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第三章 It's "SHOW" time
第29話
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陽太に連れられ、たどり着いたのは、駅前の商店街だった。
最寄りの駅と共存するようにして存在する、成望商店街。
よく近所に巨大なショッピングモールができてしまい、商店街が廃れてしまった、なんて話を聞くことがあるが、この商店街は肉屋や八百屋、駄菓子屋から電気屋まですべからく賑わっている。
その景色は、陽太や翔と学校帰りに寄り、名札の裏に隠し持った五十円玉でこっそりとお菓子を買った数十年前のままだ。
懐かしさを感じる一方で、わざわざ商店街で何を、と疑問に思っていると、「今日の目的地は、ここ」と陽太はある店の前で立ち止まった。
「ここ……?」
「そっ」
陽太が立ち止まったのは、商店街にポツリとある中華料理屋〝蓮華〟。
中華料理屋はちょっと汚いくらいが一番美味しい、などと評されることがある。
この蓮華もその類なのだろう、みてくれは〝朽ち果てている〟という表現がピッタシだった。
暖簾はシミだらけ、店の壁にはツタが張っている。
表にある食品サンプルもひっくり返っており、チャーハンのところに餃子のサンプルがあったり……全てがテキトーだ。
これが数か月間そのまま、この間の地震で仕方なく、というだけならまだ弁解の余地ありだが、それこそ陽太や翔と遊んでいた時からこの廃れ具合ともなれば、擁護のしようもない。
――まさか、またこの店だなんて……。
帰り道、まゆりとなにか食べようという話になった際に、ここだけは嫌だと話したことがあるから、この店を嫌っていることはまゆりも知っているはず。
それを察してか、まゆりはにやにやと笑みを浮かべながら「いやー、気になってたんだよね」とわざとらしい棒読みをしている。
一方で、そんなことを知る由もない陽太。
奏音の気持ちを聞くことすらせず、意気揚々と「こんちわー!」と暖簾をくぐった。まゆりもそれに続く。
「はぁ……」
しょうがない、これも空想研究会のため――そう自分に言い聞かせて奏音も後に続いた。
数十年この町に住んでいて、初となる蓮華。
まず、しょう油の香りと油の香りが合わさった食欲を刺激する香りが鼻孔を突き刺してくる。
こんなみてくれでも、体は正直なもので。
ぐぅ、と小さなお腹の鳴き声と共に空腹が襲ってくる。
ぐっ、と腹を抑えて音を抑えながら一歩を踏み出した。
――なるほど……。
外観は最悪だが、意外にも店内は掃除が行き届いていた。
ほこりや器が出しっぱなし、なんてこともなく、こざっぱりとしている。
床は油でぬめぬめしていることは気がかりだが、ここはしょうがないか、と諦めて、テーブル席を見た。
陽太とまゆりが真向かいに座っていて陽太の隣は空いているが、とてもいきなり隣に座る度胸を持ち合わせているわけもなく。
こういうとこだぞ、と自分に戒めをしてからまゆりの隣に座る。
「あー、お腹空いた。何食べる? 奢るよ」
「いいよ、後でめんどくさいし。それよか、オススメ教えてよ」
「どれも旨いんだけど、オススメは――」
すっかり店に馴染んだ二人の友人。
パリパリと開くときに妙な声を上げたメニュー表を眺めた二人がすっかりラーメンに夢中になっているような気がして「ね、ヨウくん。目的忘れてない?」と睨みを利かせる。
「大丈夫大丈夫。忘れてないって。ちゃんと予定通りだよ。ここに〝助っ人〟がいる」
「助っ人?」
「そう! さっきの問題は、作品を探すのに時間が必要だって話だっただろ? 裏を返せば、知ってる人に話を聞けば大幅な時間節約ができる。そのための助っ人が、ここにいるんだ」
「それにしては、やけにウキウキしてるね……」
