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第四章 絢爛のスクールフェスタ
第301話 一年越しのプレゼント
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演奏を終え、生徒からのハイタッチに応えていたエステアとメルアがステージ前の僕たちの元へとやってきたのは、ライブが終わってから十五分ほど後のことだった。
ステージの上はすっかり片付けられているが、食堂全体にその余韻は残っている。あちらこちらでマリーの誕生日を祝う声がするのも、きっとライブの影響だろう。
「ししょ~! どうだった? うちらのサプライズ!」
「マリーの言葉を借りるなら、最高だったね。楽しい体験をさせてもらったよ。透明ローブにエーテル遮断の機能をつけたのは見事だし、まさかあんな風に使われるとはね」
「試作品が結構上手いこと行ったから、ちょっと使って見たかったんだよね~。で、せっかくだから武侠宴舞のししょーの真似もしたいなって」
嬉しそうに語るメルアは、どこか誇らしげだ。僕としてもメルアが創意工夫している姿を見られたのが誇らしかった。
まあ、特級錬金術師ではあるので実現可能な技能は元々持っていたのかもしれないけれど、それでも何かを進化させようと考えること、それ事態が僕が常に考えていることであり、これまでの錬金術を通じてメルアに見せてきたものなので、それが僕の教えとして伝わったようだ。
「成功だったかしら?」
「もちろんです。エステアとメルア様の気持ちがこもった素晴らしい演奏でした」
注目されたことで少し気恥ずかしさが出たのか、エステアがはにかみながらホムに訊ねている。ホムは真面目に頷くと、エステアの問いかけに丁寧に応じた。
「ありがとう、ホム。あなたが言うなら間違いないわね」
「ホムはエステアに本当に信頼されているね」
僕がそう造ったということもあるのだが、ホムは基本的に本当のことしか言わない。だから、エステアが信頼を寄せるのにも大きく頷ける。
「それにしても楽しかった~。また演奏会とか出来たらいいよね」
アルフェも楽しげに頷き、和やかな空気がその場を包む。渇いた喉を潤して微笑み合っていると、大きく手を叩きながらマリーがやってきた。
「エステア、メルア、お陰様でサプライズ大成功でしたわぁ~! 私もまさか透明ローブで演出するなんて驚かされましたわ!」
興奮を隠せない様子のマリーに、メルアがエステアと目を合わせてにこにこと笑った。
「まだまだ驚くのは早いよ、マリー」
「急にもったいぶってなんですの?」
「一年越しのうちからのプレゼント、受け取って」
そう言ってメルアが傍らに手を伸ばして思い切り引っ張る。そこから現れたのは、透明ローブに包まれていた全長2mの魔導砲だ。
「メルア! メルア! メルア……! あなたってば、最高ですわぁ~!!」
エステアが支えていた魔導砲を胸に抱くように引き寄せ、マリーが早くも目を潤ませている。
「も~! 見ただけで決めるのはまだ早いって!」
「早いもなにも、最高なんですもの! 超最高とか、ウルトラ最高とか、世界一最高とかもっとアップブレードの余地はありますわよ!」
魔導砲を大事に抱えて持ち上げながら、マリーが興奮のあまり小さく飛び跳ねている。間近で反応を見たいと思ってはいたけれど、こんなに無邪気に喜んでもらえるとは、思ってもみなかったな。
「先に白状しておくと、うちだけじゃなくてししょーの力を滅茶苦茶借りてるからね。そこんとこ宜しく!」
「勿論ですわぁ。一年寝かされていたものが、こうして形になって想像以上の姿を見せてくれているんですもの、メルアが師匠と呼んで止まないリーフの力を借りたなんて想像に難くないですわ」
マリーが僕にありがとう、という気持ちを込めた熱い視線を送ってくる。僕の協力があることを打ち明けたメルアは、ホッとした様子で続けた。
「まあ、そもそもバンドの練習の合間に作っていたから、秘密でもなんでもないけどね」
「え……? それだけですの?」
