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本編
第十六話 腐敗の館【後編】
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腐敗の館へと向かう道中、
無月さんは犯人の事を話してくれた。
「海に還った犯人の名前は、代田 皆斗
生前は若い女性を殺害してた快楽殺人鬼です」
「あー……俺もニュースで見たことあるっすね
確か、現世では捕まえられなかったんすよね?」
「はい、生前も警察に追い詰められた際に、
自ら海に飛び込んだのだとか」
「海側も良い迷惑だな」
「あっ、零時さんが気にするのそこなんですね……」
「流石時人くん!
犯人に同じ逃げられ方をされたよりも、
海の生き物の事を気にかけるだなんて……
あぁ……ますます惚れ直したよ!」
「え?」
「おや」
「…………はぁー……
何故ここにいるんだ、伊織」
零時さんの背後から女性の声が聞こえたので、
思わず振り返ると、そこには伊織さんが立っていた。
久しぶりに生身で会った伊織さんは、
笑顔で私達に手を振っている。
伊織さん……前会った時より胸が大きくなった気がする……
自分のまな板のような胸と比べ、内心羨ましく思いながらも、
伊織さんに笑顔で挨拶する。
「お久しぶりです、伊織さん」
「知り合いっすか?」
「ああ、月宮くんは会うの初めてだっけ
この人は希丸 伊織さん
生前はハッカーをしてた人だよ」
「そして俺のストーカーだ」
「そんな……時人くん
俺のものだなんて……照れるじゃないか」
「そんなこと一言も言っていないが?」
「伊織さんはいつも通りのようですね」
「それで……彼が時人くんの新しい弟子で間違いないかい?」
「何で俺の事知ってるんすか?」
「そりゃあ……時人くんのとやり取りを、
全部盗聴してたからに決まってるじゃないか!」
「凄いな……白雪の後だとお前の行為がマシに見える
ストーカーには変わりないのにな」
「まあ、キス要求に比べりゃ、
盗聴が可愛く見えるのは分かる気がするっす」
「大丈夫!あの変態ドMには、
後で毒リンゴでも送っておくよ!」
「あんな変態でも利用価値はあるから、毒は弱めにしておけよ」
「送ることは止めないんですね……」
「いや足ついたら面倒だから、
玄関にネズミ取り仕掛けとくのが一番っすよ」
「それもそうだね……あの変態の事だし、
時人くんの匂い付きなら食いつくかも
時人くん、後で月光の香水借りて良い?」
何か落ち着く良い匂いだと思ったら、
零時さん香水つけてたのか……
しかも黒王様お墨付きのお高いやつ……
「そう考えるとますます気持ち悪いなあいつ……
まあ良い……必ず返すんだぞ」
「分かってるよ、僕はあの変態みたいに、
時人くんが捨てたゴミをコレクションとかしないし」
「待て、それは初耳なんだが?
どれだけキモさ更新したら気が済むんだあいつ」
零時さんは白雪さんのキモさに身震いしながら、
私達は無月さんに案内されながら目的地を目指す。
「到着しました」
辿り着いたのは、古くて大きな洋館。
まともに手入れしていないのか、
館の周りは雑草が生い茂っており、
館全体もツタがいくつか絡み付いている。
かろうじて玄関から中に入ることは出来そうだ。
しばらく館の周りを不審そうに嗅ぎ回っていた月宮くんは、
何か変な匂いでも嗅ぎ取ったのか、
不快そうな顔をしていた。
「うえー、ここ変な匂いするっすよ
マジで死体とかあってもおかしくないっすよこれ」
「なるほど、人間では嗅ぎ取れない匂いを……
警察犬としても捜査につかえるかもしれんな」
「俺犬じゃなくて狼なんすけど!?」
「確かにその嗅覚は捜査に使えそうですよね……」
「三成さんも話聞いてるっすか!?」
「ところで、この館の鍵は持っているのかい?」
「いえ、代田は鍵ごと海に落ちたので……
入るなら壊して入るしかありませんね」
「随分と物騒なんだな」
「どうせ取り壊す予定ですので……」
「どうします?零時さん
鍵がないなら無理矢理蹴破ります?
私、このボロそうな扉なら蹴破れますよ?」
「いや、その必要はない」
そう言うと、零時さんはゴソゴソとカバンを漁る。
少しして探し物を見つけたのか、
中から小型の靴のような小物を取り出した。
ガラスの靴のような形で、かかと部分には
返しのような部品が付いている。
「何ですかこれ」
「シンデレラ爆弾……の小型版だ」
「シンデレラ爆弾!?」
まさかさらりと爆弾を出されるとは思っていなかったので、
零時さんの手のひらにある爆弾をまじまじと見つめる。
見たところ爆弾なんかには見えないのだが……
けど良く見ると透明のガラス越しに配線が見えたので、
本当にこれは爆弾なのだと確信した。
零時さんが言うには、これは爆弾姫から貰ったものらしい。
「本来は12時に爆発するものだが、
これはドアの鍵を破壊する用の爆弾でな
この爆弾を鍵穴に差し込んだ時に、
かかとの部分がスイッチとなり、一分後に爆発する仕組みだ」
良く分からないが、あのかかとの部分が
起爆スイッチなのは何となく分かった。
つくづくあの爆弾姫が零時さんのストーカーで、
本当に良かったと実感した。
「それでは、その爆弾を鍵穴に差し込めば良いのですね?」
「ああ、蹴破るよりはまだ外傷が少なく済むからな」
「私としては、別にどちらでも構わないのですが……
まあ良いでしょう」
零時さんがシンデレラ爆弾を鍵穴に差し込むと、
一分後に軽い爆風が起きる。
その風は零時さんの黒みがかかった銀髪を揺らし、
額の銃痕が一瞬だけ見えた。
「あれ……は……」
かつて私を助けた、警察官と同じもの。
まさか零時さんは……あの人と……
「どうしたんだい?三成」
伊織さんに話しかけられて現実に戻る。
覗き込んでいる体勢だからか、伊織さんの金髪が揺れ、
空のように澄んだ青い瞳と目が合う。
「だ、大丈夫です
少し考え事をしていただけなんで……」
「本当に大丈夫っすか?
体調悪くなったら、すぐに言うんすよ」
「うん、心配かけてごめんね」
心配そうに私を見上げる月宮くんの頭を撫でると、
『子供扱いしないでほしいっす!』と、
彼は照れながら抗議の声をあげる。
それがとても可愛くて、私はその姿に癒されながらも、
私達は腐敗の館へと、足を踏み入れた……
◇◇◇
「けほっけほっ、何かほこりっぽくないっすか?」
流石に数週間も前となると、
ほこりが溜まるのは仕方のないことで、
館の中はほこりだらけになっていた。
空中には雪のように、ほこりが舞っている。
「ふむ……見たところ中は広いようですし、
これは骨が折れそうですね……」
「え、無月さんも手伝ってくれるんすか?」
「はい、黒王様からの御命令ですから」
「まあ、人数は多い方が良いからな
ここは手分けして探した方が早く済むだろう」
「それじゃあ、僕は時人くんと同じチームね!」
「そうなると俺は……三成さんとっすかね?
よろしくっす!」
伊織さんは対抗してくると思ってたのか、
一瞬呆気に取られた表情をしていたが、
一緒に行動出来るのが確定したので、
伊織さんは嬉しそうに零時さんに腕を絡めた。
伊織さんの豊満な胸が当たっているというのに、
零時さんは死んだ目をしている。
「では私は……一人ですね
まあ五人ですから……こういうこともあるでしょう」
「…………」
心なしか寂しそうに見えたので、
私は知り合いの一人に電話を掛けた。
◇◇◇
「フライドチキン奢ってクレると聞いテ」
「何でこいつ呼んだ」
零時さんはフライドチキンを食べながら、
腐敗の館へとやってきた代魔先輩を指差す。
無月さんは黙々とフライドチキンを食べてる
九十九神を見て、唖然としていた。
「えっと、この方は?」
「代魔先輩です」
「フライドチキン野郎だ」
「ヨろシく」
「ああ、彼岸警察の……」
どうやら無月さんは名前に心当たりがあったようだ。
無月さんが握手を求めると、
代魔先輩は何故か新しいフライドチキンを、
無月さんに渡した。
無表情でも動揺しているのが何となく分かる。
「えっと、これは受けとれば良いんですか?」
「あア、お互いのフライドチキンで殴ル
それが今のブームだ」
「何だそのイカれた挨拶」
無月さんが恐る恐るフライドチキンを受け取ると、
突然代魔先輩が無月さんの顔面をフライドチキンでぶん殴った。
「いたっ」
「ヨロしク」
「では、私も……」
無月さんは戸惑いながらも、
軽めに代魔先輩をフライドチキンで殴った。
その後代魔先輩がフライドチキンを食べ始めたので、
無月さんも戸惑いながらもフライドチキンを一口食べた。
これは困惑するのも無理はない。
「よろしくお願いしま……す?」
「よシ、今カらオレ達は友達ダ」
「友達、ですか……」
「無月さん、まともに対応しなくて良いですよこいつ」
「零時さん、代魔先輩に冷たくありません?」
「事件現場にフライドチキン食べながら捜査する奴に
まともな対応出来るわけないだろ」
正論過ぎて言葉が出なかった。
◇◇◇
とりあえず館の中は零時さんと伊織さん、
月宮くんと私、無月さんと代魔先輩に別れて、
館を探索することになった。
どうやら二階建てだったようで、
一階の右側は零時さんと伊織さん、
一階の左側は無月さんと代魔先輩。
比較的部屋が少ない二階は私と月宮くんが担当だ。
「それでは伊織さん、零時さんをお願いしますね」
「言われなくともそのつもりさ!
恋人の身を守るのは、当然のことだろう?」
「恋人ではないけどな」
「またまた~照れちゃって!
時人くんは素直じゃないなぁ」
どうやら零時さんにとっては、
さっきからずっと当たっている豊満な胸は
どうでも良いらしく、ずっと目が死んでいる。
普通なら伊織さんみたいな美人で、
あんな大きな胸を押し付けられたら、
大抵の男はクラっと来るはずなのですが……
零時さんの好みではないのでしょうか。
そんなことより、今は探索に集中しよう。
「さ、行きますよ月宮くん」
ニッコリと笑いかけて、月宮くんと手を繋ぐ。
月宮くんは子供扱いされていることに、
むすっと口を尖らせて、不満そうな顔をしていたけれど、
私が嬉しそうなので何も言えないようだった。
本当に可愛い……
ありがとう零時さん、この子を弟子にしてくれて。
「足元、転ばないように気を付けるんすよ」
月宮くんが空いている方の手を広げたと思うと、
パッと手品のように、その手にはムーンライト……
冥府用の懐中電灯が握られていた。
(ちなみに現世ではソーラーが主流らしいが、
太陽がない冥府では、月の光で充電するものが主流だ)
「それ、わざわざ持ってきてたの?」
「ああ、これは特性を使ったんすよ
一度触ったことがあるものなら複製出来る……
そう言ったっすよね?」
そういえば、月宮くんは特性持ちだった。
一度触ったことがあるものを複製出来る……
自分で持てるものという制限付きではあるが、
結構便利ではなかろうか……
「その気になれば、師匠の探偵事務所の合鍵も作れるっすよ」
得意気な顔で月宮くんが持っていたのは、
確かに零時さんの探偵事務所の鍵と同じものだ。
慌てて自分の財布を確認したけど、鍵は盗られていない。
恐らくあの時ついでに私の財布に入っていた
合鍵を触っていたのだろう。
「凄いね月宮くん!でも、それ伊織さんとか
白雪さんに話しちゃダメだよ?」
絶対悪用するだろうから、あのストーカー達。
「でもあの二人なら、もう持ってそうっすけどね?」
「うん、まあ……そうだろうね」
否定は出来ない。
この話はさっさと切り上げて、
月宮くんが複製してくれたムーンライトを頼りに、
暗い館の中を探索する。
「あ、これ誰かの日記じゃないっすか?」
「そう……みたいだね」
誰かの寝室で見つけたのは、古びた日記だった。
大分年季が入ってはいるが、
読めなくはないみたいなので、
ムーンライトで照らしながら日記を読む。
◇◇◇
妻が転生して、もう何日になっただろうか。
すぐにでも転生したいが、私の順番はまだ先だ。
私は生前で罪を犯し過ぎた。
それが今になって私を苦しめるとは……
しかし、いくら嘆いても順番は変わらない。
この虚無の時間を、私は何度繰り返せば良いのだろう。
◇◇◇
そうだ、いないなら作ってしまえば良い。
どうしてそんな単純なことに気がつかなかったのか。
バレれば転生する順番は遠ざかるかもしれない。
それでも、例え仮初めだとしても。
私は妻に会いたいのだ。
◇◇◇
特に手続きを必要としない、
そして生きた人間に攻撃出来ない指輪を付けられる心配のない
心霊スポットから現世に侵入し、
怖いもの見たさの馬鹿な人間の中から、
若い女性を選び、拉致する。
そして冥府の食べ物を食べさせれば、
その女は死ぬまで、冥府から出られない。
そんな馬鹿な人間は、まるで羽虫のように沸いてくる。
おかけで……妻の身体作りには困らなかった。
◇◇◇
いくつもの身体を繋ぎ合わせ、縫い合わせ、
いよいよ妻は完成間近となっていた。
ああでも、足りない。
彼女はこんな濁った目をしていなかった。
彼女はこんな髪色をしていなかった。
彼女は……彼……女は……
おかしいなおかしいなおかしいな
何かが足りない、全部足りない。
妻を作りたかったのに、全く違うものに成り果てている。
ならば作り直そう、もう一度素材から選び直そう。
きっと元にしたものがダメだったのだ。
きっと選んだ部品がおかしかったのだ。
ああきっと、きっとそうだ。
また彼女を最初から……作り直すことにしよう。
◇◇◇
素晴らしい、これ程の出来はそうないだろう。
やはり前のは素材が悪かったのだ。
その証拠に、彼女のように善良な若い女性を
素材にした〝妻〟は、前よりも格段に美しい。
やはり私は間違ってなどいなかった。
これこそが、私が愛した妻。
これ以上ない最高傑作。
後は……現世にいるはずの妻の魂さえあれば、
この最高傑作は完成するだろう。
◇◇◇
「胸糞悪いっす」
月宮くんはまた手品みたいにライターを取り出すと、
そのまま火を付けて日記を燃やしてしまう。
日記はそのまま燃えていき、やがて燃え尽きてしまった。
「燃やして良かったの?」
「こんなの、残しても良いことないっすよ
無月さんに日記を読ませてくれと頼まれたら、
複製で作れば良いだけの話っす」
「そう……だね」
確かにこのまま残しても、
気分悪くなるだけで残しても意味がないのは分かる。
証拠として残そうにも、彼はもう海に還っているし……
確かにいざとなれば複製でも問題ないかと思い直して、
私と月宮くんは、一階に戻ることにした。
◇◇◇
「何か見つけたか?」
「あー……胸糞悪い日記なら見つけたっすよ
……………燃やしたけど」
「そうですか……一応証拠品として
保管しておきたかったのですが……
燃やしたのでしたら、概要だけでも教えてくれませんか?」
「わざわざそんなことしなくても、
俺が複製したもの渡すんで、必要ないっすよ」
もう一度手品みたいな感じで、
月宮くんの手にさっき燃やした日記が現れる。
その能力に無月さんは驚いた顔をしていた。
「なるほど、特性持ちでしたか……」
「自分が持てるもののみって、制限付きっすけどね」
無月さんは月宮くんから手渡された日記を読み込み、
神妙そうな顔をしていた。
まああまり読んでて気持ちの良い内容ではないし、
何ならどう解体したかとか、抵抗した時の様子とか、
やたら詳しく書いていたので、流石に私も吐きそうだった。
「これは……捕まえられなかったのが悔やまれますね」
「そうっすね……地獄に送ってやれなかったのが残念っす
あいつに転生する権利はいらないっすよ」
地獄は……私も行ったことはないし行く予定もないのだが、
あそこは転生を許されない大罪人が行く場所らしく、
苦痛にもがきながら消滅するまで、
何度も何度も痛め付けられるそうだ。
「あいつの地獄行きには同意だが、
現世の人間の救助を優先しろ
この先の、隠し部屋の中にいるみたいだからな」
どうやら零時さんのところで何か見つけたようだ。
どう見ても壁しかないところで零時さんが、
不自然に何も置いてない壁の一部に力を加える。
すると、その壁はゴゴゴ……と音を立て、
新たな道が出現した。
「どう?これが時人くんと僕の愛の力さ!」
「愛の力関係ないけどな
こいつはずっと胸部を押し付けて来てただけだ」
「胸部って……僕の魅力的な身体に、何も感じないのかい?」
「さっさと行くぞ」
零時さんが伊織さんを無視して先へ進むと、
伊織さんは『もう~この照れ屋さんっ☆ミ』とか言って、
零時さんの後を追いかけていった。
私達も伊織さんの後に続いて隠し部屋へと足を進める。
◇◇◇
鼻をつくような腐臭。
ほこりっぽい館とは違い、ここだけ清潔に保たれている。
しかし血だけは、壁一面に飛び散り、
肉片もいくつか散乱している。
月宮くんは耳と尻尾を逆立て、鼻をつまむ。
私達よりも人一倍敏感だからだろう。
とても不快そうな表情で、先に進んでいく。
やがて長い廊下を抜け、ソレが見えてくる。
ああ、これは、ここにいるのは……
「これが、代田 皆斗の妻?」
正確には、妻として作られた偽物だけれど、
継ぎはぎだらけで、綺麗な洋服を着せられたソレは、
複数の女性の肉体から作られた、一体の人形のような姿だった。
腰まである茶色い髪、濁った紺色の瞳。
しなやかな継ぎはぎだらけの手足。
その顔は何故か微笑みを浮かべている。
彼女達が、かつて代田に拉致された……
現世の人間達なのだろう。
その異様な光景に、強い嫌悪感を覚えながらも、
立ち尽くすことしか出来ずにいたーーー……
「海へ還しましょう
彼女達はもう……手遅れです」
無月さんが神妙な顔で呟く。
私達は黙って頷くと、彼女を抱えて、この館を後にした。
◇◇◇
冥府の海は全てを溶かす。
それが例え、かつて現世で生きていた人間だったとしても。
「さようなら」
代田に苦しまされた彼女達に別れの言葉を送り、
静かに海の中へと降ろす。
継ぎはぎだらけの歪な彼女達は、
ゆっくりと海の中へと沈み、ゆっくりと溶けていく。
「来世では、あんな奴に捕まらずに、
幸せに生きるんすよ」
月宮くんは優しい表情で、溶けていく彼女達に語りかける。
もう、彼女達にはきっと聞こえていないだろう。
それでも、せめて同じ目には遭わないよう……
祈ることしか出来ないのが、もどかしい。
「………………」
私達が一人ずつ言葉を投げ掛ける中、
零時さんだけが、寂しそうな目で、
彼女達を見送っていた……
無月さんは犯人の事を話してくれた。
「海に還った犯人の名前は、代田 皆斗
生前は若い女性を殺害してた快楽殺人鬼です」
「あー……俺もニュースで見たことあるっすね
確か、現世では捕まえられなかったんすよね?」
「はい、生前も警察に追い詰められた際に、
自ら海に飛び込んだのだとか」
「海側も良い迷惑だな」
「あっ、零時さんが気にするのそこなんですね……」
「流石時人くん!
犯人に同じ逃げられ方をされたよりも、
海の生き物の事を気にかけるだなんて……
あぁ……ますます惚れ直したよ!」
「え?」
「おや」
「…………はぁー……
何故ここにいるんだ、伊織」
零時さんの背後から女性の声が聞こえたので、
思わず振り返ると、そこには伊織さんが立っていた。
久しぶりに生身で会った伊織さんは、
笑顔で私達に手を振っている。
伊織さん……前会った時より胸が大きくなった気がする……
自分のまな板のような胸と比べ、内心羨ましく思いながらも、
伊織さんに笑顔で挨拶する。
「お久しぶりです、伊織さん」
「知り合いっすか?」
「ああ、月宮くんは会うの初めてだっけ
この人は希丸 伊織さん
生前はハッカーをしてた人だよ」
「そして俺のストーカーだ」
「そんな……時人くん
俺のものだなんて……照れるじゃないか」
「そんなこと一言も言っていないが?」
「伊織さんはいつも通りのようですね」
「それで……彼が時人くんの新しい弟子で間違いないかい?」
「何で俺の事知ってるんすか?」
「そりゃあ……時人くんのとやり取りを、
全部盗聴してたからに決まってるじゃないか!」
「凄いな……白雪の後だとお前の行為がマシに見える
ストーカーには変わりないのにな」
「まあ、キス要求に比べりゃ、
盗聴が可愛く見えるのは分かる気がするっす」
「大丈夫!あの変態ドMには、
後で毒リンゴでも送っておくよ!」
「あんな変態でも利用価値はあるから、毒は弱めにしておけよ」
「送ることは止めないんですね……」
「いや足ついたら面倒だから、
玄関にネズミ取り仕掛けとくのが一番っすよ」
「それもそうだね……あの変態の事だし、
時人くんの匂い付きなら食いつくかも
時人くん、後で月光の香水借りて良い?」
何か落ち着く良い匂いだと思ったら、
零時さん香水つけてたのか……
しかも黒王様お墨付きのお高いやつ……
「そう考えるとますます気持ち悪いなあいつ……
まあ良い……必ず返すんだぞ」
「分かってるよ、僕はあの変態みたいに、
時人くんが捨てたゴミをコレクションとかしないし」
「待て、それは初耳なんだが?
どれだけキモさ更新したら気が済むんだあいつ」
零時さんは白雪さんのキモさに身震いしながら、
私達は無月さんに案内されながら目的地を目指す。
「到着しました」
辿り着いたのは、古くて大きな洋館。
まともに手入れしていないのか、
館の周りは雑草が生い茂っており、
館全体もツタがいくつか絡み付いている。
かろうじて玄関から中に入ることは出来そうだ。
しばらく館の周りを不審そうに嗅ぎ回っていた月宮くんは、
何か変な匂いでも嗅ぎ取ったのか、
不快そうな顔をしていた。
「うえー、ここ変な匂いするっすよ
マジで死体とかあってもおかしくないっすよこれ」
「なるほど、人間では嗅ぎ取れない匂いを……
警察犬としても捜査につかえるかもしれんな」
「俺犬じゃなくて狼なんすけど!?」
「確かにその嗅覚は捜査に使えそうですよね……」
「三成さんも話聞いてるっすか!?」
「ところで、この館の鍵は持っているのかい?」
「いえ、代田は鍵ごと海に落ちたので……
入るなら壊して入るしかありませんね」
「随分と物騒なんだな」
「どうせ取り壊す予定ですので……」
「どうします?零時さん
鍵がないなら無理矢理蹴破ります?
私、このボロそうな扉なら蹴破れますよ?」
「いや、その必要はない」
そう言うと、零時さんはゴソゴソとカバンを漁る。
少しして探し物を見つけたのか、
中から小型の靴のような小物を取り出した。
ガラスの靴のような形で、かかと部分には
返しのような部品が付いている。
「何ですかこれ」
「シンデレラ爆弾……の小型版だ」
「シンデレラ爆弾!?」
まさかさらりと爆弾を出されるとは思っていなかったので、
零時さんの手のひらにある爆弾をまじまじと見つめる。
見たところ爆弾なんかには見えないのだが……
けど良く見ると透明のガラス越しに配線が見えたので、
本当にこれは爆弾なのだと確信した。
零時さんが言うには、これは爆弾姫から貰ったものらしい。
「本来は12時に爆発するものだが、
これはドアの鍵を破壊する用の爆弾でな
この爆弾を鍵穴に差し込んだ時に、
かかとの部分がスイッチとなり、一分後に爆発する仕組みだ」
良く分からないが、あのかかとの部分が
起爆スイッチなのは何となく分かった。
つくづくあの爆弾姫が零時さんのストーカーで、
本当に良かったと実感した。
「それでは、その爆弾を鍵穴に差し込めば良いのですね?」
「ああ、蹴破るよりはまだ外傷が少なく済むからな」
「私としては、別にどちらでも構わないのですが……
まあ良いでしょう」
零時さんがシンデレラ爆弾を鍵穴に差し込むと、
一分後に軽い爆風が起きる。
その風は零時さんの黒みがかかった銀髪を揺らし、
額の銃痕が一瞬だけ見えた。
「あれ……は……」
かつて私を助けた、警察官と同じもの。
まさか零時さんは……あの人と……
「どうしたんだい?三成」
伊織さんに話しかけられて現実に戻る。
覗き込んでいる体勢だからか、伊織さんの金髪が揺れ、
空のように澄んだ青い瞳と目が合う。
「だ、大丈夫です
少し考え事をしていただけなんで……」
「本当に大丈夫っすか?
体調悪くなったら、すぐに言うんすよ」
「うん、心配かけてごめんね」
心配そうに私を見上げる月宮くんの頭を撫でると、
『子供扱いしないでほしいっす!』と、
彼は照れながら抗議の声をあげる。
それがとても可愛くて、私はその姿に癒されながらも、
私達は腐敗の館へと、足を踏み入れた……
◇◇◇
「けほっけほっ、何かほこりっぽくないっすか?」
流石に数週間も前となると、
ほこりが溜まるのは仕方のないことで、
館の中はほこりだらけになっていた。
空中には雪のように、ほこりが舞っている。
「ふむ……見たところ中は広いようですし、
これは骨が折れそうですね……」
「え、無月さんも手伝ってくれるんすか?」
「はい、黒王様からの御命令ですから」
「まあ、人数は多い方が良いからな
ここは手分けして探した方が早く済むだろう」
「それじゃあ、僕は時人くんと同じチームね!」
「そうなると俺は……三成さんとっすかね?
よろしくっす!」
伊織さんは対抗してくると思ってたのか、
一瞬呆気に取られた表情をしていたが、
一緒に行動出来るのが確定したので、
伊織さんは嬉しそうに零時さんに腕を絡めた。
伊織さんの豊満な胸が当たっているというのに、
零時さんは死んだ目をしている。
「では私は……一人ですね
まあ五人ですから……こういうこともあるでしょう」
「…………」
心なしか寂しそうに見えたので、
私は知り合いの一人に電話を掛けた。
◇◇◇
「フライドチキン奢ってクレると聞いテ」
「何でこいつ呼んだ」
零時さんはフライドチキンを食べながら、
腐敗の館へとやってきた代魔先輩を指差す。
無月さんは黙々とフライドチキンを食べてる
九十九神を見て、唖然としていた。
「えっと、この方は?」
「代魔先輩です」
「フライドチキン野郎だ」
「ヨろシく」
「ああ、彼岸警察の……」
どうやら無月さんは名前に心当たりがあったようだ。
無月さんが握手を求めると、
代魔先輩は何故か新しいフライドチキンを、
無月さんに渡した。
無表情でも動揺しているのが何となく分かる。
「えっと、これは受けとれば良いんですか?」
「あア、お互いのフライドチキンで殴ル
それが今のブームだ」
「何だそのイカれた挨拶」
無月さんが恐る恐るフライドチキンを受け取ると、
突然代魔先輩が無月さんの顔面をフライドチキンでぶん殴った。
「いたっ」
「ヨロしク」
「では、私も……」
無月さんは戸惑いながらも、
軽めに代魔先輩をフライドチキンで殴った。
その後代魔先輩がフライドチキンを食べ始めたので、
無月さんも戸惑いながらもフライドチキンを一口食べた。
これは困惑するのも無理はない。
「よろしくお願いしま……す?」
「よシ、今カらオレ達は友達ダ」
「友達、ですか……」
「無月さん、まともに対応しなくて良いですよこいつ」
「零時さん、代魔先輩に冷たくありません?」
「事件現場にフライドチキン食べながら捜査する奴に
まともな対応出来るわけないだろ」
正論過ぎて言葉が出なかった。
◇◇◇
とりあえず館の中は零時さんと伊織さん、
月宮くんと私、無月さんと代魔先輩に別れて、
館を探索することになった。
どうやら二階建てだったようで、
一階の右側は零時さんと伊織さん、
一階の左側は無月さんと代魔先輩。
比較的部屋が少ない二階は私と月宮くんが担当だ。
「それでは伊織さん、零時さんをお願いしますね」
「言われなくともそのつもりさ!
恋人の身を守るのは、当然のことだろう?」
「恋人ではないけどな」
「またまた~照れちゃって!
時人くんは素直じゃないなぁ」
どうやら零時さんにとっては、
さっきからずっと当たっている豊満な胸は
どうでも良いらしく、ずっと目が死んでいる。
普通なら伊織さんみたいな美人で、
あんな大きな胸を押し付けられたら、
大抵の男はクラっと来るはずなのですが……
零時さんの好みではないのでしょうか。
そんなことより、今は探索に集中しよう。
「さ、行きますよ月宮くん」
ニッコリと笑いかけて、月宮くんと手を繋ぐ。
月宮くんは子供扱いされていることに、
むすっと口を尖らせて、不満そうな顔をしていたけれど、
私が嬉しそうなので何も言えないようだった。
本当に可愛い……
ありがとう零時さん、この子を弟子にしてくれて。
「足元、転ばないように気を付けるんすよ」
月宮くんが空いている方の手を広げたと思うと、
パッと手品のように、その手にはムーンライト……
冥府用の懐中電灯が握られていた。
(ちなみに現世ではソーラーが主流らしいが、
太陽がない冥府では、月の光で充電するものが主流だ)
「それ、わざわざ持ってきてたの?」
「ああ、これは特性を使ったんすよ
一度触ったことがあるものなら複製出来る……
そう言ったっすよね?」
そういえば、月宮くんは特性持ちだった。
一度触ったことがあるものを複製出来る……
自分で持てるものという制限付きではあるが、
結構便利ではなかろうか……
「その気になれば、師匠の探偵事務所の合鍵も作れるっすよ」
得意気な顔で月宮くんが持っていたのは、
確かに零時さんの探偵事務所の鍵と同じものだ。
慌てて自分の財布を確認したけど、鍵は盗られていない。
恐らくあの時ついでに私の財布に入っていた
合鍵を触っていたのだろう。
「凄いね月宮くん!でも、それ伊織さんとか
白雪さんに話しちゃダメだよ?」
絶対悪用するだろうから、あのストーカー達。
「でもあの二人なら、もう持ってそうっすけどね?」
「うん、まあ……そうだろうね」
否定は出来ない。
この話はさっさと切り上げて、
月宮くんが複製してくれたムーンライトを頼りに、
暗い館の中を探索する。
「あ、これ誰かの日記じゃないっすか?」
「そう……みたいだね」
誰かの寝室で見つけたのは、古びた日記だった。
大分年季が入ってはいるが、
読めなくはないみたいなので、
ムーンライトで照らしながら日記を読む。
◇◇◇
妻が転生して、もう何日になっただろうか。
すぐにでも転生したいが、私の順番はまだ先だ。
私は生前で罪を犯し過ぎた。
それが今になって私を苦しめるとは……
しかし、いくら嘆いても順番は変わらない。
この虚無の時間を、私は何度繰り返せば良いのだろう。
◇◇◇
そうだ、いないなら作ってしまえば良い。
どうしてそんな単純なことに気がつかなかったのか。
バレれば転生する順番は遠ざかるかもしれない。
それでも、例え仮初めだとしても。
私は妻に会いたいのだ。
◇◇◇
特に手続きを必要としない、
そして生きた人間に攻撃出来ない指輪を付けられる心配のない
心霊スポットから現世に侵入し、
怖いもの見たさの馬鹿な人間の中から、
若い女性を選び、拉致する。
そして冥府の食べ物を食べさせれば、
その女は死ぬまで、冥府から出られない。
そんな馬鹿な人間は、まるで羽虫のように沸いてくる。
おかけで……妻の身体作りには困らなかった。
◇◇◇
いくつもの身体を繋ぎ合わせ、縫い合わせ、
いよいよ妻は完成間近となっていた。
ああでも、足りない。
彼女はこんな濁った目をしていなかった。
彼女はこんな髪色をしていなかった。
彼女は……彼……女は……
おかしいなおかしいなおかしいな
何かが足りない、全部足りない。
妻を作りたかったのに、全く違うものに成り果てている。
ならば作り直そう、もう一度素材から選び直そう。
きっと元にしたものがダメだったのだ。
きっと選んだ部品がおかしかったのだ。
ああきっと、きっとそうだ。
また彼女を最初から……作り直すことにしよう。
◇◇◇
素晴らしい、これ程の出来はそうないだろう。
やはり前のは素材が悪かったのだ。
その証拠に、彼女のように善良な若い女性を
素材にした〝妻〟は、前よりも格段に美しい。
やはり私は間違ってなどいなかった。
これこそが、私が愛した妻。
これ以上ない最高傑作。
後は……現世にいるはずの妻の魂さえあれば、
この最高傑作は完成するだろう。
◇◇◇
「胸糞悪いっす」
月宮くんはまた手品みたいにライターを取り出すと、
そのまま火を付けて日記を燃やしてしまう。
日記はそのまま燃えていき、やがて燃え尽きてしまった。
「燃やして良かったの?」
「こんなの、残しても良いことないっすよ
無月さんに日記を読ませてくれと頼まれたら、
複製で作れば良いだけの話っす」
「そう……だね」
確かにこのまま残しても、
気分悪くなるだけで残しても意味がないのは分かる。
証拠として残そうにも、彼はもう海に還っているし……
確かにいざとなれば複製でも問題ないかと思い直して、
私と月宮くんは、一階に戻ることにした。
◇◇◇
「何か見つけたか?」
「あー……胸糞悪い日記なら見つけたっすよ
……………燃やしたけど」
「そうですか……一応証拠品として
保管しておきたかったのですが……
燃やしたのでしたら、概要だけでも教えてくれませんか?」
「わざわざそんなことしなくても、
俺が複製したもの渡すんで、必要ないっすよ」
もう一度手品みたいな感じで、
月宮くんの手にさっき燃やした日記が現れる。
その能力に無月さんは驚いた顔をしていた。
「なるほど、特性持ちでしたか……」
「自分が持てるもののみって、制限付きっすけどね」
無月さんは月宮くんから手渡された日記を読み込み、
神妙そうな顔をしていた。
まああまり読んでて気持ちの良い内容ではないし、
何ならどう解体したかとか、抵抗した時の様子とか、
やたら詳しく書いていたので、流石に私も吐きそうだった。
「これは……捕まえられなかったのが悔やまれますね」
「そうっすね……地獄に送ってやれなかったのが残念っす
あいつに転生する権利はいらないっすよ」
地獄は……私も行ったことはないし行く予定もないのだが、
あそこは転生を許されない大罪人が行く場所らしく、
苦痛にもがきながら消滅するまで、
何度も何度も痛め付けられるそうだ。
「あいつの地獄行きには同意だが、
現世の人間の救助を優先しろ
この先の、隠し部屋の中にいるみたいだからな」
どうやら零時さんのところで何か見つけたようだ。
どう見ても壁しかないところで零時さんが、
不自然に何も置いてない壁の一部に力を加える。
すると、その壁はゴゴゴ……と音を立て、
新たな道が出現した。
「どう?これが時人くんと僕の愛の力さ!」
「愛の力関係ないけどな
こいつはずっと胸部を押し付けて来てただけだ」
「胸部って……僕の魅力的な身体に、何も感じないのかい?」
「さっさと行くぞ」
零時さんが伊織さんを無視して先へ進むと、
伊織さんは『もう~この照れ屋さんっ☆ミ』とか言って、
零時さんの後を追いかけていった。
私達も伊織さんの後に続いて隠し部屋へと足を進める。
◇◇◇
鼻をつくような腐臭。
ほこりっぽい館とは違い、ここだけ清潔に保たれている。
しかし血だけは、壁一面に飛び散り、
肉片もいくつか散乱している。
月宮くんは耳と尻尾を逆立て、鼻をつまむ。
私達よりも人一倍敏感だからだろう。
とても不快そうな表情で、先に進んでいく。
やがて長い廊下を抜け、ソレが見えてくる。
ああ、これは、ここにいるのは……
「これが、代田 皆斗の妻?」
正確には、妻として作られた偽物だけれど、
継ぎはぎだらけで、綺麗な洋服を着せられたソレは、
複数の女性の肉体から作られた、一体の人形のような姿だった。
腰まである茶色い髪、濁った紺色の瞳。
しなやかな継ぎはぎだらけの手足。
その顔は何故か微笑みを浮かべている。
彼女達が、かつて代田に拉致された……
現世の人間達なのだろう。
その異様な光景に、強い嫌悪感を覚えながらも、
立ち尽くすことしか出来ずにいたーーー……
「海へ還しましょう
彼女達はもう……手遅れです」
無月さんが神妙な顔で呟く。
私達は黙って頷くと、彼女を抱えて、この館を後にした。
◇◇◇
冥府の海は全てを溶かす。
それが例え、かつて現世で生きていた人間だったとしても。
「さようなら」
代田に苦しまされた彼女達に別れの言葉を送り、
静かに海の中へと降ろす。
継ぎはぎだらけの歪な彼女達は、
ゆっくりと海の中へと沈み、ゆっくりと溶けていく。
「来世では、あんな奴に捕まらずに、
幸せに生きるんすよ」
月宮くんは優しい表情で、溶けていく彼女達に語りかける。
もう、彼女達にはきっと聞こえていないだろう。
それでも、せめて同じ目には遭わないよう……
祈ることしか出来ないのが、もどかしい。
「………………」
私達が一人ずつ言葉を投げ掛ける中、
零時さんだけが、寂しそうな目で、
彼女達を見送っていた……
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