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本編
第十七話 思い出のお弁当(真斗編)
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「ママ!今日ね、先生に褒められたんだよ!」
「あら凄いわね!それなら明日のお弁当は、
暦の好きなおかずを沢山入れましょうか!」
「やったー!ママ大好き!」
「暦は父さんと母さん自慢の娘だなぁ
よしっ!今度の休みにどこか遊びに行こうか!
暦はどこに行きたい?」
「良いの!?」
「ああ良いとも!おりこうさんな暦の御褒美だからな!」
「じゃあ、じゃあ、遊園地行きたい!」
私がまだ、愛されていた頃の記憶。
学校で良い成績を取って先生に褒められた時は、
決まってお母さんが好きなおかずがいっぱい入った
お弁当を作って、お父さんは色んな所に連れていってくれた。
からあげ、ミートボール、甘い卵焼き、ハンバーグ、
エビフライ、のりたまのおにぎり、うさぎりんご。
今となっては子供っぽいけれど、
私が愛されていると実感できた思い出の味。
だから、だから、虚さんが私の好きなおかずを、
お弁当に沢山入れてくれたのがとても嬉しかったんだ。
…………もう私の家族は、作ってはくれないから……
◇◇◇
「虚、頼みがあるんだ」
「突然どうした、改まって」
「暦の思い出の弁当を作るのを、手伝って欲しい」
「それは構わないが……どうして今日なんだ?」
「暦はまだ……俺達に心を開いていない」
「だから、思い出の弁当を作ることで少しでも……
ここは安全な場所だって、分かって欲しいんだ」
「そういうことか……
あの子は、色々と辛い想いをしてきた子だ
俺達が癒してやりたいが、肝心のレキが、
俺達に頼るのを躊躇しているからな……」
「ああ、だからこそ、
今度は俺達が思い出の弁当を作りたいんだ」
「よしっ!レキの為だ!
明日までには間に合わせるぞ!」
「ありがとう虚、助かる」
◇◇◇
ホワイトデー当日。
俺は今日も暦と一緒に屋上へとたどり着いた。
暦はそわそわとした足取りで階段を上がり、
屋上で着いた途端、嬉しそうに俺に話しかける。
「ね、ねえ、今日のお弁当
真斗くんが作ってくれたって……本当?」
「ああ、虚に手伝って貰ったものもあるが、
ほとんどは俺が作ったものだよ」
暦は俺から受け取ったお弁当を受け取ると、
突然お弁当を天に掲げるという奇行を始める。
「こ、これが愛妻弁当ならぬ、
愛夫弁当って……こと!?」
いつの間にか俺は暦の夫になっていたらしい。
婚姻届なんて出しただろうか?
もし本当に出していたのなら、暦に申し訳ないな。
「虚の手伝いはしたことあるから、
不味い……なんてことはないだろうが、
口に合わなかったら無理しなくて良いからな」
「食べるのもったいない……家宝にしなきゃ……」
「いや食べてくれ」
暦はしばらく俺が作ったお弁当を崇めた後、
お弁当のフタを開けた。
「これ……」
「虚から暦の好きなおかずを聞いたんだ
暦のご両親のお弁当には負けるかもしれないが、
心を込めて作ったから、食べてくれると嬉しい」
「…………っ!」
暦はお弁当を見つめたまま動かず、
ポタリポタリと涙が落ちていく。
きっと昔のことを思い出したのだろう。
暦は震える手で箸を掴み、卵焼きを口に運ぶ。
「美味しい……」
暦は食べ終わるまで無言で、
大粒の涙を流しながらお弁当を食べていた。
◇◇◇
「ありがとう、真斗くん
真斗くんが作ってくれたお弁当、とても美味しかった」
お弁当を食べ終わった後、暦は何だかすっきりしたようで、
晴れやかな笑顔で笑いかける。
「喜んでくれて良かった
それと……これはホワイトデーのお返し」
俺は暦の腕にブレスレットをつける。
暦に似合うようなものを選んだつもりだ。
「これ、貰ってくれるかな?」
「ブレスレットってことは……私達……実質結婚!?
婚姻届の用意しとかなきゃ……」
暦の変わらない暴走っぷりに、くすりと微笑んだ。
いつまでも、俺の側にいて欲しい。
浮気は許さないよ、暦。
「あら凄いわね!それなら明日のお弁当は、
暦の好きなおかずを沢山入れましょうか!」
「やったー!ママ大好き!」
「暦は父さんと母さん自慢の娘だなぁ
よしっ!今度の休みにどこか遊びに行こうか!
暦はどこに行きたい?」
「良いの!?」
「ああ良いとも!おりこうさんな暦の御褒美だからな!」
「じゃあ、じゃあ、遊園地行きたい!」
私がまだ、愛されていた頃の記憶。
学校で良い成績を取って先生に褒められた時は、
決まってお母さんが好きなおかずがいっぱい入った
お弁当を作って、お父さんは色んな所に連れていってくれた。
からあげ、ミートボール、甘い卵焼き、ハンバーグ、
エビフライ、のりたまのおにぎり、うさぎりんご。
今となっては子供っぽいけれど、
私が愛されていると実感できた思い出の味。
だから、だから、虚さんが私の好きなおかずを、
お弁当に沢山入れてくれたのがとても嬉しかったんだ。
…………もう私の家族は、作ってはくれないから……
◇◇◇
「虚、頼みがあるんだ」
「突然どうした、改まって」
「暦の思い出の弁当を作るのを、手伝って欲しい」
「それは構わないが……どうして今日なんだ?」
「暦はまだ……俺達に心を開いていない」
「だから、思い出の弁当を作ることで少しでも……
ここは安全な場所だって、分かって欲しいんだ」
「そういうことか……
あの子は、色々と辛い想いをしてきた子だ
俺達が癒してやりたいが、肝心のレキが、
俺達に頼るのを躊躇しているからな……」
「ああ、だからこそ、
今度は俺達が思い出の弁当を作りたいんだ」
「よしっ!レキの為だ!
明日までには間に合わせるぞ!」
「ありがとう虚、助かる」
◇◇◇
ホワイトデー当日。
俺は今日も暦と一緒に屋上へとたどり着いた。
暦はそわそわとした足取りで階段を上がり、
屋上で着いた途端、嬉しそうに俺に話しかける。
「ね、ねえ、今日のお弁当
真斗くんが作ってくれたって……本当?」
「ああ、虚に手伝って貰ったものもあるが、
ほとんどは俺が作ったものだよ」
暦は俺から受け取ったお弁当を受け取ると、
突然お弁当を天に掲げるという奇行を始める。
「こ、これが愛妻弁当ならぬ、
愛夫弁当って……こと!?」
いつの間にか俺は暦の夫になっていたらしい。
婚姻届なんて出しただろうか?
もし本当に出していたのなら、暦に申し訳ないな。
「虚の手伝いはしたことあるから、
不味い……なんてことはないだろうが、
口に合わなかったら無理しなくて良いからな」
「食べるのもったいない……家宝にしなきゃ……」
「いや食べてくれ」
暦はしばらく俺が作ったお弁当を崇めた後、
お弁当のフタを開けた。
「これ……」
「虚から暦の好きなおかずを聞いたんだ
暦のご両親のお弁当には負けるかもしれないが、
心を込めて作ったから、食べてくれると嬉しい」
「…………っ!」
暦はお弁当を見つめたまま動かず、
ポタリポタリと涙が落ちていく。
きっと昔のことを思い出したのだろう。
暦は震える手で箸を掴み、卵焼きを口に運ぶ。
「美味しい……」
暦は食べ終わるまで無言で、
大粒の涙を流しながらお弁当を食べていた。
◇◇◇
「ありがとう、真斗くん
真斗くんが作ってくれたお弁当、とても美味しかった」
お弁当を食べ終わった後、暦は何だかすっきりしたようで、
晴れやかな笑顔で笑いかける。
「喜んでくれて良かった
それと……これはホワイトデーのお返し」
俺は暦の腕にブレスレットをつける。
暦に似合うようなものを選んだつもりだ。
「これ、貰ってくれるかな?」
「ブレスレットってことは……私達……実質結婚!?
婚姻届の用意しとかなきゃ……」
暦の変わらない暴走っぷりに、くすりと微笑んだ。
いつまでも、俺の側にいて欲しい。
浮気は許さないよ、暦。
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