どこが引っかかったのかわからないが、マリーが訝しげに僕たちを見つめてくる。
「それだけって?」
「徹夜しまくったり、早起きしたりとかしていませんの?」
ああ、なんだそっちの心配か。確かに一年かけて出来なかったものという背景を考えると、完成までの速さを疑われてるのは頷けるな。
「いや、ぜーんぜん! 放課後のあの時間だけ!」
「信じられないスピードですわぁ! リーフ、あなた、一体何級錬金術師なんですの?」
マリーがはっきりとした驚愕の視線をこちらに向けてくる。やれやれ、実力を少しでも発揮するとやっぱりそうなってしまうらしい。
「三級だけど、落ち着いたら特級錬金術師を取るつもりだよ」
「それでもメルアと並ぶだけですわぁ! もう、超ウルトラスーパー級錬金術師が必要な時代が来ましたわね!」
「いやいや……」
時代もなにも、そもそも僕の知識と技術は前世のものがメインなのだけれど。でも、それを話すわけにもいかないので苦笑いで誤魔化しておく。
「僕のことより、プレゼントの魔導砲はどう?」
「使い心地も良さそうですし、なによりリクエスト通り弾が不要というのが気に入りましたわ。しかも、魔力増幅器は貴重なブラッドグレイルという気合いの入れよう、たまりませんわ」
「見ただけでわかるものなのですか?」
不思議そうに問いかけたのはホムだ。問いかけにマリーは胸を張り、ステージに向けて魔導砲を構えるような仕草をして見せた。
「これでも一応、軍に一年ほどいたんですのよ」
「だよね。っちゅーわけで、リクエストにあったように弾の代わりにスパークショットを入れてるよ。飛距離も問題ないはずだから、今度試し打ちしてみて」
「最初の一射をとっておいてくれたことに感謝ですわぁ!」
魔導砲を下ろしたマリーが感激した様子で飛び跳ねる。プロフェッサーが自制できていなかったらどうなっていたかと思うと、彼の想像通りのことになりそうだから笑えないな。
「設計に自信はあるけれど、こういうのは使い心地も大事だからね。もし細かい調整が必要なら手伝うよ」
「さっすが、ししょ~! アフターサービスも完璧!」
マリーよりも先にメルアが反応したので、思わず噴き出してしまった。最近こうして笑うことがわかりやすく増えて来たな。これもアルフェとはまた違うメルアの明るい性格に影響されているようだ。
「褒めてもなにもでないけどね」
「出るし! ししょ~優しいから、めっちゃ出してくれるし!」
「それはメルアがいい弟子だからだよ」
「~~~っ!!!」
僕が褒めたのが余程嬉しかったのか、メルアはその嬉しさを表情と仕草で表現している。
「ふふっ。メルア先輩、リーフの前だとすっごくお弟子さんって感じだね」
「そーなの! もう、ししょーのこと敬いすぎちゃって親友のアルフェちゃんにどう接していいかわかんないレベル!」
感極まった様子のメルアがアルフェに抱きつきながら、ぐらぐらと身体を揺らしている。アルフェはその動きに任せて身体を揺らしながら、楽しげに応じた。
「今までどおり、厳しくお願いします!」
「ん~~~~、そのつもりだったんだけど、ししょーの優しさを見習って優しくしちゃうかも! だってめっちゃやる気出るし!」
この様子だと、メルアは本当に悩んでいるのだろうな。少し僕の背景を伝えておいた方がいいのかもしれない。
「僕の優しさはアルフェの影響だけどね」
「えっ? ちゅーことは、アルフェちゃんがししょーのししょー!?」
僕の発言が良くなかったのか、メルアが混乱した様子で僕とアルフェを忙しなく見比べている。
「細かいことは気にしないでいいと思うよ。メルアはメルアらしく、礼儀は礼儀として僕たちに教えてくれたら嬉しい。この学園の先輩としてね」
「うん! ワタシもそれがいい!」
僕の発言にアルフェが笑顔で頷く。アルフェがすぐに反応してくれたお陰で、メルアも落ち着きを取り戻したようだ。
「はぁ、この息ぴったりな感じ、さすがししょーとアルフェちゃんだよ」
「……あっ、この学園の先輩という意味でちょっと思い出したんだけど、いい?」
