124 / 396
第三章 暴風のコロッセオ
第124話 授業開始
しおりを挟む
初日は入学式とホームルームだけで終わり、翌日からは本格的な授業が始まった。
午前中の一限目と二限目はそれぞれ軍事訓練と魔法学で、午後の三、四、五限目は基礎教養の座学という時間割になっている。
軍事訓練の担当は、担任でもあるタヌタヌ先生によるもので、支給された体操服に着替えてグラウンドに集合することになった。
体操服のサイズがあるか不安だったが、小人族サイズが割り当てられているようだ。僕もホムも丁度良いサイズが用意されていた。
「マスター」
「ん?」
グラウンドに出て視線を感じたように思ったが、ロメオがこちらを見ていたようだ。ホムが警戒心を露わにしたが、気にするほどでもない。
「多分、僕のことを気にしているんだろう。とある事情としか言わなかったからね」
ロメオは小人族だが、人間でありながら僕は彼よりも小柄だ。小人族であるロメオはそれなりの苦労をしているだろうし、僕のことを気にかけてくれているのだろう。
「病気のこと、言わなくていいの?」
「珍しい症例だし、病名を言ったところでわからないだろうからね。それに、病気ってことで変に心配されたくない」
問いかけに首を竦めると、アルフェも納得した様子で頷いた。
「……それもそうだね」
頷きながら、アルフェが僕の身体をぎゅっと抱き締める。
「ワタシもリーフが病気って聞いたとき、リーフがいなくなっちゃうんじゃないかってすっごく心配だったもん」
ああ、急にどうしたのかと思えば、当時のことを思い出させてしまったのか。あの時のアルフェの苦しそうな顔は、今思い出しても胸が痛む。
「その節は迷惑をかけたね、アルフェ」
「ううん。リーフのことで迷惑なんて思ったことないよ」
謝罪の言葉を口にすると、アルフェは即座に首を横に振った。揺れる髪が頬に当たり、少しくすぐったい。
「全部ぜーんぶ、ワタシがリーフが大好きで考えたり思ったりしてることなんだもん」
「そっか」
アルフェからそっと身体を離し、その顔を見上げる。ああ、あんなに小さかった赤ん坊は、もうこんなに大きくなってしまったんだな。
「うん」
僕が全ての記憶を持ったままでいることを知らないアルフェは、嬉しそうに僕の手を取り、指を絡めて握ったり離したりを繰り返している。僕がここにいる、僕と手を繋いでいるという感触を確かめるのが好きなのは、変わらないな。
「……はははっ! ちんちくりんがそうやってると、ママとおててを繋いでるベイビーちゃんみたいだなぁ」
アルフェの行動に頬を緩めていると、からかうような笑い声が背後から浴びせられた。
「…………」
はあ、またヴァナベルか。僕のことを嫌っているようだが、いちいち突っかかってくるのが面倒だな。
「そんなことないもん! ママはリーフの方だもん!」
「マスターは精神的に成熟していらっしゃいます。軽口は慎むべきです」
黙っている僕の代わりにアルフェとホムがヴァナベルに反論する。
「それがママって姿かよ!? ちんちくりんは背だけじゃなくて、なにもかもちんちくりんだな」
ヴァナベルは懲りた様子もなく、これ見よがしに胸を張って大股で去って行った。どうやら胸囲のことをからかわれたようだが、少女のまま成長が止まっているのだから僕にはどうしようもない。
「……胸囲があることは、なんらかの優位性を示すのでしょうか?」
「さあね。僕は興味がないけれど」
あってもなくても僕には関係がない。
「アルフェはどんなリーフも大好きだよ」
「ありがとう、アルフェ」
元々気にしていないつもりでも、アルフェがそう言って抱き締めてくれるだけで心が温まるのは、なぜなんだろうな。
午前中の一限目と二限目はそれぞれ軍事訓練と魔法学で、午後の三、四、五限目は基礎教養の座学という時間割になっている。
軍事訓練の担当は、担任でもあるタヌタヌ先生によるもので、支給された体操服に着替えてグラウンドに集合することになった。
体操服のサイズがあるか不安だったが、小人族サイズが割り当てられているようだ。僕もホムも丁度良いサイズが用意されていた。
「マスター」
「ん?」
グラウンドに出て視線を感じたように思ったが、ロメオがこちらを見ていたようだ。ホムが警戒心を露わにしたが、気にするほどでもない。
「多分、僕のことを気にしているんだろう。とある事情としか言わなかったからね」
ロメオは小人族だが、人間でありながら僕は彼よりも小柄だ。小人族であるロメオはそれなりの苦労をしているだろうし、僕のことを気にかけてくれているのだろう。
「病気のこと、言わなくていいの?」
「珍しい症例だし、病名を言ったところでわからないだろうからね。それに、病気ってことで変に心配されたくない」
問いかけに首を竦めると、アルフェも納得した様子で頷いた。
「……それもそうだね」
頷きながら、アルフェが僕の身体をぎゅっと抱き締める。
「ワタシもリーフが病気って聞いたとき、リーフがいなくなっちゃうんじゃないかってすっごく心配だったもん」
ああ、急にどうしたのかと思えば、当時のことを思い出させてしまったのか。あの時のアルフェの苦しそうな顔は、今思い出しても胸が痛む。
「その節は迷惑をかけたね、アルフェ」
「ううん。リーフのことで迷惑なんて思ったことないよ」
謝罪の言葉を口にすると、アルフェは即座に首を横に振った。揺れる髪が頬に当たり、少しくすぐったい。
「全部ぜーんぶ、ワタシがリーフが大好きで考えたり思ったりしてることなんだもん」
「そっか」
アルフェからそっと身体を離し、その顔を見上げる。ああ、あんなに小さかった赤ん坊は、もうこんなに大きくなってしまったんだな。
「うん」
僕が全ての記憶を持ったままでいることを知らないアルフェは、嬉しそうに僕の手を取り、指を絡めて握ったり離したりを繰り返している。僕がここにいる、僕と手を繋いでいるという感触を確かめるのが好きなのは、変わらないな。
「……はははっ! ちんちくりんがそうやってると、ママとおててを繋いでるベイビーちゃんみたいだなぁ」
アルフェの行動に頬を緩めていると、からかうような笑い声が背後から浴びせられた。
「…………」
はあ、またヴァナベルか。僕のことを嫌っているようだが、いちいち突っかかってくるのが面倒だな。
「そんなことないもん! ママはリーフの方だもん!」
「マスターは精神的に成熟していらっしゃいます。軽口は慎むべきです」
黙っている僕の代わりにアルフェとホムがヴァナベルに反論する。
「それがママって姿かよ!? ちんちくりんは背だけじゃなくて、なにもかもちんちくりんだな」
ヴァナベルは懲りた様子もなく、これ見よがしに胸を張って大股で去って行った。どうやら胸囲のことをからかわれたようだが、少女のまま成長が止まっているのだから僕にはどうしようもない。
「……胸囲があることは、なんらかの優位性を示すのでしょうか?」
「さあね。僕は興味がないけれど」
あってもなくても僕には関係がない。
「アルフェはどんなリーフも大好きだよ」
「ありがとう、アルフェ」
元々気にしていないつもりでも、アルフェがそう言って抱き締めてくれるだけで心が温まるのは、なぜなんだろうな。
0
お気に入りに追加
794
あなたにおすすめの小説
知らない異世界を生き抜く方法
明日葉
ファンタジー
異世界転生、とか、異世界召喚、とか。そんなジャンルの小説や漫画は好きで読んでいたけれど。よく元ネタになるようなゲームはやったことがない。
なんの情報もない異世界で、当然自分の立ち位置もわからなければ立ち回りもわからない。
そんな状況で生き抜く方法は?
乙女ゲームの世界に転生したと思ったらモブですらないちみっこですが、何故か攻略対象や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛されています
真理亜
ファンタジー
乙女ゲームの世界に転生したと思ったら...モブですらないちみっこでした。
なのに何故か攻略対象者達や悪役令嬢、更にヒロインにまで溺愛されています。
更に更に変態銀髪美女メイドや変態数学女教師まで現れてもう大変!
変態が大変だ! いや大変な変態だ!
お前ら全員ロ○か!? ロ○なんか!? ロ○やろぉ~!
しかも精霊の愛し子なんて言われちゃって精霊が沢山飛んでる~!
身長130cmにも満たないちみっこヒロイン? が巻き込まれる騒動をお楽しみ下さい。
操作ミスで間違って消してしまった為、再掲しております。ブックマークをして下さっていた方々、大変申し訳ございません。
異世界転生した時に心を失くした私は貧民生まれです
ぐるぐる
ファンタジー
前世日本人の私は剣と魔法の世界に転生した。
転生した時に感情を欠落したのか、生まれた時から心が全く動かない。
前世の記憶を頼りに善悪等を判断。
貧民街の狭くて汚くて臭い家……家とはいえないほったて小屋に、生まれた時から住んでいる。
2人の兄と、私と、弟と母。
母親はいつも心ここにあらず、父親は所在不明。
ある日母親が死んで父親のへそくりを発見したことで、兄弟4人引っ越しを決意する。
前世の記憶と知識、魔法を駆使して少しずつでも確実にお金を貯めていく。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!
ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。
悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。
殿下!死にたくないので婚約破棄してください!
As-me.com
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生した私。
このままでは冤罪で断罪されて死刑にされちゃう運命が待っている?!
死にたくないので、早く婚約破棄してください!
冷宮の人形姫
りーさん
ファンタジー
冷宮に閉じ込められて育てられた姫がいた。父親である皇帝には関心を持たれず、少しの使用人と母親と共に育ってきた。
幼少の頃からの虐待により、感情を表に出せなくなった姫は、5歳になった時に母親が亡くなった。そんな時、皇帝が姫を迎えに来た。
※すみません、完全にファンタジーになりそうなので、ファンタジーにしますね。
※皇帝のミドルネームを、イント→レントに変えます。(第一皇妃のミドルネームと被りそうなので)
そして、レンド→レクトに変えます。(皇帝のミドルネームと似てしまうため)変わってないよというところがあれば教えてください。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる