304 / 396
第四章 絢爛のスクールフェスタ
第304話 ヴァナベルの懸念
しおりを挟む
「よう、リーフ。一緒にメシいいか? 出来れば二人きりってのが希望なんだけどさ」
翌週の朝、いつものように食堂へ行くと、ヴァナベルに声をかけられた。
二人きりがいいという希望を伝えられたということは、何かしらの相談なのだろうな。みんなに聞かれたくないということはないと思うけれど、でも、ヴァナベルのことだから話ながら自分の考えを整理したいのかもしれない。
「ワタシなら大丈夫だよ、リーフ。行ってあげて」
「ありがとう、アルフェ」
僕があれこれ気を回さないように気遣ってくれたのか、アルフェが笑顔で送り出してくれる。
「必要なら先に教室に荷物を運んでおきます」
「助かるよ、ホム」
ホムが話が長くなることも考えて提案してくれるのも有り難い。ファラにも笑顔で見送られ、僕はいつもはヴァナベルと一緒のヌメリンと入れ替わりに二人で朝食を摂ることになった。
「……それで、ヴァナベル。なにか相談ごとかい?」
「いや、大袈裟な感じにしてなんだけど、相談ってほどでもねぇんだ」
そう言いながらも大皿に朝食を盛り付けるヴァナベルは、先ほどからパンばかりを盛り付けている。どうも心ここにあらずといった様子だ。
「けどさ、同じクラス委員長としてお前の意見は聞かなきゃと思って」
「クラスのことかい?」
同じクラス委員長として僕と二人きりで話したいという意向も汲み取れるので訊ねてみると、ヴァナベルは首を縦に振った。
「ああ。これから建国祭だなんだのってあるだろ? なのに、オレたちF組から六人も生徒会の方に引き抜かれたら、みんな心配になるんじゃねぇかと思ってさ」
「確かに二十人のクラスから、六人も生徒会に回るとなると、変化に戸惑うかもしれないね」
生徒会の編成に異論はないのだが、F組に不安が広がるのはヴァナベルの考えているように避けておきたいところだ。
「だろ? しかも生徒会副会長はお前で、オレはその補佐。クラス委員の仕事はどうなるんだって思われるだろうしさ。……いや、どっちもちゃんとやるつもりだから引き受けたんだけど、こういうのは言わなきゃわかんねぇだろ?」
「そうだね。ヴァナベルの言う通りだよ。僕としてもどちらもきちんとやりたい。F組が活躍するのはエステアの願いでもあるからね」
僕の考えを聞いて安心したのか、ヴァナベルの顔に笑顔が戻る。
「だよな! ってわけでさ、変に不安や憶測を生まないようにこっちから先に話そうと思うんだよ」
席に着くやいなや、ヴァナベルが急いだ様子で朝食を口に詰め込んでいく。
「いい案だと思う。僕だったら思いつかなかったよ」
「マジか? お前なら真っ先に考えていそうなのに、意外だな」
ヴァナベルにそう言われて僕は思わず首を竦めた。
「僕は人の考えていることに少し疎いところがあるからね」
「ああ、所詮他人の考えてることはわかんねぇ、みたいな感じで達観してるもんな!」
僕のことを評価してくれているのは有り難いけれど、どうも買いかぶられ過ぎているのが気になるところだ。変に指摘するようなことでもないから、話は合わせておくけれど。
「まあ、そんなところだね。アルフェやホムのことなら、なんとなくわかるんだけど」
「あれをなんとなくって言っちまうあたり、お前って凄いよな」
「そうかな? アルフェなんて結構顔に出やすいタイプだと思うけど」
僕がそう応えると、ヴァナベルは驚いたように目をまん丸に見開き、顔の前で忙しなく手を横に振った。
「いやいやいや! それはお前の前だけだって! いつもにこにこしてるいい子ちゃんだけどさ、武侠宴舞なんて見てたらとんでもない戦い方をやってのけるし、オレなんて最近までずっと誤解してたんだぞ!?」
アルフェには芯の強いところがあるので、普段との差に驚いたというのはわかるにしても、僕の前だけというのがよくわからないな。
「君の前でもにこにこしてると思うけど?」
「ちっちっち! わかってねぇなぁ……。お前に向ける笑顔は特別なんだって」
ヴァナベルが諭すように畳みかけてくるが、やはり僕にはよくわからない。
「特別?」
「そっ! まあ、外野があれこれ言うことじゃねぇからこのぐらいにしとくけど」
「そうか」
まあ、アルフェのことは僕が一番よくわかっているだろうし、そこが揺るがないなら気にすることはないだろう。アルフェだって僕のことを理解してくれているし、昔から好きでいてくれるのだから。
「はぁ~、納得すんの早ぇよ! まあ、お前にあれこれ聞かれるのも想像つかないし、らしくていいな。じゃ、そういうわけで、今日のホームルームはひとつ頼む!」
「わかった。生徒会のことを僕が説明して、僕たちの意向を君が話すのでいいかな、ヴァナベル?」
「ああ、それがいいな。じゃ、オレはタヌタヌ先生に許可とって来るからさ、またな!」
話の合間にヴァナベルが詰め込むようにして朝食を食べ終わり、急いで食堂を出て行く。やれやれ、忙しなくて危なっかしいところはあるにせよ、この行動力と瞬発力の速さはヴァナベルの武器でもあるな。さて、そうと決まれば僕も急いだ方がいいだろう。
いつもよりも急いで朝食を食べ終え、アルフェたちが座っているテーブルの方を見遣る。ヌメリンを交えたいつもと違うメンバーではあるけれど、アルフェはいつも通り楽しそうな笑顔を浮かべている。
アルフェの笑顔を見ていると、先ほどまでのヴァナベルの話がまた思い起こされた。
アルフェにとって僕が特別というのは、一体どういう意味だったのだろうか。僕にとって、アルフェはずっと特別だったから、他人から改めて指摘されるのはなんだか不思議な気分だ。
* * *
ヴァナベルが先回りしてタヌタヌ先生にホームルームの時間をもらっていたので、生徒会と建国祭の話を落ち着いてクラスメイトたちに話すことが出来た。
マリーの誕生日パーティーの後からずっと考えていたのだろう、ヴァナベルの説明はほとんど完璧で、僕が口を挟む余地はなく、彼女のリーダーシップとその自覚を感じることが出来た。
「「リリルルにはわかっていた。ライブのあの一体感を見た時から、そこに第二次エステア生徒会の未来があることを」」
これは嬉しい誤算ではあるのだが、F組の生徒たちのほとんどは、僕たちが生徒会編成に組み込まれるのを予想していたらしい。そのこともあって、かなり好意的に受け入れられていた。
「拙者もでござるよ! まさかヴァナベル殿が副会長補佐に入られるとは想定外だったでござるが」
「それを言うならヌメもだろうが!」
アイザックの発言にヴァナベルが心外だとばかりに笑いながら声を荒らげる。
「ヌメリンは商才があるし、貴族側からも一目置かれてるから、会計補佐なら不思議じゃないよね」
ロメオがアイザックの代わりに応えると、ヌメリンが嬉しそうに身体を揺らしながらヴァナベルを見つめた。
「だって、ベル~」
「うっせぇよ!」
口調は荒っぽいのだが、二人とも笑顔なのでどっと笑いが起こる。ヴァナベルは一通り笑ったあと、息を整えてから改めてクラス全体を見渡した。
「ってわけでさ、生徒会に協力するし、なんなら編成に入っちまうことになったんだが、クラス委員長は――」
「このまま続けて欲しい」
ヴァナベルの言葉を最後まで聞くことなく、はっきりとした低い声で言い切ったのは、ギードだった。
「負担が大きいのなら、こちらが補佐する。だが、リーダーはヴァナベルとリーフ以外に考えられない」
「そうでござる! F組をここまで導いた功績はここで終わりではないはずでござるよ~!」
「「我々F同盟は永遠に不滅だ」」
普段は寡黙なギードの発言にアイザックとリリルルが続き、他のクラスメイトからも拍手が起こる。みんながヴァナベルを信頼しているのは、明らかだった。
「みんな……。こんなオレをリーダーだって言ってくれて、ありがとな……」
これだけの支持を得られたことで緊張の糸が解けたのだろう、ヴァナベルの声が少し涙ぐんで聞こえたような気がした。
「いい機会だから改めて言うが、オレをリーダーにしてくれたのは、F組のみんなだ。だから、これからもオレたちに力を……力を……貸してくれ」
つっかえながらもどうにか振り絞るヴァナベルを見遣ると、泣きそうになるのを必死に堪えている様子だ。ここは、僕が助けるべきところなのだろうな。
「生徒会としては建国祭を昨年以上に盛り上げたい。貴族も平民もない、みんなが楽しいと思える建国祭にするには、F組の力が不可欠だ。協力してほしい」
生徒会副会長となった以上は、エステアの言葉を伝えておく必要がある。彼女の思いを言葉にして改めて口にすると、皆が笑顔を見せて応えてくれた。
「もちろんでござる!」
「お祭りってワクワクするよね! その気持ちみんなと分かち合いたい!」
ギードが発言したことにも少し驚かされたのだが、建国祭のことを楽しみにしていたらしく、普段は大人しい生徒たちからも嬉しそうな声が上がる。
「正直今年もダメかと思ってた……。でも生徒会が変えてくれるなら、全力で盛り上げたい」
マリーが言っていたエステアへの平民寮の生徒の投票率が100%という数値は、それだけエステアへの期待――この学園の変化を求めているということだ。そうとなれば、僕たちがやるべき仕事は、益々やり甲斐のあるものとなるだろう。
これは忙しくなるだろうなと思いながらヴァナベルを見上げると、ヴァナベルはにっと笑って大きく声を張り上げた。
「おっしゃ! それでこそF組だ! やろうぜ、みんな!!」
「おーーーー!!」
ヴァナベルの声に全員が笑顔で高く拳を突き上げる。この光景をエステアが見たら、どんなに励まされるだろう。今にも泣きそうに鼻を鳴らしているヴァナベルの隣で、そんなことを考える僕も、目頭が熱くなるのを感じていた。
翌週の朝、いつものように食堂へ行くと、ヴァナベルに声をかけられた。
二人きりがいいという希望を伝えられたということは、何かしらの相談なのだろうな。みんなに聞かれたくないということはないと思うけれど、でも、ヴァナベルのことだから話ながら自分の考えを整理したいのかもしれない。
「ワタシなら大丈夫だよ、リーフ。行ってあげて」
「ありがとう、アルフェ」
僕があれこれ気を回さないように気遣ってくれたのか、アルフェが笑顔で送り出してくれる。
「必要なら先に教室に荷物を運んでおきます」
「助かるよ、ホム」
ホムが話が長くなることも考えて提案してくれるのも有り難い。ファラにも笑顔で見送られ、僕はいつもはヴァナベルと一緒のヌメリンと入れ替わりに二人で朝食を摂ることになった。
「……それで、ヴァナベル。なにか相談ごとかい?」
「いや、大袈裟な感じにしてなんだけど、相談ってほどでもねぇんだ」
そう言いながらも大皿に朝食を盛り付けるヴァナベルは、先ほどからパンばかりを盛り付けている。どうも心ここにあらずといった様子だ。
「けどさ、同じクラス委員長としてお前の意見は聞かなきゃと思って」
「クラスのことかい?」
同じクラス委員長として僕と二人きりで話したいという意向も汲み取れるので訊ねてみると、ヴァナベルは首を縦に振った。
「ああ。これから建国祭だなんだのってあるだろ? なのに、オレたちF組から六人も生徒会の方に引き抜かれたら、みんな心配になるんじゃねぇかと思ってさ」
「確かに二十人のクラスから、六人も生徒会に回るとなると、変化に戸惑うかもしれないね」
生徒会の編成に異論はないのだが、F組に不安が広がるのはヴァナベルの考えているように避けておきたいところだ。
「だろ? しかも生徒会副会長はお前で、オレはその補佐。クラス委員の仕事はどうなるんだって思われるだろうしさ。……いや、どっちもちゃんとやるつもりだから引き受けたんだけど、こういうのは言わなきゃわかんねぇだろ?」
「そうだね。ヴァナベルの言う通りだよ。僕としてもどちらもきちんとやりたい。F組が活躍するのはエステアの願いでもあるからね」
僕の考えを聞いて安心したのか、ヴァナベルの顔に笑顔が戻る。
「だよな! ってわけでさ、変に不安や憶測を生まないようにこっちから先に話そうと思うんだよ」
席に着くやいなや、ヴァナベルが急いだ様子で朝食を口に詰め込んでいく。
「いい案だと思う。僕だったら思いつかなかったよ」
「マジか? お前なら真っ先に考えていそうなのに、意外だな」
ヴァナベルにそう言われて僕は思わず首を竦めた。
「僕は人の考えていることに少し疎いところがあるからね」
「ああ、所詮他人の考えてることはわかんねぇ、みたいな感じで達観してるもんな!」
僕のことを評価してくれているのは有り難いけれど、どうも買いかぶられ過ぎているのが気になるところだ。変に指摘するようなことでもないから、話は合わせておくけれど。
「まあ、そんなところだね。アルフェやホムのことなら、なんとなくわかるんだけど」
「あれをなんとなくって言っちまうあたり、お前って凄いよな」
「そうかな? アルフェなんて結構顔に出やすいタイプだと思うけど」
僕がそう応えると、ヴァナベルは驚いたように目をまん丸に見開き、顔の前で忙しなく手を横に振った。
「いやいやいや! それはお前の前だけだって! いつもにこにこしてるいい子ちゃんだけどさ、武侠宴舞なんて見てたらとんでもない戦い方をやってのけるし、オレなんて最近までずっと誤解してたんだぞ!?」
アルフェには芯の強いところがあるので、普段との差に驚いたというのはわかるにしても、僕の前だけというのがよくわからないな。
「君の前でもにこにこしてると思うけど?」
「ちっちっち! わかってねぇなぁ……。お前に向ける笑顔は特別なんだって」
ヴァナベルが諭すように畳みかけてくるが、やはり僕にはよくわからない。
「特別?」
「そっ! まあ、外野があれこれ言うことじゃねぇからこのぐらいにしとくけど」
「そうか」
まあ、アルフェのことは僕が一番よくわかっているだろうし、そこが揺るがないなら気にすることはないだろう。アルフェだって僕のことを理解してくれているし、昔から好きでいてくれるのだから。
「はぁ~、納得すんの早ぇよ! まあ、お前にあれこれ聞かれるのも想像つかないし、らしくていいな。じゃ、そういうわけで、今日のホームルームはひとつ頼む!」
「わかった。生徒会のことを僕が説明して、僕たちの意向を君が話すのでいいかな、ヴァナベル?」
「ああ、それがいいな。じゃ、オレはタヌタヌ先生に許可とって来るからさ、またな!」
話の合間にヴァナベルが詰め込むようにして朝食を食べ終わり、急いで食堂を出て行く。やれやれ、忙しなくて危なっかしいところはあるにせよ、この行動力と瞬発力の速さはヴァナベルの武器でもあるな。さて、そうと決まれば僕も急いだ方がいいだろう。
いつもよりも急いで朝食を食べ終え、アルフェたちが座っているテーブルの方を見遣る。ヌメリンを交えたいつもと違うメンバーではあるけれど、アルフェはいつも通り楽しそうな笑顔を浮かべている。
アルフェの笑顔を見ていると、先ほどまでのヴァナベルの話がまた思い起こされた。
アルフェにとって僕が特別というのは、一体どういう意味だったのだろうか。僕にとって、アルフェはずっと特別だったから、他人から改めて指摘されるのはなんだか不思議な気分だ。
* * *
ヴァナベルが先回りしてタヌタヌ先生にホームルームの時間をもらっていたので、生徒会と建国祭の話を落ち着いてクラスメイトたちに話すことが出来た。
マリーの誕生日パーティーの後からずっと考えていたのだろう、ヴァナベルの説明はほとんど完璧で、僕が口を挟む余地はなく、彼女のリーダーシップとその自覚を感じることが出来た。
「「リリルルにはわかっていた。ライブのあの一体感を見た時から、そこに第二次エステア生徒会の未来があることを」」
これは嬉しい誤算ではあるのだが、F組の生徒たちのほとんどは、僕たちが生徒会編成に組み込まれるのを予想していたらしい。そのこともあって、かなり好意的に受け入れられていた。
「拙者もでござるよ! まさかヴァナベル殿が副会長補佐に入られるとは想定外だったでござるが」
「それを言うならヌメもだろうが!」
アイザックの発言にヴァナベルが心外だとばかりに笑いながら声を荒らげる。
「ヌメリンは商才があるし、貴族側からも一目置かれてるから、会計補佐なら不思議じゃないよね」
ロメオがアイザックの代わりに応えると、ヌメリンが嬉しそうに身体を揺らしながらヴァナベルを見つめた。
「だって、ベル~」
「うっせぇよ!」
口調は荒っぽいのだが、二人とも笑顔なのでどっと笑いが起こる。ヴァナベルは一通り笑ったあと、息を整えてから改めてクラス全体を見渡した。
「ってわけでさ、生徒会に協力するし、なんなら編成に入っちまうことになったんだが、クラス委員長は――」
「このまま続けて欲しい」
ヴァナベルの言葉を最後まで聞くことなく、はっきりとした低い声で言い切ったのは、ギードだった。
「負担が大きいのなら、こちらが補佐する。だが、リーダーはヴァナベルとリーフ以外に考えられない」
「そうでござる! F組をここまで導いた功績はここで終わりではないはずでござるよ~!」
「「我々F同盟は永遠に不滅だ」」
普段は寡黙なギードの発言にアイザックとリリルルが続き、他のクラスメイトからも拍手が起こる。みんながヴァナベルを信頼しているのは、明らかだった。
「みんな……。こんなオレをリーダーだって言ってくれて、ありがとな……」
これだけの支持を得られたことで緊張の糸が解けたのだろう、ヴァナベルの声が少し涙ぐんで聞こえたような気がした。
「いい機会だから改めて言うが、オレをリーダーにしてくれたのは、F組のみんなだ。だから、これからもオレたちに力を……力を……貸してくれ」
つっかえながらもどうにか振り絞るヴァナベルを見遣ると、泣きそうになるのを必死に堪えている様子だ。ここは、僕が助けるべきところなのだろうな。
「生徒会としては建国祭を昨年以上に盛り上げたい。貴族も平民もない、みんなが楽しいと思える建国祭にするには、F組の力が不可欠だ。協力してほしい」
生徒会副会長となった以上は、エステアの言葉を伝えておく必要がある。彼女の思いを言葉にして改めて口にすると、皆が笑顔を見せて応えてくれた。
「もちろんでござる!」
「お祭りってワクワクするよね! その気持ちみんなと分かち合いたい!」
ギードが発言したことにも少し驚かされたのだが、建国祭のことを楽しみにしていたらしく、普段は大人しい生徒たちからも嬉しそうな声が上がる。
「正直今年もダメかと思ってた……。でも生徒会が変えてくれるなら、全力で盛り上げたい」
マリーが言っていたエステアへの平民寮の生徒の投票率が100%という数値は、それだけエステアへの期待――この学園の変化を求めているということだ。そうとなれば、僕たちがやるべき仕事は、益々やり甲斐のあるものとなるだろう。
これは忙しくなるだろうなと思いながらヴァナベルを見上げると、ヴァナベルはにっと笑って大きく声を張り上げた。
「おっしゃ! それでこそF組だ! やろうぜ、みんな!!」
「おーーーー!!」
ヴァナベルの声に全員が笑顔で高く拳を突き上げる。この光景をエステアが見たら、どんなに励まされるだろう。今にも泣きそうに鼻を鳴らしているヴァナベルの隣で、そんなことを考える僕も、目頭が熱くなるのを感じていた。
0
お気に入りに追加
794
あなたにおすすめの小説
知らない異世界を生き抜く方法
明日葉
ファンタジー
異世界転生、とか、異世界召喚、とか。そんなジャンルの小説や漫画は好きで読んでいたけれど。よく元ネタになるようなゲームはやったことがない。
なんの情報もない異世界で、当然自分の立ち位置もわからなければ立ち回りもわからない。
そんな状況で生き抜く方法は?
乙女ゲームの世界に転生したと思ったらモブですらないちみっこですが、何故か攻略対象や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛されています
真理亜
ファンタジー
乙女ゲームの世界に転生したと思ったら...モブですらないちみっこでした。
なのに何故か攻略対象者達や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛されています。
更に更に変態銀髪美女メイドや変態数学女教師まで現れてもう大変!
変態が大変だ! いや大変な変態だ!
お前ら全員ロ○か!? ロ○なんか!? ロ○やろぉ~!
しかも精霊の愛し子なんて言われちゃって精霊が沢山飛んでる~!
身長130cmにも満たないちみっこヒロイン? が巻き込まれる騒動をお楽しみ下さい。
操作ミスで間違って消してしまった為、再掲しております。ブックマークをして下さっていた方々、大変申し訳ございません。
異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです
ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。
転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。
前世の記憶を頼りに善悪等を判断。
貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。
2人の兄と、私と、弟と母。
母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。
ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。
前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
殿下!死にたくないので婚約破棄してください!
As-me.com
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私。
このままでは冤罪で断罪されて死刑にされちゃう運命が待っている?!
死にたくないので、早く婚約破棄してください!
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる