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第二章
第13話 決戦前夜
しおりを挟む ルビとスタールビーの魔力が増幅しているのは肌で感じられる。だから確かにそこにいるとわかるのだが、視認できないのだ。
これが鉱物人形の戦闘?
魔力が高まっているからだろう、ふたりから溢れ出す魔力が紅玉色の光として捉えられるようになった。
蛇型の魔物が翻弄されているのがわかる。
右へ、左へ。
首も尻尾も使える部分は使って動いているが、彼らを捉えきれていないようだ。魔物にとって、この屋内は狭すぎるのかもしれない。
衝撃波や咆哮で建物が軋み、揺れる。その都度、アメシストが結界を張り、シトリンが剣で飛翔体を弾いた。
「すごい……」
「一撃で仕留めるのかと思ったけど、慎重ね」
「そうなんですか?」
「彼らにとっても、あまり敵対したことのない相手なんでしょう。慎重なのはいいことよ」
セレナは答えながら、手を動かしている。術の準備のようだ。
「ところで、セレナさんはなにを?」
「倒したら毒素が充満、みたいなのもあるからね。精霊管理協会の制服ってその辺のことも考慮されていて術が編み込まれているんだけど、念には念を」
「現場に出ているだけありますね……」
ひょっとしたら、セレナの準備が整うのを待っているのかもしれない。彼女の手が止まったとき、赤い光が蛇型の魔物を分断した。
私の前方、地面に着地する音が二つ。すぐさまスタールビーが手をかざして結界を張る。
魔物が霧散した。蛇型の血煙が周囲の闇に溶けていく。
「――倒せたから引くぞ。ほかに魔物はいないはずだ」
結界は消さずに、スタールビーが告げる。
「呼吸はしないほうがいい。腐るぞ」
ルビが剣を虚空にしまうなり説明してくれた。彼の服の一部が溶けている。鉱物人形は衣装も含めて身体の一部だと説明されたのを思い出した。
私が手を伸ばそうとしたところで、アメシストが私を横抱きにする。
「治療は後だよ。脱出しよう」
建物が焼ける音がする。魔物がいたあたりの床が溶け始めていた。
私が頷いたのを確認して、撤退作業に入る。階段を降りて、来た道を辿って外に出た。
「よっ。お疲れ様だったな」
先に脱出していたオパールと合流した。彼の足元には腕と身体が別々にまとめられたステラが倒れている。大きな人形が落ちているみたいな感じで、どことなくシュールだ。
「サンプルが取れなかったけど、まあ仕方がないわよねえ」
オパールに向かって、セレナが肩をすくめた。オパールが苦笑する。
「データが取れりゃ充分だろ? 始末書と報告書、オレも手伝うからあんまり無茶してくれるな。きみは人間で、オレの伴侶なんだから。鉱物人形の未亡人とか、勘弁願いたいんだが」
「そっちもあんまり格好つけないでほしいわね」
「後輩に戦闘を見せるのが今回の仕事に含まれているんだろ? 任務を遂行しただけなのに、その言い方はないだろ」
ふたりのやり取りを見ていると、互いを信頼し心配していたのがよく伝わってくる。何かあったときにすぐに回復させたい都合で結婚しているのだとオパールは言っていたはずだが、彼らがパートナーとして選んだのは必然だったのだろうと思えた。
精霊管理協会の職員になるなら結婚必須みたいだけど、じゃあ精霊使いはどうなんだろう?
これが鉱物人形の戦闘?
魔力が高まっているからだろう、ふたりから溢れ出す魔力が紅玉色の光として捉えられるようになった。
蛇型の魔物が翻弄されているのがわかる。
右へ、左へ。
首も尻尾も使える部分は使って動いているが、彼らを捉えきれていないようだ。魔物にとって、この屋内は狭すぎるのかもしれない。
衝撃波や咆哮で建物が軋み、揺れる。その都度、アメシストが結界を張り、シトリンが剣で飛翔体を弾いた。
「すごい……」
「一撃で仕留めるのかと思ったけど、慎重ね」
「そうなんですか?」
「彼らにとっても、あまり敵対したことのない相手なんでしょう。慎重なのはいいことよ」
セレナは答えながら、手を動かしている。術の準備のようだ。
「ところで、セレナさんはなにを?」
「倒したら毒素が充満、みたいなのもあるからね。精霊管理協会の制服ってその辺のことも考慮されていて術が編み込まれているんだけど、念には念を」
「現場に出ているだけありますね……」
ひょっとしたら、セレナの準備が整うのを待っているのかもしれない。彼女の手が止まったとき、赤い光が蛇型の魔物を分断した。
私の前方、地面に着地する音が二つ。すぐさまスタールビーが手をかざして結界を張る。
魔物が霧散した。蛇型の血煙が周囲の闇に溶けていく。
「――倒せたから引くぞ。ほかに魔物はいないはずだ」
結界は消さずに、スタールビーが告げる。
「呼吸はしないほうがいい。腐るぞ」
ルビが剣を虚空にしまうなり説明してくれた。彼の服の一部が溶けている。鉱物人形は衣装も含めて身体の一部だと説明されたのを思い出した。
私が手を伸ばそうとしたところで、アメシストが私を横抱きにする。
「治療は後だよ。脱出しよう」
建物が焼ける音がする。魔物がいたあたりの床が溶け始めていた。
私が頷いたのを確認して、撤退作業に入る。階段を降りて、来た道を辿って外に出た。
「よっ。お疲れ様だったな」
先に脱出していたオパールと合流した。彼の足元には腕と身体が別々にまとめられたステラが倒れている。大きな人形が落ちているみたいな感じで、どことなくシュールだ。
「サンプルが取れなかったけど、まあ仕方がないわよねえ」
オパールに向かって、セレナが肩をすくめた。オパールが苦笑する。
「データが取れりゃ充分だろ? 始末書と報告書、オレも手伝うからあんまり無茶してくれるな。きみは人間で、オレの伴侶なんだから。鉱物人形の未亡人とか、勘弁願いたいんだが」
「そっちもあんまり格好つけないでほしいわね」
「後輩に戦闘を見せるのが今回の仕事に含まれているんだろ? 任務を遂行しただけなのに、その言い方はないだろ」
ふたりのやり取りを見ていると、互いを信頼し心配していたのがよく伝わってくる。何かあったときにすぐに回復させたい都合で結婚しているのだとオパールは言っていたはずだが、彼らがパートナーとして選んだのは必然だったのだろうと思えた。
精霊管理協会の職員になるなら結婚必須みたいだけど、じゃあ精霊使いはどうなんだろう?
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