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第一章 ハートの国
ロードローゼの絵本【前編】
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ハートの城に入ると、
王座には女王様に良く似た人形が座っていた。
「随分と女王様に似た人形だな」
「いや、違う
この人形がお前達の知ってるローゼだよ」
「はあ? この人形が女王様なのか?」
「ローテローゼはローゼの理想そのもの
ローゼは、強くて格好いい女になることを望んでいたんだ」
「お前、それを知っててわざと言わなかったのか?」
レイスの質問にズワルトは黙って首を横に振った。
「今まで忘れていたんでな
きっと、管理人に奪われていたのだろう」
「それが絵本の中で過去を見たことで
全て思い出したってことか……」
「まあそんなところだな
だからこそ、ローゼの本体である
ロードローゼを探す必要がある」
「探すと言っても、検討はついているの?」
「少なくとも城の中にはいるだろう
いそうな所をしらみ潰しに探すしかないな」
「そうですね……では手分けして探しましょうか
私はズワルトくんと探しますので、
レイスくんはアリスさんをお願いします」
「まあ、それもそうだな
時間も有限だし、役割分担した方が、
ローゼも見つけやすいだろ」
「あの、ぷち三月は……」
「ぷち三月くんは私と一緒に来て下さい
連絡手段として使えそうなので」
「おいちび、お前はガンズを通して
レイス達に伝言を送ること出来るか?」
「ま、まあ、ガンズの半身が
レイスに憑いてる時点では可能ですが……」
「なら一緒に来い。良いな?」
「それでは、ぷち三月くんはお借りしますね」
帽子屋はレイスの肩からぷち三月をつまみ上げると、
自分の帽子のつばにぷち三月を放した。
「それじゃあ、何か見つけたら連絡しろよ」
彼らはお互い逆方向に歩き、ローゼ捜索を開始した。
【レイス・アリスの捜索】
「何度見ても広いお城ね」
「そうだな、俺はもう見慣れたけど」
「そっか、レイスはこの城の番兵でしたっけ」
「ああ、特に誰も来ないけどな」
「平和なのはとても良いことよ」
「まあ、それもそうなんだけどな
俺も安心してサボれるし」
「あまり女王様を困らせちゃダメよ」
「首はねられない程度に頑張るよ」
しばらく城内を探してみたが、
それらしきものはなかなか見つからず、
二人は雑談をしながらロードローゼを探していた。
「ねえ、レイス」
「何だよアリス」
「さんちゃんが私達は関係あるって言ってたけど、
レイスは私のこと何か覚えてる?」
「いや、特にねえな
クソな家庭環境は覚えてるけど、
アリスのことは思い出せねえよ」
「レイスって、どうしてこの国に来たの?」
「詳しくは覚えてないが、
確か、誰かから離れようとしてたんだ
俺は誰かの執事で、再び会うことを恐れていたんだよ」
「え、レイス執事だったの?」
「住人達からは意外って良く言われるよ
実際こんな性格だし、無理もないけどな」
「でも、そう言われたら、そうかもしれないと思えてきたわ」
実際にレイスは綺麗好きだし、
身なりや部屋も清潔で、家事も完璧。
そして剣の腕も一流だ。
あんな性格でなければ、女性にモテていたに違いない。
「確かにレイスの服っていつも清潔よね」
「こればっかりは未だに癖が抜けなくてな
身だしなみには気を使ってるんだよ」
「レイスって、モテたことある?」
「あー、あるかないかならあるな
と言っても人間の頃までだけど」
「そうなんだ……モテてたんだね」
「何だよ、俺がモテてたのがそんなに不満か?」
「ううん、そうじゃないわ」
「にしては、機嫌が悪そうだけど?」
「…………」
「無視かよ」
【帽子屋・ズワルト・ぷち三月の捜索】
「ここはぷち三月にお任せ下さい!」
ぷち三月は胸を張って宣言した後、
帽子屋のつばから飛び降りて近くのドアへと走る。
自慢の跳躍力でドアノブへと飛び乗るが、
重さが足りなかったのか、ドアは開かない。
少ししゅんとした表情になっていた。
帽子屋はぷち三月を優しく掴むと、三月のフォローをし始める。
「私達で探せる場所は私達が担当するので、
ぷち三月さんは狭い場所などの捜索をお願いできますか?」
「任せるのです!」
帽子屋がドアを開けた途端、
ぷち三月は部屋の中へと駆けていき、
帽子屋達が入れないような隙間や、
高い場所などによじ登って探していた。
「あくまで連絡手段として連れてきたが、
こいつは案外使えそうだな」
「そうですね、捜索の範囲も広がりそうです」
二人は各自ローゼを探していると、
奥からぷち三月の声が聞こえた。
「ローゼさんがいる場所を見つけましたよ!」
声が聞こえた方へと向かうと、
目の前には大きな鏡が置いてあった。
その中にローゼの絵本を見つけた。
「ズワルトくん、これは…」
「ああ、あれは間違いなくローゼの絵本だ
おいちび、レイスにローゼが見つかったと伝えてくれ」
「分かったのです!」
【レイス・アリスの捜索】
しばらく城内を探索していると、
レイスの陰から黒い物体が飛び出し、やがて人の形を取り始める。
出てきた男はレイスにそっくりで、
まるで貴族のような服を着ていた。
「お前、人の姿になれたのかよ」
「俺は取り憑いた者の姿を真似る
だから、三月に憑いている俺の半身は、
三月と似たような姿をしているぞ」
「それで、用は何だよ」
「あいつらがローゼを見つけたようだ
と言っても、鏡の中のようだがな」
「鏡の中?」
「ああ、後は鏡の中に入って、
ロードローゼを解放するだけだ
不思議の国の住人なら、問題なく入れるだろう」
「………分かった、俺達をその場所に案内してくれ」
王座には女王様に良く似た人形が座っていた。
「随分と女王様に似た人形だな」
「いや、違う
この人形がお前達の知ってるローゼだよ」
「はあ? この人形が女王様なのか?」
「ローテローゼはローゼの理想そのもの
ローゼは、強くて格好いい女になることを望んでいたんだ」
「お前、それを知っててわざと言わなかったのか?」
レイスの質問にズワルトは黙って首を横に振った。
「今まで忘れていたんでな
きっと、管理人に奪われていたのだろう」
「それが絵本の中で過去を見たことで
全て思い出したってことか……」
「まあそんなところだな
だからこそ、ローゼの本体である
ロードローゼを探す必要がある」
「探すと言っても、検討はついているの?」
「少なくとも城の中にはいるだろう
いそうな所をしらみ潰しに探すしかないな」
「そうですね……では手分けして探しましょうか
私はズワルトくんと探しますので、
レイスくんはアリスさんをお願いします」
「まあ、それもそうだな
時間も有限だし、役割分担した方が、
ローゼも見つけやすいだろ」
「あの、ぷち三月は……」
「ぷち三月くんは私と一緒に来て下さい
連絡手段として使えそうなので」
「おいちび、お前はガンズを通して
レイス達に伝言を送ること出来るか?」
「ま、まあ、ガンズの半身が
レイスに憑いてる時点では可能ですが……」
「なら一緒に来い。良いな?」
「それでは、ぷち三月くんはお借りしますね」
帽子屋はレイスの肩からぷち三月をつまみ上げると、
自分の帽子のつばにぷち三月を放した。
「それじゃあ、何か見つけたら連絡しろよ」
彼らはお互い逆方向に歩き、ローゼ捜索を開始した。
【レイス・アリスの捜索】
「何度見ても広いお城ね」
「そうだな、俺はもう見慣れたけど」
「そっか、レイスはこの城の番兵でしたっけ」
「ああ、特に誰も来ないけどな」
「平和なのはとても良いことよ」
「まあ、それもそうなんだけどな
俺も安心してサボれるし」
「あまり女王様を困らせちゃダメよ」
「首はねられない程度に頑張るよ」
しばらく城内を探してみたが、
それらしきものはなかなか見つからず、
二人は雑談をしながらロードローゼを探していた。
「ねえ、レイス」
「何だよアリス」
「さんちゃんが私達は関係あるって言ってたけど、
レイスは私のこと何か覚えてる?」
「いや、特にねえな
クソな家庭環境は覚えてるけど、
アリスのことは思い出せねえよ」
「レイスって、どうしてこの国に来たの?」
「詳しくは覚えてないが、
確か、誰かから離れようとしてたんだ
俺は誰かの執事で、再び会うことを恐れていたんだよ」
「え、レイス執事だったの?」
「住人達からは意外って良く言われるよ
実際こんな性格だし、無理もないけどな」
「でも、そう言われたら、そうかもしれないと思えてきたわ」
実際にレイスは綺麗好きだし、
身なりや部屋も清潔で、家事も完璧。
そして剣の腕も一流だ。
あんな性格でなければ、女性にモテていたに違いない。
「確かにレイスの服っていつも清潔よね」
「こればっかりは未だに癖が抜けなくてな
身だしなみには気を使ってるんだよ」
「レイスって、モテたことある?」
「あー、あるかないかならあるな
と言っても人間の頃までだけど」
「そうなんだ……モテてたんだね」
「何だよ、俺がモテてたのがそんなに不満か?」
「ううん、そうじゃないわ」
「にしては、機嫌が悪そうだけど?」
「…………」
「無視かよ」
【帽子屋・ズワルト・ぷち三月の捜索】
「ここはぷち三月にお任せ下さい!」
ぷち三月は胸を張って宣言した後、
帽子屋のつばから飛び降りて近くのドアへと走る。
自慢の跳躍力でドアノブへと飛び乗るが、
重さが足りなかったのか、ドアは開かない。
少ししゅんとした表情になっていた。
帽子屋はぷち三月を優しく掴むと、三月のフォローをし始める。
「私達で探せる場所は私達が担当するので、
ぷち三月さんは狭い場所などの捜索をお願いできますか?」
「任せるのです!」
帽子屋がドアを開けた途端、
ぷち三月は部屋の中へと駆けていき、
帽子屋達が入れないような隙間や、
高い場所などによじ登って探していた。
「あくまで連絡手段として連れてきたが、
こいつは案外使えそうだな」
「そうですね、捜索の範囲も広がりそうです」
二人は各自ローゼを探していると、
奥からぷち三月の声が聞こえた。
「ローゼさんがいる場所を見つけましたよ!」
声が聞こえた方へと向かうと、
目の前には大きな鏡が置いてあった。
その中にローゼの絵本を見つけた。
「ズワルトくん、これは…」
「ああ、あれは間違いなくローゼの絵本だ
おいちび、レイスにローゼが見つかったと伝えてくれ」
「分かったのです!」
【レイス・アリスの捜索】
しばらく城内を探索していると、
レイスの陰から黒い物体が飛び出し、やがて人の形を取り始める。
出てきた男はレイスにそっくりで、
まるで貴族のような服を着ていた。
「お前、人の姿になれたのかよ」
「俺は取り憑いた者の姿を真似る
だから、三月に憑いている俺の半身は、
三月と似たような姿をしているぞ」
「それで、用は何だよ」
「あいつらがローゼを見つけたようだ
と言っても、鏡の中のようだがな」
「鏡の中?」
「ああ、後は鏡の中に入って、
ロードローゼを解放するだけだ
不思議の国の住人なら、問題なく入れるだろう」
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