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I
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*********
~ Ⅰ ~
*********
「人の成長とは恐ろしい」
すっかり太腿まで伸びた銀髪を三つ編みにして後ろに流す
爪を切りそろえ、制服姿に手袋と腰に鞭をつける
コツコツと部屋を後にして、紅茶を淹れ始めた
「おや、この茶葉は主のお気に入りですからすぐ無くなりますね」
カランと茶葉の缶を置き、ティーカップと作り立てのチョコチップスコーンとコーンスープを運ぶ
コンコンとノックをして中に入ると主はまだ寝ていた
近くには課題の書類が置いてある
「昨夜も遅かったのですね」
溜息を押し殺し、カーテンを開く
明るい日差しが主を照らす
「主様、お目覚めのお時間でございます」
私は一礼をする
「んん、もう六時か」
主は欠伸をして私をじっと見た
「無月、君は相変わらずだね」
そう言うのは褒め言葉
「有難きお言葉です」
主は私の側にある紅茶とスコーンを見て微笑んだ
「よく分かっているじゃないか、それに今日はコーンか」
「はい、左様でございます」
私はテーブルの椅子を引き主を座らせ、目の前に静かに置く
主は黙々と食べて手を合わせる
「ご馳走様」
私は綺麗になった食器たちを片付け、テーブルと椅子を消す
主が着替えのしているうちに私は昨夜の課題の書類など必要なものを揃えたものが入っているスクールバッグを片手に二つ持ち、主の履く靴を選ぶ
(今日は確か体力関係のものがありました………)
いつもの革靴をしまい、運動靴を出す
そして
今日の天気の匂いを感じ取り、安心する
「待たせたか?」
「いえ、滅相もございません」
おや、私とした事が主の説明をしていなかったです
主の御名前はルイ・ヴィルデージ様
正しくは瑠衣・ヴィルデージ様
私の主であり、唯一の家族にしてくださったお方だ
主の家庭は貴族の位置にあり、とても素晴らしい
剣術を始め武道が非常に素晴らしく、誇らしい成績を持つ
私は勿論全て出来ます
これくらい執事であれば完璧だ
主の家族は騎士団長の奥様と王の旦那様、そして第一皇子様と第二皇子様のお方達とそして第三皇子の主、その下に私が付けられる
「無月」
不意に呼ばれ、足を止めると主は私を見つめていた
「如何なさいましたか?」
私はにこりと微笑み主を見つめ返す
主はそっと私の頬に手を伸ばし、つまんだ
「ひゃの、いひゃいのでひゅが」
少し困ったように眉を顰め、主を見ると主は溜息を吐く
「僕は君を信頼してるんだ、君も堂々としたらどうだい?」
「!………」
主の言葉に目を見開き、動きを止める
その行動に確信を持った主は私の頬から手を離すと思いっきり蹴られた
「っ!?」
咄嗟の行動だが私からしては遅く、防御して尚且つ主の足が怪我しないように最善の注意を払う
「流石だね」
「有難きお言葉」
私はにこりと微笑み、主の後ろに立つ
その姿勢に主は満足して歩き出す
暫くして教室につき、私は主の椅子を引いた
そして主が座ると私は立ったまま教室の後ろに立つ
「流石だね貴族様は違うなー!!」
ピクリと動く
「あんな化け物従わせていい御身分だな!」
一人の馬鹿の言葉に乗ったクラスの皆
「どーせ金で物言わせているんだろ」
青筋が立つ
主は黙々と本をお読みになられている
それを見て気を悪くしたクラスの皆
主から本を取り上げ、その本を踏む
クシャクシャになり破れた本は無惨な姿
主はそれを静かに見つめ
「気が済んだかい?」
そう言ったのだ
私はにこりと微笑み、前を向く
