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第三章 暴風のコロッセオ
第208話 僕たちのチーム名
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晴れて武侠宴舞・カナルフォード杯への出場権を獲得した僕たちは、大会参加規約の確認後、参加申請書類に署名をするように求められた。
大まかに言えば『参加選手はこの大会中における負傷の一切を罪に問わない』という誓約書に署名せよということだ。
エステアが出場するとはいえ、大学リーグとは違って頭部、右椀部、左椀部、右脚部、左脚部を有効部位として、有効部位のうち二ヵ所を損傷した場合は大破判定と見なし、撃墜判定とすることや、胴体部、操縦槽への攻撃は推奨しないものとし、執拗に操縦槽を狙う行為を確認した場合は失格判定とするなど、安全管理には相応の配慮がなされている。
また、著しい損傷による機体が稼働不能となった場合、もしくは操手が意識を失った場合は有効部位の有無に関わらず撃墜判定と見なされることからも、危険度の高い追撃は免れる仕組みになっている。
まあ、そうならないように攻守に気を配らなければならないな。そのために真なる叡智の書をアーケシウスでも使えるようにしたのだから、最大限その力を活かすつもりではあるけれど。
全ての書類に目を通し、丁寧に署名を終えた後、アルフェとホムと三人で受付に書類を提出した。
書類がつつがなく受理されると、やっとひとつ肩の荷が下りたような気分になる。
「さて、誓約書と参加申請書類の提出も終わったし、あとはトーナメント表の発表を待つばかりだね」
やれやれ。これでまずは第一段階をクリアしたことになったわけだ。
「改めて、おめでとう、リーフ!」
アルフェが嬉しそうに僕に抱きつき、弾みで少し蹌踉けた僕を支えるようにホムが背後から僕を抱き締める。
「素晴らしいです、マスター」
誇らしげな二人の顔を交互に見つめて僕は頷き、両手で二人を抱き締めた。
「あっ、いたいた~! 探したんですけど~!」
賑やかな声が近づいてくると思ったら、メルアだ。
「ししょー! 二次選考通過おめでと~!」
「メルア先輩もおめでとうございます!」
シード権を持つ生徒会チームとはいえ、機兵評価査定のクリアは必須条件だ。
「いやー、メンテ間に合って良かったよ~」
アルフェの意図を汲み取ったメルアは大袈裟に喜んで見せ、それから改めてアルフェの目をしっかりと見つめた。
「アルフェちゃん、ここから先、うちらはライバル同士だよ~」
「はい!」
「わぁ! いい表情するようになったねぇ~!」
間髪入れずに頷いたアルフェに少し面食らった様子で、メルアが目を丸くする。
「なんかさぁ、最初の頃はちょっと小心者って感じがして心配だったんだけど、これで大会で当たっても弱いモノいじめみたいにならなくてすみそうだね」
「アルフェ様は芯の強いお方ですので」
アルフェに代わってホムがその強さを主張する。
「知ってる。もうさ、ししょーのことになると一生懸命を通り越す勢いで凄いからね」
「だって、リーフが大好きなんだもん!」
アルフェはそう言うと、僕の身体をぎゅっと抱き締めて引き寄せた。
「どうどう。わかってるし、横取りなんてしないから」
アルフェを宥めるように戯けながら、メルアが言い添える。
「で、ししょーはさ、チーム名はどうすんの?」
「え……?」
不意に話題を振られた僕は、なんのことかわからずに聞き返してしまった。
「ほら、今って1年F組②って名前じゃん? まさかこれ、正式名称じゃないでしょ?」
「あ、そっか。チーム名がいるんだ……」
そういえば大学リーグのチームにも名前があったな。チームを鼓舞するような、あるいは僕たちを象徴するような名前があった方が良さそうだ。
「なんて名前がいいかな、リーフ?」
「ここはマスターにお決め頂くのが順当と存じます」
アルフェとホムが揃って僕を見つめる。二人の期待を受けて、僕は思考を巡らせた。
「そうだな……」
僕たちは、お互いのために強くなることだけを目的に邁進してきた。だから、それを意味する言葉がいい気がする。
「……リインフォース、なんてどうだろう?」
「リインフォース……」
アルフェとホムが声を揃えて僕が提案したチーム名を呟く。
「そう、僕たちはお互いのために強くなる。きっとこれからもね」
「素敵! いいと思う!」
