14 / 44
第二章 怪人”魔百合”
第14話
しおりを挟む
頭が茹だるような熱さなのは、先程見た光景に対する怒りなのか、夕方だというのに燦々と照りつけている太陽のせいなのかはわからいが、取りあえず「なに、あの男……!」と怒りを収めるためにまゆりは愚痴を零した。
放課後、奏音の後をこっそりつけ、辿り着いた先は、学校の中でも外れの場所にある、〝離れ〟と皆が呼んでいる場所だ。
そんな無人島のような場所にあったのは、空想研究会といういかにも怪しげな部活だった。
ドアの隙間から確認すると、幼なじみというのはどうやらクラスメイトの瀬野陽太のことだったらしい。
男だ。
また変な虫が――まゆりは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべるが、その男子と話す表情はこれまで見たことがないくらいにリラックスしていた。
クラスでの瀬野陽太は目立つことも無く数ヶ月同じ教室で過ごしているのにもかかわらず名前しか認識できていない地味な存在だが、そんな男でも特別な表情を見せているのはあの二人が幼い時間を共有しているからだろう。
積もる話や、昔話などは会話が盛り上がる鉄板の内容だ。
それに比べ、所詮、自分は中学からの付き合い。
今過ごしている時間が懐かしく感じられるのは少なくとも数十年後になるはず。
そう考えると物悲しく、時間ばっかりは乗り越えられないよねと自分自身を納得させ、これ以上悲しむ前に帰ろうとした、その瞬間。
「なっ……!」
ドアの隙間から、信じられない物がまゆりの目に飛び込んできた。
それは、大人の本。
しかも、詳細はわからないが、表紙から察するに、どちらかといえばアブノーマルな内容だった。
そんな本を持っている男子と、同じ部活、しかも人数が少ないと言っていたから、二人だけの可能性がある。
そんな状況に、奏音を放置するわけには行かない。
帰路についている間もずっと怒りは収まらず、まゆりは決意を固める。
――……アイツ、潰そう。
奏音には悪いが、後々毒になる前に排除する。
その決意を持って、まゆりはクラスメイトの友人たちが入っているグループチャットアプリを開き、〝ね、今同じクラスの瀬野ってやつ見かけたんだけどさぁ〟と文字を打ち込んだ。
放課後、奏音の後をこっそりつけ、辿り着いた先は、学校の中でも外れの場所にある、〝離れ〟と皆が呼んでいる場所だ。
そんな無人島のような場所にあったのは、空想研究会といういかにも怪しげな部活だった。
ドアの隙間から確認すると、幼なじみというのはどうやらクラスメイトの瀬野陽太のことだったらしい。
男だ。
また変な虫が――まゆりは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべるが、その男子と話す表情はこれまで見たことがないくらいにリラックスしていた。
クラスでの瀬野陽太は目立つことも無く数ヶ月同じ教室で過ごしているのにもかかわらず名前しか認識できていない地味な存在だが、そんな男でも特別な表情を見せているのはあの二人が幼い時間を共有しているからだろう。
積もる話や、昔話などは会話が盛り上がる鉄板の内容だ。
それに比べ、所詮、自分は中学からの付き合い。
今過ごしている時間が懐かしく感じられるのは少なくとも数十年後になるはず。
そう考えると物悲しく、時間ばっかりは乗り越えられないよねと自分自身を納得させ、これ以上悲しむ前に帰ろうとした、その瞬間。
「なっ……!」
ドアの隙間から、信じられない物がまゆりの目に飛び込んできた。
それは、大人の本。
しかも、詳細はわからないが、表紙から察するに、どちらかといえばアブノーマルな内容だった。
そんな本を持っている男子と、同じ部活、しかも人数が少ないと言っていたから、二人だけの可能性がある。
そんな状況に、奏音を放置するわけには行かない。
帰路についている間もずっと怒りは収まらず、まゆりは決意を固める。
――……アイツ、潰そう。
奏音には悪いが、後々毒になる前に排除する。
その決意を持って、まゆりはクラスメイトの友人たちが入っているグループチャットアプリを開き、〝ね、今同じクラスの瀬野ってやつ見かけたんだけどさぁ〟と文字を打ち込んだ。
0
お気に入りに追加
78
あなたにおすすめの小説
全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―
入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。
遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。
本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。
優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。
ヤマネ姫の幸福論
ふくろう
青春
秋の長野行き中央本線、特急あずさの座席に座る一組の男女。
一見、恋人同士に見えるが、これが最初で最後の二人の旅行になるかもしれない。
彼らは霧ヶ峰高原に、「森の妖精」と呼ばれる小動物の棲み家を訪ね、夢のように楽しい二日間を過ごす。
しかし、運命の時は、刻一刻と迫っていた。
主人公達の恋の行方、霧ヶ峰の生き物のお話に添えて、世界中で愛されてきた好編「幸福論」を交え、お読みいただける方に、少しでも清々しく、優しい気持ちになっていただけますよう、精一杯、書いてます!
どうぞ、よろしくお願いいたします!

俺たちの共同学園生活
雪風 セツナ
青春
初めて執筆した作品ですので至らない点が多々あると思いますがよろしくお願いします。
2XXX年、日本では婚姻率の低下による出生率の低下が問題視されていた。そこで政府は、大人による婚姻をしなくなっていく風潮から若者の意識を改革しようとした。そこて、日本本島から離れたところに東京都所有の人工島を作り上げ高校生たちに対して特別な制度を用いた高校生活をおくらせることにした。
しかしその高校は一般的な高校のルールに当てはまることなく数々の難題を生徒たちに仕向けてくる。時には友人と協力し、時には敵対して競い合う。
そんな高校に入学することにした新庄 蒼雪。
蒼雪、相棒・友人は待ち受ける多くの試験を乗り越え、無事に学園生活を送ることができるのか!?
キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。
たかなしポン太
青春
僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。
助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。
でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。
「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」
「ちょっと、確認しなくていいですから!」
「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」
「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」
天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。
異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー!
※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。
※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。
息絶える瞬間の詩のように
有沢真尋
青春
海辺の田舎町で、若手アーティストを招聘した芸術祭が開催されることに。
ある絵を見て以来、うまく「自分の絵」がかけなくなっていた女子高生・香雅里(かがり)は、招聘アーティストの名前に「あの絵のひと」を見つけ、どうしても会いたいと思い詰める。
だけど、現れた日本画家・有島はとてつもなくガラの悪い青年で……
※喫煙描写があります。苦手な方はご注意ください。
表紙イラスト:あっきコタロウさま
(https://note.com/and_dance_waltz/m/mb4b5e1433059)
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
鷹鷲高校執事科
三石成
青春
経済社会が崩壊した後に、貴族制度が生まれた近未来。
東京都内に広大な敷地を持つ全寮制の鷹鷲高校には、貴族の子息が所属する帝王科と、そんな貴族に仕える、優秀な執事を育成するための執事科が設立されている。
物語の中心となるのは、鷹鷲高校男子部の三年生。
各々に悩みや望みを抱えた彼らは、高校三年生という貴重な一年間で、学校の行事や事件を通して、生涯の主人と執事を見つけていく。
表紙イラスト:燈実 黙(@off_the_lamp)
瞬間、青く燃ゆ
葛城騰成
ライト文芸
ストーカーに刺殺され、最愛の彼女である相場夏南(あいばかなん)を失った春野律(はるのりつ)は、彼女の死を境に、他人の感情が顔の周りに色となって見える病、色視症(しきししょう)を患ってしまう。
時が経ち、夏南の一周忌を二ヶ月後に控えた4月がやって来た。高校三年生に進級した春野の元に、一年生である市川麻友(いちかわまゆ)が訪ねてきた。色視症により、他人の顔が見えないことを悩んでいた春野は、市川の顔が見えることに衝撃を受ける。
どうして? どうして彼女だけ見えるんだ?
狼狽する春野に畳み掛けるように、市川がストーカーの被害に遭っていることを告げる。
春野は、夏南を守れなかったという罪の意識と、市川の顔が見える理由を知りたいという思いから、彼女と関わることを決意する。
やがて、ストーカーの顔色が黒へと至った時、全ての真実が顔を覗かせる。
第5回ライト文芸大賞 青春賞 受賞作
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる