妄想の中のテロリストはいつも学校を襲っている

エルトリア

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第二章 怪人”魔百合”

第14話

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 頭が茹だるような熱さなのは、先程見た光景に対する怒りなのか、夕方だというのに燦々と照りつけている太陽のせいなのかはわからいが、取りあえず「なに、あの男……!」と怒りを収めるためにまゆりは愚痴を零した。

 放課後、奏音の後をこっそりつけ、辿り着いた先は、学校の中でも外れの場所にある、〝離れ〟と皆が呼んでいる場所だ。
 そんな無人島のような場所にあったのは、空想研究会といういかにも怪しげな部活だった。
 ドアの隙間から確認すると、幼なじみというのはどうやらクラスメイトの瀬野陽太のことだったらしい。

 男だ。

 また変な虫が――まゆりは苦虫を噛み潰したような表情を浮かべるが、その男子と話す表情はこれまで見たことがないくらいにリラックスしていた。

 クラスでの瀬野陽太は目立つことも無く数ヶ月同じ教室で過ごしているのにもかかわらず名前しか認識できていない地味な存在だが、そんな男でも特別な表情を見せているのはあの二人が幼い時間を共有しているからだろう。
 積もる話や、昔話などは会話が盛り上がる鉄板の内容だ。

 それに比べ、所詮、自分は中学からの付き合い。
 今過ごしている時間が懐かしく感じられるのは少なくとも数十年後になるはず。
 そう考えると物悲しく、時間ばっかりは乗り越えられないよねと自分自身を納得させ、これ以上悲しむ前に帰ろうとした、その瞬間。

「なっ……!」

 ドアの隙間から、信じられない物がまゆりの目に飛び込んできた。

 それは、大人の本。
 しかも、詳細はわからないが、表紙から察するに、どちらかといえばアブノーマルな内容だった。

 そんな本を持っている男子と、同じ部活、しかも人数が少ないと言っていたから、二人だけの可能性がある。
 そんな状況に、奏音を放置するわけには行かない。

 帰路についている間もずっと怒りは収まらず、まゆりは決意を固める。

 ――……アイツ、潰そう。

 奏音には悪いが、後々毒になる前に排除する。
 その決意を持って、まゆりはクラスメイトの友人たちが入っているグループチャットアプリを開き、〝ね、今同じクラスの瀬野ってやつ見かけたんだけどさぁ〟と文字を打ち込んだ。
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