1 / 7
第一話
しおりを挟む
長く続いた雨の合間、見上げた空はどんよりと曇っている。
体が重い。目が霞む。身に覚えのある怠さに思わず舌打ちをした。
――ああ、また憑かれたか……。
昔から普通の人では視えないモノが視えた。
父も母も視える人ではなかったが、僕がそれらについて訴えても、「そうなんだ。視えるなんて凄いねぇ」と言われるだけだった。祖母が視える人だったというのも大きな理由だと思うが、我が両親ながらなんてお気楽な人たちだと何度思ったことか。
何にせよ家族の理解が得られた僕は幸せ者だと思う。一歩外に出ればあちこちに霊がいて、それらを指摘すれば周りからは訝しがられたから。
けれど、霊が視えることは何も良いことではない。ふとした拍子にこうして憑かれることがあるからだ。
取り憑かれて頭は痛いし気持ちが悪い。負の感情が自分の中でぐるぐると渦巻いている。こういう時に限って普段は持ち歩いている清めの塩がないときた。ほんと、最悪だ。
不意にたたたっ、と駆ける音が聞こえて来た。
一体何だと思って顔を上げると、目の前に一匹の犬がいた。
歯を剥き出しにしてこちらを睨んでいる。ぐるるると唸り声が鈍く痛む頭に響いた。
犬が地を蹴り、僕に向かって飛びかかって来た。
「うわっ!?」
体当たりをされて、体が傾く。勢いのまま倒れて、地面に頭がぶつかった。
その拍子に、すぅと僕の中から悪い何かが抜け出た。
素早く犬がそれへと噛みつく。その鋭い牙によってそれは噛み砕かれ、黒いもやとなって霧散して消えて行った。
ぶつけた頭は痛いが、今まで感じていた体の怠さはなくなった。
僕は体を起こして目の前の犬を見つめた。
柴犬くらいの大きさで、けれど柴犬と違って瞳が青い。まるで澄み切った空の色のようだ。
真っ黒な体躯に足先が白くてまるで靴下を履いているようで可愛らしい。
顔には麻呂眉があり、先程まで険しい顔だったのが嘘のように今は穏やかな顔をしている。凛々しい顔つきだが何処かあどけなさもあった。
「晴多ー」
不意に女性の声が聞こえて来た。犬の耳がぴくっと揺れる。犬はその声の方へと顔を向けたかと思えば駆け出した。
「晴多。勝手に行かないでよ」
女性が息を整える。その間にも犬の尻尾はぶんぶんと振られている。
ぼーっと眺めていた僕の視線に気づいた女性が僕に顔を向けた。
「……顔色悪いですよ?大丈夫ですか?」
声を掛けられてはっとした。
「だ、大丈夫です」
慌てて答えた矢先に、犬が吠えた。まるで女性に何かを訴えているかのようだ。
「……でも、霊に取り憑かれていたんですよね?本当に大丈夫ですか?」
その言葉に僕はぎょっとした。
「何でそれを……」
「この子に教えてもらったんです」
犬の頭を撫でながら、当たり前のように女性が言った。
「その子が言っていることがわかるんですか?」
「はい、わかりますよ。最初はこの子もあまり心を開いてくれなかったんですが、徐々に懐いてくれて、次第に話してくれるようになったんです」
僕にはわからないが、二人――一人と一匹――は通じ合っているよいだ。
と、ここで何やら視線を感じた。じーっと犬が僕を見ている。
――いや、僕じゃなくて、僕の手元?
手に持っているのは豆乳の紙パックだ。少しでも気分を上げようと思って買って来たものだった。そんな僕の好みは友人からは「何か年寄りくさい」と言われている。
「すみません……この子豆乳が大好きなんです……」
女性が困ったように苦笑いをした。彼女がそう言っている間も犬の視線は逸れない。
「……これ、欲しい?」
僕が豆乳を差し出せば、犬は尻尾をぶんぶんと大きく振った。
豆乳を咥えて、犬が女性のもとへ行く。「貰ったよ!」とその瞳が語っている。
「よかったね。家に帰ってから飲もうか」
女性が豆乳を受け取ってそう言えば、犬の尻尾が垂れた。どうやらすぐに飲ませてもらえると思ったらしい。
何だかそれが可愛くて僕はくすくすと笑った。
「改めて、助けてくださってありがとうございます」
「いえいえ、助けたのはこの子ですから」
女性が優しく犬の頭を撫でる。その目は慈愛に満ちていた。
「僕、宇津保と言います」
「わたしは比嘉です。この子は晴多」
女性――比嘉さんが紹介をすると、犬こと晴多が「わん!」と元気よく吠えた。
「撫でても良いですか?」
「どうぞ」
比嘉さんが一歩下がったので、僕は晴多に手を伸ばす。
怖がらせないように首元を優しく撫でる。整った毛並みは触り心地が良い。
晴多が気持ちよさそうに目を細める。
「助けてくれてありがとう。僕も豆乳好きなんだ」
語りかけると晴多が何かを話すかのようにこちらを見ながら鳴いた。
「ふふっ、『仲間だな』って言っていますね」
比嘉さんが小さく笑う。僕もつられて笑った。
晴多は公園内を元気よく走り回っていた。
「視える人に久しぶりに会いました」
そっと比嘉さんが言った。その瞳には晴多が映っている。
そう、最初から気づいていた。晴多が普通の犬ではないことに。
動物の中には普通の人では視えない何かに敏感なモノもいる。実際に霊に取り憑かれている最中に、散歩中の犬に吠えられたり、道端を歩いている猫に威嚇されたりなどしたことはあった。
けれど、大体は逃げる。得体の知らないモノに近づきたくないのは人も動物も同じらしい。
でも、晴多は違った。同じ霊であるからこそ、僕に取り憑いていた悪いモノに対してより敏感に反応したのだろう。
「犬に霊を祓われたのは初めての経験でした」
「あの子、結構頼りになるんですよ」
何処か誇らしげに比嘉さんが言った。そうですねと僕は相槌を打った。
「まあ、見ての通りリードを付けていないので、自由に何処か行ってしまうのが玉に瑕なんですけどね」
「元気ですもんね」
晴多がちょうちょを追いかけてはしゃいでいる。その姿は普通の人には視えていないのだ。
一頻り走り回って満足したからか、晴多が比嘉さんの元へと戻って来た。よしよし、と比嘉さんが毛並みを整えるように撫でる。
「こうして公園に遊びに来ることもあるので、また見かけたら話し相手になってくれますか?」
「勿論」
常人には視えないモノについて語り合える人は少ない。僕は二つ返事で了承した。
と、晴多が吠えた。比嘉さんのスカートを噛んでぐいぐいと引っ張る。一体どうしたのだろうか。
「早く家に帰って豆乳が飲みたいみたいです」
困ったように眉を下げる比嘉さんと尻尾をぶんぶん振って吠える晴多に、僕は小さくふき出した。
霊が視えることは良いことなんてない。けれど、この出会いは僕にとってとても大切なものになるのだった。
空を仰げば雲の切れ間から光が降り注いでいた。
体が重い。目が霞む。身に覚えのある怠さに思わず舌打ちをした。
――ああ、また憑かれたか……。
昔から普通の人では視えないモノが視えた。
父も母も視える人ではなかったが、僕がそれらについて訴えても、「そうなんだ。視えるなんて凄いねぇ」と言われるだけだった。祖母が視える人だったというのも大きな理由だと思うが、我が両親ながらなんてお気楽な人たちだと何度思ったことか。
何にせよ家族の理解が得られた僕は幸せ者だと思う。一歩外に出ればあちこちに霊がいて、それらを指摘すれば周りからは訝しがられたから。
けれど、霊が視えることは何も良いことではない。ふとした拍子にこうして憑かれることがあるからだ。
取り憑かれて頭は痛いし気持ちが悪い。負の感情が自分の中でぐるぐると渦巻いている。こういう時に限って普段は持ち歩いている清めの塩がないときた。ほんと、最悪だ。
不意にたたたっ、と駆ける音が聞こえて来た。
一体何だと思って顔を上げると、目の前に一匹の犬がいた。
歯を剥き出しにしてこちらを睨んでいる。ぐるるると唸り声が鈍く痛む頭に響いた。
犬が地を蹴り、僕に向かって飛びかかって来た。
「うわっ!?」
体当たりをされて、体が傾く。勢いのまま倒れて、地面に頭がぶつかった。
その拍子に、すぅと僕の中から悪い何かが抜け出た。
素早く犬がそれへと噛みつく。その鋭い牙によってそれは噛み砕かれ、黒いもやとなって霧散して消えて行った。
ぶつけた頭は痛いが、今まで感じていた体の怠さはなくなった。
僕は体を起こして目の前の犬を見つめた。
柴犬くらいの大きさで、けれど柴犬と違って瞳が青い。まるで澄み切った空の色のようだ。
真っ黒な体躯に足先が白くてまるで靴下を履いているようで可愛らしい。
顔には麻呂眉があり、先程まで険しい顔だったのが嘘のように今は穏やかな顔をしている。凛々しい顔つきだが何処かあどけなさもあった。
「晴多ー」
不意に女性の声が聞こえて来た。犬の耳がぴくっと揺れる。犬はその声の方へと顔を向けたかと思えば駆け出した。
「晴多。勝手に行かないでよ」
女性が息を整える。その間にも犬の尻尾はぶんぶんと振られている。
ぼーっと眺めていた僕の視線に気づいた女性が僕に顔を向けた。
「……顔色悪いですよ?大丈夫ですか?」
声を掛けられてはっとした。
「だ、大丈夫です」
慌てて答えた矢先に、犬が吠えた。まるで女性に何かを訴えているかのようだ。
「……でも、霊に取り憑かれていたんですよね?本当に大丈夫ですか?」
その言葉に僕はぎょっとした。
「何でそれを……」
「この子に教えてもらったんです」
犬の頭を撫でながら、当たり前のように女性が言った。
「その子が言っていることがわかるんですか?」
「はい、わかりますよ。最初はこの子もあまり心を開いてくれなかったんですが、徐々に懐いてくれて、次第に話してくれるようになったんです」
僕にはわからないが、二人――一人と一匹――は通じ合っているよいだ。
と、ここで何やら視線を感じた。じーっと犬が僕を見ている。
――いや、僕じゃなくて、僕の手元?
手に持っているのは豆乳の紙パックだ。少しでも気分を上げようと思って買って来たものだった。そんな僕の好みは友人からは「何か年寄りくさい」と言われている。
「すみません……この子豆乳が大好きなんです……」
女性が困ったように苦笑いをした。彼女がそう言っている間も犬の視線は逸れない。
「……これ、欲しい?」
僕が豆乳を差し出せば、犬は尻尾をぶんぶんと大きく振った。
豆乳を咥えて、犬が女性のもとへ行く。「貰ったよ!」とその瞳が語っている。
「よかったね。家に帰ってから飲もうか」
女性が豆乳を受け取ってそう言えば、犬の尻尾が垂れた。どうやらすぐに飲ませてもらえると思ったらしい。
何だかそれが可愛くて僕はくすくすと笑った。
「改めて、助けてくださってありがとうございます」
「いえいえ、助けたのはこの子ですから」
女性が優しく犬の頭を撫でる。その目は慈愛に満ちていた。
「僕、宇津保と言います」
「わたしは比嘉です。この子は晴多」
女性――比嘉さんが紹介をすると、犬こと晴多が「わん!」と元気よく吠えた。
「撫でても良いですか?」
「どうぞ」
比嘉さんが一歩下がったので、僕は晴多に手を伸ばす。
怖がらせないように首元を優しく撫でる。整った毛並みは触り心地が良い。
晴多が気持ちよさそうに目を細める。
「助けてくれてありがとう。僕も豆乳好きなんだ」
語りかけると晴多が何かを話すかのようにこちらを見ながら鳴いた。
「ふふっ、『仲間だな』って言っていますね」
比嘉さんが小さく笑う。僕もつられて笑った。
晴多は公園内を元気よく走り回っていた。
「視える人に久しぶりに会いました」
そっと比嘉さんが言った。その瞳には晴多が映っている。
そう、最初から気づいていた。晴多が普通の犬ではないことに。
動物の中には普通の人では視えない何かに敏感なモノもいる。実際に霊に取り憑かれている最中に、散歩中の犬に吠えられたり、道端を歩いている猫に威嚇されたりなどしたことはあった。
けれど、大体は逃げる。得体の知らないモノに近づきたくないのは人も動物も同じらしい。
でも、晴多は違った。同じ霊であるからこそ、僕に取り憑いていた悪いモノに対してより敏感に反応したのだろう。
「犬に霊を祓われたのは初めての経験でした」
「あの子、結構頼りになるんですよ」
何処か誇らしげに比嘉さんが言った。そうですねと僕は相槌を打った。
「まあ、見ての通りリードを付けていないので、自由に何処か行ってしまうのが玉に瑕なんですけどね」
「元気ですもんね」
晴多がちょうちょを追いかけてはしゃいでいる。その姿は普通の人には視えていないのだ。
一頻り走り回って満足したからか、晴多が比嘉さんの元へと戻って来た。よしよし、と比嘉さんが毛並みを整えるように撫でる。
「こうして公園に遊びに来ることもあるので、また見かけたら話し相手になってくれますか?」
「勿論」
常人には視えないモノについて語り合える人は少ない。僕は二つ返事で了承した。
と、晴多が吠えた。比嘉さんのスカートを噛んでぐいぐいと引っ張る。一体どうしたのだろうか。
「早く家に帰って豆乳が飲みたいみたいです」
困ったように眉を下げる比嘉さんと尻尾をぶんぶん振って吠える晴多に、僕は小さくふき出した。
霊が視えることは良いことなんてない。けれど、この出会いは僕にとってとても大切なものになるのだった。
空を仰げば雲の切れ間から光が降り注いでいた。
1
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
スパイスカレー洋燈堂 ~裏路地と兎と錆びた階段~
桜あげは
ライト文芸
入社早々に躓く気弱な新入社員の楓は、偶然訪れた店でおいしいカレーに心を奪われる。
彼女のカレー好きに目をつけた店主のお兄さんに「ここで働かない?」と勧誘され、アルバイトとして働き始めることに。
新たな人との出会いや、新たなカレーとの出会い。
一度挫折した楓は再び立ち上がり、様々なことをゆっくり学んでいく。
錆びた階段の先にあるカレー店で、のんびりスパイスライフ。
第3回ライト文芸大賞奨励賞いただきました。ありがとうございます。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
小さなパン屋の恋物語
あさの紅茶
ライト文芸
住宅地にひっそりと佇む小さなパン屋さん。
毎日美味しいパンを心を込めて焼いている。
一人でお店を切り盛りしてがむしゃらに働いている、そんな毎日に何の疑問も感じていなかった。
いつもの日常。
いつものルーチンワーク。
◆小さなパン屋minamiのオーナー◆
南部琴葉(ナンブコトハ) 25
早瀬設計事務所の御曹司にして若き副社長。
自分の仕事に誇りを持ち、建築士としてもバリバリ働く。
この先もずっと仕事人間なんだろう。
別にそれで構わない。
そんな風に思っていた。
◆早瀬設計事務所 副社長◆
早瀬雄大(ハヤセユウダイ) 27
二人の出会いはたったひとつのパンだった。
**********
作中に出てきます三浦杏奈のスピンオフ【そんな恋もありかなって。】もどうぞよろしくお願い致します。
**********
この作品は、他のサイトにも掲載しています。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
【完結】現世の魔法があるところ 〜京都市北区のカフェと魔女。私の世界が解ける音〜
tanakan
ライト文芸
これは私、秋葉 琴音(あきは ことね)が現世で自分の魔法を探す物語である。
現世の魔法は夢物語の話ではない。ただ夢を叶えるための魔法なのだ。
京都市に住まう知らなければ見えない精霊たちや魔法使い、小さな小さな北区のカフェの一角で、私は自分の魔法を探すことになる。
高校二年生の冬に学校に行くことを諦めた。悪いことは重なるもので、ある日の夜に私は人の言葉を話す猫の集会に巻き込まれ気を失った。
気がついた時にはとある京都市北区のカフェにいた。
そして私はミーナ・フォーゲルと出会ったのだ。現世に生きる魔女である彼女と・・・出会えた。
これは私が魔法と出会った物語。そして自分と向き合うための物語。
『愛が揺れるお嬢さん妻』- かわいいひと -
設樂理沙
ライト文芸
♡~好きになった人はクールビューティーなお医者様~♡
やさしくなくて、そっけなくて。なのに時々やさしくて♡
――――― まただ、胸が締め付けられるような・・
そうか、この気持ちは恋しいってことなんだ ―――――
ヤブ医者で不愛想なアイッは年下のクールビューティー。
絶対仲良くなんてなれないって思っていたのに、
遠く遠く、限りなく遠い人だったのに、
わたしにだけ意地悪で・・なのに、
気がつけば、一番近くにいたYO。
幸せあふれる瞬間・・いつもそばで感じていたい
◇ ◇ ◇ ◇
💛画像はAI生成画像 自作
日本酒バー「はなやぎ」のおみちびき
山いい奈
ライト文芸
★お知らせ
いつもありがとうございます。
当作品、3月末にて非公開にさせていただきます。再公開の日時は未定です。
ご迷惑をお掛けいたしますが、どうぞよろしくお願いいたします。
小柳世都が切り盛りする大阪の日本酒バー「はなやぎ」。
世都はときおり、サービスでタロットカードでお客さまを占い、悩みを聞いたり、ほんの少し背中を押したりする。
恋愛体質のお客さま、未来の姑と巧く行かないお客さま、辞令が出て転職を悩むお客さま、などなど。
店員の坂道龍平、そしてご常連の高階さんに見守られ、世都は今日も奮闘する。
世都と龍平の関係は。
高階さんの思惑は。
そして家族とは。
優しく、暖かく、そして少し切ない物語。
心の落とし物
緋色刹那
ライト文芸
・完結済み(2024/10/12)。また書きたくなったら、番外編として投稿するかも
・第4回、第5回ライト文芸大賞にて奨励賞をいただきました!!✌︎('ω'✌︎ )✌︎('ω'✌︎ )
〈本作の楽しみ方〉
本作は読む喫茶店です。順に読んでもいいし、興味を持ったタイトルや季節から読んでもオッケーです。
知らない人、知らない設定が出てきて不安になるかもしれませんが、喫茶店の常連さんのようなものなので、雰囲気を楽しんでください(一応説明↓)。
〈あらすじ〉
〈心の落とし物〉はありませんか?
どこかに失くした物、ずっと探している人、過去の後悔、忘れていた夢。
あなたは忘れているつもりでも、心があなたの代わりに探し続けているかもしれません……。
喫茶店LAMP(ランプ)の店長、添野由良(そえのゆら)は、人の未練が具現化した幻〈心の落とし物(こころのおとしもの)〉と、それを探す生き霊〈探し人(さがしびと)〉に気づきやすい体質。
ある夏の日、由良は店の前を何度も通る男性に目を止め、声をかける。男性は数年前に移転した古本屋を探していて……。
懐かしくも切ない、過去の未練に魅せられる。
〈主人公と作中用語〉
・添野由良(そえのゆら)
洋燈町にある喫茶店LAMP(ランプ)の店長。〈心の落とし物〉や〈探し人〉に気づきやすい体質。
・〈心の落とし物(こころのおとしもの)〉
人の未練が具現化した幻。あるいは、未練そのもの。
・〈探し人(さがしびと)〉
〈心の落とし物〉を探す生き霊で、落とし主。当人に代わって、〈心の落とし物〉を探している。
・〈未練溜まり(みれんだまり)〉
忘れられた〈心の落とし物〉が行き着く場所。
・〈分け御霊(わけみたま)〉
生者の後悔や未練が物に宿り、具現化した者。込められた念が強ければ強いほど、人のように自由意志を持つ。いわゆる付喪神に近い。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる