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第四章 絢爛のスクールフェスタ
第314話 ダンスパーティーの準備
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「ええ~! 生徒会室、変わりすぎじゃん!?」
放課後、生徒会室に集まった僕たちは、開口一番にメルアが叫んだようにその変貌振りに驚かされることになった。
「いい仕事をするには、環境にこだわりませんと! 物置部屋をそのまま使うんじゃ能がなさすぎですわぁ!」
マリーが自慢げに模様替えした新しい生徒会室に僕たちを促す。新しい生徒会室には、以前よりも見た目は簡素だが座り心地の良い椅子や作業がしやすい大きなテーブル、生徒を含めた来客用のソファが早速運び込まれており、ダンスパーティーの共同プロデューサーとして呼ばれたリリルルがすっかり寛いだ様子を見せている。
「「リリルルは先に入らせてもらった。昼寝するのにも丁度良さそうだ」」
「私たちに協力してくれるということなら、その昼寝とやらの時間も確保しなくもない」
「「そこまで言うならリリルルはお前たちに力を貸そう」」
リリルルの扱いを心得たようなリゼルの誘い文句に、リリルルが嬉しそうな笑顔を見せる。二人は同時に立ち上がると、生徒会室の空きスペースに向かってくるくると踊りながら移動を始めた。
「おい、なにしてる。合わせるぞ、ライル」
「あ、ああ……」
リゼルがライルを誘い、社交ダンスのような動きでリリルルに続く。
「うふふっ。ダンスパーティーへの期待が益々高まりますわぁ~!」
マリーが四人のリズムに合わせて拍手を始め、ファラがそれに合わせて足と手を使ってリズムを刻む。
「にゃははっ! これは絶対楽しいな!」
「「リリルルは預言しよう。この建国祭が過去最高の盛り上がりを見せるということを。だがそれは、数多ある障害と脅威に打ち勝ってこそのハッピーエンドだ」」
リリルルが微笑みながら歌うように預言を口にする。占いを特技としている彼女たちの言葉には、明るくも、どこか不穏な空気が混じっており、今のカナルフォード学園の現状を如実に表しているように感じられた。
「出たっ! リリルルちゃんの占い! これってイグニスの妨害に負けず、やり遂げれば絶対楽しい建国祭になるっちゅーことだよね」
「私もそう思うわ。直接生徒会の生徒に手出しはしないと思うけれど、デュラン家が調達した調度品を理由に生徒会室を封鎖されたこともあるし、あからさまに人を集めようとしたイベント計画もある……。先手を打てるように考えなくては」
幾分か楽観的なメルアに対して、エステアはあくまで慎重だ。僕もエステアと同意見だったが、今は明るい気分に水を差したくないので、口を挟むのは避けた。それにしても、障害はともかく、脅威というのはなにを意味しているのだろう。未然に防げるに越したことはないけれど、どんな妨害をしてくるのかが読めない相手なだけに、不安は募る。
「……おい、リリルルとリゼライ! いつまで踊ってんだ?」
僕のとりとめもない思考を中断したのは、ヴァナベルの笑い声だった。
「リゼ……ライ?」
「おい、人の名前を勝手に略すな!」
きょとんとしているグーテンブルク坊やから手を解き、ライルが苦笑を浮かべている。
「あ、リリルルちゃんに合わせてリゼライくんってことなのかな」
アルフェが名前の意味に気がついて解説してくれたので、僕もやっと意味がわかった。
「そうそう。なかなかいい名前だろ? なんかステージ名っていうかさ、そういうのがあった方が親しみやすいかなって」
「一理あるかも~」
ヴァナベルの話にヌメリンがうんうんと頷いている。
「お前の言い分もわかるが、いくら祭りとはいえ、私たち貴族には節度ある振る舞いが必要だ。リリルルはともかく、リゼライは遠慮させてもらうぞ」
早口でまくし立てるリゼルはヴァナベルに馴れ馴れしく呼ばれたせいか、耳まで真っ赤にしている。
「「リリルル……リゼライ……悪くないと思うが……」」
「リリルルは名前そのものだからいいが、私は親からもらった名前を略されるのは困るんだよ」
食い下がるリリルルにリゼルは困った様子で丁寧に説明すると、リリルルは目を瞬いた。
「「言われて見ればリゼルの言う通りだな。ならば、その名は我々の心の内でのみ呼ぶことにしよう。親しみを込めて」」
「ああ、それなら勝手にしてくれ」
口調はやや荒っぽかったが、リゼルは悪く思ってはいない様子だ。リリルルはダンスの理解者ということでどうやら、リゼルのことを気に入っているようだし、リゼルはリゼルでリリルルのダンスや人を惹きつける才能を評価していることがわかる。
「全~然違うようでいて、この組み合わせって~すご~く仲良くなりそうだねぇ~」
ヌメリンがおっとりと四人の様子を評し、僕たちはそれに頷く。
「リリルルちゃんの同盟は、そのうちカナルフォード学園全体に広がるかもしれないね」
「そうなったら、カナルフォード学園同盟か! なんか夢みたいな話だけど、いいな!」
アルフェの言葉にヴァナベルが兎耳を揺らしながら小さく跳ねる。だが、リリルルは首を横に振った。
「「忘れたとは言わせない。1年A組はF組によって既に制圧されているぞ」」
なにかと思えばマリーの模擬演習の勝利をまだ引き摺っているようだ。かといって馴れ合うつもりはないということではないことは、リゼルにも伝わったようで、彼はグーテンブルク坊やと顔を見合わせて噴き出した。
「ははははっ! そういえばそうだな。再戦は来年度だろうが、次は負けないぞ」
放課後、生徒会室に集まった僕たちは、開口一番にメルアが叫んだようにその変貌振りに驚かされることになった。
「いい仕事をするには、環境にこだわりませんと! 物置部屋をそのまま使うんじゃ能がなさすぎですわぁ!」
マリーが自慢げに模様替えした新しい生徒会室に僕たちを促す。新しい生徒会室には、以前よりも見た目は簡素だが座り心地の良い椅子や作業がしやすい大きなテーブル、生徒を含めた来客用のソファが早速運び込まれており、ダンスパーティーの共同プロデューサーとして呼ばれたリリルルがすっかり寛いだ様子を見せている。
「「リリルルは先に入らせてもらった。昼寝するのにも丁度良さそうだ」」
「私たちに協力してくれるということなら、その昼寝とやらの時間も確保しなくもない」
「「そこまで言うならリリルルはお前たちに力を貸そう」」
リリルルの扱いを心得たようなリゼルの誘い文句に、リリルルが嬉しそうな笑顔を見せる。二人は同時に立ち上がると、生徒会室の空きスペースに向かってくるくると踊りながら移動を始めた。
「おい、なにしてる。合わせるぞ、ライル」
「あ、ああ……」
リゼルがライルを誘い、社交ダンスのような動きでリリルルに続く。
「うふふっ。ダンスパーティーへの期待が益々高まりますわぁ~!」
マリーが四人のリズムに合わせて拍手を始め、ファラがそれに合わせて足と手を使ってリズムを刻む。
「にゃははっ! これは絶対楽しいな!」
「「リリルルは預言しよう。この建国祭が過去最高の盛り上がりを見せるということを。だがそれは、数多ある障害と脅威に打ち勝ってこそのハッピーエンドだ」」
リリルルが微笑みながら歌うように預言を口にする。占いを特技としている彼女たちの言葉には、明るくも、どこか不穏な空気が混じっており、今のカナルフォード学園の現状を如実に表しているように感じられた。
「出たっ! リリルルちゃんの占い! これってイグニスの妨害に負けず、やり遂げれば絶対楽しい建国祭になるっちゅーことだよね」
「私もそう思うわ。直接生徒会の生徒に手出しはしないと思うけれど、デュラン家が調達した調度品を理由に生徒会室を封鎖されたこともあるし、あからさまに人を集めようとしたイベント計画もある……。先手を打てるように考えなくては」
幾分か楽観的なメルアに対して、エステアはあくまで慎重だ。僕もエステアと同意見だったが、今は明るい気分に水を差したくないので、口を挟むのは避けた。それにしても、障害はともかく、脅威というのはなにを意味しているのだろう。未然に防げるに越したことはないけれど、どんな妨害をしてくるのかが読めない相手なだけに、不安は募る。
「……おい、リリルルとリゼライ! いつまで踊ってんだ?」
僕のとりとめもない思考を中断したのは、ヴァナベルの笑い声だった。
「リゼ……ライ?」
「おい、人の名前を勝手に略すな!」
きょとんとしているグーテンブルク坊やから手を解き、ライルが苦笑を浮かべている。
「あ、リリルルちゃんに合わせてリゼライくんってことなのかな」
アルフェが名前の意味に気がついて解説してくれたので、僕もやっと意味がわかった。
「そうそう。なかなかいい名前だろ? なんかステージ名っていうかさ、そういうのがあった方が親しみやすいかなって」
「一理あるかも~」
ヴァナベルの話にヌメリンがうんうんと頷いている。
「お前の言い分もわかるが、いくら祭りとはいえ、私たち貴族には節度ある振る舞いが必要だ。リリルルはともかく、リゼライは遠慮させてもらうぞ」
早口でまくし立てるリゼルはヴァナベルに馴れ馴れしく呼ばれたせいか、耳まで真っ赤にしている。
「「リリルル……リゼライ……悪くないと思うが……」」
「リリルルは名前そのものだからいいが、私は親からもらった名前を略されるのは困るんだよ」
食い下がるリリルルにリゼルは困った様子で丁寧に説明すると、リリルルは目を瞬いた。
「「言われて見ればリゼルの言う通りだな。ならば、その名は我々の心の内でのみ呼ぶことにしよう。親しみを込めて」」
「ああ、それなら勝手にしてくれ」
口調はやや荒っぽかったが、リゼルは悪く思ってはいない様子だ。リリルルはダンスの理解者ということでどうやら、リゼルのことを気に入っているようだし、リゼルはリゼルでリリルルのダンスや人を惹きつける才能を評価していることがわかる。
「全~然違うようでいて、この組み合わせって~すご~く仲良くなりそうだねぇ~」
ヌメリンがおっとりと四人の様子を評し、僕たちはそれに頷く。
「リリルルちゃんの同盟は、そのうちカナルフォード学園全体に広がるかもしれないね」
「そうなったら、カナルフォード学園同盟か! なんか夢みたいな話だけど、いいな!」
アルフェの言葉にヴァナベルが兎耳を揺らしながら小さく跳ねる。だが、リリルルは首を横に振った。
「「忘れたとは言わせない。1年A組はF組によって既に制圧されているぞ」」
なにかと思えばマリーの模擬演習の勝利をまだ引き摺っているようだ。かといって馴れ合うつもりはないということではないことは、リゼルにも伝わったようで、彼はグーテンブルク坊やと顔を見合わせて噴き出した。
「ははははっ! そういえばそうだな。再戦は来年度だろうが、次は負けないぞ」
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