのですか?」
「いいえ、仙人界の聞仲と趙公明という名の者と、妲己に操られた精霊妖精界の亜人やアンデットにより構成された妲己軍による仕業です」
「そんな...」
 ルカリは言葉を失うほどショックを受けたようだ。
 世界の綻びとの関連性は分からないが、既にとんでもない事が起きている。とにかく情報を訊き出さなければ。
「何が目的か分かるか?」
「あの妲己のことです。恐らくは人間界の支配が目的といったところでしょう」
 妲己の支配による人間界。想像しただけでもゾッとするな。
「で、お前はどうして人間界に来たんだ?」
「ずっと人間界には来て見たかったのです。人間の血は精霊妖精界の住人達よりずっと美味そうですので...おっと、もちろん私はこのまま精霊妖精界へ戻りますので関係ございませんが」
「という事は、単なる好奇心だけでこっちにやって来る異世界人が他にもいる訳だ」
「ゲートが自由に通れますので、或いは既に多数の者が来ているでしょうね」
 こいつからすれば人間界などどうでもいいのだろうが、簡単に恐い事を言われるとなんか腹立つな。
「では私をこの辺で解放して頂けないでしょうか?」
 察するに妲己の一味では無さそうだ。そろそろ解放してやろう。
「変なまねはするなよ。解放したら真っ直ぐ故郷に帰れ」
「もう抵抗する気は更々ございません。承知いたしました」
 もしもの時の為ルカリに魔法の準備を促し、村正をヴァンパイアの身体と地面から抜き鞘に収める。
「ではご機嫌ようでございます」
 ガラントはそう言って小さなコウモリの姿になり、上空へパタパタと飛び去ったのだった。
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