201 / 396
第三章 暴風のコロッセオ
第201話 ブラッドグレイルの追試実験
しおりを挟む
追試実験のブラッドグレイルは、あめ玉ほどのごく小さなものを錬成することにした。面倒なのは、簡易術式を組み合わせた錬成陣だが、先日エーテルの流れを見ながら描いたことによって、ある程度簡略化や最適化出来る場所を見つけることが出来ていた。
アルビオンの簡易術式は、旧字を使って描かれているが、僕はそれを最適化し、さらに強化すべく彼の時代にはなかった新字を組み合わせて新たな錬成陣を生み出すことを思いついたのだ。
かなり複雑化されている錬成陣だが、一度読み解いてしまえば、僕にとってはそう難解なものではない。光属性を増幅させる効果を持つ新字を組み合わせ、僕の血から効率良くエーテルを吸収し、魔獣の血を光属性に変換出来るように描き加えてやる。
簡易術式が正しく機能するかどうかは、先日の錬成で確かめたとおり、僕の血が錬成陣に反応して金色の輝きを見せていることから随時確認出来るのが便利だ。
「うわぁ……。ここで、新字変換しちゃうとか、うちのししょー、本気でヤバ過ぎる。しかもこれ、一発描き!?」
「まあ、そうなるね。ああ、写しがないとレポートに書き起こすときに面倒かな?」
「じゃあ、それうちが投影魔法に記録しとく。後で紙に写せばいいっしょ」
メルアが素早く投影魔法を発動させ、僕が描いた錬成陣を写し取っていく。優れた魔法の能力を持つメルアならではの機転のおかげで、レポートをまとめる作業はかなり順調に進められそうだ。
「属性関係ないってのは、この新字の簡易術式のお陰って感じだよね。これならししょーの血がなくても、まあまあの効果が得られそうだし」
「どのみち比較するつもりはないし、こんなのを何回も作ろうなんて人もそうそういないだろうしね」
「いないいない! うち、見てるだけでも頭がくらくらするもん。こんな細かい錬成陣なんて国宝行きでしょ~!」
僕としてはかなり楽しい作業だが、メルアはいやいやと首を横に振っている。
「ししょーってさ、昔からこうなの?」
「こうって?」
「こーんな頭が痛くなるくらい複雑で、誰も改変しようとしなかったブラッドグレイルの錬成陣を一発で変えちゃうみたいな発想とかさ!」
まあ、今ぶっつけ本番でやっているわけではなく、頭の中に常に構想はあるわけなのだけれど。まあ、僕としては前世から一人で黙々と簡易術式を描いたり、錬成陣を構想するのが好きなので、それが大きく作用しているのだろうな。
「……まあ、母が錬金術師だったし、小さい頃から興味があって色々試せたからね」
「それでこれだけのものがさらっと作れるのって、天才だよ!」
軽く流そうと思ったが、メルアが思いの外食いついてきた。
「だってさ、うちも天才だって言われたけど、上には上がいるのはよーくわかってるし、ししょーに至っては、もう嫉妬とかそういうレベルじゃない雲の上の人みたいだもん。案外前世も錬金術師だったりして」
「……そうかもしれないね」
浄眼で見えるのはエーテルだけのはずだけれど、いやに鋭い突っ込みをされたので、さすがに驚いた。まあ、変に否定するのもなんなので、苦笑を浮かべておく。
そうこうしているうちに錬成陣を描き終えたので、僕は錬成筆を置いて姿勢を正した。
「あとはこの錬成液の上の錬成陣にエーテルを流せばおしまい?」
「そうだよ」
このブラッドグレイルでまあまあの性能を出せれば、レポートの問題は片付きそうだ。
「じゃあ、ししょー、お願いします!」
大袈裟に手を合わせて頼み込むメルアに頷いて、錬成陣に手を翳す。
「術式起動」
僕のエーテルに反応した錬成液は宙に浮かび上がると、すぐに凝固して紫色の丸い宝石が現れた。
「素晴らしい! 素晴らしい錬成ですね!」
突然拍手の音とともに響いてきた声は、プロフェッサーのものだった。
「こんなに早く追試実験をしてもらえるとは思っていませんでした」
興奮気味のプロフェッサーが、急ぎ足でこちらに近づいてくる。
「プロフェッサー……、どうしてここに?」
「ヤバっ! エステアにメンテ頼まれてたのにまだやってない~!」
驚く僕の隣で、メルアが悲鳴を上げた。
アルビオンの簡易術式は、旧字を使って描かれているが、僕はそれを最適化し、さらに強化すべく彼の時代にはなかった新字を組み合わせて新たな錬成陣を生み出すことを思いついたのだ。
かなり複雑化されている錬成陣だが、一度読み解いてしまえば、僕にとってはそう難解なものではない。光属性を増幅させる効果を持つ新字を組み合わせ、僕の血から効率良くエーテルを吸収し、魔獣の血を光属性に変換出来るように描き加えてやる。
簡易術式が正しく機能するかどうかは、先日の錬成で確かめたとおり、僕の血が錬成陣に反応して金色の輝きを見せていることから随時確認出来るのが便利だ。
「うわぁ……。ここで、新字変換しちゃうとか、うちのししょー、本気でヤバ過ぎる。しかもこれ、一発描き!?」
「まあ、そうなるね。ああ、写しがないとレポートに書き起こすときに面倒かな?」
「じゃあ、それうちが投影魔法に記録しとく。後で紙に写せばいいっしょ」
メルアが素早く投影魔法を発動させ、僕が描いた錬成陣を写し取っていく。優れた魔法の能力を持つメルアならではの機転のおかげで、レポートをまとめる作業はかなり順調に進められそうだ。
「属性関係ないってのは、この新字の簡易術式のお陰って感じだよね。これならししょーの血がなくても、まあまあの効果が得られそうだし」
