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第145話 無念
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そして、ややお人好しで人柄の良い二人ならば、お地蔵様の警告たる言葉を素直に受け止め、言われた通りに人形を置いて行くと思われたのだが。
「貴重で有難いお地蔵様のお言葉。本来なら謹んでこの人形は手放し、我が家へと帰るところなのですが、あっしらはどうにもこうにも娘にこの人形を渡したくて仕方がないんでさぁ...」
清兵が申し訳なそうにそう言うと。
「...如何、既に呪いは始まってしもうておるようだのう...お主らの眼が正気を失っておることを物語っておるわい...」
地蔵である一蔵の物言いは無念と残念さが込めれていた。
確かにこの時、清兵とトキの眼は催眠術にでもかかっているが如く、正常とは程遠い異常なものに見えたのだった。
「...お主らの目を覚まさせてやりたいが、残念なことに呪いは儂らの力ではどうすることもできんようだ...」
実は二人が七体の地蔵の前で立ち止まった瞬間から、大黒車の荷の中にある人形に向かい神通力を放っていたのだけれど、人形に潜む怪異の力が強すぎて全く効果が現れない状況だったのである。
ゆえに清兵とトキをなんとか説き伏せ、人形を捨てさせようという目論見があったのだが時既に遅く、人形から発せられた呪いは二人の思慮する能力を支配していたのであった...
「貴重で有難いお地蔵様のお言葉。本来なら謹んでこの人形は手放し、我が家へと帰るところなのですが、あっしらはどうにもこうにも娘にこの人形を渡したくて仕方がないんでさぁ...」
清兵が申し訳なそうにそう言うと。
「...如何、既に呪いは始まってしもうておるようだのう...お主らの眼が正気を失っておることを物語っておるわい...」
地蔵である一蔵の物言いは無念と残念さが込めれていた。
確かにこの時、清兵とトキの眼は催眠術にでもかかっているが如く、正常とは程遠い異常なものに見えたのだった。
「...お主らの目を覚まさせてやりたいが、残念なことに呪いは儂らの力ではどうすることもできんようだ...」
実は二人が七体の地蔵の前で立ち止まった瞬間から、大黒車の荷の中にある人形に向かい神通力を放っていたのだけれど、人形に潜む怪異の力が強すぎて全く効果が現れない状況だったのである。
ゆえに清兵とトキをなんとか説き伏せ、人形を捨てさせようという目論見があったのだが時既に遅く、人形から発せられた呪いは二人の思慮する能力を支配していたのであった...
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