話が一段落したタイミングということもあってか、これまで笑顔で僕たちの話を聞いていたエステアが軽く手を挙げて許可を求めてくる。
「聞かせてください、エステア」
ホムが促すと、エステアはありがとうと頷いて話を切り出した。
ステージの上はすっかり片付けられているが、食堂全体にその余韻は残っている。あちらこちらでマリーの誕生日を祝う声がするのも、きっとライブの影響だろう。
「ししょ~! どうだった? うちらのサプライズ!」
「マリーの言葉を借りるなら、最高だったね。楽しい体験をさせてもらったよ。透明ローブにエーテル遮断の機能をつけたのは見事だし、まさかあんな風に使われるとはね」
「試作品が結構上手いこと行ったから、ちょっと使って見たかったんだよね~。で、せっかくだから武侠宴舞のししょーの真似もしたいなって」
嬉しそうに語るメルアは、どこか誇らしげだ。僕としてもメルアが創意工夫している姿を見られたのが誇らしかった。
まあ、特級錬金術師ではあるので実現可能な技能は元々持っていたのかもしれないけれど、それでも何かを進化させようと考えること、それ事態が僕が常に考えていることであり、これまでの錬金術を通じてメルアに見せてきたものなので、それが僕の教えとして伝わったようだ。
「成功だったかしら?」
「もちろんです。エステアとメルア様の気持ちがこもった素晴らしい演奏でした」
注目されたことで少し気恥ずかしさが出たのか、エステアがはにかみながらホムに訊ねている。ホムは真面目に頷くと、エステアの問いかけに丁寧に応じた。
「ありがとう、ホム。あなたが言うなら間違いないわね」
「ホムはエステアに本当に信頼されているね」
僕がそう造ったということもあるのだが、ホムは基本的に本当のことしか言わない。だから、エステアが信頼を寄せるのにも大きく頷ける。
「それにしても楽しかった~。また演奏会とか出来たらいいよね」
アルフェも楽しげに頷き、和やかな空気がその場を包む。渇いた喉を潤して微笑み合っていると、大きく手を叩きながらマリーがやってきた。
「エステア、メルア、お陰様でサプライズ大成功でしたわぁ~! 私もまさか透明ローブで演出するなんて驚かされましたわ!」
興奮を隠せない様子のマリーに、メルアがエステアと目を合わせてにこにこと笑った。
「まだまだ驚くのは早いよ、マリー」
「急にもったいぶってなんですの?」
「一年越しのうちからのプレゼント、受け取って」
そう言ってメルアが傍らに手を伸ばして思い切り引っ張る。そこから現れたのは、透明ローブに包まれていた全長2mの魔導砲だ。
「メルア! メルア! メルア……! あなたってば、最高ですわぁ~!!」
エステアが支えていた魔導砲を胸に抱くように引き寄せ、マリーが早くも目を潤ませている。
「も~! 見ただけで決めるのはまだ早いって!」
「早いもなにも、最高なんですもの! 超最高とか、ウルトラ最高とか、世界一最高とかもっとアップブレードの余地はありますわよ!」
魔導砲を大事に抱えて持ち上げながら、マリーが興奮のあまり小さく飛び跳ねている。間近で反応を見たいと思ってはいたけれど、こんなに無邪気に喜んでもらえるとは、思ってもみなかったな。
「先に白状しておくと、うちだけじゃなくてししょーの力を滅茶苦茶借りてるからね。そこんとこ宜しく!」
「勿論ですわぁ。一年寝かされていたものが、こうして形になって想像以上の姿を見せてくれているんですもの、メルアが師匠と呼んで止まないリーフの力を借りたなんて想像に難くないですわ」
マリーが僕にありがとう、という気持ちを込めた熱い視線を送ってくる。僕の協力があることを打ち明けたメルアは、ホッとした様子で続けた。
「まあ、そもそもバンドの練習の合間に作っていたから、秘密でもなんでもないけどね」
「え……? それだけですの?」
どこが引っかかったのかわからないが、マリーが訝しげに僕たちを見つめてくる。
「それだけって?」
「徹夜しまくったり、早起きしたりとかしていませんの?」
ああ、なんだそっちの心配か。確かに一年かけて出来なかったものという背景を考えると、完成までの速さを疑われてるのは頷けるな。
「いや、ぜーんぜん! 放課後のあの時間だけ!」
「信じられないスピードですわぁ! リーフ、あなた、一体何級錬金術師なんですの?」
マリーがはっきりとした驚愕の視線をこちらに向けてくる。やれやれ、実力を少しでも発揮するとやっぱりそうなってしまうらしい。
「三級だけど、落ち着いたら特級錬金術師を取るつもりだよ」
「それでもメルアと並ぶだけですわぁ! もう、超ウルトラスーパー級錬金術師が必要な時代が来ましたわね!」
「いやいや……」
時代もなにも、そもそも僕の知識と技術は前世のものがメインなのだけれど。でも、それを話すわけにもいかないので苦笑いで誤魔化しておく。
「僕のことより、プレゼントの魔導砲はどう?」
「使い心地も良さそうですし、なによりリクエスト通り弾が不要というのが気に入りましたわ。しかも、魔力増幅器は貴重なブラッドグレイルという気合いの入れよう、たまりませんわ」
「見ただけでわかるものなのですか?」
不思議そうに問いかけたのはホムだ。問いかけにマリーは胸を張り、ステージに向けて魔導砲を構えるような仕草をして見せた。
「これでも一応、軍に一年ほどいたんですのよ」
「だよね。っちゅーわけで、リクエストにあったように弾の代わりにスパークショットを入れてるよ。飛距離も問題ないはずだから、今度試し打ちしてみて」
「最初の一射をとっておいてくれたことに感謝ですわぁ!」
魔導砲を下ろしたマリーが感激した様子で飛び跳ねる。プロフェッサーが自制できていなかったらどうなっていたかと思うと、彼の想像通りのことになりそうだから笑えないな。
「設計に自信はあるけれど、こういうのは使い心地も大事だからね。もし細かい調整が必要なら手伝うよ」
「さっすが、ししょ~! アフターサービスも完璧!」
マリーよりも先にメルアが反応したので、思わず噴き出してしまった。最近こうして笑うことがわかりやすく増えて来たな。これもアルフェとはまた違うメルアの明るい性格に影響されているようだ。
「褒めてもなにもでないけどね」
「出るし! ししょ~優しいから、めっちゃ出してくれるし!」
「それはメルアがいい弟子だからだよ」
「~~~っ!!!」
僕が褒めたのが余程嬉しかったのか、メルアはその嬉しさを表情と仕草で表現している。
「ふふっ。メルア先輩、リーフの前だとすっごくお弟子さんって感じだね」
「そーなの! もう、ししょーのこと敬いすぎちゃって親友のアルフェちゃんにどう接していいかわかんないレベル!」
感極まった様子のメルアがアルフェに抱きつきながら、ぐらぐらと身体を揺らしている。アルフェはその動きに任せて身体を揺らしながら、楽しげに応じた。
「今までどおり、厳しくお願いします!」
「ん~~~~、そのつもりだったんだけど、ししょーの優しさを見習って優しくしちゃうかも! だってめっちゃやる気出るし!」
この様子だと、メルアは本当に悩んでいるのだろうな。少し僕の背景を伝えておいた方がいいのかもしれない。
「僕の優しさはアルフェの影響だけどね」
「えっ? ちゅーことは、アルフェちゃんがししょーのししょー!?」
僕の発言が良くなかったのか、メルアが混乱した様子で僕とアルフェを忙しなく見比べている。
「細かいことは気にしないでいいと思うよ。メルアはメルアらしく、礼儀は礼儀として僕たちに教えてくれたら嬉しい。この学園の先輩としてね」
「うん! ワタシもそれがいい!」
僕の発言にアルフェが笑顔で頷く。アルフェがすぐに反応してくれたお陰で、メルアも落ち着きを取り戻したようだ。
「はぁ、この息ぴったりな感じ、さすがししょーとアルフェちゃんだよ」
「……あっ、この学園の先輩という意味でちょっと思い出したんだけど、いい?」
話が一段落したタイミングということもあってか、これまで笑顔で僕たちの話を聞いていたエステアが軽く手を挙げて許可を求めてくる。
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