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第三章 暴風のコロッセオ
第180話 機兵製造の同志
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「やあ、リーフ。機兵製造許可証は、無事に承認されたようですね」
生徒会室を出て、格納庫に向かうとプロフェッサーがにこやかに迎えてくれた。
「知っていたなら、そう言ってくれてもよかったのに」
「いやいや、何事も手続きというものが必要なんですよ。裏から手を回すのも大事だけれどね」
眼鏡を直しながら笑うプロフェッサーは、早く機兵を作る様子が見たくてしょうがないといった様子だ。アイザックとロメオも待ち構えていて、僕が戻ると笑顔を見せた。
「それにしても、本当に機兵を造るんだな……」
「リーフ殿には、それだけの知識と技術があるでござる。待っている間にじっくりと見させてもらったでござるが、あのアーケシウスは本当に見事でござるよ」
ロメオとアイザックの言葉に、僕は頷いた。機兵製造許可証を得たからには、今すぐ作業に取りかかりたいところだ。
「私としても、錬金術、魔導器の製造において、これだけ優秀な生徒を見るのは初めてですよ。専攻は違うがメルアともまた一線を画していますからね」
「おお、噂の特級錬金術師でござるな!」
声を上げるアイザックに、ロメオも分かった様子で相槌を打つ。機兵マニアの二人は、メルアの機体ももうチェックしているのかもしれないな。
「……時にリーフ、そのメルアが君に弟子入りしたという噂は本当ですか? その証に『煌めく星空の指輪』をもらったようですが、あれは見事な品でした」
うっとりとした表情で、プロフェッサーが問いかけてくる。大方、本物をマチルダ先生に返却に行く時にでもメルアが喋ったのだろうな。
「……プロフェッサー。そこまで知っているなら、確かめる必要なんてないでしょう」
「ははは、少し探りを入れすぎてしまったようですね」
乾いた笑いを漏らしながら、プロフェッサーはぼさぼさの後ろ頭を掻いた。
「私はとても興味があるのですよ。それだけの実力を持つ生徒がなぜ三級に甘んじているのかとね」
「資格試験については単にタイミングの問題です。追い追い次の級を受けますよ」
本当は冠位錬金術師の実力があるとは言えないので、適当にその場を濁す。
「それは楽しみです。時に、明日提出のプロジェクト課題、リーフはもうテーマが決まっていますよね?」
ああ、そういえば今日の授業で話していたな。初回の魔導器製造の成果物から、プロフェッサーは今後の授業をプロジェクト形式にして、各々自由なテーマで研究と開発を行うことにしたのだった。
「武狭宴舞における機兵の効果的な運用と開発です」
「素晴らしい。これで授業時間も機兵製造に割くことができますね」
「その手があったでござるか!」
「先生、それってチームでやっても良かったよね!?」
プロフェッサーの好意的な発言に、アイザックとロメオも前のめりに訊ねる。プロフェッサーは二人の反応を見越した様子で、微笑んだ。
「もちろんです。この場合、リーフが許可すれば……ということになりますが」
「拙者たちも参加して良いでござるか!?」
「もちろんだよ。今は猫の手も借りたいからね」
僕としても、人手は多い方が助かる。成長を止めてしまったこの身体では、機兵製造でかなりの不自由を感じることは目に見えているからだ。
「ありがとう、リーフ!」
「猫でもなんでもなるでござる! こんな面白そうなことに参加しないなんて、機兵マニアの名が廃るでござるよ~!」
余程嬉しいのか、アイザックが狐の尻尾をぶんぶんと振り回している。
「二人とも、頼りにしているよ。僕は君たちほど機兵に詳しくないからね」
アイザックとロメオが加わることで、機兵に対する知識の解像度は格段に上がる。そこは僕もかなり頼りにしたいところだ。
「任せて!」
「任せるでござる!」
嬉しそうな二人の返事が頼もしくて、思わず笑みがこぼれてしまった。
生徒会室を出て、格納庫に向かうとプロフェッサーがにこやかに迎えてくれた。
「知っていたなら、そう言ってくれてもよかったのに」
「いやいや、何事も手続きというものが必要なんですよ。裏から手を回すのも大事だけれどね」
眼鏡を直しながら笑うプロフェッサーは、早く機兵を作る様子が見たくてしょうがないといった様子だ。アイザックとロメオも待ち構えていて、僕が戻ると笑顔を見せた。
「それにしても、本当に機兵を造るんだな……」
「リーフ殿には、それだけの知識と技術があるでござる。待っている間にじっくりと見させてもらったでござるが、あのアーケシウスは本当に見事でござるよ」
ロメオとアイザックの言葉に、僕は頷いた。機兵製造許可証を得たからには、今すぐ作業に取りかかりたいところだ。
「私としても、錬金術、魔導器の製造において、これだけ優秀な生徒を見るのは初めてですよ。専攻は違うがメルアともまた一線を画していますからね」
「おお、噂の特級錬金術師でござるな!」
声を上げるアイザックに、ロメオも分かった様子で相槌を打つ。機兵マニアの二人は、メルアの機体ももうチェックしているのかもしれないな。
「……時にリーフ、そのメルアが君に弟子入りしたという噂は本当ですか? その証に『煌めく星空の指輪』をもらったようですが、あれは見事な品でした」
うっとりとした表情で、プロフェッサーが問いかけてくる。大方、本物をマチルダ先生に返却に行く時にでもメルアが喋ったのだろうな。
「……プロフェッサー。そこまで知っているなら、確かめる必要なんてないでしょう」
「ははは、少し探りを入れすぎてしまったようですね」
乾いた笑いを漏らしながら、プロフェッサーはぼさぼさの後ろ頭を掻いた。
「私はとても興味があるのですよ。それだけの実力を持つ生徒がなぜ三級に甘んじているのかとね」
「資格試験については単にタイミングの問題です。追い追い次の級を受けますよ」
本当は冠位錬金術師の実力があるとは言えないので、適当にその場を濁す。
「それは楽しみです。時に、明日提出のプロジェクト課題、リーフはもうテーマが決まっていますよね?」
ああ、そういえば今日の授業で話していたな。初回の魔導器製造の成果物から、プロフェッサーは今後の授業をプロジェクト形式にして、各々自由なテーマで研究と開発を行うことにしたのだった。
「武狭宴舞における機兵の効果的な運用と開発です」
「素晴らしい。これで授業時間も機兵製造に割くことができますね」
「その手があったでござるか!」
「先生、それってチームでやっても良かったよね!?」
プロフェッサーの好意的な発言に、アイザックとロメオも前のめりに訊ねる。プロフェッサーは二人の反応を見越した様子で、微笑んだ。
「もちろんです。この場合、リーフが許可すれば……ということになりますが」
「拙者たちも参加して良いでござるか!?」
「もちろんだよ。今は猫の手も借りたいからね」
僕としても、人手は多い方が助かる。成長を止めてしまったこの身体では、機兵製造でかなりの不自由を感じることは目に見えているからだ。
「ありがとう、リーフ!」
「猫でもなんでもなるでござる! こんな面白そうなことに参加しないなんて、機兵マニアの名が廃るでござるよ~!」
余程嬉しいのか、アイザックが狐の尻尾をぶんぶんと振り回している。
「二人とも、頼りにしているよ。僕は君たちほど機兵に詳しくないからね」
アイザックとロメオが加わることで、機兵に対する知識の解像度は格段に上がる。そこは僕もかなり頼りにしたいところだ。
「任せて!」
「任せるでござる!」
嬉しそうな二人の返事が頼もしくて、思わず笑みがこぼれてしまった。
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