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第12話 精神汚染

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 謹慎の開けたアルフは、自分の部屋で青くなっていた。首まで青ざめた顔で、胸を見る。
 胸は両手に収まりきらない程に成長が進んでおり、足元も完全に大きな胸に隠されてしまっていた。
 おそるおそる持ち上げてみる。重量のある巨乳は、柔らかな感触を返してきた。

「これならご主人様にも満足して貰える……っいや、何を考えているのよ…私は!?」

 そこまで考えたところで、自分の思考にゾッとした。
 以前ならば憎くて仕方がなかった調教師に、今では奉仕したいという気持ちさえ芽生えている。
 それどころか、口調も変化している。アルフは自分の口元に手をやった。

「し、しっかりしろ……私はアルフだ、アウライ帝国の忠実な下僕――断じて違うわ、ッ違う……」

 ナノマシンの侵蝕は、着実に進み続けている。
 調教師はこの場にいないにも関わらず、女性口調になりかけている自分に絶望した。

 またいくら栄養補給のためとはいえ、ディルドを使い切る必要は無い。
 補給のためではなく、快楽を得ることに没頭していた自分を想起して狼狽する。

(じょ、冗談ではない…! このまま堕ちてたまるか……堕ちたくない……! )

 アルフは弱音を吐きそうになる心を叱咤して、気を持ち直す。

 あの時、調教師に命じられた、全肯定しろという言葉の効果ははまだ続いている可能性がある。
 だが、あの調教師さえ居なければ逃げる隙は伺えるだろう。

(今は脱出することだけを考えろ……性別が戻る方法はこの際もう諦めるしかない、せめて……)

 これでも未だ心は兵士としての心を失ってはいない。
 いくらあられもない姿を見せてしまったとはいえ、忠誠を誓いたくは無い。
 屈辱的な目に遭わされても、アルフは脱走計画を必死で模索していた。

(全てはロタール連邦のために……)

 だがアウライ帝国にマイナスな意見を持とうとしたところで、何故かその考えがふっとかき消されてしまう。
 それどころか、アウライ人に対して一度たりとも覚えたことの無かったはずの不思議な感情が生まれていた。

 今朝まではなかった己の感情、アルフは困惑する。

(なんだ、この感情は……)

 思い出すだけで、期待で腰が震えそうになる。
 明らかにあのディルドを使ってから、精神そのものに変化が生じていた。
 胸がどんどんと膨れているのも、その一環だろう。

「ぐ……」

 沸き起こる焦燥感も、どこかふわふわとした多幸感に打ち消されていく。

 脱出の手段を考えなければ、アウライ帝国を憎悪しなければ。
 そういったことを考えようとした途端に、心がざわついてそれ以上の何かが自我を押し流してしまう。

 思考することを阻害されている。
 その異常性を自覚出来るだけの理性はまだあったが、どうしてか行動に移そうとする気力が湧いてこなかった。

(何故だ……)

 どれほど精神では抗おうと、身体は正直な反応を見せてしまう。
 崩れそうになる理性を叱咤し、心を奮い立たせて懸命にアルフは抵抗する。

 それでもナノマシンの汚染は、じわじわと精神にまで染み込んでくる。

「くそ……」

 こうやって葛藤している間にも、刻一刻と時間はすぎて行く。
 結局せっかくの貴重な時間だと言うのに、アルフは何も出来ずに部屋の中で燻っていた。

「よう、来てやったぞ」

「なっ……」

 乱暴に扉が開けられ、入ってきたのはあの調教師だった。
 調教師は無表情でたち入ってくるが、アルフの胸を見るなり

「へえ……随分とでっかくなったじゃねえか」

「んっ! あ、ふぁ……」

 ズカズカと歩み寄ってきた調教師は、そのままアルフの巨乳を揉みしだいた。

「くっ、ふぅう……!! 」

 大きな男の両手でも、成長したEカップの豊乳は溢れてしまう。
 むにゅうっと手のひらの中で形を変えながら、親指で乳首を陥没させてきた。

「んぁあっ! 」

「まだ触っただけだろ。雌の声上げやがって。良い感じに感度も上がってきたみたいだな」

 それでも未だに続く全肯定の命令が、決して抵抗の意思を持たせてはくれない。
 目の前の人間に従うべきだと、脳が認識していた。

(まずい、今のこの浸蝕度でこの男と接触するのは……)

 男に触れられるアルフは危ぶもうとするも、敵視しようとしたところでやはり意識がかき乱される。
 それでも心に喝を入れ、強く危機意識を持ち直した。

「んんっ……」

 それでもやはり、鼻につくような甘い声を出すのは留められない。

「良い反応だ、来い。調教の続きをしてやるよ」

 調教師のその言葉に、腟内を疼かせてしまう自分が恨めしい。
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