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第三章 暴風のコロッセオ
第191話 機体部品の調達
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圧倒的なエステアの強さを見せつけられ、打ち拉がれたものの、落ち込んでいる暇は微塵もない。試合終了後、機兵の更なる強化を急ぐべく考えごとをしながらアルフェについて歩いていると、聞き覚えのある甲高い声が聞こえたような気がした。
「おーい、ししょーーー! アルフェちゃーん!」
気のせいかと思ったが、ここでこんな呼び方をしてくるのはやはりメルアくらいしかいない。顔を上げると、メルアがちょうど駆け寄って来たところだった。
「この人だかりでよく見つけられたね」
「えっ? だって、ししょーのエーテルだったら遠くからでも余裕で見つけられるでしょ」
ああ、そういえばメルアは両目が浄眼だったな。僕の特徴的なエーテルを頼りにすれば、確かに背丈など関係なく見つけられそうだ。
「それにVIP席なんかに座ってたら、嫌でも目立つし」
「それがわかる位置ということは、メルアもVIP席だったのかい?」
「ううん。うちは、エステアの応援だからさ、もーっと良い席だよ♪」
メルアはにこにこと笑ってそう応えると、帰りの人波を避けて端の空いている席の方へと僕たちを誘導した。
「ところで、ししょー、機兵の改造は順調? うちの魔石、役に立ってる?」
「ああ、おかげで凄く性能の良いブラッドグレイルを錬成出来たよ」
レポートのこともあるし、メルアには早めに相談しておいた方がいいな。
「あっ、ブラッドグレイルといえばさ、あの自動錬成器、ちょっと調子悪かったんだけど、平気だった?」
「僕は自力で作ったからね、問題ないよ」
「へっ!?」
自然な流れで会話をしていたつもりだったが、メルアが途中で目をまん丸にして素っ頓狂な声を上げた。
「し、ししししし、ししょー……今、なんて?」
「ブラッドグレイルの錬成に、自動錬成器は使っていないんだ」
もしかして聞こえなかったのだろうかと思いながら、少し言葉を変えて言い直してみる。だが、メルアの反応はもっと大変なことになった。
「きゃーーーーーっ!!!」
「ど、どうしたの、メルア?」
「さらっと言った! さらっと言ったけど! 滅茶苦茶凄いことやってるよ~!」
メルアが両頬を手のひらで押さえて、興奮を隠しきれない様子でぴょんぴょんと飛び跳ねている。
「あの大量の魔石を溶鉱炉かなんかで溶かして、あの超絶面倒臭い簡易術式を手描きで描いて描いて描きまくったってことでしょ!?」
まあ、確かにそういうことにはなるのだけれど。自動錬成器を使いたくない理由は、プロフェッサーにした説明と同じで納得してくれるだろうか。
「メルアが最上級の魔石を譲ってくれたことだし、品質には拘りたくて」
「いやいやいや! ちゅーても、機兵用のこーんなおっきなやつじゃん!?」
そう言いながらメルアが、自分の背の高さぐらいの円を描いて見せる。
「そうだよ?」
さすが特級錬金術師だけあって、錬成されるものの質量を正しく把握しているのが凄いな。僕もまあ、変に反応しないで、さらっと普通に振る舞うとしよう。
「はあ、さすが師匠……。なにからなにまで凄すぎて、どこから突っ込んでいいかわかんないや」
「まあ、そういうわけで、アルフェのレムレスの方は順調なんだけど、ホムのレギオンに骨格を追加しようとしたところで難航してるんだよね」
メルアが少し落ち着いたようなので、少々強引ではあるが、話題を戻すことにした。
「それ、難航っちゅーか、不可能レベルの話じゃない? 最早違う機体を使った方が早いじゃん!」
「それはそうだけど、使える機体が限られてるからね」
レーヴェが使えるに越したことはないのだけれど、それはかなり難しそうだ。僕が肩を竦めると、メルアは察したように額に手を押し当てた。
「あー……。F組はジャンクしか使えないとかナントカ?」
「F組だからどうとかはわからないけれど、そもそも改造しようなんて生徒は珍しいからね」
「そうだよねぇ~……」
相槌を打ちながらも、メルアはなにか考えてくれているようだ。しばらく黙っていると、ふと思い出したように目を輝かせて手を叩いた。
「あ! でも、ジャンクなら、ぴったりのがありそうなところがあるよ!」
「……心当たりがあるの?」
「うん。工科大学の機兵工房に行けばいいものがあるはずっ!」
その現場は、初日にプロフェッサーに案内されたときに見回っているはずで、特に僕たちが使える第六世代の機体はなかったはずだ。
「一応見せてはもらったけれど、僕たちが使えるような機体は……」
「ちっちっち。ししょー、たった今、出来たてほやほやのがあるじゃん」
僕の言葉を人差し指を立てて横に振りながら遮り、メルアがにやりと笑う。
「まさか……?」
「そっ。武侠宴舞の破損機体は、ジャンク行きってね」
確かに今エステアが破壊したばかりの、バーニングブレイズの機体なら、修復不能のジャンクになる可能性はありそうだ。
話をつけてくれるというので、メルアとともに大学部の機兵工房へ向かうことにした。
「おーい、ししょーーー! アルフェちゃーん!」
気のせいかと思ったが、ここでこんな呼び方をしてくるのはやはりメルアくらいしかいない。顔を上げると、メルアがちょうど駆け寄って来たところだった。
「この人だかりでよく見つけられたね」
「えっ? だって、ししょーのエーテルだったら遠くからでも余裕で見つけられるでしょ」
ああ、そういえばメルアは両目が浄眼だったな。僕の特徴的なエーテルを頼りにすれば、確かに背丈など関係なく見つけられそうだ。
「それにVIP席なんかに座ってたら、嫌でも目立つし」
「それがわかる位置ということは、メルアもVIP席だったのかい?」
「ううん。うちは、エステアの応援だからさ、もーっと良い席だよ♪」
メルアはにこにこと笑ってそう応えると、帰りの人波を避けて端の空いている席の方へと僕たちを誘導した。
「ところで、ししょー、機兵の改造は順調? うちの魔石、役に立ってる?」
「ああ、おかげで凄く性能の良いブラッドグレイルを錬成出来たよ」
レポートのこともあるし、メルアには早めに相談しておいた方がいいな。
「あっ、ブラッドグレイルといえばさ、あの自動錬成器、ちょっと調子悪かったんだけど、平気だった?」
「僕は自力で作ったからね、問題ないよ」
「へっ!?」
自然な流れで会話をしていたつもりだったが、メルアが途中で目をまん丸にして素っ頓狂な声を上げた。
「し、ししししし、ししょー……今、なんて?」
「ブラッドグレイルの錬成に、自動錬成器は使っていないんだ」
もしかして聞こえなかったのだろうかと思いながら、少し言葉を変えて言い直してみる。だが、メルアの反応はもっと大変なことになった。
「きゃーーーーーっ!!!」
「ど、どうしたの、メルア?」
「さらっと言った! さらっと言ったけど! 滅茶苦茶凄いことやってるよ~!」
メルアが両頬を手のひらで押さえて、興奮を隠しきれない様子でぴょんぴょんと飛び跳ねている。
「あの大量の魔石を溶鉱炉かなんかで溶かして、あの超絶面倒臭い簡易術式を手描きで描いて描いて描きまくったってことでしょ!?」
まあ、確かにそういうことにはなるのだけれど。自動錬成器を使いたくない理由は、プロフェッサーにした説明と同じで納得してくれるだろうか。
「メルアが最上級の魔石を譲ってくれたことだし、品質には拘りたくて」
「いやいやいや! ちゅーても、機兵用のこーんなおっきなやつじゃん!?」
そう言いながらメルアが、自分の背の高さぐらいの円を描いて見せる。
「そうだよ?」
さすが特級錬金術師だけあって、錬成されるものの質量を正しく把握しているのが凄いな。僕もまあ、変に反応しないで、さらっと普通に振る舞うとしよう。
「はあ、さすが師匠……。なにからなにまで凄すぎて、どこから突っ込んでいいかわかんないや」
「まあ、そういうわけで、アルフェのレムレスの方は順調なんだけど、ホムのレギオンに骨格を追加しようとしたところで難航してるんだよね」
メルアが少し落ち着いたようなので、少々強引ではあるが、話題を戻すことにした。
「それ、難航っちゅーか、不可能レベルの話じゃない? 最早違う機体を使った方が早いじゃん!」
「それはそうだけど、使える機体が限られてるからね」
レーヴェが使えるに越したことはないのだけれど、それはかなり難しそうだ。僕が肩を竦めると、メルアは察したように額に手を押し当てた。
「あー……。F組はジャンクしか使えないとかナントカ?」
「F組だからどうとかはわからないけれど、そもそも改造しようなんて生徒は珍しいからね」
「そうだよねぇ~……」
相槌を打ちながらも、メルアはなにか考えてくれているようだ。しばらく黙っていると、ふと思い出したように目を輝かせて手を叩いた。
「あ! でも、ジャンクなら、ぴったりのがありそうなところがあるよ!」
「……心当たりがあるの?」
「うん。工科大学の機兵工房に行けばいいものがあるはずっ!」
その現場は、初日にプロフェッサーに案内されたときに見回っているはずで、特に僕たちが使える第六世代の機体はなかったはずだ。
「一応見せてはもらったけれど、僕たちが使えるような機体は……」
「ちっちっち。ししょー、たった今、出来たてほやほやのがあるじゃん」
僕の言葉を人差し指を立てて横に振りながら遮り、メルアがにやりと笑う。
「まさか……?」
「そっ。武侠宴舞の破損機体は、ジャンク行きってね」
確かに今エステアが破壊したばかりの、バーニングブレイズの機体なら、修復不能のジャンクになる可能性はありそうだ。
話をつけてくれるというので、メルアとともに大学部の機兵工房へ向かうことにした。
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