「ま、お腹が減ってたのは否定しないよ」
「もう……で、オススメは?」
「えっと、これ。蓮華ラーメン」
「はいはい……じゃあそれにしよっかな」
「アタシもそうしよ」
二人とも料理を選ぶと、陽太は「すみませーん」と右手を挙げて店員を呼ぶ。
すると、店の奥から一人の若い女性が顔を出した。
「はいはい! 待たせたのぅ!」
店の奥から出てきたのは、寂れた中華料理屋という店とあまりにも不釣り合いな美女だった。
透き通るような白い肌に宝石のような蒼い瞳、外から吹き込んだ夏の風に靡く髪色は金色で、輝いているように見える。
そこだけを見ればヨーロッパ系の出だと思うのだが、顔の作りはどことなく自分たちと近しいもの――アジア系の面影がある。
加えて、服装は真っ赤なチャイナ服と言う奇抜なものであり、彼女一人で文化と国が融合したかのようだ。
水をコップに注いで持ってきて、テーブルに置くだけ――そんな、店員としては至極当然な振る舞いでも、彼女がそれをするだけで景色が違って見える。
映画のワンシーンのようなそれに見とれていると「お! ヨウタではないか。久しぶりだのぅ!」と美女は陽太の右手を激しく叩いた。
「久しぶり……っていっても一か月ぶりくらいだけどね」
やり取りや振る舞いに、慣れを感じられる――訳も分からず困惑していると、「この人が?」とまゆりが口を開いてくれた。
「そう。この人が、秘密兵器」
「え? わし?」
秘密兵器、と言われて首を傾げる様も、どこか絵になっている。
奏音は、何者なの、と口を飛び出そうになった疑問を水と一緒に飲み込んだ。
「そうらしいですよ。えっと……あなたは?」
シェンフゥと名乗った美女は、「わしはシェンフゥ! よろしく頼む!」と言って、左足を引いて右足を曲げ、両手でスカートのすそを上げるというお嬢様スタイルの挨拶をかましてきた。
あまりにもミスマッチだが、これまた絵になる光景だ。
「双葉奏音です。よ、よろしくお願いします」
「アタシは園崎まゆり。よろしく、秘密兵器さん」
「ふむ……めんこいのぅ。ヨウタよ、お主やるな。かわいこちゃん二人も侍らせおって」
「侍らせるとか、止めてよ。同じ部活のメンバーってだけだって」
「ほぅ? 部活……Japanese Clubか! ええのぅ、ええのぅ! 部活に、制服に……わしももう少し若ければのぅ」
「シェンフゥは二十歳だっけ? まだ老け込むには早いでしょ」
「そういう意味ではなくての、ホレ、もう少し若ければお主たちと日本の学校に通って、イベントに参加してとかできたじゃろ? いくら若くても、もうその年齢を過ぎてその恰好をしたらもうただのコスプレにしかならんからなぁ」
「あ、なるほど……日本に来たの一昨年とかだったっけ」
「そうそう! もう少し早く日本のアニメとかと出会っておればのぅ」
そこまで会話が盛り上がったところで「おい! 注文まだか!」と厨房から野太い店主の声が響いてきた。
「ほ、ほいっ!」と声に背筋を伸ばしたシェンフゥは「それじゃ、またあとでの」と言ってその場を後にする。
「随分とかわいらしい秘密兵器なこと」
「シェンフゥは日本の文化が好きで、ハイスクール卒業と同時に日本に飛び出して来るレベルで親日家だったんだ」
「親日家ってことはやっぱり日本人じゃないんだ」
「うん。中国人とイギリス人のハーフだったはず」
「ふーん……えっ、てことはあの年寄りみたいな日本語もアンタが? 趣味悪ー」
「いやいや、違うって。お爺ちゃんが日本人だったからその影響みたい」
「ほー」
まゆりが場を繋いでくれたおかげで平静を取り戻せつつあった奏音は、「ど、どこで会ったの? やっぱりこのお店に来た時?」とようやく質問を投げかけられた。
「ううん。ゲーセンで偶然会ってさ。その後、この店に入ったら店員として働いてて、アニメとかの話で盛り上がった感じ。一年ちょっと前だったかな」
「へ、へぇ……」
