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おまけ(本編とは関係無し)

死体を好む変人

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ハートの国の門番ズワルトは、
死体を好むネクロフィリアであり、
不思議の国一の変人と呼ばれている。

このイカれた連中の集まりである
住人の中で一番……とはよっぽどのことだろう。

双子の兄であるウィットとは真逆で、
決して犬猿と言うわけではないが、
意見が合わず、似てない双子として有名である。

ズワルトの性格と言えば、誰に対しても同じ態度で接し、
思ったことをズバズバ言うタイプの住人だ。
そして何故か女性人気がある為、
双子の大きな違いと言えるだろう。

ズワルトの関係性で特筆すべきなのは……

「帰れ三月野郎」

「またまたー! 照れちゃって!」

「この顔が照れてるように見えるか?
お前の眼球腐ってるんじゃねえの?」

三月兎との仲は最悪という事実である。

「酷いですなズルっち
三月のこのキューティクルな瞳の、
どこが腐ってると言うのです?」

「うーん、全身?」

「それ完全にゾンビじゃないですか」

「脳みそも腐ってるぜ、良かったな」

「もしそうだったら真っ先にズルっちを襲いますぞ!」

「よーし! 今すぐ首はねてやるからそこに座れや!」

「きゃーー! ズルっちこわーい!」

「……………で? 何の用だよ
俺お前みたいに暇じゃないんだけど」

「にしては、随分とラフな格好ですが?」

今のズワルトはいつもの黒ずくめの服とは違い、
白いシャツと黒のズボンというラフな格好だった。

「今日は休みの日なんだよ
この日くらいゆっくり休ませろや」

「まあまあそう言わずに三月の話を聞いてくだされ!」

「くっそ力強いなお前!
俺に構うな! 今日は恋人達と過ごす予定なんだよ!」

「そんなのいつでも出来るじゃないですか!
三月の方がもっと重要な用事ですぞ!」

「馬鹿お前、彼女達は宝石みたいに繊細なんだ
定期的に構ってやらねえと不機嫌になるんだよ!」

「そんなの三月の知ったことじゃないのですー!」

「用事なら別の奴に頼めよ!
いちいち俺に仕事を押し付けるな!」

「三月は諦めませんぞ!
ズルっちが首を縦に振るまでねばってやります!」

「じゃあ代わりが見つかるまで付き合ってやるから、
早くその手を離せ!」

「分かりましたよ……」

先程まで起きていたドアを閉めたいズワルトと、
ドアをこじ開けたい三月との攻防は、
ズワルトが妥協することで決着が着いた。







「はぁ? 心茶の材料集め?」

「そうなのです
心茶のストックが足りなくなってきたので、
ズルっちに取ってきて貰おうと思っていたのですが…」

「今日は無理だな
彼女達の前に血まみれの姿で会えるわけねえだろ」

「何ですかそのどうでも良い理由は」

「つーか、言うほど大した理由じゃねえだろそれ
本来なら嬉々ききとして行くが、
今回は都合が悪いんだよ」

「で、その代わりと言うのが……」

「そう、今のんきにグースカ寝てるレイスだ
この通りぐうたらだけど腕はあるからな」

レイスは目の前で気持ち良さそうに眠っている。
そう、いつものサボりだ。

「まあ、強いのは知っていますが、
本当にやってくれますかね?」

「まあそれは……ダメ元で頼んでみるしかねえな」

「で、どうやって起こします?」

「とりあえず蹴ったら起きるだろ
おい、起きろやぐうたら」

ゲシッ!

「いって! テメエなにしやが…」

「おはようございます」

「…………んだよ、三月とズワルトか
それで、俺に何か用か
くだらない用事なら二度寝するからな」

「お前はいつもブレねえな」

「今日は大事な用事があって来たのです」

「何だよ大事な用事って」

「心茶の材料を集めて欲しいのです」

「おやすみ」

「ちょいちょいちょい、何で寝ようとしてるんですか」

再び寝ようとするレイスを慌てて止める三月に対し、
レイスはけだるそうな顔で返事をした。

「くだらねえ用事だったから寝る
女王様には俺がサボってたこと言うなよ
そんじゃ、おやすみ」

目を閉じてすぐに夢の世界に入ったレイスに対し、
三月は苦笑いしながらレイスを眺めていた。

「寝るの早すぎません?」

「ほら見ろ、
こいつに期待するのがそもそも間違いだったんだよ」

「紹介したのズルっちでしたよね?」

「だからダメ元で言えって言ったろ」

「確かにそう言ってましたな……
では、次の代わりを探しましょうか」







「心茶の材料?
私にそんなもの集められると思うのかい?」

「チェシャ猫は明らかに人選ミスだろ」

「もしかしたらやってくれるかもと……」

「いや無理だろ、元警察だぞ?
そんなことしたらチェシャ猫の正義感が許さねえだろ」

「まあ、それもそうですよね……」

「そうだよ三月、私は人殺しの趣味はないんでね
そういうのならそこらの殺人鬼の連中にでも頼みな」

「心茶? 私それ嫌いなんだよね
レギルは好きみたいだけど、
私はあれドロドロしてるから嫌いだな」

「まあ心茶は、人の心臓と血が材料ですからね」

「心茶の作り方もまあまあR15だからな」

「材料が心臓の時点で、まあまあのレベルじゃありませんがね」

「ラミリ、話してる暇あるなら手を動かしな!」

「うっ、うっ、私食べるのは好きだけど、
作るのは嫌いなのに……レギルの裏切り者……」

「こいつ何かあったのか?」

「ラミリは何度もつまみ食いしてたから、
今回は手伝いをさせようとしたら、
ラミリがやりたくないと逃げ出してね
そのラミリを捕まえて、
私の所に連れてきたのがレギルというわけだよ」

「あぁ……だからか……」

「それでは、さっさと次へ行きますぞ」











「おや三月くん、心茶の材料はどうなりました?」

「そのことなのですが、
ズルっちには用事があるみたいなので、
帽子屋にお願いしても良いですか?」

「分かりました、そう言うことなら仕方ありませんね
心茶の材料が集まり次第お茶会を始めますが、
ズワルトくんも参加しますか?」

「いや、俺は後で行く」

「ではズワルトくんの席を用意しておきますね
用事が終わったら来てください」

「ああ、用事が終わったら行くよ」


【おまけ】死体を好む変人 終
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