「賛成です」
「ししょーの名前の響きにも似てるし、最高じゃん!」
みんなの賛成を受けて、僕たちのチーム名は『リインフォース』に決定した。
大まかに言えば『参加選手はこの大会中における負傷の一切を罪に問わない』という誓約書に署名せよということだ。
エステアが出場するとはいえ、大学リーグとは違って頭部、右椀部、左椀部、右脚部、左脚部を有効部位として、有効部位のうち二ヵ所を損傷した場合は大破判定と見なし、撃墜判定とすることや、胴体部、操縦槽への攻撃は推奨しないものとし、執拗に操縦槽を狙う行為を確認した場合は失格判定とするなど、安全管理には相応の配慮がなされている。
また、著しい損傷による機体が稼働不能となった場合、もしくは操手が意識を失った場合は有効部位の有無に関わらず撃墜判定と見なされることからも、危険度の高い追撃は免れる仕組みになっている。
まあ、そうならないように攻守に気を配らなければならないな。そのために真なる叡智の書をアーケシウスでも使えるようにしたのだから、最大限その力を活かすつもりではあるけれど。
全ての書類に目を通し、丁寧に署名を終えた後、アルフェとホムと三人で受付に書類を提出した。
書類がつつがなく受理されると、やっとひとつ肩の荷が下りたような気分になる。
「さて、誓約書と参加申請書類の提出も終わったし、あとはトーナメント表の発表を待つばかりだね」
やれやれ。これでまずは第一段階をクリアしたことになったわけだ。
「改めて、おめでとう、リーフ!」
アルフェが嬉しそうに僕に抱きつき、弾みで少し蹌踉けた僕を支えるようにホムが背後から僕を抱き締める。
「素晴らしいです、マスター」
誇らしげな二人の顔を交互に見つめて僕は頷き、両手で二人を抱き締めた。
「あっ、いたいた~! 探したんですけど~!」
賑やかな声が近づいてくると思ったら、メルアだ。
「ししょー! 二次選考通過おめでと~!」
「メルア先輩もおめでとうございます!」
シード権を持つ生徒会チームとはいえ、機兵評価査定のクリアは必須条件だ。
「いやー、メンテ間に合って良かったよ~」
アルフェの意図を汲み取ったメルアは大袈裟に喜んで見せ、それから改めてアルフェの目をしっかりと見つめた。
「アルフェちゃん、ここから先、うちらはライバル同士だよ~」
「はい!」
「わぁ! いい表情するようになったねぇ~!」
間髪入れずに頷いたアルフェに少し面食らった様子で、メルアが目を丸くする。
「なんかさぁ、最初の頃はちょっと小心者って感じがして心配だったんだけど、これで大会で当たっても弱いモノいじめみたいにならなくてすみそうだね」
「アルフェ様は芯の強いお方ですので」
アルフェに代わってホムがその強さを主張する。
「知ってる。もうさ、ししょーのことになると一生懸命を通り越す勢いで凄いからね」
「だって、リーフが大好きなんだもん!」
アルフェはそう言うと、僕の身体をぎゅっと抱き締めて引き寄せた。
「どうどう。わかってるし、横取りなんてしないから」
アルフェを宥めるように戯けながら、メルアが言い添える。
「で、ししょーはさ、チーム名はどうすんの?」
「え……?」
不意に話題を振られた僕は、なんのことかわからずに聞き返してしまった。
「ほら、今って1年F組②って名前じゃん? まさかこれ、正式名称じゃないでしょ?」
「あ、そっか。チーム名がいるんだ……」
そういえば大学リーグのチームにも名前があったな。チームを鼓舞するような、あるいは僕たちを象徴するような名前があった方が良さそうだ。
「なんて名前がいいかな、リーフ?」
「ここはマスターにお決め頂くのが順当と存じます」
アルフェとホムが揃って僕を見つめる。二人の期待を受けて、僕は思考を巡らせた。
「そうだな……」
僕たちは、お互いのために強くなることだけを目的に邁進してきた。だから、それを意味する言葉がいい気がする。
「……リインフォース、なんてどうだろう?」
「リインフォース……」
アルフェとホムが声を揃えて僕が提案したチーム名を呟く。
「そう、僕たちはお互いのために強くなる。きっとこれからもね」
「素敵! いいと思う!」
「賛成です」
「ししょーの名前の響きにも似てるし、最高じゃん!」
みんなの賛成を受けて、僕たちのチーム名は『リインフォース』に決定した。
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