「文化に詳しいって……アニメとかも? とてもそんな風には――」と言いかけたところで「愚問じゃ!」とシェンフゥがラーメンを手に遮ってきた。
「そもそもアニメから日本にハマったからの。ほい、蓮華ラーメン三つ、お待ち」
「あ、どうも」
各々ラーメンを受け取ると、シェンフゥは空いていた陽太の隣に座り「で、わしが秘密兵器とは何事か?」と首を傾げた。
あんな自然に隣に座れるんだ――自分にはない一面を羨んでいると「実はさ――」と陽太がシェンフゥに現状を伝え始めた。
全てを聞き終えると、シェンフゥは「なるほど、把握した」と笑みを浮かべた。
「協力、頼めないかな?」
「もちろん! 面白そうだしの。映画からギャルゲーまでカバーしとるわしに任せるのじゃ!」
その返答を聞くと、陽太は「ありがとう」と言って先ほど部室でメモ用紙代わりにしていた原稿用紙を取り出し、シャーペンを構えた。
「えっと……実現できそうで見栄えするシーンだったの。真っ先に思いつくのは〝名探偵ランポ〟じゃの」
「あ、それアタシ聞いたことある。探偵のやつだよね」
「そう、アニメ化や映画化もしてるビッグタイトルじゃ。よく殺人事件によくトリックとか使われとって数は多いし、これ無茶じゃないかというものもあっての。実際に実験してみてダメだったトリックと、実際にやってみて実現可能なのかやってみてもいいかもしれん」
「トリックか……」
「おすすめはドライアイスを使った実験をした回じゃ。トリックの再現と、ドライアイスを使った実験はみんな楽しめるじゃろ」
「なるほど」
「ただ、やっぱり探偵ものじゃと血生臭くなってしまうからな。他のは毛色が違うものにしなくちゃならんとすると……ファンタジーアニメの魔法を再現して目を引くもよし、ギャルゲーの〝放課後ミルキーウェイ〟とかで興味を散らすのもええのぅ。他は――」
なかなかこうしてじっくり話す機会がないのか、シェンフゥは堰を切ったように語り出した。
この間、客が来ることはなく。
七時までの約一時間、シェンフゥのアニメ談義は続いた。
最寄りの駅と共存するようにして存在する、成望商店街。
よく近所に巨大なショッピングモールができてしまい、商店街が廃れてしまった、なんて話を聞くことがあるが、この商店街は肉屋や八百屋、駄菓子屋から電気屋まですべからく賑わっている。
その景色は、陽太や翔と学校帰りに寄り、名札の裏に隠し持った五十円玉でこっそりとお菓子を買った数十年前のままだ。
懐かしさを感じる一方で、わざわざ商店街で何を、と疑問に思っていると、「今日の目的地は、ここ」と陽太はある店の前で立ち止まった。
「ここ……?」
「そっ」
陽太が立ち止まったのは、商店街にポツリとある中華料理屋〝蓮華〟。
中華料理屋はちょっと汚いくらいが一番美味しい、などと評されることがある。
この蓮華もその類なのだろう、みてくれは〝朽ち果てている〟という表現がピッタシだった。
暖簾はシミだらけ、店の壁にはツタが張っている。
表にある食品サンプルもひっくり返っており、チャーハンのところに餃子のサンプルがあったり……全てがテキトーだ。
これが数か月間そのまま、この間の地震で仕方なく、というだけならまだ弁解の余地ありだが、それこそ陽太や翔と遊んでいた時からこの廃れ具合ともなれば、擁護のしようもない。
――まさか、またこの店だなんて……。
帰り道、まゆりとなにか食べようという話になった際に、ここだけは嫌だと話したことがあるから、この店を嫌っていることはまゆりも知っているはず。
それを察してか、まゆりはにやにやと笑みを浮かべながら「いやー、気になってたんだよね」とわざとらしい棒読みをしている。
一方で、そんなことを知る由もない陽太。
奏音の気持ちを聞くことすらせず、意気揚々と「こんちわー!」と暖簾をくぐった。まゆりもそれに続く。
「はぁ……」
しょうがない、これも空想研究会のため――そう自分に言い聞かせて奏音も後に続いた。
数十年この町に住んでいて、初となる蓮華。
まず、しょう油の香りと油の香りが合わさった食欲を刺激する香りが鼻孔を突き刺してくる。
こんなみてくれでも、体は正直なもので。
ぐぅ、と小さなお腹の鳴き声と共に空腹が襲ってくる。
ぐっ、と腹を抑えて音を抑えながら一歩を踏み出した。
――なるほど……。
外観は最悪だが、意外にも店内は掃除が行き届いていた。
ほこりや器が出しっぱなし、なんてこともなく、こざっぱりとしている。
床は油でぬめぬめしていることは気がかりだが、ここはしょうがないか、と諦めて、テーブル席を見た。
陽太とまゆりが真向かいに座っていて陽太の隣は空いているが、とてもいきなり隣に座る度胸を持ち合わせているわけもなく。
こういうとこだぞ、と自分に戒めをしてからまゆりの隣に座る。
「あー、お腹空いた。何食べる? 奢るよ」
「いいよ、後でめんどくさいし。それよか、オススメ教えてよ」
「どれも旨いんだけど、オススメは――」
すっかり店に馴染んだ二人の友人。
パリパリと開くときに妙な声を上げたメニュー表を眺めた二人がすっかりラーメンに夢中になっているような気がして「ね、ヨウくん。目的忘れてない?」と睨みを利かせる。
「大丈夫大丈夫。忘れてないって。ちゃんと予定通りだよ。ここに〝助っ人〟がいる」
「助っ人?」
「そう! さっきの問題は、作品を探すのに時間が必要だって話だっただろ? 裏を返せば、知ってる人に話を聞けば大幅な時間節約ができる。そのための助っ人が、ここにいるんだ」
「それにしては、やけにウキウキしてるね……」
「ま、お腹が減ってたのは否定しないよ」
「もう……で、オススメは?」
「えっと、これ。蓮華ラーメン」
「はいはい……じゃあそれにしよっかな」
「アタシもそうしよ」
二人とも料理を選ぶと、陽太は「すみませーん」と右手を挙げて店員を呼ぶ。
すると、店の奥から一人の若い女性が顔を出した。
「はいはい! 待たせたのぅ!」
店の奥から出てきたのは、寂れた中華料理屋という店とあまりにも不釣り合いな美女だった。
透き通るような白い肌に宝石のような蒼い瞳、外から吹き込んだ夏の風に靡く髪色は金色で、輝いているように見える。
そこだけを見ればヨーロッパ系の出だと思うのだが、顔の作りはどことなく自分たちと近しいもの――アジア系の面影がある。
加えて、服装は真っ赤なチャイナ服と言う奇抜なものであり、彼女一人で文化と国が融合したかのようだ。
水をコップに注いで持ってきて、テーブルに置くだけ――そんな、店員としては至極当然な振る舞いでも、彼女がそれをするだけで景色が違って見える。
映画のワンシーンのようなそれに見とれていると「お! ヨウタではないか。久しぶりだのぅ!」と美女は陽太の右手を激しく叩いた。
「久しぶり……っていっても一か月ぶりくらいだけどね」
やり取りや振る舞いに、慣れを感じられる――訳も分からず困惑していると、「この人が?」とまゆりが口を開いてくれた。
「そう。この人が、秘密兵器」
「え? わし?」
秘密兵器、と言われて首を傾げる様も、どこか絵になっている。
奏音は、何者なの、と口を飛び出そうになった疑問を水と一緒に飲み込んだ。
「そうらしいですよ。えっと……あなたは?」
シェンフゥと名乗った美女は、「わしはシェンフゥ! よろしく頼む!」と言って、左足を引いて右足を曲げ、両手でスカートのすそを上げるというお嬢様スタイルの挨拶をかましてきた。
あまりにもミスマッチだが、これまた絵になる光景だ。
「双葉奏音です。よ、よろしくお願いします」
「アタシは園崎まゆり。よろしく、秘密兵器さん」
「ふむ……めんこいのぅ。ヨウタよ、お主やるな。かわいこちゃん二人も侍らせおって」
「侍らせるとか、止めてよ。同じ部活のメンバーってだけだって」