「どのみち比較するつもりはないし、こんなのを何回も作ろうなんて人もそうそういないだろうしね」
「いないいない! うち、見てるだけでも頭がくらくらするもん。こんな細かい錬成陣なんて国宝行きでしょ~!」
僕としてはかなり楽しい作業だが、メルアはいやいやと首を横に振っている。
「ししょーってさ、昔からこうなの?」
「こうって?」
「こーんな頭が痛くなるくらい複雑で、誰も改変しようとしなかったブラッドグレイルの錬成陣を一発で変えちゃうみたいな発想とかさ!」
まあ、今ぶっつけ本番でやっているわけではなく、頭の中に常に構想はあるわけなのだけれど。まあ、僕としては前世から一人で黙々と簡易術式を描いたり、錬成陣を構想するのが好きなので、それが大きく作用しているのだろうな。
「……まあ、母が錬金術師だったし、小さい頃から興味があって色々試せたからね」
「それでこれだけのものがさらっと作れるのって、天才だよ!」
軽く流そうと思ったが、メルアが思いの外食いついてきた。
「だってさ、うちも天才だって言われたけど、上には上がいるのはよーくわかってるし、ししょーに至っては、もう嫉妬とかそういうレベルじゃない雲の上の人みたいだもん。案外前世も錬金術師だったりして」
「……そうかもしれないね」
浄眼で見えるのはエーテルだけのはずだけれど、いやに鋭い突っ込みをされたので、さすがに驚いた。まあ、変に否定するのもなんなので、苦笑を浮かべておく。
そうこうしているうちに錬成陣を描き終えたので、僕は錬成筆を置いて姿勢を正した。
「あとはこの錬成液の上の錬成陣にエーテルを流せばおしまい?」
「そうだよ」
このブラッドグレイルでまあまあの性能を出せれば、レポートの問題は片付きそうだ。
「じゃあ、ししょー、お願いします!」
大袈裟に手を合わせて頼み込むメルアに頷いて、錬成陣に手を翳す。
「術式起動」
僕のエーテルに反応した錬成液は宙に浮かび上がると、すぐに凝固して紫色の丸い宝石が現れた。
「素晴らしい! 素晴らしい錬成ですね!」
突然拍手の音とともに響いてきた声は、プロフェッサーのものだった。
「こんなに早く追試実験をしてもらえるとは思っていませんでした」
興奮気味のプロフェッサーが、急ぎ足でこちらに近づいてくる。
「プロフェッサー……、どうしてここに?」
「ヤバっ! エステアにメンテ頼まれてたのにまだやってない~!」
驚く僕の隣で、メルアが悲鳴を上げた。
0
お気に入りに追加
794
あなたにおすすめの小説
知らない異世界を生き抜く方法
明日葉
ファンタジー
異世界転生、とか、異世界召喚、とか。そんなジャンルの小説や漫画は好きで読んでいたけれど。よく元ネタになるようなゲームはやったことがない。
なんの情報もない異世界で、当然自分の立ち位置もわからなければ立ち回りもわからない。
そんな状況で生き抜く方法は?
乙女ゲームの世界に転生したと思ったらモブですらないちみっこですが、何故か攻略対象や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛されています
真理亜
ファンタジー
乙女ゲームの世界に転生したと思ったら...モブですらないちみっこでした。
なのに何故か攻略対象者達や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛されています。
更に更に変態銀髪美女メイドや変態数学女教師まで現れてもう大変!
変態が大変だ! いや大変な変態だ!
お前ら全員ロ○か!? ロ○なんか!? ロ○やろぉ~!
しかも精霊の愛し子なんて言われちゃって精霊が沢山飛んでる~!
身長130cmにも満たないちみっこヒロイン? が巻き込まれる騒動をお楽しみ下さい。
操作ミスで間違って消してしまった為、再掲しております。ブックマークをして下さっていた方々、大変申し訳ございません。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです
ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。
転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。
前世の記憶を頼りに善悪等を判断。
貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。
2人の兄と、私と、弟と母。
母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。
ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。
前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。
殿下!死にたくないので婚約破棄してください!
As-me.com
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私。
このままでは冤罪で断罪されて死刑にされちゃう運命が待っている?!
死にたくないので、早く婚約破棄してください!
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる