31 / 37
第十二話 目覚め(一)
しおりを挟む
――ここ、何処だ?
覚醒しきっていない頭でそう考えたのは一瞬のことだった。
今では見慣れた木目の天井を見て、ここが祖母の家の離れ――自分の部屋だと理解した。
「……あ、あー」
寝起きだからか、水分を取っていないからか、喉から出た声はか細い。
……今何時だろう。
時間を確認しようとスマホを取るために手を動かす。だが、いつも置いてある場所にそれはなかった。
あれ、と思いゆっくりと身体を起こしたら、何かがお腹の上からコロコロと転がり落ちた。
「うわー!?」
「うわー!?」
「……ん?小鬼たち?」
転がったモノの正体は小鬼たちだった。どうやら、寝ているぼくの上で彼らも寝ていたらしい。
こんな事は度々あることなので、今更怒る気にもならなかった。
二体はぱちぱちと目を瞬かせたかと思えば、次の瞬間思い切り叫んだ。
「にきが起きたー!」
「起きたー!」
「ばあに知らせなきゃー!」
「知らせなきゃー!」
どたばたと騒がしく出て行った二体に「何だあいつら?」と首を傾げる。
暫くして、これまたどたばたと騒がしい足音が聞こえてきた。けれどそれは小鬼たちのものよりも大きかった。
どたばたと慌ただしく部屋に飛び込んできたのは――
「にきっ!」
「と、父さん!?」
――何でここに?
ぼくの疑問は父さんの声で掻き消された。正確に言えば父さんの泣き声で、だ。
父さんは思い切り泣いていた。男泣きだ。「よかった……よかった……」と呻くように泣いているその姿を見て、ぼくは思わず「うわぁ……」と零した。正直に言ってドン引きである。
ぼくが顔を引きつらせていると、今度はばあちゃんが部屋に入ってきた。手にコップを持っており、未だ泣いている父さんを見て酷く呆れた表情を浮かべた。
「全く、情けない倅だねぇ……ほらほら、いつまでも泣いているんじゃないよ。私はにきちゃんと大事な話があるから、あんたはちょいと外に出といておくれ」
ばあちゃんが有無を言わさず父さんを部屋から追い出した。母は強しだなと思った瞬間だった。
「にきちゃん、体の調子はどうだい?」
「ああ、うん。大丈夫だよ」
「そう、それならよかったわ。はい、お水」
「ありがとう。ところで、何で父さんがいるの?」
「あら、聞いてなかったのかい?ちょっと前に、仕事が早く片付いたからお盆前にはこっちにくるって連絡があったんよ」
「え、聞いてない……」
何が『一ヶ月ぐらいの出張』だよ……。
心中で悪態をついていると、「全く、あの倅は……」とばあちゃんも溜息をついた。
いやいや、ばあちゃんも前につゆりさんたちが家に来ることを言ってなかった時があったぞ。そういうところも似ているとは流石は親子だ……こうはなりたくはないな。
受け取った水を飲んだものの、暑い。ぼくは徐に掛け布団を取り去った。すると、取ってびっくり目に入って来たのは包帯でぐるぐる巻きにされた右足だった。
な、何だこれ!?うわ、え、もしかして骨折してる!?
目をまん丸にさせたぼくの視線で察したらしい。ばあちゃんが説明してくれた
「骨折はしていないから安心して。ただの捻挫よ」
「そう……」
見た目は酷いが折れてはいないらしい。取り敢えずは良かったとほっと胸を撫で下ろす。
「お祭りに行って意識を失ったにきちゃんを皆が……というより河童ちゃんが運んできてくれたんよ」
たぶん、この前の時みたいに持ち上げられたのだろう。男として情けないことこの上ないがそんなことよりも――
「また迷惑かけちゃったなぁ……」
ぱたり、と布団に倒れ込む。顔に手を当ててはあ、と深く息を吐く。
自己嫌悪に陥りかけたその時、コツンと小さな衝撃を感じた。手をどかすと、ばあちゃんがぼくに携帯端末を差し出していた。
「取りあえず、つゆりちゃんに連絡しなさいな。凄く心配しとったから」
「うん、そうする。……それにしても、あれは一体何だったんだ?」
携帯端末を受け取りながら思案する。「あれって?」と首を傾げたばあちゃんに事のあらましを説明した。
神社の竹林の中の石碑のこと。
突然暗闇の中へと落ちたこと。
そして、そこにいた不思議な恰好をした人々とそこであった出来事のこと。
一通り話し終えると、「なるほどなるほど」とばあちゃんが首肯した。何か心当たりがあるみたいだ。
「あそこにはね、小さいけど古墳があってね。石碑はそれをしるしたものなんよ」
「こ、古墳?」
古墳といえば、古代の有権者の墓のことだ。そんなものがあの神社にあるなんて全然知らなかった。
じゃあ、もしかしてあの人たちは亡くなった古代の人たちだったとか?ということは、もしかしてあそこは死後の世界だったとか?
奇怪なモノには少しずつ慣れてきたと思ってはいたものの、死後の世界ときたら話は別だ。普段あやかしたちと普通に過ごしているくせに、恐ろしさのあまり半袖から覗く腕には鳥肌が立っている。きっと顔も青ざめていることだろう。
「いつもなら特に害がある場所じゃないんやけどね……お祭りだったから、その場の空気に当てられちゃって、あっちの世界と繋がったのかもしれんね」
「え、そんな理由で!?」
「結構ひょんなことであの世とこの世は繋がるものなんよ」
「何それ怖っ!」
その場の空気に当てられてサイダーで酔っ払っていた河童が可愛く思えるレベルだ。
「あと、出された食べ物を食べなかったのは良い判断やったね」
「どういうこと?」
「その人たちは善意で勧めてくれたんやろうけど、死者の国の食べ物を食べると、現世に戻って来られなくなるって言うからね」
「……マジで?」
あれを食べたらアウトだったのかと思うと背筋がぞっとした。怖さを通り越して、「うわー、マジかー」と渇いた笑みを零すことしかできなかった。
いつの間にか喉がからからに渇いていたため、怖さを払拭するためにもコップに残っていた水を一気に飲み干した。
空になったコップを枕元に置くと、「にきちゃん」とばあちゃんに呼ばれた。その表情は何処か陰っているように見えた。
「にきちゃんはここが嫌になったかい?」
「え?」
「いやなに、怖い思いをした上にこんな怪我までしたんだ。前とは別の理由だけど、もうここにはいたくないってまた思ったんじゃないかと思ってね」
「……もうここにはいたくないって、どういうこと?またって、どういうこと?」
「……やっぱり覚えていないんだね。ちっちゃい時だったからねぇ。無理もないわ」
一人で頷くばあちゃんに対し、ぼくの頭の中は疑問符で埋め尽くされていた。
ばあちゃんの言葉からして、昔ぼくは「ここにはいたくない」と言ったのだろう。
でも、何でだ?何で、そんなことを言ったのだろう。
……ダメだ、頭に靄がかかったようで、思い出せそうで思い出せない。
「ばあちゃん、教えて。何で、ぼくはそんなこと言ったの?もしかして、前にも怪我したとか?」
「いんや。怪我はしていたけど、かすり傷ばかりだったよ。それに、にきちゃんはそんなことに臆するような子じゃなかったしね。あやかし相手に喧嘩したり、逆にあやかしをからかったりしとったわ。怪我をしても全然気にしない子でね、寧ろあんたの父親の方が騒いどったわ」
「あ、そう……」
前に吐水龍にも言われたが、やはり昔のぼくは結構横着をしていたらしい。そして、怪我をしたぼくを見て父さんが慌てふためいた……たぶん、さっきみたいに。
その光景がありありと目に見えて、うわぁとぼくは声を漏らした。
と、ここであることに気がついた。
……ちょっと待て。今、ばあちゃんは何て言った?
あやかし相手に喧嘩?逆にあやかしをからかっていた?
