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第四章
第九話 深まる寒さ
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北の地の探索を開始してから三週間ほどが経った頃、俺たちは洞窟の奥を進み続けていた。
「うぅ……ママ、寒いよー」
「キュ、キュー……」
あれほど元気だったエルフィがとうとう、寒さを感じ始めた。
その胸には、洞窟の中で光源として活躍してるルナルクスのみかづきの姿があった。
とにかく温まろうとぎゅっと抱いているので、少しだけ苦しそうだ。
既にエルフィにも防寒着を着せ、寒さ対策でララメェに乗っているのだが、それでもこう言うということは、かなりの寒さということだ。
「そ、そそそそ、そですね、エルフィちゃん。わ、私なんかはもう指先の感覚ががが……」
寒さに弱いエリスはもうかなり限界に来ているようで全身をララメェにうずめて、目から上だけを出している。
ちなみにユーリ殿もまったく同じ格好をしていて似たもの兄妹であった。
「しかし、本当に寒いなあ」
トパーズやルーイの力が全く通用しないほどに、寒気が凄まじい。
二人によると、なにか強い力によって妨害されているような感じらしい。
「待てレヴィン。洞窟の向こうになにか大きなものが見えないか?」
「大きなものですか?」
レグルス殿の言葉に従って前を見てみると、巨大なマンモスのような魔獣が氷漬けになっていた。
体高だけでも人の五倍はあろうかという巨躯だ。
それを見上げながらユーリ殿が尋ねる。
「ふむ。かなりの大きさのようだな。レヴィン殿、この獣については知っているのか?」
「いえ、初めて見る種類です。聖獣ではなさそうですが、強い力を感じます」
地面を掴むその分厚い脚は雄々しく、牙は見惚れるほどに美しい曲線を描いている。
何より目を引いたのがその背中だ。マンモスの背にはなぜか平らな陸地が背負われており、何本かのたくましい木が生えていた。
その特徴的な背はまるでリントヴルムを彷彿とさせる。
「もしかして、この魔獣が異常気象の原因だったりするのでしょうか? ほら、凍ってますし、ものすごい冷気を発していたとか?」
「そうなると、自分の冷気で凍ったことにならない?」
アリアが首を傾げる。
さすがにそんな間抜けなことにはなってないと思うが。
「とりあえず、ルーイとトパーズなら感じられるのかな?」
二人は自分の力を阻むものの存在を実感していた。試しに二人を喚び出して聞いてみることにする。
「うーん。このマンモスからは、そういった力は感じないかも。むしろ、この奥かしら?」
「この先に、なにか居るのか?」
確かに氷漬けのマンモスは奥に繋がる道を塞いでいるように佇んでいるように見える。
「そうだ。ご主人様、試しに氷を溶かしてみませんか?」
「大丈夫か? ルーイたちは、うまく力が使えないんだろう?」
「それなら、私が力を貸すよ《神聖騎士》の力ならルーイたちを強化できるでしょ?」
なるほど確かにアリアの力を借りれば、みんないつも通りの、いやそれ以上に力を発揮できるかもしれない。
それから、トパーズやルーイ、それにルビーも加勢してマンモスを解凍する作業が始まった。
しかし、氷は思いのほか強固で、みんなの渾身の攻撃を受けても、わずかたりとも溶け出すことはなかった。
「申し訳ございません、レヴィン様。お役に立てず……」
「いや、気にしなくて大丈夫だよ。それよりも、みんなが力を合わせてもなんともないなんて、普通の氷じゃないのかもしれない」
ともかく、これではこの先には進めない。
ここは一度帰還して氷をどうにかする方法を探した方がいいかもしれない。
俺たちは転移門を設置して町へと戻ることにした。
「うぅ……ママ、寒いよー」
「キュ、キュー……」
あれほど元気だったエルフィがとうとう、寒さを感じ始めた。
その胸には、洞窟の中で光源として活躍してるルナルクスのみかづきの姿があった。
とにかく温まろうとぎゅっと抱いているので、少しだけ苦しそうだ。
既にエルフィにも防寒着を着せ、寒さ対策でララメェに乗っているのだが、それでもこう言うということは、かなりの寒さということだ。
「そ、そそそそ、そですね、エルフィちゃん。わ、私なんかはもう指先の感覚ががが……」
寒さに弱いエリスはもうかなり限界に来ているようで全身をララメェにうずめて、目から上だけを出している。
ちなみにユーリ殿もまったく同じ格好をしていて似たもの兄妹であった。
「しかし、本当に寒いなあ」
トパーズやルーイの力が全く通用しないほどに、寒気が凄まじい。
二人によると、なにか強い力によって妨害されているような感じらしい。
「待てレヴィン。洞窟の向こうになにか大きなものが見えないか?」
「大きなものですか?」
レグルス殿の言葉に従って前を見てみると、巨大なマンモスのような魔獣が氷漬けになっていた。
体高だけでも人の五倍はあろうかという巨躯だ。
それを見上げながらユーリ殿が尋ねる。
「ふむ。かなりの大きさのようだな。レヴィン殿、この獣については知っているのか?」
「いえ、初めて見る種類です。聖獣ではなさそうですが、強い力を感じます」
地面を掴むその分厚い脚は雄々しく、牙は見惚れるほどに美しい曲線を描いている。
何より目を引いたのがその背中だ。マンモスの背にはなぜか平らな陸地が背負われており、何本かのたくましい木が生えていた。
その特徴的な背はまるでリントヴルムを彷彿とさせる。
「もしかして、この魔獣が異常気象の原因だったりするのでしょうか? ほら、凍ってますし、ものすごい冷気を発していたとか?」
「そうなると、自分の冷気で凍ったことにならない?」
アリアが首を傾げる。
さすがにそんな間抜けなことにはなってないと思うが。
「とりあえず、ルーイとトパーズなら感じられるのかな?」
二人は自分の力を阻むものの存在を実感していた。試しに二人を喚び出して聞いてみることにする。
「うーん。このマンモスからは、そういった力は感じないかも。むしろ、この奥かしら?」
「この先に、なにか居るのか?」
確かに氷漬けのマンモスは奥に繋がる道を塞いでいるように佇んでいるように見える。
「そうだ。ご主人様、試しに氷を溶かしてみませんか?」
「大丈夫か? ルーイたちは、うまく力が使えないんだろう?」
「それなら、私が力を貸すよ《神聖騎士》の力ならルーイたちを強化できるでしょ?」
なるほど確かにアリアの力を借りれば、みんないつも通りの、いやそれ以上に力を発揮できるかもしれない。
それから、トパーズやルーイ、それにルビーも加勢してマンモスを解凍する作業が始まった。
しかし、氷は思いのほか強固で、みんなの渾身の攻撃を受けても、わずかたりとも溶け出すことはなかった。
「申し訳ございません、レヴィン様。お役に立てず……」
「いや、気にしなくて大丈夫だよ。それよりも、みんなが力を合わせてもなんともないなんて、普通の氷じゃないのかもしれない」
ともかく、これではこの先には進めない。
ここは一度帰還して氷をどうにかする方法を探した方がいいかもしれない。
俺たちは転移門を設置して町へと戻ることにした。
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