「ほぅ? 部活……Japanese Clubか! ええのぅ、ええのぅ! 部活に、制服に……わしももう少し若ければのぅ」
「シェンフゥは二十歳だっけ? まだ老け込むには早いでしょ」
「そういう意味ではなくての、ホレ、もう少し若ければお主たちと日本の学校に通って、イベントに参加してとかできたじゃろ? いくら若くても、もうその年齢を過ぎてその恰好をしたらもうただのコスプレにしかならんからなぁ」
「あ、なるほど……日本に来たの一昨年とかだったっけ」
「そうそう! もう少し早く日本のアニメとかと出会っておればのぅ」
そこまで会話が盛り上がったところで「おい! 注文まだか!」と厨房から野太い店主の声が響いてきた。
「ほ、ほいっ!」と声に背筋を伸ばしたシェンフゥは「それじゃ、またあとでの」と言ってその場を後にする。
「随分とかわいらしい秘密兵器なこと」
「シェンフゥは日本の文化が好きで、ハイスクール卒業と同時に日本に飛び出して来るレベルで親日家だったんだ」
「親日家ってことはやっぱり日本人じゃないんだ」
「うん。中国人とイギリス人のハーフだったはず」
「ふーん……えっ、てことはあの年寄りみたいな日本語もアンタが? 趣味悪ー」
「いやいや、違うって。お爺ちゃんが日本人だったからその影響みたい」
「ほー」
まゆりが場を繋いでくれたおかげで平静を取り戻せつつあった奏音は、「ど、どこで会ったの? やっぱりこのお店に来た時?」とようやく質問を投げかけられた。
「ううん。ゲーセンで偶然会ってさ。その後、この店に入ったら店員として働いてて、アニメとかの話で盛り上がった感じ。一年ちょっと前だったかな」
「へ、へぇ……」
「文化に詳しいって……アニメとかも? とてもそんな風には――」と言いかけたところで「愚問じゃ!」とシェンフゥがラーメンを手に遮ってきた。
「そもそもアニメから日本にハマったからの。ほい、蓮華ラーメン三つ、お待ち」
「あ、どうも」
各々ラーメンを受け取ると、シェンフゥは空いていた陽太の隣に座り「で、わしが秘密兵器とは何事か?」と首を傾げた。
あんな自然に隣に座れるんだ――自分にはない一面を羨んでいると「実はさ――」と陽太がシェンフゥに現状を伝え始めた。
全てを聞き終えると、シェンフゥは「なるほど、把握した」と笑みを浮かべた。
「協力、頼めないかな?」
「もちろん! 面白そうだしの。映画からギャルゲーまでカバーしとるわしに任せるのじゃ!」
その返答を聞くと、陽太は「ありがとう」と言って先ほど部室でメモ用紙代わりにしていた原稿用紙を取り出し、シャーペンを構えた。
「えっと……実現できそうで見栄えするシーンだったの。真っ先に思いつくのは〝名探偵ランポ〟じゃの」
「あ、それアタシ聞いたことある。探偵のやつだよね」
「そう、アニメ化や映画化もしてるビッグタイトルじゃ。よく殺人事件によくトリックとか使われとって数は多いし、これ無茶じゃないかというものもあっての。実際に実験してみてダメだったトリックと、実際にやってみて実現可能なのかやってみてもいいかもしれん」
「トリックか……」
「おすすめはドライアイスを使った実験をした回じゃ。トリックの再現と、ドライアイスを使った実験はみんな楽しめるじゃろ」
「なるほど」
「ただ、やっぱり探偵ものじゃと血生臭くなってしまうからな。他のは毛色が違うものにしなくちゃならんとすると……ファンタジーアニメの魔法を再現して目を引くもよし、ギャルゲーの〝放課後ミルキーウェイ〟とかで興味を散らすのもええのぅ。他は――」
なかなかこうしてじっくり話す機会がないのか、シェンフゥは堰を切ったように語り出した。
この間、客が来ることはなく。
七時までの約一時間、シェンフゥのアニメ談義は続いた。
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