握った掌の汗が酷い。どくん、どくん、と心臓が鳴る音がやけに大きく聞こえた。
さっき水を飲んだばかりだというのに、声が掠れる。
「……もしかして、昔のぼくってあやかしが視えていたの?」
「そうよ」
ぼくの緊張とは裏腹に、あっけからんとばあちゃんは肯定した。だが、ぼくは混乱しまくっていた。
「何で、昔もそうだったって言ってくれなかったの?」
「訊かれなかったからねぇ」
「いや確かに訊かなかったけど!言ってくれても良かったじゃないか!」
ぼくの叫び声は家中に響き渡った。
頭を抱え続けるぼくを見て、「これだけ元気なら大丈夫そうやね」とばあちゃんが笑っている。
笑い声とは裏腹に、その瞳には心配と安堵の色が滲んでいて。
……ああ、そうか。ぼくは心配をかけていたんだ。きっと、今も、昔も。
ぼくは段々と冷静になっていった。そして、ついには黙り込んでしまったぼくにばあちゃんが心配そうに訊く。
「ん?何処か痛むのかい?」
「いや、そうじゃなくて……心配かけてごめんなさい」
「いいんだよ、にきちゃんが無事ならそれで」
目を伏せて静かに紡がれた言葉にぼくは少しだけ泣きそうになった。
「つゆりさんや管狐や河童にも言わなくちゃ……心配かけてごめんって」
「そうやね。でも、その時はごめんじゃなくて心配してくれてありがとうって言わんとね」
「……そうだね。ありがとう、ばあちゃん」
「どういたしまして。あと、あんたのお父さんにも一応言っておきなさいな。まあ、言ったら言ったで五月蠅くなるやろうけど」
「あはは……」
普段は放任主義なくせに、変な時に過保護になる父さん。
今はばあちゃんに追い出されて大人しくしているけど、いざ色々と伝えるとなると……はあ、先のことが思い遣られる。
ぼくとばあちゃんは二人して苦笑した。
「さてと。それじゃあ、にきちゃんの要望に応えて昔のことを話すとするかねぇ」
真っ直ぐに見つめられ、ぼくは居住まいを正す。
そして、ばあちゃんは話してくれた。
昔、この家にいた時のぼくのことを――。
覚醒しきっていない頭でそう考えたのは一瞬のことだった。
今では見慣れた木目の天井を見て、ここが祖母の家の離れ――自分の部屋だと理解した。
「……あ、あー」
寝起きだからか、水分を取っていないからか、喉から出た声はか細い。
……今何時だろう。
時間を確認しようとスマホを取るために手を動かす。だが、いつも置いてある場所にそれはなかった。
あれ、と思いゆっくりと身体を起こしたら、何かがお腹の上からコロコロと転がり落ちた。
「うわー!?」
「うわー!?」
「……ん?小鬼たち?」
転がったモノの正体は小鬼たちだった。どうやら、寝ているぼくの上で彼らも寝ていたらしい。
こんな事は度々あることなので、今更怒る気にもならなかった。
二体はぱちぱちと目を瞬かせたかと思えば、次の瞬間思い切り叫んだ。
「にきが起きたー!」
「起きたー!」
「ばあに知らせなきゃー!」
「知らせなきゃー!」
どたばたと騒がしく出て行った二体に「何だあいつら?」と首を傾げる。
暫くして、これまたどたばたと騒がしい足音が聞こえてきた。けれどそれは小鬼たちのものよりも大きかった。
どたばたと慌ただしく部屋に飛び込んできたのは――
「にきっ!」
「と、父さん!?」
――何でここに?
ぼくの疑問は父さんの声で掻き消された。正確に言えば父さんの泣き声で、だ。
父さんは思い切り泣いていた。男泣きだ。「よかった……よかった……」と呻くように泣いているその姿を見て、ぼくは思わず「うわぁ……」と零した。正直に言ってドン引きである。
ぼくが顔を引きつらせていると、今度はばあちゃんが部屋に入ってきた。手にコップを持っており、未だ泣いている父さんを見て酷く呆れた表情を浮かべた。
「全く、情けない倅だねぇ……ほらほら、いつまでも泣いているんじゃないよ。私はにきちゃんと大事な話があるから、あんたはちょいと外に出といておくれ」
ばあちゃんが有無を言わさず父さんを部屋から追い出した。母は強しだなと思った瞬間だった。
「にきちゃん、体の調子はどうだい?」
「ああ、うん。大丈夫だよ」
「そう、それならよかったわ。はい、お水」
「ありがとう。ところで、何で父さんがいるの?」
「あら、聞いてなかったのかい?ちょっと前に、仕事が早く片付いたからお盆前にはこっちにくるって連絡があったんよ」
「え、聞いてない……」
何が『一ヶ月ぐらいの出張』だよ……。
心中で悪態をついていると、「全く、あの倅は……」とばあちゃんも溜息をついた。
いやいや、ばあちゃんも前につゆりさんたちが家に来ることを言ってなかった時があったぞ。そういうところも似ているとは流石は親子だ……こうはなりたくはないな。
受け取った水を飲んだものの、暑い。ぼくは徐に掛け布団を取り去った。すると、取ってびっくり目に入って来たのは包帯でぐるぐる巻きにされた右足だった。
な、何だこれ!?うわ、え、もしかして骨折してる!?
目をまん丸にさせたぼくの視線で察したらしい。ばあちゃんが説明してくれた
「骨折はしていないから安心して。ただの捻挫よ」
「そう……」
見た目は酷いが折れてはいないらしい。取り敢えずは良かったとほっと胸を撫で下ろす。
「お祭りに行って意識を失ったにきちゃんを皆が……というより河童ちゃんが運んできてくれたんよ」
たぶん、この前の時みたいに持ち上げられたのだろう。男として情けないことこの上ないがそんなことよりも――
「また迷惑かけちゃったなぁ……」
ぱたり、と布団に倒れ込む。顔に手を当ててはあ、と深く息を吐く。
自己嫌悪に陥りかけたその時、コツンと小さな衝撃を感じた。手をどかすと、ばあちゃんがぼくに携帯端末を差し出していた。
「取りあえず、つゆりちゃんに連絡しなさいな。凄く心配しとったから」
「うん、そうする。……それにしても、あれは一体何だったんだ?」
携帯端末を受け取りながら思案する。「あれって?」と首を傾げたばあちゃんに事のあらましを説明した。
神社の竹林の中の石碑のこと。
突然暗闇の中へと落ちたこと。
そして、そこにいた不思議な恰好をした人々とそこであった出来事のこと。
一通り話し終えると、「なるほどなるほど」とばあちゃんが首肯した。何か心当たりがあるみたいだ。
「あそこにはね、小さいけど古墳があってね。石碑はそれをしるしたものなんよ」
「こ、古墳?」
古墳といえば、古代の有権者の墓のことだ。そんなものがあの神社にあるなんて全然知らなかった。
じゃあ、もしかしてあの人たちは亡くなった古代の人たちだったとか?ということは、もしかしてあそこは死後の世界だったとか?
奇怪なモノには少しずつ慣れてきたと思ってはいたものの、死後の世界ときたら話は別だ。普段あやかしたちと普通に過ごしているくせに、恐ろしさのあまり半袖から覗く腕には鳥肌が立っている。きっと顔も青ざめていることだろう。
「いつもなら特に害がある場所じゃないんやけどね……お祭りだったから、その場の空気に当てられちゃって、あっちの世界と繋がったのかもしれんね」
「え、そんな理由で!?」
「結構ひょんなことであの世とこの世は繋がるものなんよ」
「何それ怖っ!」
その場の空気に当てられてサイダーで酔っ払っていた河童が可愛く思えるレベルだ。
「あと、出された食べ物を食べなかったのは良い判断やったね」
「どういうこと?」
「その人たちは善意で勧めてくれたんやろうけど、死者の国の食べ物を食べると、現世に戻って来られなくなるって言うからね」
「……マジで?」
あれを食べたらアウトだったのかと思うと背筋がぞっとした。怖さを通り越して、「うわー、マジかー」と渇いた笑みを零すことしかできなかった。
いつの間にか喉がからからに渇いていたため、怖さを払拭するためにもコップに残っていた水を一気に飲み干した。
空になったコップを枕元に置くと、「にきちゃん」とばあちゃんに呼ばれた。その表情は何処か陰っているように見えた。
「にきちゃんはここが嫌になったかい?」
「え?」
「いやなに、怖い思いをした上にこんな怪我までしたんだ。前とは別の理由だけど、もうここにはいたくないってまた思ったんじゃないかと思ってね」
「……もうここにはいたくないって、どういうこと?またって、どういうこと?」
「……やっぱり覚えていないんだね。ちっちゃい時だったからねぇ。無理もないわ」
一人で頷くばあちゃんに対し、ぼくの頭の中は疑問符で埋め尽くされていた。
ばあちゃんの言葉からして、昔ぼくは「ここにはいたくない」と言ったのだろう。
でも、何でだ?何で、そんなことを言ったのだろう。
……ダメだ、頭に靄がかかったようで、思い出せそうで思い出せない。
「ばあちゃん、教えて。何で、ぼくはそんなこと言ったの?もしかして、前にも怪我したとか?」
「いんや。怪我はしていたけど、かすり傷ばかりだったよ。それに、にきちゃんはそんなことに臆するような子じゃなかったしね。あやかし相手に喧嘩したり、逆にあやかしをからかったりしとったわ。怪我をしても全然気にしない子でね、寧ろあんたの父親の方が騒いどったわ」
「あ、そう……」
前に吐水龍にも言われたが、やはり昔のぼくは結構横着をしていたらしい。そして、怪我をしたぼくを見て父さんが慌てふためいた……たぶん、さっきみたいに。
その光景がありありと目に見えて、うわぁとぼくは声を漏らした。
と、ここであることに気がついた。
……ちょっと待て。今、ばあちゃんは何て言った?
あやかし相手に喧嘩?逆にあやかしをからかっていた?
握った掌の汗が酷い。どくん、どくん、と心臓が鳴る音がやけに大きく聞こえた。
さっき水を飲んだばかりだというのに、声が掠れる。
「……もしかして、昔のぼくってあやかしが視えていたの?」
「そうよ」
ぼくの緊張とは裏腹に、あっけからんとばあちゃんは肯定した。だが、ぼくは混乱しまくっていた。
「何で、昔もそうだったって言ってくれなかったの?」
「訊かれなかったからねぇ」
「いや確かに訊かなかったけど!言ってくれても良かったじゃないか!」
ぼくの叫び声は家中に響き渡った。
頭を抱え続けるぼくを見て、「これだけ元気なら大丈夫そうやね」とばあちゃんが笑っている。
笑い声とは裏腹に、その瞳には心配と安堵の色が滲んでいて。
……ああ、そうか。ぼくは心配をかけていたんだ。きっと、今も、昔も。
ぼくは段々と冷静になっていった。そして、ついには黙り込んでしまったぼくにばあちゃんが心配そうに訊く。
「ん?何処か痛むのかい?」
「いや、そうじゃなくて……心配かけてごめんなさい」
「いいんだよ、にきちゃんが無事ならそれで」
目を伏せて静かに紡がれた言葉にぼくは少しだけ泣きそうになった。
「つゆりさんや管狐や河童にも言わなくちゃ……心配かけてごめんって」
「そうやね。でも、その時はごめんじゃなくて心配してくれてありがとうって言わんとね」
「……そうだね。ありがとう、ばあちゃん」
「どういたしまして。あと、あんたのお父さんにも一応言っておきなさいな。まあ、言ったら言ったで五月蠅くなるやろうけど」
「あはは……」
普段は放任主義なくせに、変な時に過保護になる父さん。
今はばあちゃんに追い出されて大人しくしているけど、いざ色々と伝えるとなると……はあ、先のことが思い遣られる。
ぼくとばあちゃんは二人して苦笑した。
「さてと。それじゃあ、にきちゃんの要望に応えて昔のことを話すとするかねぇ」
真っ直ぐに見つめられ、ぼくは居住まいを正す。
そして、ばあちゃんは話してくれた。
昔、この家にいた時のぼくのことを――。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話
矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」
「あら、いいのかしら」
夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……?
微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。
※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。
※小説家になろうでも同内容で投稿しています。
※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
幼なじみとセックスごっこを始めて、10年がたった。
スタジオ.T
青春
幼なじみの鞠川春姫(まりかわはるひめ)は、学校内でも屈指の美少女だ。
そんな春姫と俺は、毎週水曜日にセックスごっこをする約束をしている。
ゆるいイチャラブ、そしてエッチなラブストーリー。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
神社のゆかこさん
秋野 木星
児童書・童話
どこからともなくやって来たゆかこさんは、ある町の神社に住むことにしました。
これはゆかこさんと町の人たちの四季を見つめたお話です。
※ 表紙は星影さんの作品です。
※ この作品は小説家になろうからの転記です。
時間泥棒【完結】
虹乃ノラン
児童書・童話
平和な僕らの町で、ある日、イエローバスが衝突するという事故が起こった。ライオン公園で撮った覚えのない五人の写真を見つけた千斗たちは、意味ありげに逃げる白猫を追いかけて商店街まで行くと、不思議な空間に迷いこんでしまう。
■目次
第一章 動かない猫
第二章 ライオン公園のタイムカプセル
第三章 魚海町シーサイド商店街
第四章 黒野時計堂
第五章 短針マシュマロと消えた写真
第六章 スカーフェイスを追って
第七章 天川の行方不明事件
第八章 作戦開始!サイレンを挟み撃て!
第九章 『5…4…3…2…1…‼』
第十章 不法の器の代償
第十一章 ミチルのフラッシュ
第十二章 五人の写真
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる