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第三章 It's "SHOW" time
第31話
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魔百合を倒したからもう安全だと勝手に思い込んでいた自分のミス。
どんな危害が加えられるかもわからない。
一刻も早く保護しなければ、という一心での一歩だった――が、「ちょい待ち」と魔百合に足を引っかけられて思いっきり転んでしまった。
「なんだよ!」
「冷静になってよ。さっきも言ったでしょ? アタシらは双葉奏音を軸に計画を進めてる。そんな状況なのに、彼女に危害が及ぶわけがない」
「でも、お前が倒されたことがバレたら――」
「その心配もない」と言い、魔百合は服の胸元をぐっと下げた。
胸と胸の間、鎖骨の上あたりに縫合した跡がある。
「改造手術受けたときに、心臓の音が止まると連絡が行くようになってる。裏を返せば、アタシが死ぬか、『ピンチですー、助けてー』なんて報告をしない限りは任務遂行中ってことになる。そんな状態なのに危険を侵す必要はないでしょ。動くのは、報告が入ってから」
「報告?」
「そう。一時間ごとに定期的な連絡が来るから、その時まで……あと二十分は猶予がある。そのときには心音を取りながらの会話になるから、嘘は付けないけどね」
「……その時、お前が負けたってことを知ったら、奴らはどう動く?」
「ま、十中八九、奏音を攫うだろうね。なりふり構わず。だからアンタはこの残された数十分の間に、桜井翔――いや、SHOWから奏音を守る術を、戦う術を考えなくちゃいけない」
「その間に戻って保護するって選択肢は――」とまで言いかけて、ゼノスは口を噤んだ。
現状、魔百合の両腕は失われている状況にある。
そんな状態で戻れば間違いなく勘づくだろうし、姿を隠したまま奏音だけを引き離すなんてことをしても同様の結末になるだろう。
とどのつまり、一緒にキャンプに来て魔百合と対峙したときから、SHOWと戦うことは決まっていたということだ。
「ないな」と続けると「ま、そういうこと」と魔百合も肩をすくめた。
「連戦か……」
そう呟き、ゼノスはスーツのエネルギー残量を見た。
カイザースラッシュを使用してしまってから再充電が開始しており、残量は18パーセントまで回復している。
スーツの展開とムラマサブレードを使用することはできるが、稼働時間は五分ほど。
激しい動きをすればするだけ稼働時間は短くなる。
「お前らのボスはどんな戦闘スタイルだ?」
「あの人は単独で蹂躙するタイプ。スピードもパワーも、アタシの比じゃないよ。丁度さっきのアンタと同じくらいじゃないかな」
「……なるほど」
「あと、改造した幹部は戦闘能力以外にもアタシみたいに変身することができる。ボスは、噂だけど、巨大化ができるみたい」
「巨大化?」
「そう。誰も見たこと無いからあくまで噂だけどね。で……どう? 勝てそう?」
「やりようはある」
そう言うと、ゼノスは右のこめかみをトントンと叩いた。
アメリカ本部から『事情は把握したよ』というラスクの声が届いた。
「へぇ。スーツが維持できないほどギリギリなのに?」
「巨大化はそっちの専売特許じゃないんだよ」と言うと、ゼノスはラクスから『グランゼノスの使用予想データを転送します』と言う言葉と共に、ピロンという通知音が脳内で響く。
トントントンとこめかみを三回叩いて、送られてきたデータを網膜に投影する。
ゼノスの視界いっぱいに、半透明なモニターが現れた。
モニターの中央には、人型の機械が悠然と佇んでいる。
グランゼノス――対テロ組織に所属するトップエージェントのみに配備される、対テロ用超重人型決戦兵器だ。
機体のモデルデータがアメリカ本部にあり、ブライトの転送システムを併せて使用することで使用者の元へ出現させることができる優れものだ。
更に、使用者の思考をダイレクトに伝えることができるという汎用性の高さも併せ持つ。
大きな特徴として、動力源が戦闘服やカイザースラッシュに使うものとは違い、グランストーンと言う宇宙から飛来した鉱石だ。
従来のエネルギーはもちろん、ブライトよりも大きい力を発揮することができる。
更に、グランストーン同士を衝突させて発生するエネルギー・グラネシウムは、山をも切り裂くと言われているほどに強力な力を発揮すると言われているほどだ。
あまりに大きいため被害が広がりやすいこと、グランストーンを転送するためにブライトが大量に必要になること、グランストーンその物が希少で一度破損すれば大きな損害になるなどの問題点があるが、今はその問題点をすべてクリアしている。
