【本編完結】アリスとレイスの不思議な絵本

札神 八鬼

文字の大きさ
上 下
50 / 66
おまけ(本編とは関係無し)

高身長への憧れ

しおりを挟む

『ガキ大将』

とある国の王様の一人のことを、
他の国の住人(一部)達がそう呼んでいる。

それは決して見た目がショタだからとか、
年齢が最年少という理由ではない。
(現在の最年少はアリスである)

精神がガキっぽいのだ。と言っても彼はまだ18歳。
少し言動が幼くても無理はないだろう。

その名もカシルゼーテ。

クローバーの国の王様である。

そして彼の一番の特徴と言えば……


「やっぱり君って僕より小さいよね
普段どんなの食べてたらそんなに身長伸びないの?
逆に興味深いくらいだよ」

「あぁん!? てめっ、ウィット!
俺の身長馬鹿にしやがったな!?
ロリコンメガネのくせに身長は馬鹿みてえに高いよな!
お前の身長削って俺が貰いたいくらいだわ!」

住人の中で一番身長が低いことである。

「そんなこと言われてもね
気がついたら伸びてたんだからどうしようもないでしょ」

「気がついたら!? 
俺は毎日栄養に気を使ってるのにちっとも伸びねえぞ!?
当て付けか?それ俺への当て付けかゴルァ!」

「二番目に最年少のケディスですら君よりあるのに……
不思議なこともあるものだね」

「ケディス!? 誰だよそいつ!」

「ケディスはスペードの国に住んでいる時計鹿だよ
この国の時間は彼が管理しているんだ」 

「それで、歳はいくつなんだよ」

「15歳だね」

「俺より年下じゃねえか!」

「そりゃそうでしょ
14歳のアリスの一つ上だよ?
そりゃ君より年下でしょ」

「ちょっとケディスに宣戦布告してくる」

「お供はいる?」

「いらねえ、連れていったら
複数いないと喧嘩売れない腰抜け扱いされてなめられる」

「どうでも良いことを気にするね
別にそんなの気にしないと思うけど……」

「と言うことで、この後の仕事全部片付けといてくれ」

「えっ!? ちょっとまた僕に全部押し付ける気!?
僕が来てからずっとそうじゃないか!」

「だってお前変態だけど仕事出来るし!
これくらいはすぐに終わるだろ!」

「それもそうだけどさ……夕飯までには帰って来るんだよ」

「分かってるって!」









「お前がケディスか」

「え、何? あんた誰?」

スペードの国の時計搭にて、
ケディスの目の前にカシルが仁王立ちで立っていた。
ケディスはそんなカシルを困惑した顔で見つめている。

「さっさと答えろ、お前はケディスなんだよな?」

「え、うん、そうだよ
僕が時計鹿のケディスだけど……何か大事な用事とかあるの?」

「お前に宣戦布告する!
俺は今日から背を伸ばして、お前に身長で勝ってみせる!」

「…………まさか、その為にここに来たの?」

「ああ、そうだ! 何か文句でもあるのか?」

「文句と言うより、そもそも僕、
一度も君と競った記憶がないし、
そもそも初対面なわけなんだよね
まず、君って何者なわけ?」

「ああ、そういや名乗ってなかったな
俺はクローバーの国の王、カシルゼーテ!
貴様はこの俺にライバルと認められたんだ!
むしろ誇りに思うべきだろ!」

「…………よく分かんないけど、
僕はそもそもこれ以上身長を伸ばす気はないよ」

「何!? お前はチビ扱いされても構わないと言うのか!?」

「いや、むしろ僕みたいなタイプはそれが良いんだよ
僕みたいに可愛い美少年は、
逆に身長が低い方が小動物感があって可愛いの」

「可愛いって自分で言うのか?」

「だって事実だし?」

な、何てやつだ……
こいつは自分の低身長を卑下ひげする所か、
逆に魅力の一つとして認識しているだと!?
こいつ、出来る!


「とんでもない強敵だな……」

「いや、僕特に何もしてないんだけど……」

「だがお前に何と言われようが、
高身長への憧れは消えないぞ…」

「…………」

ケディスは少し考え込むような仕草をすると、
笑顔でカシルの手を両手で掴んだ。

「それなら僕が低身長の良さを教えてあげる!
僕に着いてきて!」

「ちょ、俺は高身長が……」

「良いから良いから!」

カシルはケディスに手を引かれながら、
時計塔を後にしたのだった。





「低身長の良さ?」

「そう! 管理人さんは低身長だから、
そういうの分かるかと思って!」

ケディスはチェシャ猫の家で懲りずに
お菓子をつまみ食いしていた管理人。
ラミリに低身長の良さを聞いていた。
明らかに人選ミスである。


「うーん、こそこそお菓子をつまみ食い出来る?」

「分かる分かるーー!
背が低いから物陰に隠れやすいよねーー!」

「ねー、低身長って超便利~」

「そんな一生使わない良さじゃなくて、
もっと他に良いの無いのかよ」

「バレても上目遣いでうるうるしたら大体許される」

「分かるーー! 僕もそれ良くやってるなーー!」

「…………やっぱ、良いとこ無いんじゃねえの?」

「じゃあ他の所行っちゃう?」

「そうだな、別の奴に聞こう」








「低身長の良さ?」

「うん、クシリスさんは良さ知ってそうだし」

次にケディスが聞いたのは、ダイヤの国の女王であり、
スペードの国の王、シャロンワールのストーカー。
勿論、彼女も人選ミスである。

「それは勿論、
身長が低いと木の影に身を潜めやすいことでしょうか
万が一尾行がバレても笑って許されますわ」

「それシャロンだからこそ許されてるんじゃねえの?」

「後、身長が低いので、
身長が高い相手をストーキングすると、
話しかけられた時上から見下ろされるので、
その度にゾクゾク出来るというメリットが…」

「それはお前だけだろ」

「何故ですか! せっかく私が、
未来の旦那様の素敵な所を教えているというのに!」

「お前らが婚約した話なんて、
こっちは一度も聞いてないんだが?」

「何を言いますの!
私達は既に愛し合っているのです!
そう、全ては出会ったあの日から!」

(あ、ハートの女王とは違うタイプの、
面倒臭いタイプだこの女王)

「あー……うん、クシリスさんがんば
シャロンの攻略頑張ってね」

(面倒臭くなったのか、適当な返事になってるな…)

「それじゃ、次行こっか」

「……………そうだな」












「あ、お帰りカシル
もう帰ってき……ケディスも来ちゃったの?」

「低身長の良さって何だと思う?」

「え? 低身長の良さ?」

ケディスが三人目に聞いたのは、
ロリコンメガネこと、ウィットだった。
そう、勿論人選ミスである。

「ウィット確かアリス大好きだったよね?
それなら低身長の良さとか語れるんじゃない?」

「まあ、それもそうだね
普段言えない分、今回は言わせてもらおうか」

「あー、そういやこいつロリコンだったな
アリス自慢がウザイから、ろくに語らせてなかったが……」

「ウザイとは心外だな……
僕はアリスへの愛を語っているだけだよ」

「それが重いって言ってんだよ」

「でも今回は語らせてもらうよ
せっかくのチャンスだからね」

「…………まあ、今回だけは聞いてやるよ」

「じゃあ遠慮なく……ゴホン
やっぱりアリスはあの可憐さだと思うんだ
元の育ちが良いからだろうけど、
品が良いというか、彼女には下品さが無いんだ
でも子供らしさは残ってて、ほわほわしてるだろう?
あれも彼女の魅力の一つとも言えるだろうね
アリスを迎えに行ったあの日も、
アリスはズワルトではなく僕を選んでくれたんだ
初めて兎の穴に落ちる前に、
彼女は僕の手を強く握ってくれたんだ、可愛いだろう?
それから彼女が見知らぬ土地に来たときの、
僕にすがるような瞳は綺麗だったなぁ……
そう、彼女は僕を拒絶するような行動はしないんだ
僕のアリス、僕だけのアリスなんだよ
ふ、ふふふ、ふふふふふ…」

「わあー、聞く人間違えたかな?」

「目に見えた結果だっただろ
ただウィットのやばさを再確認しただけじゃねえか」

「やっぱロリコンは下手に関わらない方が良いね」

「そうだな、俺も同感」

「こうなったら、あの人に聞いてみようか」

「あの人って?」

「あれ? 知らない?
結構知ってる人多いはずなんだけどな……僕達が会うのは……」










ダイヤの国には不思議の国唯一の教会がある。
その中にいるのは……勿論神父だ。

「迷える子羊よ、俺に何か相談事か?」

「うん、低身長ってどう思う?」

「低身長? それがどうかしたのか?」

「カシルがね、低身長が嫌なんだって
だから僕が低身長の良さを教えてあげようと思って」

「そうだな……俺の意見で申し訳ないが、
身長が低くても構わんと思うがな」

「良くねえだろ、チビ呼ばわりされるんだぞ?」

「良いではないか、それで」

「何でだよ」

「カシルよ、人の見た目は神が決めるものだ
我ら人は神が予め定めた器を使い、現世に降りている」

「容姿は神が決めるって……DNAとかあるんじゃ……」

「今そのような話はしておらん
話の続きだが、俺の考えでは、
コンプレックスは神の力を遮断しゃだんするものと認識している
負の力は神の心身を成長させる力を弾くのだ
本来ならば、与えられた器を上手く使えれば、
神の力を大いに受けることが可能なのだが…」

「僕難しい話分かんなーい」

「つまりは、いかに己の器を
上手く利用できるかが鍵ということだ」

「そっかー!じゃあ僕は上手く使ってる方だね!」

「…………お前の理論なら、
俺はこの低身長のまま生きろってことになるが…」

「いつまでも伸びないならその通りなのだろう
だが神の考えることは俺達には図り知れぬこと
今後伸びる可能性も0ではないだろうな」

「それ本当か!」


「ただ過剰に気にするのは控えた方が良いだろう
身長というものは一日二日で伸びるものではない
ゆっくりと時間をかけて……が妥当だろうな」


「…………過剰に気にしないようにか……
ありがとう、参考になった」

「少しでも助力になったのならば、
神の橋渡し役として嬉しい限りだ
カシルに、神の御加護があらんことを」



数日後……




「ウィット! ウィット!」

「どうしたのカシル、何か嬉しいことでもあったの?」

「身長が! 身長が!」

「何? まさか縮んだ?」

「そんなわけねえだろぶっ飛ばすぞ」

「で? 本題は何?」

「身長が、5cm伸びた!」

「おおー、良かったね
とりあえずは高身長に少し近づいたかな?」

「おう! これからたけのこみてえにぐんぐん伸びてやるよ!」

「…………それは流石に夢見すぎじゃない?」



【おまけ】高身長への憧れ 終

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

後宮なりきり夫婦録

石田空
キャラ文芸
「月鈴、ちょっと嫁に来るか?」 「はあ……?」 雲仙国では、皇帝が三代続いて謎の昏睡状態に陥る事態が続いていた。 あまりにも不可解なために、新しい皇帝を立てる訳にもいかない国は、急遽皇帝の「影武者」として跡継ぎ騒動を防ぐために寺院に入れられていた皇子の空燕を呼び戻すことに決める。 空燕の国の声に応える条件は、同じく寺院で方士修行をしていた方士の月鈴を妃として後宮に入れること。 かくしてふたりは片や皇帝の影武者として、片や皇帝の偽りの愛妃として、後宮と言う名の魔窟に潜入捜査をすることとなった。 影武者夫婦は、後宮内で起こる事件の謎を解けるのか。そしてふたりの想いの行方はいったい。 サイトより転載になります。

生まれ変わっても一緒にはならない

小鳥遊郁
恋愛
カイルとは幼なじみで夫婦になるのだと言われて育った。 十六歳の誕生日にカイルのアパートに訪ねると、カイルは別の女性といた。 カイルにとって私は婚約者ではなく、学費や生活費を援助してもらっている家の娘に過ぎなかった。カイルに無一文でアパートから追い出された私は、家に帰ることもできず寒いアパートの廊下に座り続けた結果、高熱で死んでしまった。 輪廻転生。 私は生まれ変わった。そして十歳の誕生日に、前の人生を思い出す。

狼神様と生贄の唄巫女 虐げられた盲目の少女は、獣の神に愛される

茶柱まちこ
キャラ文芸
 雪深い農村で育った少女・すずは、赤子のころにかけられた呪いによって盲目となり、姉や村人たちに虐いたげられる日々を送っていた。  ある日、すずは村人たちに騙されて生贄にされ、雪山の神社に閉じ込められてしまう。失意の中、絶命寸前の彼女を救ったのは、狼と人間を掛け合わせたような姿の男──村人たちが崇める守護神・大神だった。  呪いを解く代わりに大神のもとで働くことになったすずは、大神やあやかしたちの優しさに触れ、幸せを知っていく──。  神様と盲目少女が紡ぐ、和風恋愛幻想譚。 (旧題:『大神様のお気に入り』)

ナマズの器

螢宮よう
キャラ文芸
時は、多種多様な文化が溶け合いはじめた時代の赤い髪の少女の物語。 不遇な赤い髪の女の子が過去、神様、因縁に巻き込まれながらも前向きに頑張り大好きな人たちを守ろうと奔走する和風ファンタジー。

処理中です...