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本編
第三十一話 ストーカーはどっち(始まり編)
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「虚、これは由々しき事態だぞ」
授業の間の休憩時間、佐々木が真剣な眼差しで、
虚に向かって話しかける。
周りの生徒はまたかと思いながら次の授業の復習をしたり、
その場を移動したりと各々の行動を取っており、
虚はまた面倒事に巻き込まれる事に呆れた顔で、
佐々木に問いかけた。
「一体何だよ、由々しき事態って」
「決まってるだろう!志摩様だよ志摩様!
あの御方の後光を浴びた奴が増えたんだ!」
予想通りの返答に頭を抱えながら、
虚はその先の話を促す。
聞けば、志摩さんをこっそりと付け回す
ストーカー女が出たのだそう。
あの人は相変わらず変な人も寄せ付けるお人らしい。
「まあ透の事だからそうだとは思ったけど……
それで?そのストーカーはどんな奴なんだ?」
「何か……黒髪の可愛い女の子で……
黒いセーラ服を着てたんだよ
いくら可愛くても、危ない奴かもしれねえだろ?
俺の志摩様に変な女は近付けたくないからな!」
そもそもお前のじゃないだろという言葉を飲み込んだが、
明らかに面倒事の気配しかしない。
ここは穏便に断ろうとしたのだが、
どや顔で話す透に押しきられ、志摩さんを付け回す
ストーカー女の調査に付き合うことになったのであった……
◇◇◇
「私、運命の人に出会ったかもしれません」
突然、九十九ちゃんが頬をポッと染めて語り出す。
突拍子のない恋ばなに私は面食らい、
箸で掴んでいた卵焼きを落とし、
隣で食べていた碧生くんもびっくりしていた。
一瞬狼の耳が出ていたような気がする。
そんな私達を気にせず、九十九ちゃんは続ける。
「実乃里ちゃんは会った?
あの役所にいる素敵なおじ様の……」
「ああ、志摩のおじちゃん
小さい頃私達の事を可愛がってくれたおじさんだけど」
「うん、志摩のおっちゃんは良い人だよ
義理の娘さんを失ったというのもあるんだろうけど……
あの人未だに独り身なんだよね」
碧生くんが私の返答に合わせて続ける。
確かにあの人は娘さんが死んでからというもの、
というかずっと独り身なのだ。
あんなに優しくて良い人なのに、
どうして結婚してないのか不思議なくらい。
「独身……あの人まだ彼女はいないのね……
良いことを聞きましたわ」
「もしかして、運命の人って志摩のおじさんの事?」
「ええ、この前初めて会った時に一目惚れしまして……
けれどなかなか勇気が出ずに、最近あの方を尾行してますの」
「わあ、こんな堂々としたストーカー見るの初めて」
「碧生くん、しっ!」
「ち、違いますわよ!私はただ、
志摩さんがどんな方なのか知りたくて……」
「それ守先輩も似たような事言ってたけど……」
「私をあんな変態キメラと一緒にしないで下さい!
私はあいつみたいに無下にされて興奮なんてしませんわ!」
「それはまあ、うん……そうだろうね」
あの金色キメラ、本当にストーカーの才能あるよね。
あの絶妙な気色悪さが……
「ストーカー行為は流石にダメだけど、
私九十九ちゃんの告白を手伝おうか?」
「良いの?実乃里
この前暦先輩を甘やかすとか言ってなかったっけ?」
「良いの、親友の恋を応援するのも大事だから!」
「実乃里ー!ありがとう!」
九十九ちゃんは涙目で私を抱き締める。
やっぱ人じゃないからちょっと痛い。
まだ力加減が分かってないんだろうな。
「九十九ちゃん、ちょっと痛い」
「あら、ごめんなさい
つい力を込めすぎちゃった」
私から身体を離した九十九ちゃんは、ふわりと笑う。
人ではないけれど、九十九ちゃんは素直で優しい子だ。
けれどどこか辛そうな顔もする子で、
どこか暦ちゃんと似た気配がする彼女には、
どうか幸せになって欲しいと思う。
こうして、私の志摩のおじさんと九十九ちゃんをくっ付ける、
ラブラブ大作戦が始まったのであった。
授業の間の休憩時間、佐々木が真剣な眼差しで、
虚に向かって話しかける。
周りの生徒はまたかと思いながら次の授業の復習をしたり、
その場を移動したりと各々の行動を取っており、
虚はまた面倒事に巻き込まれる事に呆れた顔で、
佐々木に問いかけた。
「一体何だよ、由々しき事態って」
「決まってるだろう!志摩様だよ志摩様!
あの御方の後光を浴びた奴が増えたんだ!」
予想通りの返答に頭を抱えながら、
虚はその先の話を促す。
聞けば、志摩さんをこっそりと付け回す
ストーカー女が出たのだそう。
あの人は相変わらず変な人も寄せ付けるお人らしい。
「まあ透の事だからそうだとは思ったけど……
それで?そのストーカーはどんな奴なんだ?」
「何か……黒髪の可愛い女の子で……
黒いセーラ服を着てたんだよ
いくら可愛くても、危ない奴かもしれねえだろ?
俺の志摩様に変な女は近付けたくないからな!」
そもそもお前のじゃないだろという言葉を飲み込んだが、
明らかに面倒事の気配しかしない。
ここは穏便に断ろうとしたのだが、
どや顔で話す透に押しきられ、志摩さんを付け回す
ストーカー女の調査に付き合うことになったのであった……
◇◇◇
「私、運命の人に出会ったかもしれません」
突然、九十九ちゃんが頬をポッと染めて語り出す。
突拍子のない恋ばなに私は面食らい、
箸で掴んでいた卵焼きを落とし、
隣で食べていた碧生くんもびっくりしていた。
一瞬狼の耳が出ていたような気がする。
そんな私達を気にせず、九十九ちゃんは続ける。
「実乃里ちゃんは会った?
あの役所にいる素敵なおじ様の……」
「ああ、志摩のおじちゃん
小さい頃私達の事を可愛がってくれたおじさんだけど」
「うん、志摩のおっちゃんは良い人だよ
義理の娘さんを失ったというのもあるんだろうけど……
あの人未だに独り身なんだよね」
碧生くんが私の返答に合わせて続ける。
確かにあの人は娘さんが死んでからというもの、
というかずっと独り身なのだ。
あんなに優しくて良い人なのに、
どうして結婚してないのか不思議なくらい。
「独身……あの人まだ彼女はいないのね……
良いことを聞きましたわ」
「もしかして、運命の人って志摩のおじさんの事?」
「ええ、この前初めて会った時に一目惚れしまして……
けれどなかなか勇気が出ずに、最近あの方を尾行してますの」
「わあ、こんな堂々としたストーカー見るの初めて」
「碧生くん、しっ!」
「ち、違いますわよ!私はただ、
志摩さんがどんな方なのか知りたくて……」
「それ守先輩も似たような事言ってたけど……」
「私をあんな変態キメラと一緒にしないで下さい!
私はあいつみたいに無下にされて興奮なんてしませんわ!」
「それはまあ、うん……そうだろうね」
あの金色キメラ、本当にストーカーの才能あるよね。
あの絶妙な気色悪さが……
「ストーカー行為は流石にダメだけど、
私九十九ちゃんの告白を手伝おうか?」
「良いの?実乃里
この前暦先輩を甘やかすとか言ってなかったっけ?」
「良いの、親友の恋を応援するのも大事だから!」
「実乃里ー!ありがとう!」
九十九ちゃんは涙目で私を抱き締める。
やっぱ人じゃないからちょっと痛い。
まだ力加減が分かってないんだろうな。
「九十九ちゃん、ちょっと痛い」
「あら、ごめんなさい
つい力を込めすぎちゃった」
私から身体を離した九十九ちゃんは、ふわりと笑う。
人ではないけれど、九十九ちゃんは素直で優しい子だ。
けれどどこか辛そうな顔もする子で、
どこか暦ちゃんと似た気配がする彼女には、
どうか幸せになって欲しいと思う。
こうして、私の志摩のおじさんと九十九ちゃんをくっ付ける、
ラブラブ大作戦が始まったのであった。
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