【本編完結】アリスとレイスの不思議な絵本

札神 八鬼

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第一章 ハートの国

ロードローゼの絵本【後編】

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「この中に、女王様の本体がいるのか」

「ああ、間違いないだろう
どうやら鏡の中に入れるみたいだから、
さっさとローゼを解放しに行くぞ」

「それもそうね
私達が、女王様を救ってあげなくちゃ」

レイス達は鏡の中へと入り、ロードローゼの絵本に触れた。





囚われのロードローゼ・ブランディ。
首狩り女王は誰を求める。



今回の舞台は、またもや人の家の中。
目の前には自分にそっくりの人形を
嬉しそうに掲げた少女がいた。




「あれがローゼの幼少期だ
ローゼは昔気が弱くて、不思議の国の女王様を理想として、
母親に自分そっくりの人形を作ってもらったのが始まりだ」

ズワルトは懐かしそうに目の前の少女を見つめる。

「あなたはみらいのわたし!
これからよろしくね、ローテローゼ!」


幼い少女はたどたどしい口調で人形に語りかける。

少女はとても嬉しそうに人形を抱き締めた。

「別の場面に行くぞ」

ズワルトがそう言った途端、場面は変化し、
大きくなったローゼと、幼いズワルトが現れる。

「なあ、何でその人形ローゼと同じ顔なんだよ」

「ああ、これは私の理想なんだ
まだ私は、彼女のようにはなれていないよ
強くてかっこいい、素敵な女性にはな」

「その理想、既に叶ってるんじゃねえの?」

「いいや、まだ夢の途中だよ
実際に、私はまだ弱い
理想にはまだ程遠いさ」

「……そうか」

「…………」

ズワルトは、二人の様子を黙って見つめていた。
すると、ロードローゼがレイスに話しかける。

「なあ、そこの君」

「またか……今度は何だよ」

「君は、理想を追い求める私を笑うか?」

「は?」

「なりたい自分の為に頑張る人に対して、
君はどう思うのかを聞いているんだ」

「勝手にすれば良いんじゃねえの?
どうせ頑張るのはそいつの意思だろ
俺は応援も否定もしないがな」

「そうか、君は無関心を貫くんだな?」

「……何が言いたい」

「何でもないさ
君が応援も否定もしないなら、
私も勝手に頑張るだけの話だからね
だが、中には人の支えで成り立つものもいる
人によっては、その無関心は夢を潰すだろう」

「……一応肝には命じておくよ」

「ああ、是非そうしてくれ」

場面は変わり、鏡に囲まれた空間には
ロードローゼが立っていた。

「待っていたぞ、君達」

「そうか、あんたがロードローゼなのか……」

「そうだ。私こそがローテローゼの持ち主。
ロードローゼ・ブランディだ」

「ローゼ」

ズワルトの姿が見えた途端、ロードローゼの反応が変わる。

「クロ? クロじゃないか!
良かった! やはりここに来ていたんだな!」

ローゼは嬉しそうにズワルトの両肩を掴み、
ズワルトとの再会を喜んでいた。

「ローゼもここに来ていたのか
もう会えないと思っていたんだけどな……」

「そんなことないさ
私はお前を追いかけてここに来たんだからな
少し目を離しているうちに、こんなに表情豊かになって……」




クロは成長していくうちに、次第に心を閉ざしていった。
彼は、死体にのみ笑顔を見せる。 
その時私も死体になれたらと、どれだけ思っただろうか。


でも、それはダメだったのだ。


クロは私にちっとも興味を示していなかった。

私が怪我をしても、嬉しそうな顔を見せなかった。

いつもなら、死にかけにも笑顔を見せているのに…



「俺に絡みたがる物好きで、
イカれた連中が多かっただけの話だよ」

そうか、クロをこんなに変えたのは、
私でも、他の人間でもなく、この国の住人達だったのか。

「クロと仲良くしてくれてありがとう
クロが変わったのは、
きっとお前達のおかげなのだろうな」

「別に大したことはしてねえよ
気が向いたときにこの変人に絡んでただけだ」

「それでも、クロにとっては大きな進歩だ
昔は、これほど表情豊かではなかったからな」

「………ローゼ、一緒にここを出よう
ここよりも、まだましなはずだからな」

「ああ、そうだなクロ
お前がいる世界なら、私もそちらに行こう」

ロードローゼは、
ズワルトと共に絵本の世界から脱出した。








「助っ人枠で構わないから、どうか私も連れていってくれ」

「それは構わねえけど、ローゼはそれでも良いのかよ」

「構わない。私は少しでもクロの力になりたいんだ」

「結局は、ズワルトの為か……」

「協力してくれるのなら、誰のためでも構いませんよ
少しの間、宜しくお願いしますね」

「ああ、剣の腕には自信があるからね
戦闘では任せてくれ」

「ぷち三月くん、管理人が
封印されている場所まで案内してくれませんか?」

「任せるのです!」



ハートの国に封印されているのは、あとは管理人だけである。


ぷち三月はぴょんぴょんと飛び跳ねて、
管理人の気配がする方へと向かった。
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