が
次の一言に私は青筋を深く立てることとなる
「テメェみてぇなクソ餓鬼はさっさとお家に帰りな?」
その刹那
教室に激しい鞭のなる音が響き渡る
コツン………
やけに革靴がなる音が響く
そして
その音はやがてとある人物の前で止まる
「申し訳ございません、今何と仰いましたか?」
その人物は先ほどまで意気揚々と暴言を吐いた男子生徒
そして
主は満足気にそれを見つめる
床には鞭の打たれた傷のある床
傷どころか切れている
「ひ、」
「私を化け物と仰しゃるのも大いに結構、暴言など慣れております」
「ですが」
カツンと靴音を鳴らす
主の近くへ行き、無惨な本をサッと元に戻して主に微笑み、渡す
主は頷きそれを受け取る
「主様のことを悪く言うことは言語道断、死をもって償うこと」
男子生徒の目の前に行き鞭を構える
「それが嫌と言うのなら、獅子の餌にしてくれる!」
ギロリと睨むと皆が息を呑む
怖い
恐い
カタカタと震える
正しく
その言葉が正しい
今の彼らにとって
彼女もとい無月は最強で最恐な人なのだ
それを従える彼も彼でこの人より強いのだと
そして
彼らにとって二人は自分達よりもっと上の人だと思い知ったのだ
ー
授業もスムーズに進み、放課後となる
失態を犯した馬鹿共は我先にと帰って行った
「無月」
主は静かに歩き出す
私はそれに合うように歩き始める
「今朝の事は僕は大目に見てあげるよ」
溜息混じりの言葉に申し訳なさそうに反省した
「寛大なお心に感謝いたします」
頭を下げると主は首を振る
「だが、君の行動は僕にとってとても嬉しかったよ」
主は頬笑み、私の頭を撫でる
「左様で御座いますか」
それが心地よく目を細めた
屋敷に戻ると主は自室へと向かう
私は私でおやつなどの準備を始めるため、キッチンへと向かったのだった
本日のおやつ
主の好きな
レモンタルト
そして
すっきりとしたストレートティー
~ Ⅰ ~
*********
「人の成長とは恐ろしい」
すっかり太腿まで伸びた銀髪を三つ編みにして後ろに流す
爪を切りそろえ、制服姿に手袋と腰に鞭をつける
コツコツと部屋を後にして、紅茶を淹れ始めた
「おや、この茶葉は主のお気に入りですからすぐ無くなりますね」
カランと茶葉の缶を置き、ティーカップと作り立てのチョコチップスコーンとコーンスープを運ぶ
コンコンとノックをして中に入ると主はまだ寝ていた
近くには課題の書類が置いてある
「昨夜も遅かったのですね」
溜息を押し殺し、カーテンを開く
明るい日差しが主を照らす
「主様、お目覚めのお時間でございます」
私は一礼をする
「んん、もう六時か」
主は欠伸をして私をじっと見た
「無月、君は相変わらずだね」
そう言うのは褒め言葉
「有難きお言葉です」
主は私の側にある紅茶とスコーンを見て微笑んだ
「よく分かっているじゃないか、それに今日はコーンか」
「はい、左様でございます」
私はテーブルの椅子を引き主を座らせ、目の前に静かに置く
主は黙々と食べて手を合わせる
「ご馳走様」
私は綺麗になった食器たちを片付け、テーブルと椅子を消す
主が着替えのしているうちに私は昨夜の課題の書類など必要なものを揃えたものが入っているスクールバッグを片手に二つ持ち、主の履く靴を選ぶ
(今日は確か体力関係のものがありました………)
いつもの革靴をしまい、運動靴を出す
そして
今日の天気の匂いを感じ取り、安心する
「待たせたか?」
「いえ、滅相もございません」
おや、私とした事が主の説明をしていなかったです
主の御名前はルイ・ヴィルデージ様
正しくは瑠衣・ヴィルデージ様
私の主であり、唯一の家族にしてくださったお方だ
主の家庭は貴族の位置にあり、とても素晴らしい
剣術を始め武道が非常に素晴らしく、誇らしい成績を持つ
私は勿論全て出来ます
これくらい執事であれば完璧だ
主の家族は騎士団長の奥様と王の旦那様、そして第一皇子様と第二皇子様のお方達とそして第三皇子の主、その下に私が付けられる
「無月」
不意に呼ばれ、足を止めると主は私を見つめていた
「如何なさいましたか?」
私はにこりと微笑み主を見つめ返す
主はそっと私の頬に手を伸ばし、つまんだ
「ひゃの、いひゃいのでひゅが」
少し困ったように眉を顰め、主を見ると主は溜息を吐く
「僕は君を信頼してるんだ、君も堂々としたらどうだい?」
「!………」
主の言葉に目を見開き、動きを止める
その行動に確信を持った主は私の頬から手を離すと思いっきり蹴られた
「っ!?」
咄嗟の行動だが私からしては遅く、防御して尚且つ主の足が怪我しないように最善の注意を払う
「流石だね」
「有難きお言葉」
私はにこりと微笑み、主の後ろに立つ
その姿勢に主は満足して歩き出す
暫くして教室につき、私は主の椅子を引いた
そして主が座ると私は立ったまま教室の後ろに立つ
「流石だね貴族様は違うなー!!」
ピクリと動く
「あんな化け物従わせていい御身分だな!」
一人の馬鹿の言葉に乗ったクラスの皆
「どーせ金で物言わせているんだろ」
青筋が立つ
主は黙々と本をお読みになられている
それを見て気を悪くしたクラスの皆
主から本を取り上げ、その本を踏む
クシャクシャになり破れた本は無惨な姿
主はそれを静かに見つめ
「気が済んだかい?」
そう言ったのだ
私はにこりと微笑み、前を向く
が
次の一言に私は青筋を深く立てることとなる
「テメェみてぇなクソ餓鬼はさっさとお家に帰りな?」
その刹那
教室に激しい鞭のなる音が響き渡る
コツン………
やけに革靴がなる音が響く
そして
その音はやがてとある人物の前で止まる
「申し訳ございません、今何と仰いましたか?」
その人物は先ほどまで意気揚々と暴言を吐いた男子生徒
そして
主は満足気にそれを見つめる
床には鞭の打たれた傷のある床
傷どころか切れている
「ひ、」
「私を化け物と仰しゃるのも大いに結構、暴言など慣れております」
「ですが」
カツンと靴音を鳴らす
主の近くへ行き、無惨な本をサッと元に戻して主に微笑み、渡す
主は頷きそれを受け取る
「主様のことを悪く言うことは言語道断、死をもって償うこと」
男子生徒の目の前に行き鞭を構える
「それが嫌と言うのなら、獅子の餌にしてくれる!」
ギロリと睨むと皆が息を呑む
怖い
恐い
カタカタと震える
正しく
その言葉が正しい
今の彼らにとって
彼女もとい無月は最強で最恐な人なのだ
それを従える彼も彼でこの人より強いのだと
そして
彼らにとって二人は自分達よりもっと上の人だと思い知ったのだ
ー
授業もスムーズに進み、放課後となる
失態を犯した馬鹿共は我先にと帰って行った
「無月」
主は静かに歩き出す
私はそれに合うように歩き始める
「今朝の事は僕は大目に見てあげるよ」
溜息混じりの言葉に申し訳なさそうに反省した
「寛大なお心に感謝いたします」
頭を下げると主は首を振る
「だが、君の行動は僕にとってとても嬉しかったよ」
主は頬笑み、私の頭を撫でる
「左様で御座いますか」
それが心地よく目を細めた
屋敷に戻ると主は自室へと向かう
私は私でおやつなどの準備を始めるため、キッチンへと向かったのだった
本日のおやつ
主の好きな
レモンタルト
そして
すっきりとしたストレートティー
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