――大丈夫、戦える。
その確信を持って、ゼノスは奏音とSHOWの待つキャンプ場へ歩を進めた。
どんな危害が加えられるかもわからない。
一刻も早く保護しなければ、という一心での一歩だった――が、「ちょい待ち」と魔百合に足を引っかけられて思いっきり転んでしまった。
「なんだよ!」
「冷静になってよ。さっきも言ったでしょ? アタシらは双葉奏音を軸に計画を進めてる。そんな状況なのに、彼女に危害が及ぶわけがない」
「でも、お前が倒されたことがバレたら――」
「その心配もない」と言い、魔百合は服の胸元をぐっと下げた。
胸と胸の間、鎖骨の上あたりに縫合した跡がある。
「改造手術受けたときに、心臓の音が止まると連絡が行くようになってる。裏を返せば、アタシが死ぬか、『ピンチですー、助けてー』なんて報告をしない限りは任務遂行中ってことになる。そんな状態なのに危険を侵す必要はないでしょ。動くのは、報告が入ってから」
「報告?」
「そう。一時間ごとに定期的な連絡が来るから、その時まで……あと二十分は猶予がある。そのときには心音を取りながらの会話になるから、嘘は付けないけどね」
「……その時、お前が負けたってことを知ったら、奴らはどう動く?」
「ま、十中八九、奏音を攫うだろうね。なりふり構わず。だからアンタはこの残された数十分の間に、桜井翔――いや、SHOWから奏音を守る術を、戦う術を考えなくちゃいけない」
「その間に戻って保護するって選択肢は――」とまで言いかけて、ゼノスは口を噤んだ。
現状、魔百合の両腕は失われている状況にある。
そんな状態で戻れば間違いなく勘づくだろうし、姿を隠したまま奏音だけを引き離すなんてことをしても同様の結末になるだろう。
とどのつまり、一緒にキャンプに来て魔百合と対峙したときから、SHOWと戦うことは決まっていたということだ。
「ないな」と続けると「ま、そういうこと」と魔百合も肩をすくめた。
「連戦か……」
そう呟き、ゼノスはスーツのエネルギー残量を見た。
カイザースラッシュを使用してしまってから再充電が開始しており、残量は18パーセントまで回復している。
スーツの展開とムラマサブレードを使用することはできるが、稼働時間は五分ほど。
激しい動きをすればするだけ稼働時間は短くなる。
「お前らのボスはどんな戦闘スタイルだ?」
「あの人は単独で蹂躙するタイプ。スピードもパワーも、アタシの比じゃないよ。丁度さっきのアンタと同じくらいじゃないかな」
「……なるほど」
「あと、改造した幹部は戦闘能力以外にもアタシみたいに変身することができる。ボスは、噂だけど、巨大化ができるみたい」
「巨大化?」
「そう。誰も見たこと無いからあくまで噂だけどね。で……どう? 勝てそう?」
「やりようはある」
そう言うと、ゼノスは右のこめかみをトントンと叩いた。
アメリカ本部から『事情は把握したよ』というラスクの声が届いた。
「へぇ。スーツが維持できないほどギリギリなのに?」
「巨大化はそっちの専売特許じゃないんだよ」と言うと、ゼノスはラクスから『グランゼノスの使用予想データを転送します』と言う言葉と共に、ピロンという通知音が脳内で響く。
トントントンとこめかみを三回叩いて、送られてきたデータを網膜に投影する。
ゼノスの視界いっぱいに、半透明なモニターが現れた。
モニターの中央には、人型の機械が悠然と佇んでいる。
グランゼノス――対テロ組織に所属するトップエージェントのみに配備される、対テロ用超重人型決戦兵器だ。
機体のモデルデータがアメリカ本部にあり、ブライトの転送システムを併せて使用することで使用者の元へ出現させることができる優れものだ。
更に、使用者の思考をダイレクトに伝えることができるという汎用性の高さも併せ持つ。
大きな特徴として、動力源が戦闘服やカイザースラッシュに使うものとは違い、グランストーンと言う宇宙から飛来した鉱石だ。
従来のエネルギーはもちろん、ブライトよりも大きい力を発揮することができる。
更に、グランストーン同士を衝突させて発生するエネルギー・グラネシウムは、山をも切り裂くと言われているほどに強力な力を発揮すると言われているほどだ。
あまりに大きいため被害が広がりやすいこと、グランストーンを転送するためにブライトが大量に必要になること、グランストーンその物が希少で一度破損すれば大きな損害になるなどの問題点があるが、今はその問題点をすべてクリアしている。
――大丈夫、戦える。
その確信を持って、ゼノスは奏音とSHOWの待つキャンプ場へ歩を進めた。
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