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第四章 水の街アクアマリン

トラブルメーカー弐号

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水の街に向かう途中、
オルテ一行は、その先に人影がいることに気づいた。

「あ」

「うわっ」

水の街への道に立ち塞がる大岩、
側には護衛を連れたオースティン。

彼に無理難題を押し付けられるのは明白だった。

オルティスはすぐにきびすを返し走る体勢を取った。

「あ、オルテ!ちょうど良かった!
急で悪いんだけど頼みたいことが…
って、何で戻り道に向かってクラウチングスタートしてるの?」

「マーフィー、グレイ、走る準備しろ」

「分かりました!走るのは得意ですよ!」

「え、この距離を戻るの?何か忘れ物でもした?」

「とにかく走れ
後ろのオースティンU M A
迫ってきても捕まるんじゃないぞ
捕まったら間違いなく餌食えじきになる」

「そ、そんな恐ろしい生物が近くに…」

「かつてのライバルをUMA扱いしないであげて」

「え!?オースティン先輩って、
実はUMAだったんですか!?」

「いや違うからね?
オルテが勝手に厄介者をUMA扱いしてるだけだよ」

「ちょっとオルテ、
せっかく会ったんだから僕の頼み聞いてよ」

「UMAが来たぞ!走れ!」

俺達三人は全速力で走った。

一瞬草陰からミシェルと校長が見えた気がしたが、
それは多分気のせいだろう。

「ちょっとこれどういうことよ!
走ってないでちゃんと説明しなさい!」

気のせいじゃなかった。

それどころか直接俺の視界に入ってきたな。

俺結構な速度で走ってるはずなんだが、

まさか俺やグレイと同じ速度で
並走出来る奴がいるとは…

運動に不向きなマーフィーは、
後ろで早くもバテバテなのにな。

あ、校長がマーフィーを簡単に追い抜いていった。

「これはあれです、
UMAから逃げる競技の一種なんですよ」

グレイは俺に並走しながら淡々と告げる。

別に競技のつもりで走ったわけじゃないけどな。

「UMAって…そんな生き物
どこにもいないじゃない」

「いるだろあそこに、
今さっきお前の尊敬するマーフィー追い抜いたあいつ」

「それって、校長のこと?」

「いいえ、オースティン先輩です」

「それなら尚更UMAじゃないわよ
オースのことはあなたがよく知ってるでしょ?」

「知ってるけど知りたくない」

「現実を認めなさいな」

「暇ですし実況でもしましょうか」

「この状況でよくやろうと思ったな
まあ気晴らしにもなるだろうから頼む」

「オルテ、逃げるなんて酷いじゃないか」

「おおっと、先輩U M Aが迫ってきました!
既にバテバテのマーフィー選手はリタイア!
今残っている選手は、ハワード選手、俺、
ミシェル選手、リース選手の四人です!」

「おい、俺まで巻き込むんじゃねえよ!」

破壊神頑張れ~UMAに負けるな~

「お前はもうちょっと緊張感を持て!
完全に外野だから他人事かよ!」

「校長、言ってることが意味分かんないです」

「あ…今のは空耳ですよ空耳
そんなこと気にしてる暇があるなら、
走ることに集中して下さい」

「明らかに話題そらしましたよね?」

「はて、何の事でしょうか
それより、
例の面倒事U M Aが近づいてきましたよ」

「うわっ、マジだ
あいつの体力底無しかよ」

「こんな速度で走ってる
あんた達も人のこと言えないけどね」

『破壊神様、申し訳ございません』

「あ、てめっ、ゼヘン!
主を追い越すつもりか!」

『追い越しはしません、踏み台にするだけです』

「もっと質悪いだろそれ!」

「おーと、リース選手!
一体誰にやられたのか、その場で転倒してしまった!」

「精々自分の足につまずいたとかそんなのだろ」

「そんな内股に起こりそうな転び方を…」

『オルテ、危ない』

イーツは見えない相手に蹴りを入れると、
イーツはその相手に剣を向けた。

『こいつは私が見張っておく
オルテは早く先に行って』

「ありがとうイーツ!
お前の犠牲は無駄にしない」

「残念ながらそれは無理だよ、オルテ」

背後から聞きなれた厄介者の声がする。

トラブルメーカー第弐号の声が聞こえた。

俺はゆっくりと後ろを振り返る。

やはりその声の主はオースティンだった。

「ゼヘンには囮になってもらって、
僕はオルテの背後に回り込んでいたんだよ
ダメだよ、ちゃんと周りも注意しなきゃ」

オースティンはその腕に疲れたマーフィーを抱えていた。

「友人は大切にしなきゃ
勿論、僕のお願い聞いてくれるよね?」

「…………これはこれは、
見事な脅迫だな…恐れ入ったよ」

これなら面倒事に巻き込まれるのは確実だな…

オースティンは満足そうににっこり笑った。
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