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第二章 破滅の子
微かな違和感
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『オルテ、どうして引き受けたの?』
「他ならぬ友人の頼みだからな。
それに、1日限定なら特に困らないだろ」
『前も言ったけど、
王族になったらダメだからね
運命が歪んでしまうから』
「大丈夫だよイーツ
俺に王族なんて似合わないからな」
『それなら良いけど…』
良い機会だし、傍観者の説明をしよう。
傍観者とは、名の通り傍観するのが役目。
傍観対象と同時期に産まれ、
対象が死ぬその時まで側にいる存在だ。
彼女が人間なのかそうでないかは知らないが、
傍観対象が生きてさえいれば、
何度でも復活するのだ。
俺が死ねば、傍観者も消滅する。
「お前は、消滅するのが怖くないのか?」
『…………どうせ使い捨ての命だから、
死のうが消えようが、どうだって良いよ
役目を果たせるのなら、自分を犠牲にしてでも…』
「待て待て、そんなの俺がさせないからな」
イーツは少し、自分を犠牲にしがちな所がある。
そんな所が俺にとっては心配だったりする。
『あの傍観者、
何で僕のこと見てたんだろう…』
「オースティンの傍観者か?」
『そう、金髪で銀色の瞳の傍観者
僕を興味深そうに見つめていたよ』
「名前とかは聞かなかったのか?」
『確か、ゼヘンと言っていたよ』
「ゼヘンか…容姿もイーツとは逆なんだな」
『そうみたいだね
何でなのかは僕にも分からないけど…』
「傍観者にも分からないことがあるんだな」
『傍観者にも運命を予め知っている者と、
知らない者とで個体差があるからね』
傍観者が皆運命を把握しているわけではないってことか…
「オースティン先輩」
イーツと話しながら歩いていると、
背後から聞き覚えのある声が聞こえた。
イーツは空気を読んだのか、口を閉ざす。
俺は振り返って、声の主を確認した。
「フローレス…」
確かに目の前にいるのはフローレスのはずだ。
だが、何かおかしい…
どこか違和感を覚えるフローレスの瞳は、
赤く光っているように見えた。
「まだ、役目から逃げているんですか?」
「役目?何の話だ」
「とぼけても無駄ですよ
私、全部知ってるんですから」
会話が噛み合わない。
フローレスは、一体何の話をしているんだ?
「悪いが俺にはそんな記憶はない。
誰かと間違えているんじゃないか?」
「そうですか、認めないつもりなんですね
それなら、ばらしちゃっても良いんですか?
もう片方の双子の…」
「やめろ」
気がつくと、俺の目の前にはオースティンが立っていた。
「オルティスは関係ない
この役目を背負うのは僕だけで充分だ」
「あら、入れ替わっていたのですね
そっくりだから全然気づきませんでした
なら今回はこれくらいにしておきましょうか」
「僕にとっては、
二度と君の顔は見たくないけどね」
「あら冷たい
せっかく先輩がアドバイスしてあげようと思ったのに」
「そんなものいらないよ
どうせ君のアドバイスは破滅に導くだろう?」
「バレちゃった?
だって、平和なんて退屈じゃない
それじゃあまたね、“破滅の子”」
フローレスはどこかへと去っていった。
「おい、オースティン
“破滅の子”って、どういうことだよ」
「そのままの意味だよ
僕は世界を破滅に導く破滅の子で、
もう一人がこの世界のどこかにいるんだ」
「どうして言わなかったんだ
言ってくれれば、俺も…」
「この役目はオルテには無関係
だから、君は何もしなくても良いんだよ」
「そんなの聞けるわけが…」
「頼む…僕は、
大切な人を誰一人壊したくなんてないんだ」
『オルテ、彼の言う通りにしよう』
「イーツまで何を…」
この時のイーツの顔は、とても悲しそうで…
これ以上深入りしてはいけないと、
諭しているかのように思えた。
「他ならぬ友人の頼みだからな。
それに、1日限定なら特に困らないだろ」
『前も言ったけど、
王族になったらダメだからね
運命が歪んでしまうから』
「大丈夫だよイーツ
俺に王族なんて似合わないからな」
『それなら良いけど…』
良い機会だし、傍観者の説明をしよう。
傍観者とは、名の通り傍観するのが役目。
傍観対象と同時期に産まれ、
対象が死ぬその時まで側にいる存在だ。
彼女が人間なのかそうでないかは知らないが、
傍観対象が生きてさえいれば、
何度でも復活するのだ。
俺が死ねば、傍観者も消滅する。
「お前は、消滅するのが怖くないのか?」
『…………どうせ使い捨ての命だから、
死のうが消えようが、どうだって良いよ
役目を果たせるのなら、自分を犠牲にしてでも…』
「待て待て、そんなの俺がさせないからな」
イーツは少し、自分を犠牲にしがちな所がある。
そんな所が俺にとっては心配だったりする。
『あの傍観者、
何で僕のこと見てたんだろう…』
「オースティンの傍観者か?」
『そう、金髪で銀色の瞳の傍観者
僕を興味深そうに見つめていたよ』
「名前とかは聞かなかったのか?」
『確か、ゼヘンと言っていたよ』
「ゼヘンか…容姿もイーツとは逆なんだな」
『そうみたいだね
何でなのかは僕にも分からないけど…』
「傍観者にも分からないことがあるんだな」
『傍観者にも運命を予め知っている者と、
知らない者とで個体差があるからね』
傍観者が皆運命を把握しているわけではないってことか…
「オースティン先輩」
イーツと話しながら歩いていると、
背後から聞き覚えのある声が聞こえた。
イーツは空気を読んだのか、口を閉ざす。
俺は振り返って、声の主を確認した。
「フローレス…」
確かに目の前にいるのはフローレスのはずだ。
だが、何かおかしい…
どこか違和感を覚えるフローレスの瞳は、
赤く光っているように見えた。
「まだ、役目から逃げているんですか?」
「役目?何の話だ」
「とぼけても無駄ですよ
私、全部知ってるんですから」
会話が噛み合わない。
フローレスは、一体何の話をしているんだ?
「悪いが俺にはそんな記憶はない。
誰かと間違えているんじゃないか?」
「そうですか、認めないつもりなんですね
それなら、ばらしちゃっても良いんですか?
もう片方の双子の…」
「やめろ」
気がつくと、俺の目の前にはオースティンが立っていた。
「オルティスは関係ない
この役目を背負うのは僕だけで充分だ」
「あら、入れ替わっていたのですね
そっくりだから全然気づきませんでした
なら今回はこれくらいにしておきましょうか」
「僕にとっては、
二度と君の顔は見たくないけどね」
「あら冷たい
せっかく先輩がアドバイスしてあげようと思ったのに」
「そんなものいらないよ
どうせ君のアドバイスは破滅に導くだろう?」
「バレちゃった?
だって、平和なんて退屈じゃない
それじゃあまたね、“破滅の子”」
フローレスはどこかへと去っていった。
「おい、オースティン
“破滅の子”って、どういうことだよ」
「そのままの意味だよ
僕は世界を破滅に導く破滅の子で、
もう一人がこの世界のどこかにいるんだ」
「どうして言わなかったんだ
言ってくれれば、俺も…」
「この役目はオルテには無関係
だから、君は何もしなくても良いんだよ」
「そんなの聞けるわけが…」
「頼む…僕は、
大切な人を誰一人壊したくなんてないんだ」
『オルテ、彼の言う通りにしよう』
「イーツまで何を…」
この時のイーツの顔は、とても悲しそうで…
これ以上深入りしてはいけないと、
諭しているかのように思えた。
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