23 / 50
現在編3
3
しおりを挟む
僕は、いつも見張られている。
自由に行動しているようで、制限されている。
ママ活は人生になんの楽しみもない僕の生き甲斐なのであんまり妨害されることはないけれど、明らかに怪しいママと連絡を取っていると響から注意された。
アプリの通信記録を明らかに覗いてるのを隠そうとしない響。
通信記録を覗いているのはたぶん響だけではないだろう。
高宮家はそれぞれの思惑を抱え、懸命にニアミスを防ごうとしている。
僕がママと接触するのを。
僕があの子と出会ってしまうのを。
優斗という少年から、僕とあの子の繋がりができてしまいそうになったことを、誰か気づいてくれているだろうか。
あれから、僕はちょっとだけ緊張して過ごしていた。
ニアミスを防いでほしいのは、僕も一緒だった。
『こっちでちょっとした問題が起きた、しばらくママ活はやめろ。既に繋がりがあるママにもなるべく会わないほうがいい。新規メッセージには反応するな」
響から電話があり、なにを言われるのかと思ったら警告だった。
「どんな問題が起きたのか、具体的には聞かないほうがいい?」
『聞いたところで死にたい死にたいって言い出すだけだろうな』
「そっか。じゃあ聞かないことにする」
『そうしとけ。マジで大人しくしとけよ。心配なら、蓮の家に行っとけ』
「その蓮も父親に強襲されて泣いてたけどね」
『じゃあ、俺の家に来るか?』
「選択肢にないよ。自分の部屋に引きこもる。しばらく家を出ない」
『賢明だ。知らない人間が来ても簡単にドアを開けるなよ。反応する必要もない』
「子どもじゃないからね」
僕が言うと、電話越しに響が鼻で笑ったのがわかった。
その後電話が切れ、僕はちょっとただ事ではないのかもしれないと思った。
蓮のこともあるし、響に余裕がなさそうだったのも気になる。
ママになにかあったのか。
もしもそうならば、流石に直ぐに教えてもらえるだろう。
だったら、高宮三兄弟の誰かがついに動き出したのか。
霞さんや、菫さんならまだいい。
高宮奏の存在を意識しただけで、心臓が止まりそうになる。
ぐるぐる考えていると、突然チャイムが鳴った。
誰かが階段を上ってくる足音に気づかなかった。
だから余計に、驚いた。
響の電話を切った後で、どうして直ぐに応答できるだろうか。
僕は動きを止めて、じっと玄関のほうを見つめた。
チャイムが、もう一度鳴る。
それでも反応しないでいるとドンドンと扉を直接叩かれた。
僕は恐る恐る扉に近づいて、ドアスコープを覗いた。
そして思わず、ヒッと声を漏らしてしまった。
その声が扉の外にいる人物に届いてしまったのだろうか。
「お兄ちゃん、開けて」
あの子は、扉越しに、僕に言った。
自由に行動しているようで、制限されている。
ママ活は人生になんの楽しみもない僕の生き甲斐なのであんまり妨害されることはないけれど、明らかに怪しいママと連絡を取っていると響から注意された。
アプリの通信記録を明らかに覗いてるのを隠そうとしない響。
通信記録を覗いているのはたぶん響だけではないだろう。
高宮家はそれぞれの思惑を抱え、懸命にニアミスを防ごうとしている。
僕がママと接触するのを。
僕があの子と出会ってしまうのを。
優斗という少年から、僕とあの子の繋がりができてしまいそうになったことを、誰か気づいてくれているだろうか。
あれから、僕はちょっとだけ緊張して過ごしていた。
ニアミスを防いでほしいのは、僕も一緒だった。
『こっちでちょっとした問題が起きた、しばらくママ活はやめろ。既に繋がりがあるママにもなるべく会わないほうがいい。新規メッセージには反応するな」
響から電話があり、なにを言われるのかと思ったら警告だった。
「どんな問題が起きたのか、具体的には聞かないほうがいい?」
『聞いたところで死にたい死にたいって言い出すだけだろうな』
「そっか。じゃあ聞かないことにする」
『そうしとけ。マジで大人しくしとけよ。心配なら、蓮の家に行っとけ』
「その蓮も父親に強襲されて泣いてたけどね」
『じゃあ、俺の家に来るか?』
「選択肢にないよ。自分の部屋に引きこもる。しばらく家を出ない」
『賢明だ。知らない人間が来ても簡単にドアを開けるなよ。反応する必要もない』
「子どもじゃないからね」
僕が言うと、電話越しに響が鼻で笑ったのがわかった。
その後電話が切れ、僕はちょっとただ事ではないのかもしれないと思った。
蓮のこともあるし、響に余裕がなさそうだったのも気になる。
ママになにかあったのか。
もしもそうならば、流石に直ぐに教えてもらえるだろう。
だったら、高宮三兄弟の誰かがついに動き出したのか。
霞さんや、菫さんならまだいい。
高宮奏の存在を意識しただけで、心臓が止まりそうになる。
ぐるぐる考えていると、突然チャイムが鳴った。
誰かが階段を上ってくる足音に気づかなかった。
だから余計に、驚いた。
響の電話を切った後で、どうして直ぐに応答できるだろうか。
僕は動きを止めて、じっと玄関のほうを見つめた。
チャイムが、もう一度鳴る。
それでも反応しないでいるとドンドンと扉を直接叩かれた。
僕は恐る恐る扉に近づいて、ドアスコープを覗いた。
そして思わず、ヒッと声を漏らしてしまった。
その声が扉の外にいる人物に届いてしまったのだろうか。
「お兄ちゃん、開けて」
あの子は、扉越しに、僕に言った。
0
お気に入りに追加
464
あなたにおすすめの小説

ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。


【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

もういいや
ちゃんちゃん
BL
急遽、有名で偏差値がバカ高い高校に編入した時雨 薊。兄である柊樹とともに編入したが……
まぁ……巻き込まれるよね!主人公だもん!
しかも男子校かよ………
ーーーーーーーー
亀更新です☆期待しないでください☆


淫愛家族
箕田 はる
BL
婿養子として篠山家で生活している睦紀は、結婚一年目にして妻との不仲を悩んでいた。
事あるごとに身の丈に合わない結婚かもしれないと考える睦紀だったが、以前から親交があった義父の俊政と義兄の春馬とは良好な関係を築いていた。
二人から向けられる優しさは心地よく、迷惑をかけたくないという思いから、睦紀は妻と向き合うことを決意する。
だが、同僚から渡された風俗店のカードを返し忘れてしまったことで、正しい三人の関係性が次第に壊れていく――
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる