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第三章 暴風のコロッセオ
第244話 閉会式
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「本日は、お忙しいなか、武侠宴舞・カナルフォード杯にお集まりいただき、生徒らへの惜しみない応援とご支援を誠にありがとうございます。お集まりの皆様に、心より御礼を申しあげます。
さて、伝統ある我が校の武侠宴舞・カナルフォード杯、歴代最高と呼ばれた前年度以上の盛況のうちに、無事の閉幕を迎えましたことを大変嬉しく感じております。
生徒諸君――とりわけ優勝チームとなった1年F組の試合には、準決勝から多大な注目を集めていたことを、私から改めてお知らせしましょう。入学して1年にも満たない新入生が、二年連続の優勝に輝いたことには大変驚き、またその成長を心から楽しみにしております。今後も、アルカディア帝国を代表する学園となるべく、内外に恥じぬ教育機関であることを理事長としてお約束しましょう。
その一翼を担うのは、準優勝に輝いた生徒会長エステア・シドラであることは想像に難くありますまい。今後再編される生徒会が、どのようなものになるのか、生徒諸君同様、私自身も大いに期待しております。
それでは、また来年もこの大闘技場で素晴らしい戦いの目撃者となれることを幸運に受け止め、私からの結びのご挨拶に代えさせて頂きます。
優勝チームのリインフォース、本当におめでとう!」
挨拶を終えたフェリックス伯爵が、直々に表彰台の僕たちにトロフィーを手渡す。虹色に輝くトロフィーを受け取ったのは、もちろんホムだ。
「本当に素晴らしい戦いだった。機兵改造の腕においては、君を今すぐ軍へ推薦したいぐらいだ」
「ありがとうございます。ですが、僕は医学の道に進みたいのです」
「まだ一年、人生の先は長い。力になれることがあれば、相談しなさい」
フェリックス伯爵は気分を害した様子もなく、柔和に微笑んで僕の前に手を差し出した。理事長と力強い握手を交わし、その手が離れたところで、改めて優勝の実感が湧いた。
「勝ちましたね、マスター」
「ホムが諦めなかったおかげだよ」
「がんばったね、ホムちゃん」
僕の言葉にアルフェも笑顔で寄り添ってくる。
「おめでとうございます」
「おめでとう、ししょーにアルフェちゃん、それからホムちゃん」
既に準優勝として表彰を受けているエステアとメルアも僕たちを祝福してくれた。三位以下は機体損傷が著しいため、今年は準優勝までの表彰となった。
「……そういえば、イグニスさん間に合わなかったね」
表彰式が終わり、万雷の拍手に見送られて壇上から降りながらアルフェがぽつりと呟いた。自分の魔法が間接的とはいえ、生身の人間に触れたことを気にしているようだ。
「ちゅーても、操縦槽を破ったのは自業自得なんだし、アルフェちゃんが気にすることないって」
「メルアの言う通りよ。表彰式に出られなかったのは、単にまだ目が覚めていないというだけだから」
僕よりも先にメルアとエステアが揃ってフォローを入れてくれた。
「そうだといいんだけど……」
「A組とのクラス対抗戦で知ってると思うけど、マチルダ先生の治癒魔法があれば問題ないよ」
僕としては今日のところはイグニスが眠ったままの方が有り難いのだが、そうもいかなかった。
「俺は認めない!」
突然、呪うようなイグニスの声が大闘技場に響き渡ったのだ。
「あちゃー」
「イグニス……」
メルアが大仰に額を押さえる横で、エステアが険しい表情を浮かべている。イグニスの傍らには、教頭の姿があった。
さて、伝統ある我が校の武侠宴舞・カナルフォード杯、歴代最高と呼ばれた前年度以上の盛況のうちに、無事の閉幕を迎えましたことを大変嬉しく感じております。
生徒諸君――とりわけ優勝チームとなった1年F組の試合には、準決勝から多大な注目を集めていたことを、私から改めてお知らせしましょう。入学して1年にも満たない新入生が、二年連続の優勝に輝いたことには大変驚き、またその成長を心から楽しみにしております。今後も、アルカディア帝国を代表する学園となるべく、内外に恥じぬ教育機関であることを理事長としてお約束しましょう。
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それでは、また来年もこの大闘技場で素晴らしい戦いの目撃者となれることを幸運に受け止め、私からの結びのご挨拶に代えさせて頂きます。
優勝チームのリインフォース、本当におめでとう!」
挨拶を終えたフェリックス伯爵が、直々に表彰台の僕たちにトロフィーを手渡す。虹色に輝くトロフィーを受け取ったのは、もちろんホムだ。
「本当に素晴らしい戦いだった。機兵改造の腕においては、君を今すぐ軍へ推薦したいぐらいだ」
「ありがとうございます。ですが、僕は医学の道に進みたいのです」
「まだ一年、人生の先は長い。力になれることがあれば、相談しなさい」
フェリックス伯爵は気分を害した様子もなく、柔和に微笑んで僕の前に手を差し出した。理事長と力強い握手を交わし、その手が離れたところで、改めて優勝の実感が湧いた。
「勝ちましたね、マスター」
「ホムが諦めなかったおかげだよ」
「がんばったね、ホムちゃん」
僕の言葉にアルフェも笑顔で寄り添ってくる。
「おめでとうございます」
「おめでとう、ししょーにアルフェちゃん、それからホムちゃん」
既に準優勝として表彰を受けているエステアとメルアも僕たちを祝福してくれた。三位以下は機体損傷が著しいため、今年は準優勝までの表彰となった。
「……そういえば、イグニスさん間に合わなかったね」
表彰式が終わり、万雷の拍手に見送られて壇上から降りながらアルフェがぽつりと呟いた。自分の魔法が間接的とはいえ、生身の人間に触れたことを気にしているようだ。
「ちゅーても、操縦槽を破ったのは自業自得なんだし、アルフェちゃんが気にすることないって」
「メルアの言う通りよ。表彰式に出られなかったのは、単にまだ目が覚めていないというだけだから」
僕よりも先にメルアとエステアが揃ってフォローを入れてくれた。
「そうだといいんだけど……」
「A組とのクラス対抗戦で知ってると思うけど、マチルダ先生の治癒魔法があれば問題ないよ」
僕としては今日のところはイグニスが眠ったままの方が有り難いのだが、そうもいかなかった。
「俺は認めない!」
突然、呪うようなイグニスの声が大闘技場に響き渡ったのだ。
「あちゃー」
「イグニス……」
メルアが大仰に額を押さえる横で、エステアが険しい表情を浮かべている。イグニスの傍らには、教頭の姿があった。
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