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最終章 ”ヒーロー”
第39話
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「あー、懐かしいな。ここだっけ、俺たちが会ったの」
サッカー部元主将・久保井がプールを指差しながら笑顔を振りまいてきた。
「そうですよ。ホラ、プール掃除のときに……」
高牧は、ほんの数週間前の出来事を思い返して笑みを久保井へ投げ返す。
あの時、瀬野陽太のセッティングしてくれたプール掃除合コンによって、念願の彼氏をゲットすることができた。
プロポーションには自信があったが、出会う場所がないと諦めかけていた、いわゆる上玉。
普通に過ごしていてはなかなかしゃべることすらできなかった格上と、接点を作ってくれた陽太には感謝していた。
そのお礼として文化祭の準備を手伝った。その接点から、昼ご飯を一緒に食べることになったため、その道中のことだった。
「あぁ、そうだそうだ。なんか昔のことに感じるなぁ」
「ホントに、そうですねー……あれ?」
プールの側から見える目的地、空想研究会の部室。
カーテンが開かれており、外から中の様子が丸見えだ。
部室の中では、三つの影。
まゆりともう一人、奏音の後姿は同じ制服だからすぐにわかった。
首を傾げる要因となったのは、三つ目の影。
二人の奥に、何か〝黒い影〟が見える。
全身が黒く、校内ではまず見かけない色合い――不思議を感じた高牧は「先輩、コッチ」と久保井を引っ張って物陰に隠れた。
「先輩……アレ……?」
小声で高牧は部室を指差す。
「ん? 何だあれ。コスプレか?」
「いえ、違います。私、あの空想研究会の準備手伝ったんですけど……あんな衣装無かったんですよ」
「ふーん……じゃあドッキリみたいな?」
「昼休みに、わざわざこんな場所で? ……おかしくないですか?」
「……確かに」
訝しんだ視線を向けていると、高牧はふと、ある記事を思い出した。
それは、空想研究会の動画などを公開していた文化祭掲示板で常にトップにあった記事。
〝記事の訂正〟というタイトルで、文化祭用の記事内で、誤って〝誰でも来場可能〟という旨の記事が出てしまったため、学外の人間が来場する可能性があるというものだった。
もし部外者らしい人を見かけたら、事情を説明して帰ってもらうようアナウンスもあり、印象に残っている。
もしかして、その部外者が――高牧の予感は、黒のレインコートの男が包丁を出したことで確信に変わった。
「お、おい……!」
「先輩……ど、どうしよう」
「取りあえず……本校舎に戻って先生に連絡しよう」
「う、うん!」
二人は踵を返し、本校舎にある職員室へ向かった。
サッカー部元主将・久保井がプールを指差しながら笑顔を振りまいてきた。
「そうですよ。ホラ、プール掃除のときに……」
高牧は、ほんの数週間前の出来事を思い返して笑みを久保井へ投げ返す。
あの時、瀬野陽太のセッティングしてくれたプール掃除合コンによって、念願の彼氏をゲットすることができた。
プロポーションには自信があったが、出会う場所がないと諦めかけていた、いわゆる上玉。
普通に過ごしていてはなかなかしゃべることすらできなかった格上と、接点を作ってくれた陽太には感謝していた。
そのお礼として文化祭の準備を手伝った。その接点から、昼ご飯を一緒に食べることになったため、その道中のことだった。
「あぁ、そうだそうだ。なんか昔のことに感じるなぁ」
「ホントに、そうですねー……あれ?」
プールの側から見える目的地、空想研究会の部室。
カーテンが開かれており、外から中の様子が丸見えだ。
部室の中では、三つの影。
まゆりともう一人、奏音の後姿は同じ制服だからすぐにわかった。
首を傾げる要因となったのは、三つ目の影。
二人の奥に、何か〝黒い影〟が見える。
全身が黒く、校内ではまず見かけない色合い――不思議を感じた高牧は「先輩、コッチ」と久保井を引っ張って物陰に隠れた。
「先輩……アレ……?」
小声で高牧は部室を指差す。
「ん? 何だあれ。コスプレか?」
「いえ、違います。私、あの空想研究会の準備手伝ったんですけど……あんな衣装無かったんですよ」
「ふーん……じゃあドッキリみたいな?」
「昼休みに、わざわざこんな場所で? ……おかしくないですか?」
「……確かに」
訝しんだ視線を向けていると、高牧はふと、ある記事を思い出した。
それは、空想研究会の動画などを公開していた文化祭掲示板で常にトップにあった記事。
〝記事の訂正〟というタイトルで、文化祭用の記事内で、誤って〝誰でも来場可能〟という旨の記事が出てしまったため、学外の人間が来場する可能性があるというものだった。
もし部外者らしい人を見かけたら、事情を説明して帰ってもらうようアナウンスもあり、印象に残っている。
もしかして、その部外者が――高牧の予感は、黒のレインコートの男が包丁を出したことで確信に変わった。
「お、おい……!」
「先輩……ど、どうしよう」
「取りあえず……本校舎に戻って先生に連絡しよう」
「う、うん!」
二人は踵を返し、本校舎にある職員室へ向かった。
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