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第四章 絢爛のスクールフェスタ
第268話 マリーの人柄
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ライブが一段落し、ライブハウスを出ると、ひんやりとした冬の空気に迎えられた。興奮と熱気の渦巻くライブハウスの中では暑いくらいだったのに、外に出ると今が冬であることを改めて実感した。
「すごい体験だったね! ライブのあの白熱した空気、ワタシ、好きかも!」
「そうだね。たまにはこういうのも悪くない」
僕に遠慮してか最初は後方でリズムに合わせて身体を揺らしながら見ているだけだったアルフェも、後半になってからはエステアたちと同じく最前列でライブを楽しんだ。リズムに合わせて手を高く掲げ、小刻みに跳ぶ様子は、まるで興奮の波のようで見ている僕も楽しかった。
「あっ、いたいた! ししょ~!」
「待たせたわね、リーフ」
「あー、久々にエキサイトいたしましたわ~!」
僕たちより少し遅れて、エステアとマリー、メルアがライブハウスから出てくる。入れ替わりにチケットを持った大人たちがライブハウスへの階段を下っていった。19時を回ったこともあり、客層も学生から大人たちへとシフトするようだ。
「はー、楽しかった! ドリンク一気飲みしたけど、まだ喉からっから!」
「私もお腹が空きましたし、今日は外食して帰りませんこと?」
メルアの呟きにマリーが即座に提案する。
「さんせーい! インペーロなら近いし、値段も手頃でいいよね!」
「そんなの気にしなくても、私が奢りますわ」
「さすがにそれは――」
話がどんどん進んでいくので、慌てて口を挟もうとしたが、マリーに視線だけで圧をかけられてしまった。
「私がいいと言ったらいいんですわ! 気にせず好きな物を好きなだけ食べてくださいまし。それに私は、自身が不在のうちに増えたエステアと親しい下級生に興味津々ですの。良い機会ですし、交流を深めますわよ!」
マリーがあまりにも包み隠さず本音と思しき言葉をぶつけてくるので、僕たちは思わず顔を見合わせてしまった。
「にゃははっ。それはあたしたちも願ったり叶ったりだよな。じゃあ、遠慮なくいこうぜ」
「ありがとうございます!」
ファラが吹っ切れたように笑い、アルフェもファラに合わせる。ルームメイトとして過ごしてそろそろ一年、二人の息もかなり合うようになってきた印象だ。だが、マリーは喜ぶどころか片眉を持ち上げ、芝居がかった仕草で腰に手を当てると僕たちを真っ直ぐに見据えた。
「んもう、堅苦しいのはなしですわ! 私だけ仲間はずれみたいで嫌ですわ」
「そーそー! 気にしないでいいよ! うちとの初対面もこんな感じだったし」
「メルアが言ってもあまり説得力がないんじゃないかしら」
見かねたエステアが間に入ると、マリーはそれに頷き、更に続けた。
「メルアはそもそも同学年ですし、当然ですわ。私、個人的にはあまり階級というものを重んじてはいませんの」
貴族というと、イグニスやリゼルのイメージが強いが、マリーのように頓着しない場合もあるのだろうか。少しだけ気になったので、訊ねてみることにした。
「……階級をあまり気にしないと公言するのも珍しいね。なにか理由があるのかい?」
「別にありませんわ。ただ、私の貴族たる立場もこの中尉という軍事階級も、ベルセイユ家のものであって、私個人はなんの苦労もなく手に入れたものなんですの。それを盾に敬えなんて、図々しい精神は持ち合わせてはいませんわ」
マリーの率直な物言いは素直に好感が持てた。エステアの親友とのことだし、信頼してもいいのだろうな。ただ、今日一緒に過ごしただけでも金銭感覚がかなりズレているようだ。まあ、本人が気にしないでいいというなら、それに従うのが良いのだろうけれど。
「……あっ。ししょー、今さ、奢られてばっかりで申し訳ないとか考えてた?」
「ん? まあ、当たらずしも遠からずだけど」
「心配しなくてもあとですっごい対価を求めてくるから、だいじょーぶだよ! マリーはどっちが上とか下とかなくて、基本的に『持っている者』がお金なり、知識なり、才能や能力なりを出すべきって考えなんだよね」
「その通りですわ~!」
メルアが僕に小声でそう教えてくれたのを、マリーは聞き逃さなかった。
「私、才能に溢れる人間が好きなんですの。メルアが天才錬金術師と敬う貴方には特に興味津々なのですわ」
目立たないようにと努めていたつもりだったが、武侠宴舞・カナルフォード杯のこともあるわけだし、せめてその噂が遠く広まらないことを願うばかりだ。やれやれ、今後は学会発表のことも本格的に考えなければならないわけだし、もう隠し通すのは難しそうだな。
「すごい体験だったね! ライブのあの白熱した空気、ワタシ、好きかも!」
「そうだね。たまにはこういうのも悪くない」
僕に遠慮してか最初は後方でリズムに合わせて身体を揺らしながら見ているだけだったアルフェも、後半になってからはエステアたちと同じく最前列でライブを楽しんだ。リズムに合わせて手を高く掲げ、小刻みに跳ぶ様子は、まるで興奮の波のようで見ている僕も楽しかった。
「あっ、いたいた! ししょ~!」
「待たせたわね、リーフ」
「あー、久々にエキサイトいたしましたわ~!」
僕たちより少し遅れて、エステアとマリー、メルアがライブハウスから出てくる。入れ替わりにチケットを持った大人たちがライブハウスへの階段を下っていった。19時を回ったこともあり、客層も学生から大人たちへとシフトするようだ。
「はー、楽しかった! ドリンク一気飲みしたけど、まだ喉からっから!」
「私もお腹が空きましたし、今日は外食して帰りませんこと?」
メルアの呟きにマリーが即座に提案する。
「さんせーい! インペーロなら近いし、値段も手頃でいいよね!」
「そんなの気にしなくても、私が奢りますわ」
「さすがにそれは――」
話がどんどん進んでいくので、慌てて口を挟もうとしたが、マリーに視線だけで圧をかけられてしまった。
「私がいいと言ったらいいんですわ! 気にせず好きな物を好きなだけ食べてくださいまし。それに私は、自身が不在のうちに増えたエステアと親しい下級生に興味津々ですの。良い機会ですし、交流を深めますわよ!」
マリーがあまりにも包み隠さず本音と思しき言葉をぶつけてくるので、僕たちは思わず顔を見合わせてしまった。
「にゃははっ。それはあたしたちも願ったり叶ったりだよな。じゃあ、遠慮なくいこうぜ」
「ありがとうございます!」
ファラが吹っ切れたように笑い、アルフェもファラに合わせる。ルームメイトとして過ごしてそろそろ一年、二人の息もかなり合うようになってきた印象だ。だが、マリーは喜ぶどころか片眉を持ち上げ、芝居がかった仕草で腰に手を当てると僕たちを真っ直ぐに見据えた。
「んもう、堅苦しいのはなしですわ! 私だけ仲間はずれみたいで嫌ですわ」
「そーそー! 気にしないでいいよ! うちとの初対面もこんな感じだったし」
「メルアが言ってもあまり説得力がないんじゃないかしら」
見かねたエステアが間に入ると、マリーはそれに頷き、更に続けた。
「メルアはそもそも同学年ですし、当然ですわ。私、個人的にはあまり階級というものを重んじてはいませんの」
貴族というと、イグニスやリゼルのイメージが強いが、マリーのように頓着しない場合もあるのだろうか。少しだけ気になったので、訊ねてみることにした。
「……階級をあまり気にしないと公言するのも珍しいね。なにか理由があるのかい?」
「別にありませんわ。ただ、私の貴族たる立場もこの中尉という軍事階級も、ベルセイユ家のものであって、私個人はなんの苦労もなく手に入れたものなんですの。それを盾に敬えなんて、図々しい精神は持ち合わせてはいませんわ」
マリーの率直な物言いは素直に好感が持てた。エステアの親友とのことだし、信頼してもいいのだろうな。ただ、今日一緒に過ごしただけでも金銭感覚がかなりズレているようだ。まあ、本人が気にしないでいいというなら、それに従うのが良いのだろうけれど。
「……あっ。ししょー、今さ、奢られてばっかりで申し訳ないとか考えてた?」
「ん? まあ、当たらずしも遠からずだけど」
「心配しなくてもあとですっごい対価を求めてくるから、だいじょーぶだよ! マリーはどっちが上とか下とかなくて、基本的に『持っている者』がお金なり、知識なり、才能や能力なりを出すべきって考えなんだよね」
「その通りですわ~!」
メルアが僕に小声でそう教えてくれたのを、マリーは聞き逃さなかった。
「私、才能に溢れる人間が好きなんですの。メルアが天才錬金術師と敬う貴方には特に興味津々なのですわ」
目立たないようにと努めていたつもりだったが、武侠宴舞・カナルフォード杯のこともあるわけだし、せめてその噂が遠く広まらないことを願うばかりだ。やれやれ、今後は学会発表のことも本格的に考えなければならないわけだし、もう隠し通すのは難しそうだな。
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